解説記事2011年08月01日 【ニュース特集】 賃貸アパート敷地・貸駐車場利用土地の相続税評価(2011年8月1日号・№413)
審判所、床面積と建ぺい率からの面積算出を認めず
賃貸アパート敷地・貸駐車場利用土地の相続税評価
賃貸アパートの敷地部分と駐車場部分の面積の判定および駐車場部分を貸家建付地と評価することの適否が争点とされ、審判所が相続税更正処分の一部を取り消した裁決事例があった(東裁(諸)平22第112号)。アパート敷地部分・駐車場部分の面積について、アパートの建物1階部分の床面積と建ぺい率から算出すべきとした原処分庁の主張を退けている点、注目される。
また、審判所は、駐車場と家屋が一体として利用され全体を貸家建付地として評価できる場合の条件も示している。
面積の判定・貸家建付地評価の適否が争点
賃貸アパート1棟の敷地と月極駐車場として利用する土地 本事案で、相続税評価額が争われた土地は、相続開始日において、賃貸アパート(以下「本件アパート」という)1棟の敷地および月極駐車場(以下「本件駐車場」という)として利用されていた土地(以下「本件土地」という)である(表1参照)。
本件土地に係る争点は、本件アパートの敷地部分と本件駐車場部分の面積の判定および本件駐車場部分を貸家建付地と評価することの適否であり、審判所が本件土地に関して認定した事実は、表2のとおりとなる。
全体を貸家建付地として評価することができる条件 審判所の判断では、まず本件駐車場部分を貸家建付地と評価することの適否に関して、貸家建付地に係る評価基本通達の趣旨を示し(下掲参照)、この趣旨にかんがみれば、貸家建付地と評価しうる敷地部分は、家屋の賃借人が、通常、家屋を利用する範囲内で使用することが必要となる部分に限られるというべきであるとした。
そのうえで、「貸駐車場は、通常、家屋を利用する範囲内で使用することが必要な部分とは認められないから、原則として、自用地として評価すべきである。ただし、貸家の敷地内に併設された駐車場であって、かつ、駐車場の契約者及び利用者がすべて貸家の賃借人であり、駐車場が貸家入居者専用の駐車場として利用されているなど、駐車場の貸付の状況が貸家の賃貸借と一体となっていると認められるような場合には、当該駐車場は、家屋と一体として利用されているものと認められるから、全体を貸家建付地として評価することができるものと解するのが相当である」(下線:編集部)としている。
本件駐車場はアパート敷地部分と一体で利用されていない
そして、本事案については、①本件アパートの戸数は4戸であるのに比し、駐車場の駐車区画は10と多いこと、②本件駐車場の賃借人の募集は本件アパートの入居者とは別に募集されていること、③本件駐車場は本件アパートの入居者のための専用区画を特に確保していないことからすれば、本件駐車場は、本件アパートの賃借人の使用を前提として設けられたものではないと認定した。
また、相続開始日において、本件アパートの賃借人4名のうち本件駐車場を賃借しているのは1名のみで、本件駐車場が本件アパートの賃借人のための専用駐車場として使用されているものと認められないことから、本件駐車場は本件アパートの敷地部分と一体として利用されていると認めることはできないと判断。
本件土地のうち、本件アパートの敷地部分の土地は貸家建付地として評価すべきであり、本件駐車場部分の土地は自用地として評価すべであるとした。
審判所が調査でアパート敷地・駐車場の面積を判断
原処分庁算定の評価額を下回ることに 本件アパートの敷地および本件駐車場の面積については、原処分庁が、アパートの建物1階部分の床面積と建ぺい率から算出して評価すべきだとした(今号5頁表3参照)。
なお、当事者双方の主張は、前頁表4のとおりである。
審判所は、本件土地の調査を実施し、本件駐車場として利用されている面積は148.92㎡、本件アパートの敷地として利用されている面積は197.08㎡と判断(前頁図参照)。
この判断に基づき、本件土地を評価すると、相続税価格は、41,920,956円となり、原処分庁が算定した相続税評価額42,832,935円を911,979円下回るとした(表5参照)。
Column
貸駐車場の評価に関する質疑応答事例 国税庁は、ホームページ上の質疑応答事例で「財産の評価(宅地以外の土地の評価単位等)35 貸駐車場として利用している土地の評価」を公表している。
照会の要旨は、月極めの駐車場の用に供している土地の価額はどのように評価するかというもの。国税庁の回答要旨では、土地の所有者が、自らその土地を月極め等の貸駐車場として利用している場合には、その土地の自用地としての価額により評価するとしている。
今回の裁決事例でも、貸駐車場について、原則として、自用地と評価すべきとしているが、審判所は、家屋と駐車場の全体を貸家建付地として評価できる条件およびアパートに併設された駐車場であっても自用地として評価すべきとした判断理由を示しており、参考となろう。
賃貸アパート敷地・貸駐車場利用土地の相続税評価
賃貸アパートの敷地部分と駐車場部分の面積の判定および駐車場部分を貸家建付地と評価することの適否が争点とされ、審判所が相続税更正処分の一部を取り消した裁決事例があった(東裁(諸)平22第112号)。アパート敷地部分・駐車場部分の面積について、アパートの建物1階部分の床面積と建ぺい率から算出すべきとした原処分庁の主張を退けている点、注目される。
また、審判所は、駐車場と家屋が一体として利用され全体を貸家建付地として評価できる場合の条件も示している。
面積の判定・貸家建付地評価の適否が争点
賃貸アパート1棟の敷地と月極駐車場として利用する土地 本事案で、相続税評価額が争われた土地は、相続開始日において、賃貸アパート(以下「本件アパート」という)1棟の敷地および月極駐車場(以下「本件駐車場」という)として利用されていた土地(以下「本件土地」という)である(表1参照)。

