解説記事2009年10月19日 【実務解説】 未曾有の景気悪化に対応する法人税実務 第7回 税コスト削減策(5)(2009年10月19日号・№326)
実務解説
未曾有の景気悪化に対応する法人税実務
第7回 税コスト削減策(5)
アクタスマネジメントサービス/アクタス税理士法人 加藤幸人
Ⅲ.税コスト削減策
4.所得の減少策(過去投資の精算)(承前)
(3)固定資産における所得の減少策 ① 固定資産の評価損計上による所得の減少
(イ)概 要
固定資産は、長期に渡って供されるものであり、利用に応じた損耗度合により価値減少を評価すべきものであるが、それを測ることは難しいため、原則的に減価償却という定められた方法により帳簿価額を減額していくことになる。
一方で、一定の事由が生じた場合には、評価損の計上が認められ、減価償却とは別に帳簿価額の減額をすることができるようになる。
(ロ)評価損の計上
固定資産につき、災害による著しい損傷等の図表1に掲げる事由が生じたことにより、その固定資産の評価換えを行い、損金経理によりその帳簿価額を減額した場合には、その事実が生じた日の期末における固定資産の価額までの金額を限度とし、評価損の計上が認められる。
(ハ)適用にあたっての注意点
固定資産についても、棚卸資産や有価証券の場合と同様に、評価損を計上する際には、損金経理することが要件となる。帳簿上、評価損を損金経理せずに、申告書で減算調整することは認められていないため、決算を確定させるまでに評価損を計上するか否かを検討するようにしなければならない。評価損の計上にあたっては、計上するに至った理由を示す根拠資料等を用意し、いつでも説明できるようにしておくことが重要である。
なお、過度の使用または修理の不十分による著しい損耗等による評価損の計上は認められない。
また、過年度償却不足額についても評価損の計上は認められないため注意しておく必要がある。
② 固定資産の除却による所得の減少
(イ)概 要
固定資産に対する所得の減少策として、除却も検討する必要がある。固定資産の除却とは、固定資産を解撤・破砕・廃棄等する行為である。これにより所得の減少を図るとともに、固定資産の維持・修繕等の管理コストの削減ができる。
(ロ)有姿除却について
除却は、原則的に実際に廃棄処分等することにより認められるものであるが、実際に廃棄処分等せずに、現状の姿のまま(有姿)であっても、使用廃止し、今後通常の方法による事業供用の可能性がないこと等の図表2に掲げる要件を満たすものについては除却処理することができる。
その際は、再使用の可能性がない点、使用中止に至った事情を、その固定資産の現況から説明できるように疎明資料を残しておく必要がある。使用中止に際しての稟議書や業者に対する通知書などは有用な資料となる。
(ハ)ソフトウェアの除却について
ソフトウェアについては、利用を停止し、記録媒体等の物理的廃棄があれば除却は明確であるが、利用を停止しただけで物理的な除却を行わない場合もある。そこで、自社利用ソフトウェアの対象業務廃止により、利用しなくなったことが明らかな場合等の図表3のような事由があるときは、除却処理を行うことができるとされている。
ソフトウェアについては、有形固定資産に比べ、利用廃止等を明らかにすることが難しいケースが多い。そこで、プログラムの削除画面を保存しておくことや、業務の都合上、バックアップ等で残しておく場合には、その理由を明らかにしておくこと、また、今後利用しなくなるに至った経緯を社内稟議で明らかにしておくこと等により、客観的に説明し得る資料を保存しておくことが重要となる。
(4)金銭債権における所得の減少策 ① 貸倒損失の計上
(イ)概 要
法人の有する金銭債権について、貸倒れとなる事実が発生した場合、その事実が発生した事業年度において貸倒損失として損金算入することが認められている。貸倒れが認められる事由は、「法律上の貸倒れ」「事実上の貸倒れ」「形式上の貸倒れ」の3つに区分され、貸倒発生事実ごとによる処理金額や損金算入時期が定められている(図表4参照)。
(ロ)法律上の貸倒れ
法律上の貸倒れでは、会社更生法の更生計画認可の決定や特別清算に係る協定の認可による場合等の法的手続により、金銭債権の全部または一部が切り捨てられた場合にその金銭債権の額が貸倒れとして損金の額に算入される。
