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解説記事2009年04月06日 【会社法関連解説】 「会社法施行規則、会社計算規則等の一部を改正する省令」(平成21年法務省令第7号)の解説(上)(2009年4月6日号・№301)

解説
「会社法施行規則、会社計算規則等の一部を改正する省令」(平成21年法務省令第7号)の解説(上)

 法務省民事局付検事 大野晃宏
 法務省民事局付 小松岳志
 法務省民事局付検事 澁谷 亮
 法務省民事局付 黒田 裕
 法務省民事局調査員 和久友子

Ⅰ はじめに

 平成21年3月27日に公布された「会社法施行規則、会社計算規則等の一部を改正する省令」(平成21年法務省令第7号。以下「改正省令」という)は、国際的な会計基準とのコンバージェンスの必要から、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という)によって、企業結合に関する会計基準等(以下「企業結合会計基準等」という)(脚注1)が公表されたことおよび近時の関係法令の改正等に伴って、会社法(平成17年法律第86号。以下「会社法」という)の委任に基づく会社計算規則(平成18年法務省令第13号。以下、改正省令による改正後のものを「新計算規則」といい、改正前のものを「旧計算規則」という)の改正を行うとともに、同法の委任に基づく会社法施行規則(平成18年法務省令第12号。以下、改正省令による改正後のものを「新施行規則」といい、改正前のものを「旧施行規則」という)についても、関係各方面からの様々な見直しの要望に鑑み、その一部を改正することを内容とするものである(脚注2)。
 改正省令の施行日は、平成21年4月1日(以下「施行日」という)である。
 本稿は、改正省令のうち、実質的な内容にわたる改正部分についての解説を行うものである(経過措置についても必要に応じて各項目において触れる)。
 なお、改正省令の案については、平成21年1月29日から同年2月27日までの間、「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」として、パブリック・コメントに付されていた。この間に寄せられた意見の概要およびそれらの意見に対する法務省の考え方は、電子政府の総合窓口のホームページ(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public)において閲覧することができるので、適宜参照されたい。

Ⅱ 会社計算規則関係

1.企業結合会計基準等の公表に伴う改正
(1)改正の経緯
 平成20年12月26日にASBJによって公表された企業結合会計基準は、平成21年4月1日以後開始する事業年度において最初に実施される組織再編から早期適用が可能となり、平成22年4月1日以後の組織再編から強制適用が開始されるものとなっている。
 その改正内容のうち、会社計算規則に関わる主なものは、(a)いわゆる持分プーリング法の廃止および(b)負ののれんの負債計上の禁止(すなわち、一括利益計上の強制)であり、旧計算規則における組織再編に関する計算規定については、これらの事項に対応した改正を行う必要が生じていた。
 企業結合会計基準等は、平成18年4月1日にその適用が開始されたものであるが、その約2年半後に、国際的な会計基準へのコンバージェンスの必要性という理由から、前述のような基本的な部分の改正が行われることとなったものであり、さらに、現在においても、平成23年6月末のコンバージェンス達成の目標期日までに、企業結合会計基準等のさらなる改正を行うことが検討されているところである。
 このような状況を踏まえ、会社計算規則と公正な会計慣行とのあるべき役割分担について検討をした結果、組織再編等を行う場合に会計上当然に定まるべきものである(a)のれんの額、(b)株式または持分に係る特別勘定の額および(c)組織再編等によって変動する株主資本等(新計算規則2条3項30号参照)の総額に関しては、会社計算規則において、その算定に関する基本的な事項のみを規定することで足り、他方で、会社法独自の概念である資本金、準備金(資本準備金および利益準備金)および剰余金(その他資本剰余金およびその他利益剰余金)の計上に関しては、会社計算規則において、組織再編等によって変動する株主資本等の範囲内で、その内訳(脚注3)について、どのような計上の仕方が許されるのかを詳細に規定することが必要であるとの整理に至った。
 そこで、改正省令では、このような整理に従って、旧計算規則の条文構成を変更することとしている。もっとも、この改正は、旧計算規則における規律の実質を変更することを意図するものではもとよりなく、その実質を概ね維持しつつ、企業結合会計基準等の改正にも柔軟に対応することができるように、もっぱら条文構成の合理化を図るものであるといえる。
 この改正に伴い、旧計算規則の規定が多数削除されることとなったため、新計算規則では、各条文の条文番号を改めて付し直すこととしている。
(2)のれんおよび株式または持分に係る特別勘定に関する規定の改正
① のれんの計上(新計算規則11条)
 旧計算規則11条~29条において、のれんは、原則として次の3つの類型のいずれかに該当する場合に資産または負債として計上することが許されるものとして整理され、その額の計算について詳細な規定が置かれていた。
(a)組織再編または事業の譲受けについてパーチェス法が用いられる場合において、認識可能な受入資産・負債に付すべき価額と対価の時価との差額
(b)組織再編または事業の譲受けについて帳簿価額による処理が用いられる場合において、受入資産・負債の帳簿価額と株式または持分以外の対価の帳簿価額との差額
(c)組織再編または事業の譲受けによる受入資産・負債に(a)または(b)ののれんが含まれていた場合における当該のれん
 しかし、会社計算規則では、そもそも資産または負債一般については、その帳簿価額の計算の詳細は会計慣行に委ねることを前提にして、原則的な規定のみが置かれている(旧計算規則5条・6条、新計算規則5条・6条参照)ところであり、のれんについても他の資産や負債一般と同様に、会計慣行に従ってその額を計算することが可能であることに鑑みれば、旧計算規則のような詳細な計算規定は必ずしも必要がないということができる。
 したがって、本条においては、のれんに関して、「適正な額ののれんを資産又は負債として計上することができる。」旨のみを規定することにとどめ、ここでいう「適正な額」は、会計慣行に従い定められるべきことを明らかにすることとした。
 本条は、このような経緯から設けられたものであるので、のれんが原則として前述(a)~(c)に掲げられた場合に限って計上することができるものであるという点については、何らその実質を変更するものではない。
 前述のとおり、企業結合会計基準においては、国際的な会計基準とのコンバージェンスのために、負ののれんの負債計上が禁止されることとなる。その場合、企業結合会計基準に従う会社については、本条において負債として計上することができるのれんの「適正な額」は、常に零である(すなわち、負ののれんを負債として計上することができない)ものとして、本条は解釈されることとなる。
 一方で、新計算規則88条2項においては、特別利益に属する利益として、「負ののれん発生益」を追加している。企業結合会計基準によって、負ののれんの負債計上が禁止され、その発生時に一括して利益を計上しなければならない会社は、損益計算書等において、この「負ののれん発生益」を計上することとなる。
② 株式または持分に係る特別勘定の計上(新計算規則12条)  旧計算規則30条~35条の株式または持分に係る特別勘定に関する計算規定についても、前述①ののれんと同様に、規定を合理化し、本条において、「適正な額の特別勘定を負債として計上することができる。」旨のみを規定することにとどめている。
 その理由は、株式または持分に係る特別勘定は負債の一種であって、他の負債一般と同様に、会計慣行に従ってその額を計算することが可能であることに鑑みれば、詳細な計算規定は必ずしも必要がないということができるからである。
 前述①ののれんと同様に、負債として計上すべき株式または持分に係る特別勘定の「適正な額」は、会計慣行に従い定められるべきものである。
(3)株主資本等に係る規定の改正
① 募集株式を引き受ける者の募集を行う場合
 新計算規則14条1項は、旧計算規則37条の条文構造を改めて、(a)金銭出資に関する規律(新計算規則14条1項1号)と(b)現物出資に関する規律(新計算規則14条1項2号)とに明確に区分して規定することとしている(表1参照)。

