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解説記事2008年04月21日 【ニュース特集】 ゴーイング・コンサーン情報の注記が付いた企業のその後は?(2008年4月21日号・№255)

本誌が追跡調査~5社に1社が上場廃止に
ゴーイング・コンサーン情報の注記が付いた企業のその後は?

 平成15年3月期から導入された継続企業の前提(いわゆるゴーイング・コンサーン)に関する注記だが、東京証券取引所に上場している3月期決算会社の場合、これまでに83社の監査報告書に「継続企業の前提に関する注記あり」との追記情報が付されている。「継続企業の前提に関する注記あり」との監査人による追記情報は、投資家等に注意喚起を促す目的があるが、本誌編集部が追跡調査したところでは、83社のうち、16社が実際に上場廃止となったことが明らかとなった(今号6頁の表参照)。継続企業の前提に関する注記が付された企業のおよそ5社に1社が上場廃止となった計算となる。16社のなかには、産業再生機構入りしたカネボウ(現クラシエ)や民事再生手続が開始された会社なども含まれている。今回の特集では、本誌編集部の調査結果の概要を紹介する。

1 平成15年3月期より継続企業の前提に関する注記が必要  企業が作成する財務諸表等は、簡潔にいえば企業が未来永劫続くことを前提に行われている。しかし、監査人の監査報告書は適正意見であったにもかかわらず、企業が倒産する例が後を絶たないといった状況を鑑みて導入されたのが継続企業の前提に関する注記である。

 企業は継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事業または状況が存在すると判断した場合、①当該事象または状況が存在する旨およびその内容、②継続企業の前提に関する重要な疑義の存在、③当該事象または状況を解消または大幅に改善するための経営者の対応および経営計画、④当該重要な疑義の影響を財務諸表に反映しているか否かについて、注記しなければならないとされている(財務諸表等規則8条の27)。

倒産の可能性も!  また、平成14年1月の監査基準の改訂により、監査人は、平成15年3月1日以後終了する事業年度に係る財務諸表等から、継続企業の前提に疑義を抱かせる事象または状況が存在すると判断した場合には、監査報告書に追記情報として注記することになった。
 監査報告書に継続企業の前提に関する追記情報が付された企業は、「今後の状況次第では、倒産等する可能性も少なからずあります」という旨が言外に含まれているため、投資家情報としては有益なものといえる。
債務超過などを例示  日本公認会計士協会が公表した監査委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」によると、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象として、売上高の著しい減少、債務超過、債務免除の要請、主要な仕入先からの与信または取引の拒絶、ブランド・イメージの著しい悪化などが明示されている(前頁の表参照)。
 ただし、これらの事項についてはあくまでも例示であり、企業の規模や業種等により金額等を加味して総合的に判断することになる。

2 完全子会社化による上場廃止は9社と最多  本誌編集部が東京証券取引所に上場している3月期決算会社について、継続企業の前提に関する注記が付されたか否かを調査したところでは、これまでに83社(複数回の注記が付された会社も1社と計算)に注記があった。
民事再生手続は2社  このうち、上場廃止となった企業は16社(平成20年4月19日現在)。16社のなかには、産業再生機構入りしたカネボウ(現クラシエ)のほか、民事再生手続となった勝村建設、みらい建設グループがある。
 また、上場廃止となった理由としては、完全子会社化によるものが9社と最も多かった。駿河屋、オーベンに関しては、東京証券取引所が有価証券上場規程に基づき、上場廃止を決定したものである。オリエント時計については、債務超過による上場廃止基準に抵触したものである。
3社が5期連続で注記  なお、制度導入以来、継続企業の前提に関する注記が付されている企業としては、ローマイヤ、森電機、アドバックスの3社がある。また、4期連続で注記が付された企業は、シルバー精工、三菱自動車工業、SDホールディングスの3社。
 3期連続では、三井住友建設、エコナック、堀田産業(上場廃止)、エス・サイエンス、ティアックがある。


