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解説記事2012年01月09日 【ニュース特集】 税制抜本改革のプロローグ、平成23年度税制改正を振り返る(2012年1月9日号・№433)

平成24年度改正や抜本改革も困難?
税制抜本改革のプロローグ、平成23年度税制改正を振り返る

 紆余曲折を経た平成23年度税制改正の積み残し部分が平成23年11月30日に国会で成立し、12月2日に公布された。衆参のねじれ国会のなか、平成23年度税制改正法は年度内に成立が叶わなかったばかりか、2つに分離されたうえ、一部の内容を削除する形で最終的に決着した。削除された部分は実質的に税制抜本改革と位置付けられる部分。法人実効税率引下げと課税ベースの拡大に関しては実現したものの、個人所得課税や資産課税に関する増税部分は自民党などの反対を受けて見送りとなった。
 このように平成23年度税制改正に関しては、例年とは異なり、成立までの経緯が複雑に入り組んでいるため、実現した内容や施行日などが非常に分かりづらくなっている。
 今回の特集では、税制抜本改革の序章(プロローグ)であり、この数奇な運命を辿った平成23年度税制改正法の成立過程(今号10頁参照)とともにその主だった内容を振り返り、整理することとする。

消費税以外の税制抜本改革を盛り込む平成23年度改正だが……  平成23年度税制改正については、平成22年12月16日に税制改正大綱が閣議決定。消費税率の引上げは除かれているものの、①給与所得控除の上限設定、②法人実効税率の引下げおよび課税ベースの拡大、③相続税の基礎控除の引下げや税率構造の見直し、④地球温暖化対策のための税の導入など、税制抜本改革の一環をなす改正が多く盛り込まれた。
 この税制改正大綱を受け、平成23年度税制改正法案(「所得税法等の一部を改正する法律案」)が平成23年1月25日に国会に提出された。
 ただ、自民党などが税制抜本改革ともいえる増税項目について反対。その後、平成23年度税制改正を巡り、与野党の攻防が続くことになる。
年度内成立できず、つなぎ法案で混乱を回避  1つ目の山場が平成22年度末(平成23年3月31日)だ。参議院での与野党逆転により、3月31日までに法案成立の見通しが立たず、同日で期限切れとなる租税特別措置の取扱いが焦点となった。
 これについては、いわゆるつなぎ法案(「国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案」)を議員立法として提出することにより、当面の危機を回避することになった。
 つなぎ法案は平成23年3月31日に期限が到来する租税特別措置等について、平成23年6月30日までの3か月間、単純延長するものだ。
 対象となったのは、中小企業者等の法人税率の特例等、エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却または所得税の特別控除、住宅用家屋の所有権の保存登記の税率の軽減等、不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例など、全部で107項目であった。
 つなぎ法案については、年度内ぎりぎりの3月31日に国会で成立し、同日に公布された。これにより、ひとまず税制改正不成立による「空白期間」を作らずに済むことになった。
 ただ、延長された期間はわずか3か月のみ。6月末に向けて与野党での協議が進められることになった。ここが平成23年度税制改正にとって2つ目の大きな山場となる。

三党合意により平成23年度税制改正法案を2つに分離  与党である民主党と野党の自民党・公明党は審議がされないままとなっている平成23年度税制改正法案の取扱いについて協議。三党は6月10日、最終的に平成23年度税制改正法案を修正することで合意した(図表1参照)。三党合意と呼ばれるものだ。
 三党合意では、自民党などの反対により、検討を続けるとされた給与所得控除の見直しや法人実効税率の引下げなど、税制抜本改革の一環をなす改正と納税者権利憲章の策定などを盛り込んだ国税通則法の抜本改正部分を、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」として修正した。

 一方、平成23年6月末までに成立させるとした期限切れ租税特別措置の延長等および雇用促進税制や寄附金税制など、政策税制の拡充などの改正項目を盛り込んだものについては、別途の新たな法律案として、「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」として国会に提出した。
 平成23年度税制改正法案は2つに分離。後者の法案については、6月22日に国会で成立し、6月30日に公布(図表2参照)。原則として、平成23年6月30日から施行されている。

エネ革税制などが24年3月末まで延長  なお、課税ベースの拡大として、廃止・縮減等が予定されている租税特別措置のうち、①試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度の見直し、②エネルギー需給構造改革推進投資促進税制の廃止、③集積産業用資産の特別償却制度の見直し、④事業革新設備等の特別償却制度の見直し、⑤特定災害防止準備金制度の見直し、⑥中小企業等基盤強化税制の廃止、⑦公益法人等または協同組合等の貸倒引当金の特例の見直し、⑧商工組合等の留保所得の特別控除制度の廃止については、平成24年3月31日まで単純延長されることになった。

