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解説記事2011年05月02日 【税務マエストロ】 租税条約個別論点①-限度税率と申請手続き(2011年5月2日号・№401)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
租税条約個別論点①-限度税率と申請手続き
#15 品川克己
日本公認会計士協会租税調査会専門委員(国際租税専門部会)
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(マネージング・ディレクター)

略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職(平成22年10月現在)。

次回のテーマ
#16 経営戦略に応える企業再編成税制 税理士 朝長英樹 経営戦略の1つとして組織再編成税制を活用できる方法を、同税制等の創設を主導した筆者が事例形式で解説する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 e-mail:ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説  国際税務の分野では、法人税法や所得税法に加え、租税条約が非常に重要な役割を果たすこととなる。租税条約は、2国間での課税関係についての取決めであるが、一般に、相手国の個人や企業に対する自国での課税関係を明確にし、その効果として、2国間の投資を促進する効果を生み出している。また一般原則として、租税条約は国内法に優先して適用されるものとして理解されている(脚注1)。では、具体的に、どのような場面で租税条約が関係してくるのであろうか。
 日本企業が海外に子会社を設立(出資)して事業を始める場合、事業資金として出資(資本金)を利用することもあれば、別途親会社(日本企業)からローンという形で資金供与することも考えられる。出資つまり資本を持つということは、それに対するリターンとして配当が支払われることとなる。また、ローンという投資に対するリターンは利息ということとなる。こうした、配当や利息(利子)は、一般に「投資所得」とよばれ、その支払地国で源泉徴収により課税されることとなる(脚注2)。同様に、海外の企業に、その所有する特許などの使用許諾をする場合も、これも一種の海外投資であり、そのリターンとして使用料(ロイヤルティ)が支払われるが、この使用料(ロイヤルティ)も、通常は源泉徴収されることとなる。こうした利子、配当、使用料(ロイヤルティ)は、海外に支店(恒久的施設)を有せずとも稼得できる所得であり、これらの所得に対する源泉徴収の問題は、国際税務の最初の課題であり、そこに租税条約は大きく関係することとなる。

1 投資所得に対する限度税率  租税条約の適用にあたり最大の恩典とされるのが源泉税率の軽減である。一般に「軽減税率」もしくは「限度税率」と呼んでいる。これは、相手国の居住者に支払われる、配当、利子、使用料については、支払国の国内法で定める税率よりも低い税率で源泉徴収することを定めるものであり、その税率は、国ごと(つまり租税条約ごと)に異なっている。一般に、日本の源泉徴収税率は20%であるため、日本が締結した条約では5%もしくは10%とするものが多い。
 以下、日米租税条約を具体例として解説する。
(1)配  当  日米租税条約では配当に対する軽減税率を次のように軽減している(10条2項)。
(a)配当を受ける者が特定される日において、配当を支払う法人の議決権のある株式の10%以上を直接または間接に所有する法人の場合には、配当を支払う側の国で課す税率を5%とする。
(b)(a)以外の場合の税率は10%とする。個人が配当を受け取る場合はこれに該当する。
  なお、配当を受ける者が特定される日とは、日本においてはその配当に係る事業年度の終了の日が該当する。
 なお、上記(a)、(b)にかかわらず、次の要件を満たす法人の場合には配当を支払う側の国においては課税を免除することとしている(10条3項)。
① 配当を受ける者が特定される日以前12ヶ月間を通じて、配当を支払う他方の国の居住者である法人の議決権のある株式の50%超を直接に、または、日本または米国の居住者を通じて間接に所有すること。
② 配当を受ける法人が次のいずれかに該当すること。
イ 上場会社である適格者(22条1項(c)(i))
ロ 上場会社の子会社である適格者(22条1項(c)(ii))
ハ イまたはロ以外の適格者である法人(22条1項(f))で、配当に関して適格所得の要件を満たすこと。
ニ 配当に対する課税の免除について権限のある当局の認定を受けた法人
(2)利  子  日米租税条約においては、利子に対する限度税率を10%としている。
 また、金融機関等の受け取る利子等については支払う側の国の課税を免除することとしている(11条3項)。これは、金融機関等については、受取利子から支払利子を差し引いたものが純利益になり、それに対して居住国で課税が行われるため、受取利子に対する10%の課税はかなり負担の重いものとなるためである。なお、免税される利子は、具体的には次のものである。
(a)利子の受益者が日本または米国の政府、地方政府、地方公共団体、中央銀行または日本または米国の政府が全面的に所有する機関である場合。
(b)利子の受益者が日本または米国の居住者であって、その利子が(a)に掲げるものによって保証されている債権、保険の引受けが行われた債権または間接融資に係る債権に関して支払われた利子である場合。
(c)利子の受益者が日本または米国の居住者である銀行、保険会社、登録を受けた証券会社または金融業を営むものである場合。金融業を営むものとは、直前の3課税年度において、負債の50%超が金融市場における債券の発行または有利子預金からなり、かつ、資産の50%超が第三者に対する債権からなるものである。
(d)利子の受益者が日本または米国の居住者である年金基金である場合(ただし、年金基金が直接または間接に事業を遂行することにより取得された利子である場合を除く)。
(3)使用料  日米租税条約では、使用料に対する源泉税は課されない。日本の租税条約におけるポリシーとしては10%であったものを、日米租税条約以降、免税されるようになっている。なお、諸外国(特に先進国)では、OECDモデル条約同様免税とされる条約が多い。
 なお、実務上、使用料に関しては税引手取り契約が多いようであるが、当該契約のもとでは使用料の支払い者が源泉税を負担することとなる。したがって、使用料を支払う者は源泉税を差し引いた後の額が、計算された使用料の額となるようにグロスアップ計算を行う。たとえば、使用料が20百万円と計算された場合には、源泉税引き後で20百万円が手取りになるようにする必要があり、たとえば使用料の源泉税率が10%である場合、グロスアップ計算をすると22,222,222円となる。これに対する10%(2,222,222円)を差し引いた20百万円が支払う額となる。

