解説記事2009年02月23日 【会計基準等解説】 セグメント情報等会計基準の公表に伴う四半期財務諸表に関する会計基準等の見直しについて(2009年2月23日号・№296)
実務解説
セグメント情報等会計基準の公表に伴う四半期財務諸表に関する会計基準等の見直しについて
企業会計基準委員会専門研究員 二宮正裕
Ⅰ はじめに
平成20年3月の企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(以下「セグメント情報等会計基準」という。)の公表の後、企業会計基準委員会(ASBJ)は、四半期財務諸表におけるセグメント情報に関する開示について、平成19年3月に公表した企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「平成19年会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「平成19年適用指針」という。また平成19年会計基準と平成19年適用指針を合わせて、以下「平成19年会計基準等」という。)を改正するための審議を行ってきた。ASBJは、平成20年7月に公表した公開草案に対して寄せられたコメントの検討を行い、公開草案を一部修正した上で、改正企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「平成20年改正会計基準」という。)及び改正企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「平成20年改正適用指針」という。また平成20年改正会計基準と平成20年改正適用指針を合わせて、以下「平成20年改正会計基準等」という。)を平成20年12月26日に公表している(脚注1)。
以下では、今回の改正の概要を紹介するが、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。
Ⅱ 公表の経緯
平成22年4月1日以後開始する事業年度から適用となるセグメント情報等会計基準では、国際的な会計基準で採用されているマネジメント・アプローチに基づくセグメント情報及びその関連情報、固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報並びにのれんに関する報告セグメント別情報を年度の連結財務諸表又は個別財務諸表に開示することとされた(セグメント情報等会計基準第1項及び第3項)。一方で、平成19年会計基準等に定められている四半期財務諸表のセグメント情報の開示の取扱いは、従来の年度のセグメント情報の開示を前提としていた。このため、ASBJは、セグメント情報等会計基準適用後の四半期財務諸表のセグメント情報に関する開示について検討し、平成20年改正会計基準等を公表している。
Ⅲ セグメント情報等に関する事項
1.四半期財務諸表に開示すべき事項 平成20年改正会計基準では、四半期財務諸表には図表1のセグメント情報等に関する事項を開示するものとされている(平成20年改正会計基準第19項(7)及び第25項(5-2))。
ASBJは、四半期財務諸表の開示における適時性への要請から、財務諸表利用者にとって特に有用と考えられるセグメント情報等に関する事項について開示を求めることが適当であると考え、国際的な会計基準の取扱いも参考に、情報の有用性と事務負担を比較衡量して四半期財務諸表に開示すべき事項の検討を行った。例えば、審議の過程では、セグメント情報の関連情報(セグメント情報等会計基準第29項)についても、重要な事象の発生によって当該情報の金額に著しい変動があった場合に、その概要の開示を求めるか否かが検討されたが、こうした開示については、国際的な会計基準において四半期での開示が求められていないことや適時性に係るより強い制約を考慮し、開示を求めないこととされた(平成20年改正会計基準第58-2項なお書き)。
セグメント情報等会計基準に定められている年度の財務諸表のセグメント情報等の開示と、今回、平成20年改正会計基準に定められたセグメント情報等に関する事項の内容を比較すると、次頁の図表2のようになると考えられる。
2.公開草案からの主な修正事項(四半期財務諸表に開示すべき事項の(5)及び(6)) 報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法の重要な変更を第2四半期以降に行うことは稀であると考えられ、公開草案では、第2四半期以降にこれらの変更があった場合に開示すべき事項については特に定めていなかった。しかし、公開草案に対して寄せられたコメントも踏まえ、ASBJは、第2四半期以降にこれらの変更があった場合に、セグメント情報等に関する事項の比較可能性を保つための開示の取扱いを明確にすることが適当と判断した。
このため、最終的に公表された平成20年改正会計基準では、セグメント情報等について四半期財務諸表に開示すべき事項として、図表1の(5)及び(6)の事項が公開草案の内容に追加されている。追加された事項は、第2四半期以降で自発的に重要な会計処理の原則及び手続を変更した場合に開示すべき事項を踏まえた内容となっている。