また、債務者に対して書面による債務免除を行った場合は、債務者の債務超過状態が相当期間継続し、弁済を受けられないと認められるときに貸倒損失が認められており、支払能力がある債務者への債務免除は、寄附金として認定されるため注意が必要である。
法律上の貸倒れは法的に債権が消滅しているため、貸倒損失は任意に計上できるものではなく、損金算入することが強制されている。このため、損金経理をしていない場合であっても、申告書で減算調整する必要がある。
(ハ)事実上の貸倒れ
事実上の貸倒れでは、法律上の貸倒れは発生していないものの、債務者の資産状況・支払能力等からみて金銭債権の全額が回収できないことが明らかな場合に貸倒れとすることができる。事実上の貸倒れは、全額回収不能であることが条件のため、一部が回収不能というだけでは、貸倒損失として認められない。また、担保物がある場合は、担保物を処分した後でなければならない。
事実上の貸倒れの場合は、法律上の貸倒れとは異なり、損金経理が必要となり、決算確定前に貸倒処理を検討する必要がある。法律上の貸倒れのような客観的事実がないため、回収努力をした記録等、全額回収不能という判断に至った経緯を整理しておくことが重要である。
(ニ)形式上の貸倒れ
形式上の貸倒れでは、債権そのものが経済的に無価値となっていない場合であっても、売掛債権について形式的に条件を満たした場合に備忘価額を残して貸倒れとすることができる。
形式的条件とは、「債務者との取引停止後1年以上経過していること」と、「同一地域の売掛債権の総額が取立て費用に満たない場合に、督促しても弁済がないこと」の2つが定められている。
債務者との取引停止後1年以上経過している場合は、担保物がないことが要件となっている。また、取引には債権の回収も含まれているため、最後に入金があった時から1年以上経過していない場合は、売買自体が1年以上経過していても形式要件を満たさない。取引停止については、継続的に取引を行っていた場合に限られているため、たまたま取引を行った債務者に対する売掛債権については適用されないことに注意が必要である。
同一地域の売掛債権については、売掛債権の総額を集計するとともに、旅費交通費等の債権回収にかかる費用を見積り、費用の方が大きいということを証明できるように、根拠資料を残すことが重要となる。
なお、形式上の貸倒れは、事実上の貸倒れ同様、損金経理が必要となるため、決算確定日までに貸倒処理を検討する必要があり、計上する際は、備忘価額を付さなければならない。
② 貸倒引当金の計上
(イ)概 要
法人税においては、債務確定主義が採用されており、原則として、費用の見積計上となる引当金を認めていない。ただし、金銭債権の貸倒れを見積る貸倒引当金については、会計慣行が確立されていることに鑑み、計上が認められている。
税務上の貸倒引当金は、金銭債権を、「個別評価金銭債権」と「一括評価金銭債権」の2つに分け、それぞれ引当金の計上限度額を定めている。
(ロ)個別評価金銭債権に係る貸倒引当金
個別評価金銭債権とは、その事業年度終了の時において、その一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権をいい、債務者の状況に応じ、計上事由が4つに区分され、それぞれの計上事由に応じた繰入限度額が定められている。
4つの計上事由と繰入限度額は、次のとおりである。
(ハ)一括評価金銭債権に係る貸倒引当金
一括評価金銭債権とは、売掛金・貸付金その他これらに準ずる金銭債権をいい、個別評価金銭債権を除いたものをいう(図表5参照)。
一括評価金銭債権に対する貸倒引当金の繰入限度額は、原則的に、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額に過去3年間の貸倒実績率を乗じて算出される(図表6参照)。
資本金1億円以下の中小法人は、貸倒実績率ではなく、法定繰入率による計算も認められている。このため、貸倒実績率により計算した金額と法定繰入率により計算した金額との有利な方法を選択することができる。
法定繰入率を用いる場合には、期末の一括評価金銭債権の合計額から実質的に債権とみられない金額を差し引いた後に、法定繰入率を乗じて計算を行うことになる(図表7参照)。
