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解説記事2012年10月08日 【最新判決研究】 事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき債務免除益の範囲(2012年10月8日号・№470)

最新判決研究
事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき債務免除益の範囲
大阪地裁平成21年(行ウ)第201号、平成24年2月28日判決
 筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣

一、事実

(1)X(原告)は、平成2年10月1日から平成18年9月30日まで、明石市内でC病院(以下「本件病院」という。)を開設していた医師であるが、平成18年5月11日、医療法人D会(以下「本件医療法人」という。)を設立してその理事長に就任し、同年10月1日、本件病院に係る事業を本件医療法人に引き継いだ。Xは、本件病院の建設資金及び運営資金等として、B機構から平成6年10月18日に4億5,600万円を、E銀行から平成2年10月31日に7億5,200万円、平成5年12月21日に7億4,270万円を、それぞれ借り入れた。E銀行のXに対する上記貸金債権は、平成8年1月にF銀行に営業譲渡によって承継され、平成11年3月23日にA機構に譲渡された。
 Xは、平成17年8月9日当時、上記の借入れにより、A機構及びB機構に対して負担した債務の総額が次のとおり29億1,033万円余であったが、いずれの債務についても期限の利益を喪失していた。
① A機構に対する債務 24億247万円余
② B機構に対する債務 5億786万円余
(2)Xは、平成17年8月9日、G銀行から5億円を借り入れ、これを原資として、A機構に対し2億830万円を、B機構に対し2億9,170万円をそれぞれ支払った。A機構及びB機構(以下「A機構等」という。)は、同日、Xに対し、上記返済後の債務の残高(総額24億1,033万円余)を免除した(以下「本件債務免除」といい、当該利益を「本件債務免除益」という。)。Xは、平成17年分所得税について、事業所得の金額の計算上、本件債務免除益を総収入金額に算入しないで確定申告した(以下「本件確定申告」という。)
 これに対し、処分行政庁は、平成20年5月2日、Xに対し、平成17年分所得税につき、本件債務免除益のうち10億2,116万円余を事業所得の総収入金額に算入する更正及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本件更正等」という。)をした。Xは、本件更正等を不服とし、不服申立ての手続を経て、国(被告)に対して、当該処分の取消しを求めて本訴を提起した。

二、争点及び当事者の主張

1 争  点
 本件の争点は、本件更正等の適法性であり、具体的には以下のとおりである。
① 本件債務免除益に所得税基本通達(以下「基本通達」という。)36-17の適用があるか否か
② 本件債務免除益の一部のみを算入したことの当否
③ 国税通則法65条4項の「正当な理由」の有無

2 Xの主張 (1)事業所得者が経営不振により著しく債務超過の状態となったため債権者から債務免除を受けた場合、原則どおりこれを収入金額に算入すると、実質的には支払能力のない債務の弁済を免れただけであるのに、事業所得としてこれに課税が行われることになる。しかし、基本通達36-17は、上記のような債務免除益について、経済的利益の価額がゼロであるとして収入金額に算入しない取扱いを明らかにしたものである。
(2)基本通達36-17は、所得税法9条1項10号と同趣旨に出たものと解されるから、基本通達36-17にいう「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、基本通達9-12の2にいう「債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合」と、基本的には同一である。また、その判定は、債務免除を受ける直前の状況から判断すべきである。
(3)Xは、平成17年8月当時、A機構等に対し多額の負債を抱え、著しい債務超過の状況に陥っており、当時のXの信用、才能等をもってしても、これらの負債を弁済することは到底不可能な状態であった。そうすると、本件債務免除は、基本通達36-17が予定する典型的な場面であるというべきである。
(4)処分行政庁は、本件更正等をする前に、税務調査によって、本件債務免除益の総額を把握していた。それにもかかわらず、処分行政庁は、債務免除額が10億2,116万円余であることを前提に、本件更正等をした。これは、処分行政庁が、裁量によってXの納税義務を決定したことを意味し、合法性の原則に反し違法である。
(5)国の主張する基本通達36-17の解釈は、同通達の文言から大きく乖離するものであるから、納税者にこのような解釈は期待できない。そうすると、Xが本件債務免除益を事業所得として総収入金額に算入しなかったことにつき、「正当な理由」が認められる。