2 限度税率適用のための手続き
(1)租税条約に関する届出書
 配当、利子、使用料の支払を受ける者が、租税条約に定める限度税率の適用を受けようとする場合には、「租税条約に関する届出書」を、その支払をする日の前日までに、日本の源泉徴収義務者を通じて支払者の所轄税務署長に提出することとなる。この届出書(様式1、様式2、様式3)には、次の内容を記載し、租税条約ごとに必要な書類を添付することとなる。
(a)支払を受ける者の名称、所在地等、納税者番号
(b)軽減税率が適用される事情の詳細
(c)支払者の名称、所在地等
(d)支払われる所得の内容
(e)納税管理人の氏名等
(f)その他参考事項
 なお、添付すべき書類の不備などにより、支払の時までに必要な届出書の提出が出来ない場合などは、源泉徴収義務者(支払者)は限度税率の適用はせず、国内法に定める税率(通常は20%)で源泉徴収する必要がある。しかしながら、限度税率の適用は、租税条約相手国の居住者して租税条約で認められた権利でもあるので、後日「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求」(様式11)を提出することにより、租税条約による限度税率と国内法の税率との差額が還付される。
(2)特典条項に関する付表  日米租税条約の適用にあたっては、条約が特典条項(脚注3)を有する租税条約(特典条項条約(脚注4))であることから、通常の「租税条約に関する届出書」ではなく、「特典条項条約届出書等」を提出する必要がある。これは、日米条約以外の租税条約の適用を受ける際に提出する「租税条約に関する届出書」に、「特典条項に関する付表(様式17)」及び関連書類を添付した届出書が「特典条項条約届出書等」に該当することとなる(条約実施特例法規則9の5①)。
 一方、支払者サイドの源泉徴収義務(所法212)については、所得税法に定める税率(所法213)ではなく、限度税率により源泉徴収することとなる(条約実施特例法3の2①)。
(3)届出書の提出時期
 ① 原 則
 日米租税条約のような特典条項条約の適用を受ける際の届出書、つまり、特典条項条約届出書等は、原則として支払を受ける都度、源泉徴収義務者を経由して税務署長に提出する必要がある(条約実施特例法規則9の5①)。
 ただし、条約の適用を受けようとする所得について、その支払を受ける日の前日以前3年以内のいずれかの時において、支払の基因が同一である所得について既に特典条項条約届出書等を提出している場合には、当該特典条項条約届出書等の提出は省略することができる(条約実施特例法規則9の5②)。つまり、所得が同一(同じ契約に基づく使用料など)であれば、特典条項条約届出書等は、結果的に3年に1度提出することになる。
 なお、特典条項条約届出書等を提出する者(支払を受ける者)が、「認定適格者」(脚注5)である場合には、過去1年以内に同様の届出書を提出しているかどうかで判断するため、結果的に、1年に1度提出する必要がある。
 ② 特定利子配当等に関する特例  米国の居住者が支払を受ける「特定利子配当等」について、日米租税条約の適用を受ける場合には、特典条項条約届出書等の提出は、原則として、最初に支払を受ける際、つまり初回のみの提出に簡素化されている(条約実施特例法規則9の5⑤)。
 この特例の対象となる「特定利子配当等」とは次の所得をいう(条約実施特例法規則9の5⑦)。
イ)国債又は地方債の利子
ロ)内国法人の公募社債の利子
ハ)国内にある営業所に信託された合同運用信託、公社債投資信託又は公募公社債等運用投資信託の収益の分配
ニ)上場株式等の配当等(5%以上の株式等を所有する大口投資家が支払を受けるものは除かれる)
ホ)公募証券投資信託(特定株式投資信託は除かれる)
ヘ)特定投資法人の投資口の配当等
ト)所得税法161条11号の給付補てん金、利息、利益又は差益
チ)懸賞金付預貯金等の懸賞金等

脚注
1 この考えは、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」(憲法98条2項)を根拠としている。
2 この源泉徴収の税率は、国によってまちまちである。日本の場合、15%(利子)または20%(配当、使用料など)であり、米国では原則30%とされている。
3 租税の軽減又は免除に関する租税条約の規定の適用に関し、条約適格者等のその条件を定める規定(特典条項)を有する租税条約の規定をいう(条約実施特例法規則9の2②)。なお、特典条項は総務省・財務省告示により限定されている。 
4 他の条約として、日本・フランス、日本・オーストラリア、日本・イギリス条約が該当する。
5 日米租税条約22条4項の規定により、条約の特典を付与する国の権限ある当局(日本の場合は国税庁長官)による「その者の設立、取得又は維持及びその業務の遂行が租税条約の特典を受けることをその主たる目的の一つとするものではないこと」の認定を受けた適格者が該当する。

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