これらの事項を開示することで、第2四半期以降に報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法の重要な変更があった場合に、当年度及び翌年度の四半期会計期間において、財務情報の比較可能性を確保するために必要な情報が開示されるものと考えられる。
3.報告セグメントの変更及び事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法の重要な変更 報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法に重要な変更があった場合に記載すべき内容(図表1(4))について、平成20年改正適用指針では、年度に準じた記載方法により、次頁図表3の内容を記載することとしている(平成20年改正適用指針第40項)。
なお、年度の取扱いを踏まえ、セグメント情報を変更後の区分方法により作り直した情報の記載が求められるのは、企業の管理手法が変更されたことにより報告セグメントの区分方法を変更する場合(図表3(1)②の場合)のみであるが、企業は、それ以外の場合(図表3(1)①及び(2)の場合)においても、セグメント情報に与えている影響額そのものの記載に代えて、前年度の対応する期首からの累計期間に係るセグメント情報を変更後の報告セグメントの区分及び事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法により作成したものを記載することも考えられるとされている(平成20年改正適用指針第106項なお書き)。
Ⅳ 適用時期
平成20年改正会計基準等は、平成22年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から適用することとされている(平成20年改正会計基準第28-2項)。適用初年度には、セグメント情報等に関する事項の前年度の対応する四半期会計期間及び期首からの累計期間に関する開示について記載することを要さず、また、前掲図表1(2)、(4)及び(6)の開示についても記載することを要しない(平成20年改正会計基準第28-3項)。
なお、適用初年度の第1四半期会計期間においては、セグメント情報等に関する事項について、次の事項を記載しなければならないとされている(平成20年改正会計基準第28-4項)。
① 報告セグメントの決定方法
② 各報告セグメントに属する製品及びサービスの種類
Ⅴ おわりに
今回の平成20年改正会計基準等が公表されたことにより、会計基準の国際的なコンバージェンスの観点から進められてきた我が国のセグメント情報の開示についての見直し及び会計基準の整備についての検討は、一区切りしたものと考えられる。(にのみや・まさひろ)
脚注
1 ASBJのホームページ(http://www.asb.or.jp/html/documents/docs/shihanki2/)を参照。
セグメント情報等会計基準の公表に伴う四半期財務諸表に関する会計基準等の見直しについて
企業会計基準委員会専門研究員 二宮正裕
Ⅰ はじめに
平成20年3月の企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(以下「セグメント情報等会計基準」という。)の公表の後、企業会計基準委員会(ASBJ)は、四半期財務諸表におけるセグメント情報に関する開示について、平成19年3月に公表した企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「平成19年会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「平成19年適用指針」という。また平成19年会計基準と平成19年適用指針を合わせて、以下「平成19年会計基準等」という。)を改正するための審議を行ってきた。ASBJは、平成20年7月に公表した公開草案に対して寄せられたコメントの検討を行い、公開草案を一部修正した上で、改正企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「平成20年改正会計基準」という。)及び改正企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「平成20年改正適用指針」という。また平成20年改正会計基準と平成20年改正適用指針を合わせて、以下「平成20年改正会計基準等」という。)を平成20年12月26日に公表している(脚注1)。
以下では、今回の改正の概要を紹介するが、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。
Ⅱ 公表の経緯