(a)新計算規則14条1項1号  まず、本条1項1号柱書では、日本円による金銭出資の場合について、当該金銭の額面によって資本金等増加限度額を計算するという金銭出資に関する原則的な処理を定めている。
 次に、同号イでは、外国通貨による払込みの場合について、払込期日等の為替相場により算出された額によって資本金等増加限度額を計算するという外国通貨による金銭出資に関する原則的な処理を定めている。
 また、同号ロでは、金銭であっても引受人における払込み直前の帳簿価額によって受け入れるべき場合(このような場合が存在するか否かは会計慣行次第ではあるが、たとえば、共通支配下の取引として行われる外国通貨による出資がこれに当たり得る)には、引受人における払込み直前の帳簿価額によって、資本金等増加限度額を計算するという例外的な処理を定めている(旧計算規則37条1項1号イの「金銭」から除外されている「ハに規定する財産に該当する場合における当該金銭」に関する処理に相当する規定である)。
(b)新計算規則14条1項2号  まず、本条1項2号柱書においては、当該現物出資財産の給付期日等の価額(すなわち時価)によって資本金等増加限度額を計算する旨を定めている(企業結合会計基準等において当該現物出資にパーチェス法が適用されるべき場面または企業結合会計基準等の適用がない現物出資について時価評価がされるべき場面に関する規定である。以下、時価を用いて株主資本等を算定する方法を総称して「時価処理」という)。
 次に、同号イでは、出資を受ける会社と当該現物出資財産の給付をした者が共通支配下関係にある場合(企業結合会計基準等における共通支配下の取引に該当する場合)には給付者の給付直前の帳簿価額(簿価純資産額)によって、資本金等増加限度額を計算するという処理を定めている(以下、簿価純資産額を用いて株主資本等を算定する方法を総称して「簿価処理」という)。
 また、同号ロでは、同号イに掲げる場合以外の場合(企業結合会計基準等における共同支配企業の形成または逆取得に該当する場合)においても、同号イと同様に、簿価処理によって、資本金等増加限度額を計算するという処理を定めている。
② 新株予約権の行使があった場合(新計算規則17条)  前述①の新計算規則14条と同様に、新株予約権の行使があった場合における資本金等増加限度額に関する本条1項についても、同項2号を金銭出資の場合とし、同項3号を現物出資の場合として、両者を明確に区分して規定する条文構造を採用している。
③ 吸収合併における株主資本等の計算  新計算規則35条1項は、前述1(1)において述べた整理に従い、旧計算規則58条の条文構造を改めて、(a)吸収合併存続会社において吸収合併によって変動する株主資本等の総額(株主資本等変動額)に関する規律(新計算規則35条1項)と(b)株主資本等変動額の範囲内で計上することができる資本金、資本剰余金(株式会社においては資本準備金およびその他資本剰余金。新計算規則76条4項参照)および利益剰余金(株式会社においては利益準備金およびその他利益剰余金。同条5項参照)に関する規律(新計算規則35条2項)とに明確に区分して規定することとしている。
(a)新計算規則35条1項  本条1項は、存続会社において吸収合併直後の貸借対照表を作成して会計処理を開始するにあたって、会計上必ず計算されるべき株主資本等(新計算規則2条3項30号)の総額に関する基本的な規律を定めるものである(表2参照)。

