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解説記事2011年09月12日 【平成23年度税制改正解説】 平成23年度税制改正における相続税・贈与税関係の改正について(2011年9月12日号・№418)

平成23年度税制改正解説
平成23年度税制改正における相続税・贈与税関係の改正について
 金山裕道

はじめに

 平成23年度税制改正においては、平成23年度税制改正大綱に記載された事項のうち、現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図る観点から、雇用促進税制及び環境関連投資促進税制の創設並びに金融・証券税制の改正等について所要の措置が講じられた。
 これらの改正事項が盛り込まれた「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」は、去る6月22日に可決・成立し、同月30日に平成23年法律第82号として公布されている。また、関係政省令もそれぞれ公布・制定されている。
 また、平成23年3月に発生した東日本大震災(以下「大震災」という。)を受けて、大震災の被災者等に係る税負担の軽減を内容とした「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」が平成23年4月27日に平成23年法律第29号として公布され、同法施行令・施行規則・関係告示もそれぞれ公布・制定されている。
 本稿では、これらの税制改正に盛り込まれた改正事項のうち、相続税・贈与税関係の改正の概要について説明する。
 なお、平成23年度税制改正大綱に記載された事項のうち、成立した改正法に盛り込まれていない部分(相続税・贈与税に関しては、相続税の基礎控除の引下げ、税率構造の見直し、未成年者控除・障害者控除の引上げ、贈与税の軽減、等)については、1月に提出された「所得税法等の一部を改正する法律案」が修正された「経済構造の変化に対応した税制を構築するための所得税法等の一部を改正する法律案」として、国会において継続審議されている。

平成23年度税制改正関係

Ⅰ 連帯納付義務に関する制度の見直し
〈1〉連帯納付義務者が連帯納付義務を履行する場合の延滞税を利子税に代える措置

1 改正の内容
 連帯納付義務者が相続税法第34条第1項の規定により本来の納税義務者の相続税を納付する場合にその相続税に併せて納付すべき延滞税については、次に定めるところによることとされた(新相法51の2①)(図表1参照)。

 なお、下記(1)及び(2)の措置は、連帯納付義務者が延滞税の負担を不当に減少させる行為をした場合には適用されない(新相法51の2①柱書)。
(1)法定納期限から納付基準日までの期間
 ① 相続税が延納の許可を受けていたものである場合
 イ 未納の分納税額
 その未納の分納税額の納期限の翌日から納付基準日(注1)までの期間について、その未納の分納税額に、延滞税の割合を乗じて算出した延滞税の納付に代え、その未納の分納税額の納期限の属する分納期間において適用されていた延納の利子税割合(注2、3)(図表2参照)を乗じて算出した利子税を納付することとされた(新相法51の2①一イ(1)、二イ(1))。