積み残し部分の平成23年度税制改正は2回も修正に  最後の山場は、積み残し部分の平成23年度税制改正法案(「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」)の取扱いだ。
納税者権利憲章などを内閣修正で削除  昨年の秋の臨時国会では、政府が10月28日、復興特別税として所得税額や法人税額等に対する付加税の創設を盛り込んだいわゆる復興財源確保法案(「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案」)を国会に提出するとともに、継続審議となっている積み残し部分の平成23年度税制改正法案を一部修正した。法案成立が遅れている関係から施行期日を一部修正するとともに、国税通則法に関して、自民党が反対していた納税者権利憲章の作成・公表や「国税通則法」の題名変更、税務調査における書面での事前通知などを法案から削除することとした。
 これら以外の個人所得課税(給与所得控除の上限設定など)や資産課税(相続税の基礎控除の引下げや税率構造の見直しなど)、地球温暖化対策のための税の導入についての増税項目は当初は削除されず、引き続き法案に盛り込まれたままとなっていた。
 政府は、復興財源確保法案により、所得税額や法人税額に対する付加税を課すことにより復興債の償還原資として充てるとともに、積み残し部分の平成23年度税制改正法案も同時に成立させることにより、臨時増税の規模の圧縮を目指していたからだ。
個人所得・資産課税は自民党の反対で削除  ただし、今回も個人所得課税や資産課税の増税に反対する自民・公明党により、積み残し部分の平成23年度税制改正法案は衆議院で再び修正されることになった(図表3参照)。

 最終的には、法人課税と納税環境整備以外の項目はすべて削除されることになった。個人所得課税や資産課税の見直しについては、税制抜本改革での課題として先送りされたわけだが、これにより、積み残し部分の平成23年度税制改正法案は、11月30日に国会で成立(図表4参照)。12月2日に公布・施行された。

 なお、施行日は、①更正の請求および増額更正の期間延長、更正の請求の範囲の拡大(当初申告要件の見直し)は公布の日(平成23年12月2日)、②内容虚偽の更正請求書の提出に対する罰則は公布の日から起算して2月を経過した日、③法人税率の引下げおよび課税ベースの拡大は平成24年4月1日、④税務調査手続(事前通知、終了通知等)、質問検査権に関する規定の集約化、処分の理由附記は平成25年1月1日、⑤個人の白色申告者に対する理由附記および記帳制度の見直しは平成26年1月1日からとされている。
所得税額に対する付加税は25年間に  復興財源確保法案についても一部修正され、所得税額に対する付加税について25年間(平成25年1月~平成49年12月)、2.1%(当初の法案では10年間で4%)とされた。また、法人税額に対する付加税については、当初案どおり、平成24年度から26年度の3年間、10%課される。
 なお、たばこ税の増税は自民党の反対により法案から削除された。同法案についても、11月30日に国会で成立。12月2日に公布、施行されている。
復興特別税で法人実効税率は?
 平成23年度税制改正により、たとえば、東京都の場合、法人実効税率が平成24年4月1日から現行の40.69%から35.64%に引き下げられることになる。ただし、復興特別税として、法人税額に対する付加税が平成24年度から26年度の3年間、10%課せられることになる。このため、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度の法人実効税率は38.01%となる。

税制抜本改革は23年度改正以上の混乱も  紆余曲折を経て成立となった平成23年度税制改正だが、削除された個人所得課税や資産課税の見直し、地球温暖化対策のための税については、12月10日に閣議決定された平成24年度税制改正大綱や消費税率の引き上げも含めた税制抜本改革で審議が行われることになる。
 しかし、今のところ自民党は税制抜本改革の議論に応じる気配はない。平成24年度税制改正大綱においても、自民党が反対する地球温暖化対策のための税の導入が盛り込まれており、修正は必至の状況だ。
 参議院での与野党逆転のねじれ国会では、野党の協力がなければ税制改正法案は成立しない。平成24年度税制改正および税制抜本改革では、平成23年度税制改正以上の混乱も予想される。改正内容も増税項目が多いため、適用日などがポイントとなってきそうだ。タックスプランニングなど、企業や実務家にあっては、早めの対策も必要になってくる。

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