 新計算規則2条3項30号において定義されている「株主資本等」とは、存続会社において吸収合併により変動する貸借対照表上の株主資本に係る項目(新計算規則76条2項)のうち(脚注4)、自己株式(同項5号)を除いた資本金、資本剰余金および利益剰余金の総体ならびに持分会社の社員資本に係る項目(同条3項)のうち資本金、資本剰余金および利益剰余金の総体を指す概念として整理されている。
 本条1項1号の「当該吸収合併が支配取得に該当する場合」とは、企業結合会計基準等における取得に該当する場合を意味するものである。
 「支配取得」については、新計算規則2条3項31号において、企業結合会計基準等における取得と同様の定義が置かれている。なお、同号においては、会社と他の会社が共通支配下にある場合における当該他の会社または当該他の会社の事業に対する支配を得ることは、支配取得に該当しないことが明らかにされている(同号かっこ書)。また、単に取得とはせずに、「支配取得」との定義語を用いている理由は、会社計算規則上は、取得請求権付株式の取得(新計算規則13条2項2号)等において既に取得という用語が用いられていることから、これと区別をするためである。
 本条1項1号かっこ書の「(吸収合併消滅会社による支配取得に該当する場合を除く。)」とは、企業結合会計基準等における逆取得に該当する場合を除くという意味である。
 本条1項1号の「吸収型再編対価時価又は吸収型再編対象財産の時価を基礎として算定する方法」とは、企業結合会計基準等におけるパーチェス法(時価処理)を意味するものである(企業結合会計基準第17項)。
 パーチェス法においては、対価として交付された株式または持分の時価によって株主資本等変動額を算定することとなる(企業結合会計基準第24項、適用指針第79項)が、対価に自己株式が含まれる場合には、その帳簿価額は株主資本等変動額の算定にあたって控除されることとなる(企業結合会計基準第80項)。
 このような処理は、会計上、株主資本等変動額を算定するために当然に必要となるものであるので、新計算規則35条1項においては特に規定をしていない(つまり、「基礎として算定する方法」とは、このような会計上必要となる様々な調整を含むものとして解釈されるべきものである)。
 本条1項2号の「共通支配下関係にある場合」とは、企業結合会計基準等における共通支配下の取引に該当する場合を意味するものである。
 「共通支配下関係」については、新計算規則2条3項32号(旧計算規則2条3項31号)において、企業結合会計基準等における共通支配下と同様の定義が改正省令による改正前より置かれている。
 本条1項2号の「吸収型再編対象財産の吸収合併の直前の帳簿価額を基礎として算定する方法」とは、企業結合会計基準等において定められている吸収合併によって受け入れる財産の消滅会社における吸収合併直前の簿価純資産額を基礎として用いた算定方法、すなわち、簿価処理を意味する(企業結合会計基準第42項)。
 また、同号かっこ書の「前号に規定する方法によるべき部分にあっては、当該方法」とは、旧計算規則58条2項3号で規定していた最上位の親会社と子会社との間の吸収合併において、子会社が消滅会社となる場合における少数株主に交付する存続会社の株式に係る処理の規律に相当するものである。
 本条1項3号の「前二号に掲げる場合以外の場合」には、企業結合会計基準等における共同支配企業の形成と逆取得が該当する。
(b)新計算規則35条2項  本条2項は、本条1項の「株主資本等変動額」の範囲内での株主資本等の内訳の変動額を定めるものである。
 本条2項本文は、株主資本等変動額の範囲内で、吸収合併契約の定めに従い資本金および資本剰余金のみを増加することとし、利益剰余金を変動させることはできないという原則的な処理を規定している(適用指針第210項(2)、第84項)。
 同項ただし書は、株主資本等変動額が零未満という例外的な場合について、当該零未満の額のうち、自己株式の処分により生じる差損に起因する部分については、その他資本剰余金を減少させ、その余の部分(消滅会社が簿価債務超過であることに起因する部分がこれに相当する)については、その他利益剰余金を減少させるという処理を規定している。
(c)新計算規則36条  本条は、存続会社において吸収合併によって変動する株主資本等を消滅会社の吸収合併直前の株主資本等を引き継ぐものとして計算することが適切である場合に関する規定である(旧計算規則59条に相当するものである)(表3参照)。