(注1)上記の「納付基準日」とは、相続税法第34条第7項の納付通知書(連帯納付義務者から未納の相続税を徴収しようとする場合に発せられる通知書をいう。〈2〉2(3)参照)が発せられた日の翌日から2ヶ月を経過する日又は同条第9項の督促に係る督促状が発せられた日のいずれか早い日をいう。
(注2)未納となっている分納期間が2期以上(2年分以上)ある場合には、各分納税額に対してそれぞれの納期限の属する分納期間ごとに適用されていた最も低い割合をそれぞれの分納税額に乗じて算出した利子税の合計額を納付することとなる。
(注3)この利子税の割合については、日本銀行の商業手形の基準割引率(いわゆる公定歩合)に連動した割合に軽減される(措法93)。
 ロ 延納の許可が取り消された相続税額  延納の許可の取消しがあった日の翌日から納付基準日までの期間について、その取り消された延納税額に、延滞税の割合を乗じて算出した延滞税の納付に代え、許可の取消しがあった日の属する分納期間において適用されていた延納の利子税割合を乗じて算出した利子税を納付する(新相法51の2①一イ(1)、二イ(2))。
 なお、その場合に適用される利子税の割合が2以上ある場合や租税特別措置法第93条の規定の適用については、上記イと同様の取扱いとなる。
 ハ 期限後申告、修正申告、更正又は決定により納付すべき相続税額について延納の許可を受けていた場合の相続税額  期限後申告、修正申告、更正又は決定により増加した相続税額について延納の許可を受けたときは、法定納期限の翌日からその税額に係る国税通則法第35条第2項の規定による納期限又は納付すべき日までの期間(注1)については、その税額に年7.3%(注2)の割合を乗じて算出した利子税を納付する(新相法51の2①一イ(2)、二ロ)。
(注1)本来の納税義務者の納付する延滞税について国税通則法第61条第1項に規定する除算期間がある場合には、その期間はそもそも延滞税がかからない期間であることから、連帯納付義務者が納付する利子税の計算の基礎となる期間にも含まれない。
(注2)上記1(1)①イ(注3)参照。平成23年分は4.3%となる(措法93)。
 ② 当該相続税が租税特別措置法の規定による農地等又は非上場株式等に係る相続税の納税猶予の適用を受けていたものである場合
 イ 農地等についての相続税の納税猶予の適用を受けていたもので、納税猶予に係る期限が確定した税額
 租税特別措置法第70条の6第39項各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める納税の猶予に係る期限の翌日から納付基準日までの期間について、確定した税額に同項に規定する利子税の割合(6.6%又は3.6%(注))を乗じて算出した利子税を納付する(新措令40の7 ))。
 なお、納税猶予に係る期限が確定した税額について適用されていた利子税の割合が2ある場合は、簡便性及び連帯納付義務者有利の観点から、いずれか低い割合(3.6%(注))を用いて利子税を計算する。
 ロ 非上場株式等についての相続税の納税猶予の適用を受けていたもので、納税猶予に係る期限が確定した税額  租税特別措置法第70条の7の2第23項の表の各号の上欄に掲げる区分に応じ、当該各号の下欄に掲げる日(同表の第1号、第3号又は第6号から第8号までの下欄に掲げる日以前2月以内に経営承継相続人等が死亡した場合には、その死亡の日の翌日から6月を経過する日)の翌日から納付基準日までの期間について、確定した税額に同項に規定する利子税の割合(3.6%(注))を乗じて算出した利子税を納付する(新措令40の8の2 ))。
 ハ 非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の適用を受けていたもので、納税猶予に係る期限が確定した税額  租税特別措置法第70条の7の4第14項において準用する同法第70条の7の2第23項の表の各号の上欄に掲げる区分に応じ、当該各号の下欄に掲げる日(同表の第1号、第3号又は第6号から第8号までの下欄に掲げる日以前2月以内に経営相続承継受贈者が死亡した場合には、その死亡の日の翌日から6月を経過する日)の翌日から納付基準日までの期間について、確定した税額に同項に規定する利子税の割合(3.6%(注))を乗じて算出した利子税を納付する(新措令40の8の3 )。
(注)上記からまでにおける利子税の割合(3.6%又は6.6%)については、日本銀行の商業手形の基準割引率(いわゆる公定歩合)に連動した割合に軽減される(措法93④)。
 ③ 上記①、②以外のものである場合  本来の納税義務者の相続税額について延納や租税特別措置法の規定による納税猶予を適用していない場合において、その相続税額が滞納となったときは、法定納期限の翌日から納付基準日までの期間について、未納の相続税額に年7.3%(注)の割合を乗じて算出した利子税を納付する(新相法51の2①一ロ、二ハ)。
(注)上記1(1)①イ(注3)参照。平成23年分は4.3%となる(措法93)。
(2)納付基準日後の期間  連帯納付義務者に対して連帯納付義務の履行を求める納付通知書が発せられてから一定期間経過した後(納付基準日後)については、連帯納付義務者といえども利子税ではなく延滞税を納付することとされている(新相法51の2①三)。具体的には次のとおり。
 ① 納付基準日の翌日から2月を経過する日までの期間  連帯納付義務者は、本来の納税義務者の未納の相続税額に年7.3%(注)の割合を乗じて算出した延滞税を納付することとされている。
(注)上記1(1)①イ(注3)参照。租税特別措置法第94条により平成23年分は4.3%となる。
 ② 納付基準日の翌日から2月を経過した日以後の期間  連帯納付義務者は、本来の納税義務者の未納の相続税額に年14.6%の割合を乗じて算出した延滞税を納付することとされている。
(3)連帯納付義務者の利子税等の納付による本来の納税義務者への効果  連帯納付義務者が上記(1)の利子税又は上記(2)の延滞税を納付した場合には、本来の納税義務者の相続税に係る延滞税の額(A)のうち、連帯納付義務者が納付した利子税又は延滞税に相当する額(B)については納付があったものとみなされる(新相法51の2②)。

2 適用関係  上記1の改正は、平成23年4月1日以後の期間に対応する延滞税について適用され、平成23年3月31日以前の期間に対応する延滞税については、従来どおり(改正法附則19①、改正措令附則32)。