(かとう・ゆきと)
未曾有の景気悪化に対応する法人税実務
第7回 税コスト削減策(5)
アクタスマネジメントサービス/アクタス税理士法人 加藤幸人
Ⅲ.税コスト削減策
4.所得の減少策(過去投資の精算)(承前)
(3)固定資産における所得の減少策 ① 固定資産の評価損計上による所得の減少
(イ)概 要
固定資産は、長期に渡って供されるものであり、利用に応じた損耗度合により価値減少を評価すべきものであるが、それを測ることは難しいため、原則的に減価償却という定められた方法により帳簿価額を減額していくことになる。
一方で、一定の事由が生じた場合には、評価損の計上が認められ、減価償却とは別に帳簿価額の減額をすることができるようになる。
(ロ)評価損の計上
固定資産につき、災害による著しい損傷等の図表1に掲げる事由が生じたことにより、その固定資産の評価換えを行い、損金経理によりその帳簿価額を減額した場合には、その事実が生じた日の期末における固定資産の価額までの金額を限度とし、評価損の計上が認められる。
(ハ)適用にあたっての注意点
固定資産についても、棚卸資産や有価証券の場合と同様に、評価損を計上する際には、損金経理することが要件となる。帳簿上、評価損を損金経理せずに、申告書で減算調整することは認められていないため、決算を確定させるまでに評価損を計上するか否かを検討するようにしなければならない。評価損の計上にあたっては、計上するに至った理由を示す根拠資料等を用意し、いつでも説明できるようにしておくことが重要である。
なお、過度の使用または修理の不十分による著しい損耗等による評価損の計上は認められない。
また、過年度償却不足額についても評価損の計上は認められないため注意しておく必要がある。
② 固定資産の除却による所得の減少
(イ)概 要
固定資産に対する所得の減少策として、除却も検討する必要がある。固定資産の除却とは、固定資産を解撤・破砕・廃棄等する行為である。これにより所得の減少を図るとともに、固定資産の維持・修繕等の管理コストの削減ができる。
(ロ)有姿除却について
除却は、原則的に実際に廃棄処分等することにより認められるものであるが、実際に廃棄処分等せずに、現状の姿のまま(有姿)であっても、使用廃止し、今後通常の方法による事業供用の可能性がないこと等の図表2に掲げる要件を満たすものについては除却処理することができる。
その際は、再使用の可能性がない点、使用中止に至った事情を、その固定資産の現況から説明できるように疎明資料を残しておく必要がある。使用中止に際しての稟議書や業者に対する通知書などは有用な資料となる。
(ハ)ソフトウェアの除却について
ソフトウェアについては、利用を停止し、記録媒体等の物理的廃棄があれば除却は明確であるが、利用を停止しただけで物理的な除却を行わない場合もある。そこで、自社利用ソフトウェアの対象業務廃止により、利用しなくなったことが明らかな場合等の図表3のような事由があるときは、除却処理を行うことができるとされている。
ソフトウェアについては、有形固定資産に比べ、利用廃止等を明らかにすることが難しいケースが多い。そこで、プログラムの削除画面を保存しておくことや、業務の都合上、バックアップ等で残しておく場合には、その理由を明らかにしておくこと、また、今後利用しなくなるに至った経緯を社内稟議で明らかにしておくこと等により、客観的に説明し得る資料を保存しておくことが重要となる。
(4)金銭債権における所得の減少策 ① 貸倒損失の計上
(イ)概 要
法人の有する金銭債権について、貸倒れとなる事実が発生した場合、その事実が発生した事業年度において貸倒損失として損金算入することが認められている。貸倒れが認められる事由は、「法律上の貸倒れ」「事実上の貸倒れ」「形式上の貸倒れ」の3つに区分され、貸倒発生事実ごとによる処理金額や損金算入時期が定められている(図表4参照)。
(ロ)法律上の貸倒れ
法律上の貸倒れでは、会社更生法の更生計画認可の決定や特別清算に係る協定の認可による場合等の法的手続により、金銭債権の全部または一部が切り捨てられた場合にその金銭債権の額が貸倒れとして損金の額に算入される。