 本条1項は、そのうち、「吸収型再編対価の全部が吸収合併存続会社の株式又は持分である場合」についての規定である(旧計算規則59条2項2号イに相当するものである)。
 前述のとおり、国際的な会計基準とのコンバージェンスにより、企業結合会計基準においては、持分の結合の場合における持分プーリング法が廃止される。持分プーリング法が廃止された後の企業結合会計基準に従う会社については、持分プーリング法に準じた処理が依然として許容される共通支配下の取引、共同支配企業の形成または逆取得の場合を除き、本条の規定する「株主資本等を引き継ぐものとして計算することが適切である」に当たる場合はないということとなる。
 本条1項本文は、同項の適用がある場合には、消滅会社の資本金、準備金および剰余金をそれぞれ存続会社の資本金、準備金および剰余金の変動額とするという原則的な処理を規定している。同項ただし書は、「対価自己株式又は先行取得分株式等がある場合」についての特別な処理を規定している。
 このうち、「対価自己株式……がある場合」とは、吸収型再編対価に存続会社の自己株式が含まれている場合(「対価自己株式」の定義については、新計算規則2条3項38号参照)を意味する。
 「先行取得分株式等がある場合」とは、吸収合併によって消滅する株式がある場合、すなわち、存続会社が吸収合併に先行して取得している消滅会社の株式(いわゆる抱合せ株式)と消滅会社の自己株式が存在する場合(「先行取得分株式等」の定義については、同項39号参照)を意味する。
 これらのいずれの場合においても、存続会社において、株主資本等以外の項目が変動する(対価自己株式がある場合には、存続会社における自己株式の帳簿価額が減少する。また、先行取得分株式等がある場合には、存続会社が有していた資産の帳簿価額または消滅会社から受け入れる資産の帳簿価額が減少する)ことから、消滅会社から引き継ぐ株主資本等について調整を行う必要が生じる。
 そこで、本条1項ただし書では、このような場合には、「当該対価自己株式又は当該先行取得分株式等の帳簿価額を吸収合併の直前の吸収合併消滅会社のその他資本剰余金の額から減じて得た額を吸収合併存続会社のその他資本剰余金の変動額とする」旨を規定している(旧計算規則59条1項3号ハ・ニに相当するものである)。
 なお、新計算規則35条は、対価自己株式および先行取得分株式等に関する明示的な規定を置いていないが、これは、同条においては株主資本等変動額の計算過程において、会計上当然に対価自己株式および先行取得分株式等に関する調整が行われるからである(適用指針第80項、第84-2項、第84-3項等)。
 本条2項は、存続会社において吸収合併によって変動する株主資本等を消滅会社の吸収合併直前の株主資本等を引き継ぐものとして計算することが適切である場合のうち、無対価での吸収合併に関する規定である(旧計算規則59条2項2号ロに相当するものである)。
 適用指針では、本条2項を適用して「株主資本等を引き継ぐものとして計算することが適切である場合」と認められるのは、完全親会社に支配されている場合に限定されている(適用指針第203-2項)。
 本条2項ただし書は、本条1項ただし書と同様の趣旨の規定であるが、無対価の吸収合併においては対価自己株式が存在することはないから、先行取得分株式等の帳簿価額についての調整規定のみを置いている。
④ 吸収分割における株主資本等の計算
(a)新計算規則37条
 本条は、吸収分割における株主資本等の計算について、吸収合併に関する新計算規則35条と概ね同様の規定を置くものである(表4参照)。

 本条が新計算規則35条と異なる点は、本条1項2号において、同項1号の支配取得に該当する場合以外であっても、同項1号に定める時価を基礎とした算定方法(パーチェス法)によるべき場合があり得ることを想定した規定を置いている点である。共通支配下関係にある会社間の取引であっても、企業結合会計基準等における「事業」に該当しない財産が吸収分割の対象となるような場合がこれに該当する。
(b)新計算規則38条  本条は、株主資本等を引き継ぐ場合の吸収分割に関する計算について、株主資本等を引き継ぐ場合の吸収合併に関する新計算規則36条と概ね同様の規定を置くものである(表5参照)。
 本条が新計算規則36条と異なる点は、吸収分割においては、先行取得分株式等が消滅しないことから、その帳簿価額を引き継がれるその他資本剰余金から控除する規定がない点である。
 なお、対価自己株式については、本条1項において、新計算規則36条と同様に、その帳簿価額を引き継がれるその他資本剰余金から控除する規定が置かれている(本条2項は、無対価の吸収分割に関する規定であるので、対価自己株式に関する調整規定が置かれていないことは、新計算規則36条2項と同様である)。
 本条3項は、旧計算規則64条5項と同様の確認規定である。
⑤ 株式交換(新計算規則39条)  本条は、株式交換における株主資本等の計算について、吸収合併に関する新計算規則35条と概ね同様の規定を置くものである(表6参照)。