〈2〉連帯納付義務者に対して連帯納付義務の履行を求める場合の手続規定の整備

1 改正の内容
 連帯納付義務に関し、次の通知等の規定が創設された(図表3参照)。

(1)相続税の連帯納付義務がある旨の通知  税務署長は、本来の納税義務者が納付すべき相続税のうちに延納又は物納の申請を行ったものがある場合には、その相続税に係る連帯納付義務者に対し、相続税の連帯納付義務に係る規定の適用がある旨を通知することとされた(新相法34⑤)。
(2)本来の納税義務者に対し相続税の督促状を発した場合の通知  税務署長又は税務署長から事務の引継ぎを受けた国税局長(以下「税務署長等」という。)は、本来の納税義務者に対し相続税の督促をした場合において、その督促に係る督促状を発した日から1月を経過する日までにその相続税が完納されないときは、連帯納付義務者に対し、次の事項を通知することとされた(新相法34⑥、新相規18の2)。
① その相続税が完納されていない旨
② 連帯納付義務の適用がある旨
③ その相続税に係る被相続人の氏名
④ その他必要な事項
(3)連帯納付義務者から徴収しようとする場合の納付通知  税務署長等は、上記(2)の通知をした場合において、その通知に係る相続税を連帯納付義務者から徴収しようとするときは、その連帯納付義務者に対し、納付すべき金額及び納付場所等を記載した納付通知書を送付しなければならないこととされた(新相法34⑦)。
(4)連帯納付義務者に対する督促  税務署長等は、上記(3)の納付通知書を発した場合において、当該納付通知書を発した日の翌日から2月を経過する日までに当該納付通知書に係る相続税が完納されない場合には、当該納付通知書を受けた連帯納付義務者に対し、国税通則法第37条の規定による督促をしなければならないこととされた(新相法34⑧)。
(5)繰上請求に該当する事実があった場合の督促  税務署長等は、上記(2)から(4)にかかわらず、連帯納付義務者に国税通則法第38条第1項各号に規定する繰上請求に該当する事実があり、かつ、相続税の徴収に支障があると認められる場合には、その連帯納付義務者に対し国税通則法第37条の規定による督促をしなければならないこととされた(新相法34⑨)。
(参考)「国税通則法第38条第1項各号に規定する繰上請求に該当する事実」とは次に掲げる場合に該当することとなったときをいう。
① 納税者の財産につき強制換価手続が開始されたとき(仮登記担保契約に関する法律第2条第1項(所有権移転の効力の制限等)(同法第20条(土地等の所有権以外の権利を目的とする契約への準用)において準用する場合を含む。)の規定による通知がされたときを含む。)。
② 納税者が死亡した場合において、その相続人が限定承認をしたとき。
③ 法人である納税者が解散したとき。
④ その納める義務が信託財産責任負担債務である国税に係る信託が終了したとき(信託法第163条第5号(信託の終了事由)に掲げる事由によって終了したときを除く。)。
⑤ 納税者が納税管理人を定めないでこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるとき。
⑥ 納税者が偽りその他不正の行為により国税を免れ、若しくは免れようとし、若しくは国税の還付を受け、若しくは受けようとしたと認められるとき、又は納税者が国税の滞納処分の執行を免れ、若しくは免れようとしたと認められるとき。

2 適用関係 (1)上記1(1)の改正は、平成23年6月30日以後に納期限(延納の場合における分納税額の納期限を除く。)が到来する相続税について適用される(改正法附則18①)。
(2)上記1(2)の改正は、平成24年1月1日以後に納期限(延納若しくは物納の許可の申請の却下若しくは取下げ又は延納若しくは物納の許可の取消しがあった場合には、その却下若しくは取消しに係る書面が発せられた日又は取下げがあった日)が到来する相続税について適用される(改正法附則18②)。
(3)上記1(3)の改正は、平成23年6月30日以後に発せされる納付通知書について適用される(平成23年6月29日までに連帯納付義務者に対して督促状が発せられていた場合を除く。)(改正法附則18③)。
(4)上記1(4)の改正は、平成23年6月30日以後に行われる督促について適用される(改正法附則18⑤)。

Ⅱ 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置等の拡充

1 改正の内容
 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(措法70の2)及び特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(措法70の3)の2つの特例について、それぞれ、適用対象となる住宅取得等資金の範囲に、住宅用家屋の新築(住宅取得等資金の贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)を受けた日の属する年の翌年3月15日までに行われたものに限る。)に先行してするその敷地の用に供される土地等の取得のための資金が追加された(新措法70の2①、70の3①)。

2 適用関係  改正後のこの規定は、平成23年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用し、同日前に贈与により取得した財産に係る贈与税については、従来どおり(改正法附則78①)。

