税務ニュース2004年08月30日 信義則違反との主張に再び「正義に反する事態」と判示(2004年8月30日号・№080) 東京高裁17民事部、SO訴訟で納税者逆転敗訴

信義則違反との主張に再び「正義に反する事態」と判示
東京高裁17民事部、SO訴訟で納税者逆転敗訴


 平成16年8月4日、東京高裁第17民事部(秋山壽延裁判長)は、ストックオプション訴訟の控訴審で、SOの権利行使益は、「給与所得」に該当すると判示し、東京地裁民事3部(藤山雅行裁判長)の原判決を取消して、納税者(被控訴人)の請求を棄却する、納税者逆転敗訴の判決を言渡した(平成14年(行コ)第313号)。

「権利行使益は付与会社から受ける給付」と判示
 秋山裁判長は、権利行使益の本質を、「SOが付与された従業員等が付与会社から受ける給付であるというべき」と判示し、「株式市場から受け取ったもの」とする納税者側の主張を斥けた。また、控訴審判決は、「権利行使益は、(中略)権利行使時が課税の時期となり、権利行使益が課税対象となると解するのが相当である。」として、「権利行使益への課税が一種の擬制にほかならず、そのようなことは、法令上の根拠があってはじめて可能になるものであるというべきところ、そのような定めは存しない」とした原判決とは、判断の違いを見せた。

納税者に心情的な理解を示すが、「信義則違反」にあてはまらず
 納税者側の信義則違反との主張に対して、判決は、「本件各更正等に大きな不満と憤りを抱いたであろうことは理解できないではない。」と一応の理解を示したが、「課税処分が信義則に違反して違法となるためには、このような租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお、被控訴人の信頼利益等を保護しなければ正義の要請に反するといえるような特段の事情が必要であるというべき」とする最高裁判決の判示を引用し、本件には「信義則違反」は、あてはまらないとした。

「正義に反する事態」との判示に、代理人弁護士はHPで強く反論
 さらに、判決は、「他方、被控訴人の保護を優先して、本件権利行使益を一時所得として取り扱った場合には、(中略)平成10年以降正当な取扱いへの統一がされた後に権利行使益を給与所得として申告し、納税した者との間に著しい不平等を生ずることになり、かえって正義に反する事態が生ずるといわざるを得ない。」と判示した。
 この判示は、これまでの国側勝訴事件判決でも使われたことがある(東京高裁8民)が、原告(被控訴人)訴訟代理人の鳥飼重和弁護士は、本件判決を受けたホームページ上で、「平成10年以降正当な取扱いへの統一がされた」とする高裁の事実認定が、どのような課税当局の対応を指し示すものであるのか立証されていないとして、強く反論している。
 

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