解説記事2009年01月26日 【ニュース特集】 全国6証券取引所における平成20年中の上場廃止銘柄一覧(2009年1月26日号・№292)
破綻事例急増下、「虚偽記載」「監査意見不表明」等の事例は?
全国6証券取引所における平成20年中の上場廃止銘柄一覧
東京証券取引所など全国の6証券取引所は1月13日、株式市場の状況を踏まえ昨年10月から12月まで一時的に適用を停止していた上場廃止基準や市場指定替え基準等のうち時価総額に係る基準について、本年中は緩和した基準での審査を実施することとし、適用を再開すると発表した(本誌291号42頁参照)。世界的な金融危機を受けて株価が急落する企業が相次ぐなか、この基準に抵触して上場廃止とならざるを得ない企業も増加しているためだ。今回のニュース特集では、「上場企業の倒産は戦後最多」といわれた平成20年中の全国証券取引所における上場廃止の状況を、全上場廃止銘柄につき、その上場廃止理由とともに振り返る。
経営破綻事例に加え、重複上場の廃止事例も増加か 本誌編集部の調査によると、「平成20年中に上場廃止日を迎えた銘柄」の数は、図表1に掲げたとおりとなっている。
このうち、東証の上場廃止銘柄数について、その上場廃止理由別に過去5年間の推移をみると、他の理由に基づく上場廃止に顕著な変化がないのに比べ、「破産手続、再生手続又は更生手続」を必要とするに至った場合またはこれに準ずる状態になった場合(東証の有価証券上場規程601条1項7号等。本稿で「経営破綻」という)を理由とする上場廃止が平成20年、巷間いわれるように突如増加したことが確認できる(図表2参照)。
他の取引所における経営破綻による上場廃止銘柄数をみると、大証は全42廃止銘柄中5銘柄(重複上場分3銘柄を含む)、名証は14銘柄中1銘柄、ジャスダックは72銘柄中10銘柄がこれに該当するものとなっており(各銘柄の詳細について、図表3参照)、重複上場分を除いた平成20年中の上場廃止銘柄は合わせて29銘柄となる。
上場廃止時期別にみると、平成20年1月~6月が4銘柄、7月~12月が25銘柄となっており、金融危機の影響を如実に受けた恰好といえる。
29銘柄中、新興市場分は13銘柄(東証マザーズ1、大証ヘラクレス1、名証セントレックス1、ジャスダック10)である。
東証以外の市場で目立つ重複上場の廃止
それでは、東証以外の取引所において、経営破綻以外に何が上場廃止理由となるケースが多かったことになるか。大証・名証・ジャスダックでとりわけ目に留まるのが、「上場廃止申請が行われたため」とする上場廃止である。
上場廃止申請といっても、証券取引所への上場を完全に取り止めるわけではなく、東証におけるほとんどの外国会社の例を除き、(1)現状重複して上場している市場がある場合に、ある市場への上場を廃止する、(2)過去3か月程度以内に他の市場への上場を果たし、従前上場していた市場への上場を廃止するといった2通りのケースがある。
図表3では、上記(1)・(2)のケースが判別できるように掲げているが、このような上場廃止申請事例は、大証で15銘柄(市場第一部9、市場第二部3、ヘラクレス3)、名証で7銘柄(市場第一部6、セントレックス1)、福証・札証で各1銘柄、ジャスダックで20銘柄に及ぶ。
名証では全上場廃止銘柄の半数が重複上場廃止ということとなり、また、ジャスダックにおいては20銘柄中16銘柄が東証市場第二部への上場に伴うものである。
「虚偽記載」「監査意見不表明」等で8銘柄が上場廃止 経営破綻や重複上場廃止の多さからかえって目立たなくなっているのが、「虚偽記載」等を始めとする、いわば不祥事的な事例である。
平成20年において格別の増加があったようには捉えられないが(図表2参照)、「虚偽記載」を主な理由とするものとしてセタ(証券コード:4670、上場廃止日:1月1日。以下同様)、アスキーソリューションズ(3801、5月23日)、平和奥田(1790、8月15日)の3銘柄が、「監査意見不表明」としてアジア・メディア・カンパニー・リミテッド(2149、9月20日)、カウボーイ(9971、11月1日)、タスコシステム(2709、12月15日)の3銘柄が、「有価証券報告書の提出遅延」としてYOZAN(6830、9月1日)が、「公益・投資者保護」としてオーベン(4797、4月19日)がある。
オーベンは、同社を当事者とする株式交換を巡り虚偽の公表を行うなどした結果、旧証券取引法違反(偽計)により刑事事件となった事例。大阪地裁(細井正弘裁判長)は平成20年10月17日、元社長らに有罪判決を言い渡した。
なお、上記8銘柄中、新興市場分は7銘柄であり、極めて高い比率となっている。