Ⅲ 非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予の改正

1 改正の内容
(1)風俗営業会社等に該当してはならないこと等とされる特別関係会社の範囲の見直し
 次の要件を満たさなければならないとされる特別関係会社の範囲(措令40の8⑥、40の8の2⑧、40の8の3④)が、特別関係会社のうち特定特別関係会社(会社と密接な関係を有する措置令第40条の8第7項の規定により読み替えて準用される同条第6項各号に規定する者及び会社により、その株式等に係る議決権の過半数を保有される会社をいう。)(注)であるものとされた(措令40の8⑦、40の8の2⑨、40の8の3⑤)。
① その会社の株式等が非上場株式等に該当すること(措法70の7②一ハ、70の7の2②一ハ、70の7の4②一ハ)。
② 風俗営業会社に該当しないこと(措法70の7②一ニ、70の7の2②一ニ、70の7の4②一ニ)。
③ 中小企業者に該当すること(措令40の8⑨三、40の8の2⑩三、40の8の3⑥)。
(注)措置令第40条の8第7項の規定は、同条第6項第1号に規定する「当該代表権を有する者の親族」を「当該代表権を有する者と生計を一にする親族」と読み替えることとしている。
(2)認定相続承継会社等が外国会社等の株式等を有する場合の納税猶予分の相続税額の計算方法の改正  措置法第70条の7の4第2項第4号に規定する納税猶予分の相続税額の計算において、同条第1項に規定する特例相続非上場株式等に係る同条第2項に規定する認定相続承継会社又は当該認定相続承継会社の特別関係会社であって当該認定相続承継会社との間に支配関係がある法人が会社法第2条第2号に規定する外国会社(当該認定相続承継会社の特別関係会社に該当するものに限る。)又は措置令第40条の8の3第8項の規定において準用する措置令第40条の8の2第13項に規定する医療法人の株式等を有する場合の相続税の課税価格とみなす価額は、当該認定相続承継会社等がこれらの株式等を有していなかったものとして計算した価額となるが、その価額が措置法第70条の7の3第1項の規定により相続税の課税価格の計算の基礎に算入された同項前段の特例受贈非上場株式等の価額を超えるときには、当該特例受贈非上場株式等の価額が上限とされた(措法70の7の4②、措規23の12③)。
(3)特定資産の範囲の見直し  今回の改正において、資産管理会社の判定の基礎となる「特定資産」のうち、経営承継受贈者等及び当該経営承継受贈者等に係る同族関係者に対する「貸付金、未収金その他これらに類する資産」について、当該同族関係者の範囲に「同族関係にある外国会社」が追加された(措法70の7②八ロ、措規23の9⑭)。
 具体的には、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(平成21年経済産業省令第22号)第1条第12項第2号ホに規定する「特定資産」の範囲に含まれる「一定の者に対する貸付金、未収金その他これらに類する資産」について、その「一定の者」の範囲に「経営承継受贈者等に係る同族関係者に該当する外国会社」が加えられた(円滑化省令1⑫二ホ)。
(注)「同族関係者に該当する外国会社」とは、代表者、代表者の親族、代表者と事実上婚姻関係にある者など特別の関係がある者等に総株主議決権数の過半数を保有される外国会社のことをいう。

2 適用関係  上記1の改正は、平成23年6月30日以後に相続若しくは遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)又は贈与により取得する非上場株式等に係る相続税又は贈与税について適用し、同日前に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する非上場株式等に係る相続税又は贈与税については、従来どおり(改正法附則78②)。

Ⅳ 国立公園特別保護地区等内の土地に係る相続税の物納の特例の創設

1 改正の内容
(1)特例の概要
 税務署長は、相続税の納税義務者が物納の許可の申請をする場合において、その物納に充てようとする相続財産が次の(2)に掲げる要件を満たす自然公園法の国立公園特別保護地区及びこれに準ずる一定の区域(以下「特別保護地区等」という。)内の土地であるときは、その土地については、納税義務者の申請により、当該土地が物納劣後財産(注)であっても、これを物納劣後財産に該当しないものとみなして、物納の許可をすることができることとされた(措法70の12③)。
(注)「物納劣後財産」とは、物納財産ではあるが他の財産に対して物納の順位が後れるものをいい、例えば次のような財産をいう(相法41④、相令19)。
① 地上権、永小作権若しくは耕作を目的とする賃借権、地役権又は入会権が設定されている土地
② 建築基準法に規定する道路に2メートル以上接していない土地
③ 都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く。)
④ 保安林として指定された区域内の土地
⑤ 法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含む。)
(2)この特例の適用を受けるための要件 ① その土地が、自然公園法第20条第1項に規定する国立公園の特別地域のうち、特別保護地区(自然公園法21①)及び第一種特別地域(自然公園法施行規則9の2一)内の土地であること(措法70の12③一、措規23の17②)。
② その土地が、相続開始の直前までに被相続人と環境大臣との間で締結された風景地保護協定(自然公園法43①)で次の要件を満たすものの目的となる土地であること(措法70の12③二、措令41の11の2)。
 イ 平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に締結されたものであること。
 ロ その締結の時から当該相続開始の時まで引き続きその被相続人に対して効力があったものであること。
 ハ 有効期間が10年以上であること。
 ニ 被相続人が環境大臣に対して、風景地保護協定の目的となっている土地を貸し付けていること。
 ホ 上記ニの土地の貸付け(以下「協定貸付け」という。)の期間が10年以上であること。
 へ 協定貸付けに係る契約及び風景地保護協定が、当該協定貸付けの期間又は当該風景地保護協定の有効期間の中途において、当事者が風景地保護協定に違反したと認められる場合又は正当な事由があると認められる場合を除き、解除することができないものであること。
 ト 協定貸付けの期間の満了時及び風景地保護協定の有効期間の満了時には、正当な事由があると認められる場合を除き、従前と同一の条件で当該協定貸付けに係る契約及び当該風景地保護協定が更新されるものであること。
(3)この特例の適用を受けるための手続  この特例の適用を受けようとする相続税の納税義務者は、相続税法第42条の物納の許可の申請書に、物納に充てようとする自然公園法の国立公園特別保護地区等内の土地に係る収納確認書(注)のほか、物納に充てようとする土地に係る風景地保護協定の写しを添付して納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(措法70の12④、措規23の17③④)。
(注)「収納確認書」とは、その土地が物納に充てることができる財産(風景地保護協定に基づき設定されている地上権、賃借権等を除き、土地に関する所有権以外の権利が設定されていないものに限る。)であることについての環境大臣の証明書で、その土地が上記(2)の要件を満たすものであることその他次に掲げる事項の記載があるものをいう(措法70の12④かっこ書、措規23の17③)。
① 物納に充てようとする土地を相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)により取得した者の氏名及び住所又は居所
② 物納に充てようとする土地の所在、地番及び面積
③ 物納に充てようとする土地のうち風景地保護協定の目的となる土地の所在、地番及び面積
④ 風景地保護協定に係る次に掲げる事項
 イ 当該風景地保護協定の名称
 ロ 当該風景地保護協定を締結した被相続人の氏名及びその死亡の時における住所又は居所
 ハ 当該風景地保護協定が被相続人と環境大臣との間で締結された年月日及び当該風景地保護協定の有効期間
⑤ その他参考となるべき事項