平成22年4月1日以後開始する事業年度から適用となるセグメント情報等会計基準では、国際的な会計基準で採用されているマネジメント・アプローチに基づくセグメント情報及びその関連情報、固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報並びにのれんに関する報告セグメント別情報を年度の連結財務諸表又は個別財務諸表に開示することとされた(セグメント情報等会計基準第1項及び第3項)。一方で、平成19年会計基準等に定められている四半期財務諸表のセグメント情報の開示の取扱いは、従来の年度のセグメント情報の開示を前提としていた。このため、ASBJは、セグメント情報等会計基準適用後の四半期財務諸表のセグメント情報に関する開示について検討し、平成20年改正会計基準等を公表している。
Ⅲ セグメント情報等に関する事項
1.四半期財務諸表に開示すべき事項 平成20年改正会計基準では、四半期財務諸表には図表1のセグメント情報等に関する事項を開示するものとされている(平成20年改正会計基準第19項(7)及び第25項(5-2))。

ASBJは、四半期財務諸表の開示における適時性への要請から、財務諸表利用者にとって特に有用と考えられるセグメント情報等に関する事項について開示を求めることが適当であると考え、国際的な会計基準の取扱いも参考に、情報の有用性と事務負担を比較衡量して四半期財務諸表に開示すべき事項の検討を行った。例えば、審議の過程では、セグメント情報の関連情報(セグメント情報等会計基準第29項)についても、重要な事象の発生によって当該情報の金額に著しい変動があった場合に、その概要の開示を求めるか否かが検討されたが、こうした開示については、国際的な会計基準において四半期での開示が求められていないことや適時性に係るより強い制約を考慮し、開示を求めないこととされた(平成20年改正会計基準第58-2項なお書き)。
セグメント情報等会計基準に定められている年度の財務諸表のセグメント情報等の開示と、今回、平成20年改正会計基準に定められたセグメント情報等に関する事項の内容を比較すると、次頁の図表2のようになると考えられる。

2.公開草案からの主な修正事項(四半期財務諸表に開示すべき事項の(5)及び(6)) 報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法の重要な変更を第2四半期以降に行うことは稀であると考えられ、公開草案では、第2四半期以降にこれらの変更があった場合に開示すべき事項については特に定めていなかった。しかし、公開草案に対して寄せられたコメントも踏まえ、ASBJは、第2四半期以降にこれらの変更があった場合に、セグメント情報等に関する事項の比較可能性を保つための開示の取扱いを明確にすることが適当と判断した。
このため、最終的に公表された平成20年改正会計基準では、セグメント情報等について四半期財務諸表に開示すべき事項として、図表1の(5)及び(6)の事項が公開草案の内容に追加されている。追加された事項は、第2四半期以降で自発的に重要な会計処理の原則及び手続を変更した場合に開示すべき事項を踏まえた内容となっている。
これらの事項を開示することで、第2四半期以降に報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法の重要な変更があった場合に、当年度及び翌年度の四半期会計期間において、財務情報の比較可能性を確保するために必要な情報が開示されるものと考えられる。
3.報告セグメントの変更及び事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法の重要な変更 報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法に重要な変更があった場合に記載すべき内容(図表1(4))について、平成20年改正適用指針では、年度に準じた記載方法により、次頁図表3の内容を記載することとしている(平成20年改正適用指針第40項)。

Ⅳ 適用時期
平成20年改正会計基準等は、平成22年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から適用することとされている(平成20年改正会計基準第28-2項)。適用初年度には、セグメント情報等に関する事項の前年度の対応する四半期会計期間及び期首からの累計期間に関する開示について記載することを要さず、また、前掲図表1(2)、(4)及び(6)の開示についても記載することを要しない(平成20年改正会計基準第28-3項)。
なお、適用初年度の第1四半期会計期間においては、セグメント情報等に関する事項について、次の事項を記載しなければならないとされている(平成20年改正会計基準第28-4項)。
① 報告セグメントの決定方法
② 各報告セグメントに属する製品及びサービスの種類
Ⅴ おわりに
今回の平成20年改正会計基準等が公表されたことにより、会計基準の国際的なコンバージェンスの観点から進められてきた我が国のセグメント情報の開示についての見直し及び会計基準の整備についての検討は、一区切りしたものと考えられる。(にのみや・まさひろ)
脚注
1 ASBJのホームページ(http://www.asb.or.jp/html/documents/docs/shihanki2/)を参照。
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