コラム2007年02月05日 【ML耳より情報】 「請負と雇用」の税務上の取扱いの違い(2007年2月5日号・№197)

「請負と雇用」の税務上の取扱いの違い

「請負と雇用」の税務上の取扱いの違い

 近年、会社に雇用されている社員が行っていた業務を、外部の個人に請負(業務委託を含む)の形で委託するケースが増えています。しかし、税務上これらの取扱いはまったく異なります。
 会社側は、請負の場合、支払う報酬について消費税の課税仕入に該当しますので、消費税の負担が軽減されます。また一定の報酬(デザイン報酬等)を除き所得税の源泉徴収および年末調整を行う義務はありません。雇用の場合、報酬が消費税の課税対象外である給与に該当しますので、消費税の負担軽減がなく、所得税の源泉徴収および年末調整を行う義務が課せられます。一方個人側は、請負の場合、報酬が課税売上に該当し、消費税の負担が発生します。また事業所得として確定申告する義務が課されます。給与所得なら給与所得控除という概算経費が認められますが、事業所得は実際に支出した経費を元に申告することとなります。しかし、純粋な役務提供であれば経費は非常に少ないと推定されます。したがって、給与所得の場合に比し、所得税の負担は多額になると思われます。雇用の場合、報酬は給与所得に該当するので消費税の負担はなく、確定申告も原則的に不要です。また、請負であれば社会保険料の会社負担も発生しません。他にも、事業税の外形標準課税では、給与支払額は課税標準に含まれますが、請負の報酬は含まれません。結局、請負は会社側のメリットが圧倒的に多いといえます。

税務上の請負(事業所得)と雇用(給与所得)との判断基準
 税務上、請負とは自己の計算において独立して役務の提供をすることをいい、雇用は他の者の計算により行われる事業に役務の提供をすることをいいます。しかし、時間契約の場合や明確な成果物がない場合、判断しづらいケースが多いです。判断の基準としては①その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるか、②役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるか、③まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるか、④役務の提供に係る材料または用具等を供与されているか、等の基準により総合的に判断されます(消基通1-1-1)。
 この中で①と②が特に重要であると思われます。他人への再委託を禁止あるいは制限または会社内を作業場所として指定する条項が含まれる請負契約が実務上よくみられますが、とても自己の計算において独立して役務の提供を行っているとはいえないでしょう。上記の基準の他、個人側が適正に確定申告および納税を行っていることもポイントとなると思われます。

安易な社内下請けは税務上否認されるケースも 
 消費税や社会保険料の節約の対策として、社内下請け制度を採用する会社が増えているようです。実態がなく、形式や名目を変更しただけで、給与が請負に変更できるわけではありません。
 後に否認された場合は、消費税だけではなく、源泉所得税や、社会保険料について、多額の負担が現実化する恐れがあります。このような手法の採用には慎重な対応が必要です。 

  taxMLグループ 税理士 磯貝慎一郎

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