2 適用関係  この特例は、平成23年4月1日以後に締結された風景地保護協定に係る相続税について適用される(改正法附則1、措法70の12③)。

Ⅴ その他の改正

〈1〉還付加算金の計算期間の見直し

1 改正の内容
 更正又は決定があった場合の還付加算金の計算期間について、申告期限以後の期間について、還付加算金を付す期間に算入しないこととされた。
① 決定があった場合(新相法33の2⑦一)
  決定があった日の翌日から支払決定又は充当の日までの期間
② 更正等(注1)があった場合(新相法33の2⑦二)
 イ 原則(新相法33の2⑦二柱書)  更正等があった日の翌日以後一月を経過する日の翌日から支払決定又は充当の日までの期間
 ロ 更正の請求に基づく更正(注2)(新相法33の2⑦二イ)  更正の請求があった日の翌日以後三月を経過する日と更正(注2)があった日の翌日以後一月を経過する日のいずれか早い日の翌日から支払決定又は充当の日までの期間
 ハ 決定に係る更正(注3)(新相法33の2⑦二ロ)  決定があった日の翌日から支払決定又は充当の日までの期間
(注1)「更正等」とは、相続税についての処分等(更正の請求に対する処分又は国税通則法第25条の規定による決定をいう。)に係る不服申立て又は訴えについての決定若しくは裁決又は判決をいう。
(注2)この「更正」には、その更正の請求に対する処分に係る不服申立て又は訴えについての決定若しくは裁決又は判決を含む。
(注3)この「更正」には、その決定に係る不服申立て又は訴えについての決定若しくは裁決又は判決を含む。ただし、更正の請求に基づく更正及び相続税の課税価格の計算の基礎となった事実のうちに含まれていた無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたこと、当該事実のうちに含まれていた取り消しうべき行為が取り消されたことその他これらに準ずる一定の理由に基づき行われた更正は除かれる。

2 適用関係  上記1の改正は、平成24年1月1日以後の支払決定又は充当をする還付金に係る還付加算金について適用される。ただし、当該還付加算金の全部又は一部で同日前の期間に対応するものについては、従来どおり(改正法附則17①)。
 また、平成23年12月31日以前に支払決定又は充当をした還付金に係る還付加算金については、従来どおり(改正法附則17②)。

〈2〉調書の提出の特例の改正

1 改正の内容
 保険金又は退職手当金等に関する調書及び信託に関する調書のうち、その調書の提出期限の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの間に提出すべきであった枚数が1,000枚以上であるものについては、その調書の記載事項を次のいずれかの方法により所轄税務署長に提供しなければならないこととされた(新相法59④)。
① あらかじめ税務署長に届け出て行う電子情報処理組織(行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律第3条第1項に規定する電子情報処理組織をいう。)を使用する方法(すなわちe-taxにより提出する方法)
② 記載事項を記録した光ディスク等を提出する方法
 なお、提出すべきであった調書の枚数が1,000枚に満たない場合であっても、従来どおり所轄税務署長の承認を受けた場合には、その調書に記載すべきものとされる事項を記録した光ディスク等(注)による提出が可能とされている(新相法59⑤)。
(注)「光ディスク等」とは、光ディスク、磁気ディスク又は磁気テープをいう。
(備考)これらの方法による記載事項の提供は、質問検査権又は罰則の規定の適用上は、調書の提出とみなされる(新相法59⑥)。