 本条が新計算規則35条と異なる点は、本条2項ただし書である。
 本条2項ただし書は、旧計算規則68条1項2号ロに現れている規律の一部に実質的な変更を加えるものである。
 すなわち、旧計算規則68条1項2号ロでは、会社法799条の債権者異議申述手続をとっている場合以外の場合には、対価として処分される自己株式の帳簿価額を控除した後の概念である株主払込資本変動額(旧計算規則68条1項1号ロ)に株式発行割合を乗じて得た額以上の額を資本金または資本準備金として計上することが義務付けられていた。
 この旧計算規則68条1項2号ロにおいては、自己株式の帳簿価額を控除した後の概念である株主払込資本変動額を新株発行による株主資本等の変動部分と自己株式処分による株主資本等の変動部分とに分けていたが、本条2項ただし書では、この点を改め、株主払込資本変動額と同様に自己株式の帳簿価額を控除した後の概念である株主資本等変動額にその自己株式の帳簿価額を足し戻したうえで株式発行割合を乗じることにより、資本金または資本準備金として計上することが義務付けられる額を算定することとしている(なお、この義務付けられる額を超えて株主資本等変動額に至るまでの範囲内で資本金または資本準備金を計上することは差し支えない)。
 ただし、株主資本等変動額にその自己株式の帳簿価額を足し戻したうえで株式発行割合を乗じて得た額が株主資本等変動額を上回る場合には、株主資本等変動額を超えて資本金または資本準備金を増加させたうえで、その他資本剰余金を減少させることは相当ではないことから、株主資本等変動額に至るまで資本金または資本準備金を計上することとしている。
 本条3項は、株主資本等変動額が零未満の場合について、吸収合併に関する新計算規則35条2項ただし書と同様に、当該零未満の額のうち、自己株式の処分により生じる差損に起因する部分については、その他資本剰余金を減少させ、その余の部分(株式交換完全子会社が簿価債務超過であることに起因する部分がこれに相当する)については、その他利益剰余金を減少させるという処理を規定している。
⑥ 設立時の株主資本および社員資本
(a)新計算規則43条
 本条は、株式会社の設立時の株主資本の計算について、株式会社の募集株式を引き受ける者の募集を行う場合に関する新計算規則14条と同様に、(i)金銭出資に関する規律と(ii)現物出資に関する規律とに明確に区分することにより、条文構造の合理化を図るものである(表7参照)。

(b)新計算規則44条  本条は、持分会社の設立時の社員資本の計算について、新計算規則43条の規定の条文構造を参考としつつ、(i)時価を付すべき場合(本条1項1号柱書)、(ii)共通支配下の取引に該当する場合(同号イ)、(iii)それ以外の場合(同号ロ)に区分することにより、条文構造の合理化を図っている(表8参照)。
⑦ 新設合併  新設合併についても、株主資本等の計算に関する他の規定と同様に、条文構造の合理化を図っている。
 もっとも、新設合併は、当事会社のすべてが消滅会社となることから、それぞれの消滅会社に由来する部分について、設立会社における株主資本の計算を規定しなければならない。
 このため、新設合併の規定については、その合理化に一定の限界があり、旧計算規則76条~79条の構造を維持したうえで、各条文において、可能な限り株主資本等の計算に関する他の規定と同様の条文構造の合理化を行うこととしている(表9参照)。