【継続企業の前提の注記を付された東証上場企業(3月期決算)一覧】

会社名
業種
(上場区分)
会社のその後
継続企業の前提の
注記の時期
三井鉱山 鉱業(1部)   平成15年3月期
フジタ 建設業(2部)   平成15年3月期、平成17年3月期
飛島建設 建設業(1部)   平成15年3月期
三井住友建設 建設業(1部)   平成15年3月期、平成16年3月期、平成17年3月期
間組 建設業(1部)   平成15年3月期
熊谷組 建設業(1部)   平成15年3月期
ミサワ東洋 建設業(2部) ミサワホームホールディングスによる完全子会社化により、平成15年7月28日に上場廃止。 平成15年3月期
三井住建道路 建設業(2部)   平成16年3月期、平成17年3月期
不動建設 建設業(1部) 平成18年10月1日にテトラと合併。不動テトラに社名を変更。 平成16年3月期
佐田建設 建設業(1部)   平成16年3月期
ナカノフドー建設 建設業(1部)   平成16年3月期
中央ビルト工業 建設業(2部)   平成16年3月期
ミサワホームホールディングス 建設業(1部) 平成19年10月1日に子会社のミサワホームを吸収合併。ミサワホームに社名を変更。 平成17年3月期
勝村建設 建設業(1部) 民事再生手続の開始により、平成17年10月30日に上場廃止。 平成17年3月期
東北ミサワホーム 建設業(1部)   平成17年3月期
みらい建設グループ 建設業(1部) 民事再生法手続の開始により、平成19年10月27日に上場廃止。 平成19年3月期
エス・バイ・エル 建設業(1部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
日特建設 建設業(1部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
駿河屋 食料品(2部) 駿河屋の前社長および取締役が電磁的公正証書原本不実記録等の疑いで逮捕、起訴されるに至った経緯などにより、平成17年1月7日に上場廃止。 平成15年3月期、平成16年3月期
ローマイヤ 食料品(2部)   平成15年3月期、平成16年3月期、平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
不二家 食料品(1部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
トスコ 繊維製品(2部)   平成15年3月期、平成16年3月期
市田 繊維製品(1部) ツカモトコーポレーションの完全子会社化により、平成20年3月26日に上場廃止。 平成15年3月期
エコナック 繊維製品(1部)   平成16年3月期、平成17年3月期、平成18年3月期
堀田産業 繊維製品(2部) 堀田丸正との合併により、平成19年3月27日に上場廃止。 平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期
新日鐵化学 化学(1部) 新日本製鐵の完全子会社化により、平成15年7月23日に上場廃止。 平成15年3月期
カネボウ 化学(1部) 虚偽記載および監査意見不表明により、平成17年6月13日に上場廃止。 平成16年3月期
昭和ゴム ゴム製品(2部)   平成15年3月期
ハネックス ガラス・土石製品(2部)   平成15年3月期、平成16年3月期
エーアンドエーマテリアル ガラス・土石製品(1部)   平成15年3月期
日本冶金工業 鉄鋼(1部)   平成15年3月期
東京理化工業所 非鉄金属(2部) 東理ホールディングスの完全子会社化により、平成16年9月27日に上場廃止。 平成15年3月期、平成16年3月期
エス・サイエンス(旧志村化工) 非鉄金属(1部) 平成15年10月1日に志村化工からエス・サイエンスに社名を変更。 平成15年3月期、平成16年3月期、平成17年3月期
日本橋梁 金属製品(1部)   平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
不二サッシ 金属製品(2部)   平成18年3月期、平成19年3月期
松尾橋梁 金属製品(1部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
岡本工作機械製作所 機械(2部)   平成15年3月期、平成16年3月期
シルバー精工 機械(1部)   平成15年3月期、平成16年3月期、平成17年3月期、平成18年3月期
アピックヤマダ 機械(2部)   平成17年3月期
TOWA 機械(1部)   平成18年3月期、平成19年3月期
日本コンベヤ 機械(1部)   平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
日立造船 機械(1部)   平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
マミヤ・オーピー 機械(2部)   平成18年3月期
宮入バルブ製作所 機械(2部)   平成19年3月期
神田通信工業 電気機器(2部) プリヴェチューリッヒ企業再生グループの完全子会社化により、平成15年8月25日に上場廃止。 平成15年3月期
富士通コンポーネント 電気機器(2部)   平成15年3月期、平成16年3月期
長野日本無線 電気機器(2部)   平成15年3月期