本件土地に係る争点は、本件アパートの敷地部分と本件駐車場部分の面積の判定および本件駐車場部分を貸家建付地と評価することの適否であり、審判所が本件土地に関して認定した事実は、表2のとおりとなる。

全体を貸家建付地として評価することができる条件 審判所の判断では、まず本件駐車場部分を貸家建付地と評価することの適否に関して、貸家建付地に係る評価基本通達の趣旨を示し(下掲参照)、この趣旨にかんがみれば、貸家建付地と評価しうる敷地部分は、家屋の賃借人が、通常、家屋を利用する範囲内で使用することが必要となる部分に限られるというべきであるとした。
そのうえで、「貸駐車場は、通常、家屋を利用する範囲内で使用することが必要な部分とは認められないから、原則として、自用地として評価すべきである。ただし、貸家の敷地内に併設された駐車場であって、かつ、駐車場の契約者及び利用者がすべて貸家の賃借人であり、駐車場が貸家入居者専用の駐車場として利用されているなど、駐車場の貸付の状況が貸家の賃貸借と一体となっていると認められるような場合には、当該駐車場は、家屋と一体として利用されているものと認められるから、全体を貸家建付地として評価することができるものと解するのが相当である」(下線:編集部)としている。
貸家建付地に係る評価基本通達の趣旨 借家人は、家屋に対する権利を有するほか、その家屋の敷地についても、家屋の賃借権に基づいて、家屋の利用の範囲内で、ある程度の支配権を有していると認められ、逆にその範囲において地主は、利用についての受忍義務を負うことになる。そのため、上記支配権が付着したままで当該土地を譲渡するとした場合には、その支配権が付着していないとした場合における価額より低い価額でしか譲渡できないこととなるため、評価基本通達は、貸家の敷地である貸家建付地の価額は、その宅地の自用地としての価額から、その価額にその宅地に係る借地権割合とその貸家に係る借家権割合の相乗積を乗じて計算した価額を控除した価額によって評価することにしたものである。 |
また、相続開始日において、本件アパートの賃借人4名のうち本件駐車場を賃借しているのは1名のみで、本件駐車場が本件アパートの賃借人のための専用駐車場として使用されているものと認められないことから、本件駐車場は本件アパートの敷地部分と一体として利用されていると認めることはできないと判断。
本件土地のうち、本件アパートの敷地部分の土地は貸家建付地として評価すべきであり、本件駐車場部分の土地は自用地として評価すべであるとした。
審判所が調査でアパート敷地・駐車場の面積を判断
原処分庁算定の評価額を下回ることに 本件アパートの敷地および本件駐車場の面積については、原処分庁が、アパートの建物1階部分の床面積と建ぺい率から算出して評価すべきだとした(今号5頁表3参照)。

なお、当事者双方の主張は、前頁表4のとおりである。

審判所は、本件土地の調査を実施し、本件駐車場として利用されている面積は148.92㎡、本件アパートの敷地として利用されている面積は197.08㎡と判断(前頁図参照)。

この判断に基づき、本件土地を評価すると、相続税価格は、41,920,956円となり、原処分庁が算定した相続税評価額42,832,935円を911,979円下回るとした(表5参照)。

Column
貸駐車場の評価に関する質疑応答事例 国税庁は、ホームページ上の質疑応答事例で「財産の評価(宅地以外の土地の評価単位等)35 貸駐車場として利用している土地の評価」を公表している。
照会の要旨は、月極めの駐車場の用に供している土地の価額はどのように評価するかというもの。国税庁の回答要旨では、土地の所有者が、自らその土地を月極め等の貸駐車場として利用している場合には、その土地の自用地としての価額により評価するとしている。
今回の裁決事例でも、貸駐車場について、原則として、自用地と評価すべきとしているが、審判所は、家屋と駐車場の全体を貸家建付地として評価できる条件およびアパートに併設された駐車場であっても自用地として評価すべきとした判断理由を示しており、参考となろう。
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