(a)新計算規則45条  本条は、新設合併が支配取得に該当する場合の株主資本等の計算について定めるものである。
 新設合併が支配取得に該当する場合には、被取得会社に対応する部分については、パーチェス法(時価処理)が適用されるが、取得会社に対応する部分については、(i)簿価処理(吸収合併に関する新計算規則35条1項2号参照)または(ii)取得会社の株主資本等の構成を引き継ぐ処理(吸収合併に関する新計算規則36条参照)が適用される。
 本条では、条文構造上、取得会社に対応する部分について、(i)簿価処理を行う場合を本条1項(同項は吸収合併に関する新計算規則35条1項に相当するものである)および2項(同項は吸収合併に関する新計算規則35条2項に相当するものである)において規定し、(ii)取得会社の株主資本等の構成を引き継ぐ処理を行う場合を本条3項において他の条項を準用する形で規定している。
(b)新計算規則46条  本条は、新設合併が共通支配下の取引に該当する場合の株主資本等の計算について定めるものである。
 新設合併が共通支配下の取引に該当する場合には、次の3つの株主資本等の計算の方法がある。
(i)すべての消滅会社について簿価処理をする方法
(ii)株主資本承継消滅会社に対応する部分について株主資本等の構成を引き継ぐ処理をし、非株主資本承継消滅会社に対応する部分について簿価処理をする方法
(iii)すべての消滅会社について株主資本等の構成を引き継ぐ処理をする方法
 本条は、このうち(i)および(ii)の方法について規定している。
 本条1項は、(i)および(ii)の方法の両方に共通するものとして、設立会社の設立時の株主資本等の総額について規定している。
 本条2項は、株主資本承継消滅会社(新計算規則2条3項46号)と非株主資本承継消滅会社(同項49号)に分類して、株主資本等の内訳に関する規律を他の条文を準用する形で規定している。
 前述(i)の方法は、すべての消滅会社が非株主資本承継消滅会社である場合において適用される方法であるから、本条2項2号により新計算規則45条2項を準用することにより、原則として、簿価純資産の範囲内で適宜資本金、資本準備金およびその他資本剰余金を計上することとなる。
 前述(ii)の方法は、株主資本承継消滅会社と非株主資本承継消滅会社の両方が存在する場合において適用される方法であるから、株主資本承継消滅会社については本条2項1号により新計算規則47条1項を準用することにより、その株主資本等の構成を引き継ぐこととし、非株主資本承継消滅会社については本条2項2号により新計算規則45条2項を準用することとしている。
(c)新計算規則47条  本条は、前述(b)における(iii)の新設合併が共通支配下の取引に該当する場合の株主資本等を引き継ぐ処理について規定している。
 本条1項は、吸収合併に関する新計算規則36条1項と概ね同様の規定となっている。
 本条2項は、株主資本等を引き継ぐ処理が適用される場合に、消滅会社のうち合併対価の交付をその株主に対して行わない非対価交付消滅会社(新計算規則2条3項47号)があるときにおける処理について、無対価の吸収合併に関する新計算規則36条2項における考え方と同様に、対価が存しない部分については、資本金および資本準備金として計上することは許さず、非対価交付消滅会社の資本金および資本準備金はすべてその他資本剰余金として計上されているものとみなし、利益準備金はその他利益剰余金として計上されているものとみなして、本条1項の規定を適用することとしている。
(d)新計算規則48条  本条は、新設合併が支配取得および共通支配下の取引に該当しない場合(すなわち共同支配企業の形成に該当する場合)について、共通支配下の取引に関する新計算規則46条および47条を準用することを規定するものである。
⑧ 新設分割  新設分割についても、株主資本等の計算に関する他の規定と同様に、条文構造の合理化を行っている。
 もっとも、新設分割は、単独新設分割の場合について簿価処理を原則とする規定を置いたうえで、共同新設分割の場合については、単独新設分割の後に新設合併をするものと仮定して計算をする規定を置くことで足り、旧計算規則の条文構造もそのようなものとなっていたことから、旧計算規則80条~82条の構造を維持したうえで、各条文において、可能な限り株主資本等の計算に関する他の規定と同様の条文構造の合理化を行うこととしている(表10参照)。

(a)新計算規則49条  本条は、単独新設分割の場合における新設分割設立会社の株主資本等の計算について規定するものである。
 単独新設分割は、分割会社の100%子会社を設立するものであり、原則として共通支配下の取引に該当するものである。
 したがって、本条は、共通支配下関係における吸収分割に関する新計算規則37条1項3号と同様に、簿価処理を原則的方法として規定している。
 なお、例外的な処理として、同項2号と同様に、企業結合会計基準等における「事業」に該当しない財産が新設分割の対象となる場合に時価処理によるべきことがあり得ることを想定した規律を追加している。
(b)新計算規則50条  本条は、単独新設分割のうち、対価の全部が設立会社の株式または持分である場合における分割型新設分割について、株主資本等を引き継ぐ処理について規定している。
 本条1項は、新設分割においては対価自己株式が存在しない点を除き、吸収分割に関する新計算規則38条1項と概ね同様の規定であり、本条2項は、新計算規則38条3項と同様の規定である。
⑨ 株式移転(新計算規則52条)  株式移転についても、株主資本等の計算に関する他の規定と同様に、条文構造の合理化を行っている。
 旧計算規則83条は、「簿価評価完全子会社」「時価評価完全子会社」および「混合評価完全子会社」(旧計算規則2条3項64号~66号)という定義語を用いて規定をしていたが、株主資本等の計算に関する他の規定と同様に、「支配取得」「共通支配下関係」といった類型を用いることにより、条文構造を合理化している(表11参照)。