森電機 電気機器(2部)   平成15年3月期、平成16年3月期、平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
グラフテック 電気機器(1部) あいホールディングスの完全子会社化により、平成19年3月27日に上場廃止。 平成16年3月期、平成17年3月期
明星電気 電気機器(2部)   平成17年3月期
ティアック 電気機器(1部)   平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期
三洋電機 電気機器(1部)   平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
エネサーブ 電気機器(1部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
ツインバード工業 電気機器(2部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
佐世保重工業 輸送用機器(1部)   平成15年3月期
日産ディーゼル工業 輸送用機器(1部) ボルボの完全子会社化により、平成19年7月23日に上場廃止。 平成16年3月期
三菱自動車工業 輸送用機器(1部)   平成16年3月期、平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
イクヨ 輸送機器(2部)   平成17年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
金門製作所 精密機器(1部) 山武の完全子会社化により、平成20年3月26日に上場廃止。 平成15年3月期、平成16年3月期
オリエント時計 精密機器(2部) 債務超過により、平成15年7月27日に上場廃止。現在はグリーンシート銘柄として登録。 平成15年3月期
ユニオンホールディングス 精密機器(2部)   平成18年3月期、平成19年3月期
河合楽器製作所 その他製品(1部)   平成16年3月期、平成17年3月期
スカイマーク 空運業(マザーズ)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
サイトデザイン 情報・通信業(マザーズ) SDホールディングスの完全子会社化により、平成15年12月1日に上場廃止。 平成15年3月期
SDホールディングス 情報・通信業(マザーズ)   平成16年3月期、平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
アイ・ビー・イー 情報・通信業(マザーズ)   平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
シーフォーテクノロジー 情報・通信業(マザーズ)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
TCBテクノロジーズ 情報・通信業(マザーズ)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
日本製麻 卸売業(2部)   平成15年3月期、平成16年3月期
バナーズ 卸売業(2部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
ソリッドグループホールディングス 卸売業(2部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
東日カーライフグループ 小売業(1部)   平成19年3月期
グローバルアクト 小売業(2部)   平成19年3月期
ラオックス 小売業(2部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
りそなホールディングス 銀行業(1部)   平成15年3月期
ロプロ その他金融業(1部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
ダイア建設 不動産業(2部)   平成15年3月期、平成16年3月期、平成19年3月期
トランスジェニック サービス業(マザーズ)   平成15年3月
アドバックス サービス業(マザーズ)   平成15年3月期、平成16年3月期、平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
武蔵野興業 サービス業(2部)   平成16年3月期、平成17年3月期
オーベン(旧アイ・シー・エフ) サービス業(マザーズ) オーベンが当事者となった株式交換に際し、完全子会社となる法人の企業価値を過大評価するなど、同社の元代表取締役社長らが逮捕、起訴されたことにより、平成20年4月19日に上場廃止。平成18年8月7日にアイ・シー・エフからオーベンに社名を変更。 平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
ジャパン・デジタル・コンテンツ信託 サービス業(マザーズ)   平成18年3月期、平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)
サニックス サービス業(1部)   平成19年3月期(平成20年3月期中間にもあり)

(各社の有価証券報告書、東証における開示資料に基づき編集部作成)

 

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