また、債務者に対して書面による債務免除を行った場合は、債務者の債務超過状態が相当期間継続し、弁済を受けられないと認められるときに貸倒損失が認められており、支払能力がある債務者への債務免除は、寄附金として認定されるため注意が必要である。
法律上の貸倒れは法的に債権が消滅しているため、貸倒損失は任意に計上できるものではなく、損金算入することが強制されている。このため、損金経理をしていない場合であっても、申告書で減算調整する必要がある。
(ハ)事実上の貸倒れ
事実上の貸倒れでは、法律上の貸倒れは発生していないものの、債務者の資産状況・支払能力等からみて金銭債権の全額が回収できないことが明らかな場合に貸倒れとすることができる。事実上の貸倒れは、全額回収不能であることが条件のため、一部が回収不能というだけでは、貸倒損失として認められない。また、担保物がある場合は、担保物を処分した後でなければならない。
事実上の貸倒れの場合は、法律上の貸倒れとは異なり、損金経理が必要となり、決算確定前に貸倒処理を検討する必要がある。法律上の貸倒れのような客観的事実がないため、回収努力をした記録等、全額回収不能という判断に至った経緯を整理しておくことが重要である。
(ニ)形式上の貸倒れ
形式上の貸倒れでは、債権そのものが経済的に無価値となっていない場合であっても、売掛債権について形式的に条件を満たした場合に備忘価額を残して貸倒れとすることができる。
形式的条件とは、「債務者との取引停止後1年以上経過していること」と、「同一地域の売掛債権の総額が取立て費用に満たない場合に、督促しても弁済がないこと」の2つが定められている。
債務者との取引停止後1年以上経過している場合は、担保物がないことが要件となっている。また、取引には債権の回収も含まれているため、最後に入金があった時から1年以上経過していない場合は、売買自体が1年以上経過していても形式要件を満たさない。取引停止については、継続的に取引を行っていた場合に限られているため、たまたま取引を行った債務者に対する売掛債権については適用されないことに注意が必要である。
同一地域の売掛債権については、売掛債権の総額を集計するとともに、旅費交通費等の債権回収にかかる費用を見積り、費用の方が大きいということを証明できるように、根拠資料を残すことが重要となる。
なお、形式上の貸倒れは、事実上の貸倒れ同様、損金経理が必要となるため、決算確定日までに貸倒処理を検討する必要があり、計上する際は、備忘価額を付さなければならない。
② 貸倒引当金の計上
(イ)概 要
法人税においては、債務確定主義が採用されており、原則として、費用の見積計上となる引当金を認めていない。ただし、金銭債権の貸倒れを見積る貸倒引当金については、会計慣行が確立されていることに鑑み、計上が認められている。
税務上の貸倒引当金は、金銭債権を、「個別評価金銭債権」と「一括評価金銭債権」の2つに分け、それぞれ引当金の計上限度額を定めている。
(ロ)個別評価金銭債権に係る貸倒引当金
個別評価金銭債権とは、その事業年度終了の時において、その一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権をいい、債務者の状況に応じ、計上事由が4つに区分され、それぞれの計上事由に応じた繰入限度額が定められている。
4つの計上事由と繰入限度額は、次のとおりである。
(ハ)一括評価金銭債権に係る貸倒引当金
一括評価金銭債権とは、売掛金・貸付金その他これらに準ずる金銭債権をいい、個別評価金銭債権を除いたものをいう(図表5参照)。
一括評価金銭債権に対する貸倒引当金の繰入限度額は、原則的に、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額に過去3年間の貸倒実績率を乗じて算出される(図表6参照)。
資本金1億円以下の中小法人は、貸倒実績率ではなく、法定繰入率による計算も認められている。このため、貸倒実績率により計算した金額と法定繰入率により計算した金額との有利な方法を選択することができる。
法定繰入率を用いる場合には、期末の一括評価金銭債権の合計額から実質的に債権とみられない金額を差し引いた後に、法定繰入率を乗じて計算を行うことになる(図表7参照)。
(かとう・ゆきと)
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