2.財務諸表等規則等の改正に伴う整備
(1)改正の経緯
 平成20年6月6日、同年8月7日、同年12月12日および平成21年3月24日にそれぞれ公布された内閣府令(平成20年内閣府令第36号、同第50号、同第80号および平成21年内閣府令第5号)による財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「財務諸表等規則」という)および連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表規則」といい、財務諸表等規則と総称して「財務諸表等規則等」という)の改正に対応するため、旧計算規則の関連規定を整備している。
 以下では、実質面にわたる主要な改正について述べる。
(2)少数株主損益調整前当期純損益の表示に係る改正(新計算規則93条・94条)
 平成20年12月26日に公表された連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)および平成21年3月24日に公布された「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成21年内閣府令第5号)による改正後の連結財務諸表規則65条2項において、連結損益計算書に少数株主損益調整前当期純損益の表示が義務付けられることとなったことに伴い、新計算規則93条1項3号を追加している。
 新計算規則93条は、損益項目の実質についてのみ規定し、損益項目の名称に関する規律を置いていないが、新計算規則93条1項3号の金額は、通常、少数株主損益調整前当期純利益または少数株主損益調整前当期純損失として表示されることとなる。
(3)注記表に係る改正(新計算規則98条等)
① 連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項に関する注記(新計算規則102条1項)および持分法損益等に関する注記(新計算規則111条)
 新計算規則102条1項1号ホの開示対象特別目的会社に関する開示の追加は、平成20年8月7日公布の「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成20年内閣府令第50号)による改正後の連結財務諸表規則13条2項4号に対応するものである。
 開示対象特別目的会社は、会社法施行規則4条に規定する特別目的会社で、同条の規定により当該特別目的会社に資産を譲渡した会社の子会社に該当しないものと推定されるものに限るとされているが、国際的にも、特別目的会社の連結に関する会計基準の改訂が検討されているといった状況を踏まえ、ASBJにより、当該推定規定を削除する方向で検討されている(企業会計基準委員会「連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等に関する論点の整理」(平成21年2月6日))。
 これらの状況に鑑み、会社計算規則においても、当該開示対象特別目的会社の概要等の注記を新たに義務付けることとしたものである。
 旧計算規則133条1項4号の「連結子会社の資産及び負債の評価に関する事項」の削除は、平成21年3月24日公布の平成21年内閣府令第5号による改正前の連結財務諸表規則13条1項5号の削除に対応するものである。
 この改正の趣旨は、平成20年12月26日公表の連結財務諸表に関する会計基準において、連結財務諸表の作成過程における子会社の資産および負債の評価方法として、部分時価評価法が廃止されて全面時価評価法のみによることとされたことに伴い、部分時価評価法と全面時価評価法のいずれを採用して連結計算書類を作成しているかを開示させるための事項であった「連結子会社の資産及び負債の評価に関する事項」の開示が不要となったため、削除することとしたものである。
 旧計算規則133条1項4号に相当する規定は、新計算規則102条1項にはないが、改正省令附則8条5項において、連結財務諸表に関する会計基準が強制的に適用されない平成22年4月1日前に開始する事業年度に係る連結計算書類における新計算規則102条1項の注記については、連結子会社の資産および負債の評価に関する事項を含むものとすることが規定されている(すなわち、連結財務諸表に関する会計基準を任意に早期適用する場合であっても、早期適用しない会社との比較の観点から、全面時価評価法を採用して連結計算書類を作成していることを明確化するために、連結子会社の資産および負債の評価に関する事項を開示する必要がある。改正省令附則8条5項)。
 新計算規則111条の持分法損益等の注記の創設は、同内閣府令による改正後の財務諸表等規則8条の9第2号に対応するものである。
 持分法損益等の注記は、連結計算書類の作成義務があるが重要な子会社が存在しないために連結計算書類を作成しない株式会社について、関連会社に対して持分法を適用した場合の損益等および開示対象特別目的会社がある場合のその概要等を開示させることに意味があることから、新計算規則98条2項3号において、会計監査人設置会社以外の株式会社(同項1号・2号)のみならず、「会計監査人設置会社であって、法第四百四十四条第三項に規定するもの以外の株式会社」(すなわち、連結計算書類作成義務がある大会社の有価証券報告書提出会社以外の会計監査人設置会社)についても、その作成を不要としている。
② 金融商品に関する注記(新計算規則109条)
 本条は、平成20年8月7日に公布された平成20年内閣府令第50号による改正後の財務諸表等規則における金融商品に関する注記の創設に対応するものである。
 金融商品に関する注記は、平成20年3月10日にASBJによって公表された金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)の改正において、金融取引を巡る環境が変化するなかで金融商品の時価等の情報に対するニーズが拡大していることを踏まえて導入されたものであり、注記の対象を有価証券およびデリバティブ取引から金融商品全般へ拡大すること等が行われた。
 会社計算規則においても、このような会計基準および財務諸表等規則の動向を踏まえて、金融商品に関する時価等に関する情報の開示の必要性について検討した結果、従来注記の対象としていなかった有価証券およびデリバティブ取引を含めた金融商品全般についての注記を創設することが必要であると考え、本条を追加することとしたものである。
 もっとも、会社計算規則は、有価証券報告書を提出する会社のみを対象としているものではない(新計算規則98条2項では、同項1号に規定する株式会社以外の株式会社について本条の注記を必要としている)ことから、各株式会社の実情に応じて必要な限度での開示を可能とするため、本条の注記事項は、財務諸表等規則の注記事項に比べて、概括的なものとなっている。
③ 賃貸等不動産に関する注記(新計算規則110条)
 本条は、平成21年3月24日に公布された平成21年内閣府令第5号による改正後の財務諸表等規則における賃貸等不動産に関する注記の創設に対応するものである。
 賃貸等不動産に関する注記は、平成20年11月28日にASBJによって公表された賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準(企業会計基準第20号)によって、導入されたものである。
 その理由は、金融商品の時価の注記対象を拡大したことを踏まえ、一定の不動産については、事実上、事業投資と考えられるものでも、その時価を開示することが投資情報として一定の意義があるという意見があること、さらに、国際財務報告基準が原価評価の場合に時価を注記することとしていることとのコンバージェンスを図る観点にあると説明されている(賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準第18項)。
 会社計算規則においても、このような会計基準および財務諸表等規則の動向を踏まえて、賃貸等不動産に関する時価等に関する情報の開示の必要性について検討した結果、金融商品に関する注記と同様に、賃貸等不動産に関する注記の創設が必要であると考え、本条を追加することとしたものである。
 もっとも、金融商品に関する注記と同様に、本条の注記事項は、財務諸表等規則の注記事項に比べて、概括的なものとなっている。
(4)計算関係書類に係る改正の経過措置  少数株主損益調整前当期純損益の表示に係る改正(新計算規則93条1項3号)については、平成22年4月1日前に開始する事業年度に係る計算関係書類については適用しないこととされているが、同日前に開始する事業年度に係る計算関係書類のうち、施行日以後に作成されるものについては、早期適用することを可能としている(改正省令附則8条1項)。
 金融商品に関する注記に係る改正(新計算規則2条3項58号、98条1項8号、109条)および賃貸等不動産に関する注記に係る改正(新計算規則2条3項59号、98条1項9号、110条)については、平成22年3月31日前に終了する事業年度に係る計算関係書類については適用しないこととされているが、同日前に終了する事業年度に係る計算関係書類のうち、施行日以後に作成されるものについては早期適用することを可能としている(改正省令附則8条3項)。
 連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項に関する注記のうち、開示対象特別目的会社に関する開示の追加に係る改正(新計算規則102条1項1号ホ)および持分法損益等に関する注記に係る改正(新計算規則98条1項10号、111条)については、平成20年4月1日前に開始する事業年度に係る計算関係書類については適用しないこととされている(改正省令附則8条4項)。