2 適用関係  上記1の改正は、平成26年1月1日以後に提出すべき調書について適用される(改正法附則20①②)。

〈3〉罰則の見直し

1 改正の内容
(1)相続税法における罰則の見直し
 故意に「期限内申告書又は特別縁故者に対して相続財産が分与された場合の修正申告書をその提出期限までに提出しないことにより相続税又は贈与税を免れた者」について、5年以下の懲役又は500万円以下(脱税額が500万円を超える場合には、情状により脱税額以下)の罰金に処し、又はこれらを併科することとされた(新相法68③④)。
(2)税特別措置法(相続税及び贈与税の特例に係る修正申告書等の提出)における罰則の見直し  相続税及び贈与税の特例に係る義務的修正申告書又は義務的期限後申告書の不提出についても、上記(1)の故意の申告書不提出によるほ脱犯とのバランスを踏まえ、罰則の対象とされた。
 具体的には、故意に次に掲げる相続税及び贈与税の特例に係る「義務的修正申告書又は義務的期限後申告書をこれらの申告書の提出期限までに提出しないことにより相続税又は贈与税を免れた者」について、5年以下の懲役又は500万円以下(脱税額が500万円を超える場合には、情状により脱税額以下)の罰金に処し、又はこれらを併科することとされた(新措法70の13①②)。
① 在外財産等の価額が算定可能となった場合の修正申告等(措法69の3)
② 国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等(措法70)
③ 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(措法70の2)
④ 特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(措法70の3)
 なお、上記の改正に併せ、法人の代表者等が違反行為をした場合の両罰規定が整備された(新措法70の13④~⑥)。

2 適用関係  上記1の改正は、公布の日(平成23年6月30日)から起算して2月を経過した日以後にした違反行為について適用され、同日前にされた違反行為に対する罰則の適用については、従来どおり(改正法附則1一ハ及びヨ、92)。

〈4〉相続税の延納期間等の判定をする場合の「課税相続財産の価額」の見直し

1 改正の内容
 相続税の延納における延納期間・延納利子税割合の判定の際に用いる「不動産等の割合」などの計算を行う場合の分母である「課税相続財産の価額」は、課税相続財産の中に特例非上場株式等又は特例相続非上場株式等があるときは、当該特例非上場株式等又は当該特例相続非上場株式等の価額に100分の20を乗じて計算した価額(当該特例非上場株式等に係る認定承継会社若しくは当該認定承継会社の特別関係会社であって当該認定承継会社との間に支配関係がある法人又は当該特例相続非上場株式等に係る認定相続承継会社若しくは当該認定相続承継会社の特別関係会社であって当該認定相続承継会社との間に支配関係がある法人(以下「認定承継会社等」という。)が会社法第2条第2号に規定する外国会社(当該認定承継会社又は当該認定相続承継会社の特別関係会社に該当するものに限る。)又は措置法第70条の7の2第14項第10号(同法第70条の7の4第11項において準用する場合を含む。)に規定する一定の法人の株式又は出資を有する場合には、当該認定承継会社等が当該株式又は出資を有していなかったものとして計算した価額に100分の20を乗じて計算した価額と当該株式又は出資の価額との合計額)とすることとされた(措法70の7の2⑭十、70の8の2①等)。

2 適用関係  平成23年6月30日以後に相続又は遺贈により取得する非上場株式等に係る相続税について適用され、同日前に相続又は遺贈により取得した非上場株式等に係る相続税については、従来どおり(改正法附則78②)。

震災関係

Ⅰ 特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例

(1)
平成23年3月10日以前に相続又は遺贈により財産を取得し、その相続又は遺贈に係る相続税の申告書の提出期限が同月11日以後である場合において、その者がその相続若しくは遺贈により取得した財産又は贈与により取得した財産(平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に取得した財産で、相続税法第19条(相続開始前3年以内の贈与財産の加算)又は第21条の9(相続時精算課税)の規定の適用を受けるものに限る。)で、同月11日において所有していたもののうち、特定土地等(注1)又は特定株式等(注2)があるときは、その特定土地等又は特定株式等については、相続税の課税価格に算入すべき価額又は相続税の課税価格に加算すべき受贈財産の価額は、相続若しくは遺贈により取得した時の時価によらず、大震災の発生直後の価額(注3)によることができることとされた(震災税特法34①)。
(注1)特定土地等とは、指定地域内にある土地又は土地の上に存する権利をいい(震災税特法34①)、指定地域とは、大震災により相当な損害を受けた地域として財務大臣の指定する地域をいい(震災税特法34①)、具体的には、平成23年3月財務省告示第144号により次の地域が指定されている。
 青森県:全域
 岩手県:全域
 宮城県:全域
 福島県:全域
 茨城県:全域
 栃木県:全域
 埼玉県:加須市(旧北川辺町及び旧大利根町の区域に限る。)、久喜市
 千葉県:全域
 新潟県:十日町市、中魚沼郡津南町
 長野県:下水内郡栄村
(注)埼玉県加須市(旧大利根町の区域に限る。)については平成23年7月8日に(平成23年7月財務省告示第244号)、埼玉県加須市(旧北川辺町の区域に限る。)及び久喜市については平成23年7月20日に(平成23年7月財務省告示第247号)追加指定されたもの。
  なお、これらの地域は、国税通則法の規定に基づき国税庁長官が申告期限等の延長措置を講じた地域(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県)とは異なる(下記参考)。
(参考)  青森県、岩手県、宮城県、福島県及び茨城県に国税の納税地を有する者に係る国税に関する申告期限等ついては、平成23年3月15日に、国税通則法施行令の規定に基づき、別途国税庁長官が告示で定める期日まで延長措置が講じられた(通則令3①、平成23年3月国税庁告示第8号)。
 その後、青森県及び茨城県に国税の納税地を有する者については、平成23年6月3日に期日の指定がなされ、(平成23年3月11日から同年7月28日までの間に申告期限等が到来するものについて)平成23年7月29日が申告期限等とされた(平成23年6月国税庁告示第15号)。
 また、図表4に掲げた地域に国税の納税地を有する者については、平成23年8月5日に期日の指定がなされ、(平成23年3月11日から同年9月29日までの間に申告期限等が到来するものについて)平成23年9月30日が申告期限等とされた(平成23年8月国税庁告示第23号)。