全国6証券取引所における平成20年中の上場廃止銘柄一覧
東京証券取引所など全国の6証券取引所は1月13日、株式市場の状況を踏まえ昨年10月から12月まで一時的に適用を停止していた上場廃止基準や市場指定替え基準等のうち時価総額に係る基準について、本年中は緩和した基準での審査を実施することとし、適用を再開すると発表した(本誌291号42頁参照)。世界的な金融危機を受けて株価が急落する企業が相次ぐなか、この基準に抵触して上場廃止とならざるを得ない企業も増加しているためだ。今回のニュース特集では、「上場企業の倒産は戦後最多」といわれた平成20年中の全国証券取引所における上場廃止の状況を、全上場廃止銘柄につき、その上場廃止理由とともに振り返る。
経営破綻事例に加え、重複上場の廃止事例も増加か 本誌編集部の調査によると、「平成20年中に上場廃止日を迎えた銘柄」の数は、図表1に掲げたとおりとなっている。


他の取引所における経営破綻による上場廃止銘柄数をみると、大証は全42廃止銘柄中5銘柄(重複上場分3銘柄を含む)、名証は14銘柄中1銘柄、ジャスダックは72銘柄中10銘柄がこれに該当するものとなっており(各銘柄の詳細について、図表3参照)、重複上場分を除いた平成20年中の上場廃止銘柄は合わせて29銘柄となる。
上場廃止時期別にみると、平成20年1月~6月が4銘柄、7月~12月が25銘柄となっており、金融危機の影響を如実に受けた恰好といえる。
29銘柄中、新興市場分は13銘柄(東証マザーズ1、大証ヘラクレス1、名証セントレックス1、ジャスダック10)である。
東証以外の市場で目立つ重複上場の廃止
それでは、東証以外の取引所において、経営破綻以外に何が上場廃止理由となるケースが多かったことになるか。大証・名証・ジャスダックでとりわけ目に留まるのが、「上場廃止申請が行われたため」とする上場廃止である。
上場廃止申請といっても、証券取引所への上場を完全に取り止めるわけではなく、東証におけるほとんどの外国会社の例を除き、(1)現状重複して上場している市場がある場合に、ある市場への上場を廃止する、(2)過去3か月程度以内に他の市場への上場を果たし、従前上場していた市場への上場を廃止するといった2通りのケースがある。
図表3では、上記(1)・(2)のケースが判別できるように掲げているが、このような上場廃止申請事例は、大証で15銘柄(市場第一部9、市場第二部3、ヘラクレス3)、名証で7銘柄(市場第一部6、セントレックス1)、福証・札証で各1銘柄、ジャスダックで20銘柄に及ぶ。
名証では全上場廃止銘柄の半数が重複上場廃止ということとなり、また、ジャスダックにおいては20銘柄中16銘柄が東証市場第二部への上場に伴うものである。
「虚偽記載」「監査意見不表明」等で8銘柄が上場廃止 経営破綻や重複上場廃止の多さからかえって目立たなくなっているのが、「虚偽記載」等を始めとする、いわば不祥事的な事例である。
平成20年において格別の増加があったようには捉えられないが(図表2参照)、「虚偽記載」を主な理由とするものとしてセタ(証券コード:4670、上場廃止日:1月1日。以下同様)、アスキーソリューションズ(3801、5月23日)、平和奥田(1790、8月15日)の3銘柄が、「監査意見不表明」としてアジア・メディア・カンパニー・リミテッド(2149、9月20日)、カウボーイ(9971、11月1日)、タスコシステム(2709、12月15日)の3銘柄が、「有価証券報告書の提出遅延」としてYOZAN(6830、9月1日)が、「公益・投資者保護」としてオーベン(4797、4月19日)がある。
オーベンは、同社を当事者とする株式交換を巡り虚偽の公表を行うなどした結果、旧証券取引法違反(偽計)により刑事事件となった事例。大阪地裁(細井正弘裁判長)は平成20年10月17日、元社長らに有罪判決を言い渡した。
なお、上記8銘柄中、新興市場分は7銘柄であり、極めて高い比率となっている。




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