3.その他の改正事項
(1)満期保有目的の債券の定義
(新計算規則2条3項27号)
 満期保有目的の債券の定義(本条3項27号)について、平成20年12月12日公布の「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成20年内閣府令80号)による改正後の財務諸表等規則の満期保有目的の債券の定義と同様のものとする改正を行っている。
 この改正は、債券の取得後に満期保有目的への変更が許容されるものについても時価評価をすることができる場合に該当しない場合(会社計算規則5条6項2号かっこ書参照)があることの明確化を行ったものにすぎず、改正省令の施行前に作成された計算書類においても、当該債券の取得後に満期保有目的への変更が許容されるものについて前述の改正後の財務諸表等規則と同様の処理が可能であったことはいうまでもない。
(2)利益および利益準備金の資本組入れの許容(新計算規則25条・29条)
 新計算規則では、株式会社が資本金の額を増加する場合の原資を資本準備金およびその他資本剰余金に限定しないものとすること(新計算規則25条)、その他これに伴う形式的整備(新計算規則29条)を行っている。
(3)他の法令による組織変更によって株式会社となったものの剰余金の計算(新計算規則150条2項)
 旧計算規則178条3項は、株式会社および持分会社のみを想定した定義語である最終事業年度(旧計算規則2条3項1号)の末日後の組織変更についてのみ規定するものであり、会社法以外の法令による組織変更によって株式会社となったものが株式会社として最終事業年度を迎える前の剰余金の計算に関する規律が必ずしも明確ではなかったことから、新計算規則150条2項1号では、成立の日を当該株式会社が株式会社となった日と読み替えて同項を適用することにより、その場合の規律を明確化することとしている。
(おおの・あきひろ/こまつ・たけし/しぶたに・りょう/くろだ・ゆたか/わく・ともこ)


脚注
1 平成20年12月26日にASBJによって企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号。本文および脚注において「企業結合会計基準」という)とともに公表されたものは次のとおりである。
① 連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)
② 研究開発費等に係る会計基準(企業会計基準第23号)の改正
③ 事業分離等に関する会計基準(企業会計基準第7号)の改正
④ 持分法に関する会計基準(企業会計基準第16号)の改正
⑤ 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(企業会計基準適用指針第10号。本文および脚注において「適用指針」という)の改正
2 改正省令では、会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(平成18年法務省令第87号)附則5条についても形式的な整備を行っている。
3 株主資本等の内訳については、会計基準においても、株式会社については、資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金およびその他利益剰余金に区分することとされている(「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(企業会計基準第5号)第4項~第6項)が、資本金、準備金および剰余金の区分については、そもそも債権者と株主との利害調整の観点から会社法において設けられた概念であり、会計基準はこれを前提として、これらの区分に言及するものである。
4 吸収合併によって、存続会社の新株式申込証拠金(新計算規則76条2項2号)および自己株式申込証拠金額(同項6号)は変動しない。

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