(注2)特定株式等とは、指定地域内に保有する資産の割合が高い一定の法人の株式又は出資(上場株式等を除く。)をいう(震災税特法34①)。
 この場合の指定地域内に保有する資産の割合が高い一定の法人とは、相続等(相続若しくは遺贈又は贈与をいう。)により株式等を取得した時において、その株式等に係る法人の保有していた資産の時価の合計額のうちに占める指定地域内の動産(金銭及び有価証券を除く。)、不動産、不動産の上に存する権利及び立木((注3)のロにおいて「動産等」という。)の価額の合計額の割合が10分の3以上の法人をいうものとされ(震災税特令27①)、上場株式等とは、上場株式、金融商品取引法に規定する店頭売買有価証券に該当する株式又は出資及び公開途上にある株式をいうものとされた(震災税特法34①、震災税特令27②、震災税特規則12)。
(注3)大震災の発生直後の価額とは、具体的には次のとおりとされた(震災税特令27③)。
 イ 特定土地等の場合  その特定土地等及びその特定土地等の上にある不動産の状況が大震災の発生直後も引き続き相続等により取得した時の現況にあったものとみなして、大震災発生直後における価額として評価した額に相当する金額。すなわち、相続等によりその土地等を取得した時から大震災発生直後までの間に、土地等の区画形質の変更や利用・権利関係の変更があった場合でも、これらの事由による地価の変動は、大震災とは何ら関係がないものであることから、これらの事由による地価の変動は考慮せず、その土地等の大震災発生直後の価額を評価し直した場合の価額とされた。
 ロ 特定株式等の場合  その特定株式等を相続等により取得した時においてその特定株式等に係る法人が保有していた指定地域内にある動産等(その法人が平成23年3月11日において保有していたものに限る。)の、その特定株式等を相続等により取得した時における状況が、大震災の発生直後の現況にあったものとみなして、その相続等により取得した時における価額として評価した額に相当する金額。すなわち、特定株式等に係る法人が相続開始時等において保有していた資産のうち指定地域内にあったもので大震災発生の時において保有していたものについては、相続開始時等において既に大震災による損害を被った状態で存していたものとして、その特定株式等を評価した場合の価額とされた。
(2)この特例は、平成23年3月10日以前に、特別縁故者として、相続財産法人から相続財産の分与を受け、その相続財産の遺贈に係る相続税の申告書の提出期限が同月11日以後である場合において、その遺贈を受けた相続財産で同日において所有していたもののうちに特定土地等又は特定株式等があるときについても適用される(震災税特法34②)。
(3)この特例については、各相続人には、取得した相続財産を物納に充てる等様々の事情があること、また、特定土地等又は特定株式等の価額が必ず下落するとは限らないことが考えられることから、これらの特例の適用に当たっては、相続税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む。)又は更正請求書に、この特例の適用を受けようとする旨の記載がない場合には適用しないこととされ、特例の適用の選択が納税者に任されている。ただし、その記載がなかったことについて税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときには、この限りでない(震災税特法34③)。
(4)なお、この特例については、相続財産である特定土地等及び特定株式等についての災害に起因する、いわば経済的な損失による評価損に配慮した特例であり、相続財産について災害により発生したいわば物理的な損失を対象として減免措置が講じられている災害減免法とは性格が異なる。したがって、土地等については、同一の相続人について、この特例の適用と災害減免法の減免措置との両方の適用がある場合もある。

Ⅱ 特定土地等及び特定株式等に係る贈与税の課税価格の計算の特例
 平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に贈与により取得した財産で同月11日において所有していた財産のうちに、特定土地等又は特定株式等がある場合には、その特定土地等又は特定株式等については、贈与税の課税価格に算入すべき価額は、贈与により取得した時の時価によらず、大震災の発生直後の価額によることができることとされた(震災税特法35①)。
(注)この場合の特定土地等及び特定株式等並びに大震災の発生直後の価額の定義は、の特例と同じである。
 この特例は、相続税における特例と同様に、贈与税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む。)又は更正請求書に、この特例の適用を受けようとする旨の記載がない場合には、適用しないこととされている。ただし、その記載がなかったことについて税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときは、この限りでない(震災税特法34②)。
 なお、本特例と災害減免法の減免措置との適用関係についても、相続税の場合と同じである。

Ⅲ 相続税及び贈与税の申告書の提出期限の特例
 前述のとおり、平成23年3月10日以前の相続若しくは遺贈又は贈与に係る相続税又は贈与税で、同月11日以後に申告期限が到来するものについては、納税者の選択により大震災の発生直後の価額による申告が認められた。この大震災の発生直後の土地の価額については、平成23年分の路線価等を基準として判断せざるを得ないことになるが、この平成23年分の路線価等に乗じる調整率は、本年10月ないし11月に、別途、国税庁ホームページで公開される予定である。このような事情を考慮し、今回講じられた本特例の適用がある相続税及び贈与税の申告期限については、以下のとおり、大震災発生直後の価額の評価が可能な時期までその延長が認められた。
(1)相続税の申告書の提出期限の延長  同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者のうちに前記の特例の適用を受けることができる者がいる場合において、その相続又は遺贈により財産を取得した者又はその者の相続人が提出すべき相続税の申告書の提出期限が指定日の前日以前であるときは、その申告書の提出期限は、指定日とされた(震災税特法36①②)。
(2)贈与税の申告書の提出期限の延長  平成22年1月1日から同年12月31日までの間に贈与により財産を取得した個人で前記の特例の適用を受けることができるものが提出すべき贈与税の申告書の提出期限は、指定日とされた(震災税特法36③)。
 また、この場合の個人が贈与税の申告書を提出しないで死亡した場合等において、その相続人が提出すべき贈与税の申告書の提出期限が指定日の前日以前であるときも、その申告書の提出期限は、指定日とされた(震災税特法36④)。
(注)「指定日」とは、財務大臣が東日本大震災の状況及び東日本大震災に係る国税通則法第11条の規定による申告に関する期限の延長の状況を勘案して別に定める日をいい、具体的には、平成24年1月11日と上記Ⅰ(1)(注1)(参考)の期日(国税通則法施行令の規定に基づき税務署長が相続税法第27条から第29条までの規定により申告書を提出すべき者に係るこれらの申告書の提出期限を延長した場合には、当該提出すべき者については、同項の規定に基づき当該税務署長が指定した期日)とのいずれか遅い日とされた(震災税特法36①、平成23年4月財務省告示145号)。

Ⅳ 東日本大震災の被災者が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税特例、特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(以下「贈与税に係る住宅特例」という。)に係る住宅用家屋についての居住要件等の特例

1 制度の概要
 贈与税に係る住宅特例について、東日本大震災の被災者に関して、次のような特例が設けられた。
(1)滅失等に係る居住要件の特例  平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に住宅用家屋の新築、取得又は増改築等に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」という。)の贈与を受けて住宅用家屋の新築(新築に準ずる状態を含む(注1)。)、取得又は増改築等(以下「新築等」という。)をして贈与税に係る住宅特例の適用を受けた一定の受贈者(以下「特定受贈者」という。)が、同日後遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより贈与税に係る住宅特例の適用を受けた場合において、その住宅用家屋が東日本大震災により滅失(通常の修繕によっては原状回復が困難な損壊を含む。以下において同じ。)をしたことによってその居住の用に供することができなかったときは、居住の用に供することを要件としないこととされた(震災税特法37①、38①)。
(注1)「新築に準ずる状態」とは、屋根(その骨組みを含む。)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態をいう(震災税特規則13①、14①)。
(注2)この特例は、平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者(平成22年1月1日から同年12月31日までの間に贈与により住宅取得等資金の取得をした者については、贈与税の申告書を提出していない者に限る。)にあっては、贈与税の申告書(期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む。)又は更正請求書に、上記(1)の特例の適用を受けようとする旨の記載をし、計算の明細書等の書類を添付した場合に限り適用される(震災税特令28、29、震災税特規則13②、14②)
(2)居住期限の延長の特例  平成22年1月1日から同年12月31日までの間に住宅取得等資金の贈与を受けた特定受贈者が、住宅用家屋の新築等をし、平成23年3月15日後遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより贈与税に係る住宅特例の適用を受けた場合において、東日本大震災に起因するやむを得ない事情によりその住宅用家屋を同年12月31日までにその居住の用に供することができなかったときは、その居住期限を平成24年12月31日まで延長することとされた(震災税特法37②、38②)。
(3)新築等に係る期限の延長の特例  平成23年1月1日から同年3月10日までの間に贈与により金銭を取得した者が、その金銭を対価に充てて住宅用の家屋の新築等をする場合においては、東日本大震災に起因するやむを得ない事情により平成24年3月15日までに新築等ができなかったときであっても、贈与税に係る住宅特例の適用を受けることができることとした上で、その新築等の期限を平成25年3月15日まで延長することとされた(震災税特法37③、38③)。

2 適用関係 (1)上記1(1)の特例は、平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に贈与により取得をした住宅取得等資金について、贈与税に係る住宅特例の適用を受けた特定受贈者について適用される(震災税特法37①、38①)。
(2)上記1(2)の特例は、平成22年1月1日から同年12月31日までの間に贈与により取得をした住宅取得等資金について、贈与税に係る住宅特例の適用を受けた特定受贈者について適用される(震災税特法37②、38②)。
(3)上記1(3)の特例は、平成23年1月1日から同年3月10日までの間に取得をした住宅取得等資金に係る贈与税について適用される(震災税特法37③、38③)。

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