3 国の主張 (1)課税減免規定の解釈に当たっては、課税要件規定以上に、その法律の趣旨・目的に沿った厳格な解釈が要求されており、みだりに拡張、類推して解釈することは、慎まなければならない。所得税法の下においては、債務免除益は、原則として担税力を有する課税所得に当たると解されており、所得税法所定の非課税所得には該当しない。
(2)基本通達36-17と所得税法9条1項10号及び所得税法施行令26条において、それぞれ「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である」場合との文言が用いられているが、両者は同一の趣旨に出たものであることが明らかであり、同一の文言である以上、同様に解するのが合理的である。したがって、基本通達36-17にいう「資力を喪失して弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、「債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合」をいう。
(3)債務免除益は、当該負債が消滅することによって資産状態が回復したことが収入と評価されるのであり、これによりその他の債務の弁済が可能となって担税力を回復したのであれば、基本通達36-17の趣旨が該当すべき場面ではなくなる。このような債務免除の経済実態や法的意味に照らしても、判定時期はその効果発生時点と解すべきである。
(4)Xは、本件債務免除を受ける以前から、医療法人化を条件とする融資を受けることを計画し、平成17年8月9日、G銀行から、できるだけ早く医療法人化することを条件として5億円の融資を受け、これにより旧債務の一部を弁済し、A機構等から残債務の免除を受け(本件債務免除)、現に本件債務免除を受けた平成17年8月から約1年余りで約定どおり医療法人化している。また、Xは、G銀行から受けた融資について、約定どおり、平成17年8月から平成21年12月時点まで滞りなく弁済している。そして、Xは、平成18年10月1日にその個人事業を本件医療法人に引き継いでいるところ、同法人からは、役員報酬として月額250万円を得ており、また、本件病院の敷地を所有し、同法人への貸付けの対価として、地代月額60万円を受領しているのであって、相当額の収入を得ていることが明らかである。
 以上のとおり、Xは、G銀行から5億円の融資を受けることが可能な状態であり、本件債務免除によりXの資産及び負債の状況が大きく改善したこと、その後も滞りなく弁済している上、相当額の収入を得ていることからすれば、本件債務免除は「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められた場合に受けたもの」に該当しない。
(5)Xは、本件確定申告において本件債務免除益が計上されていなかった理由として、①基本通達36-17の解釈が常識を逸脱する不合理なものであること、②法人税については、平成17年4月に債務免除に関して債務者に有利な改正がされているから、基本通達36-17もそれに沿った解釈をすることが自然であること、③Xが本件債務免除を受けた平成17年当時において基本通達36-17の解釈は明らかではなかったことを挙げる。しかし、それらは、Xが過少申告をする正当な理由に当たらない。

三、判決要旨

請求認容。
(1)所得税法は、経済的利益も、それが同法9条所定の非課税所得に当たらない限り、課税対象に含める旨を規定する。本件で問題となる債務免除益について、債務免除は、債権者が債務者に対して有する債権を消滅させる行為であり、その結果、債務者が債権者に対して負担する支払義務が消滅するのであるから、所得税法36条にいう経済的利益に当たるというべきである。
(2)ところで、基本通達36-17は、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けた債務免除益は各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しない旨規定するところ、同規定の所得税法上の位置付け、趣旨、適用要件について、当事者間に争いがある。
 そこで、基本通達36-17の文言のみならず、参考となる所得税法等の規定や通達等を踏まえて、以下検討する。
 相続税法8条ただし書1号は、債務者が経済的破綻状態に至った場合においてやむを得ず、又は道義的に行われた債務免除にまで贈与税が課されることは適当でないとの考えに基づいて定められた規定であるところ、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難であるか否かの判断時期が債務免除の直前であることは、同規定の趣旨からも、またその文言からも明らかである。そうすると、個人から受けた債務免除益については、債務免除の直前の状況を前提に資力を喪失して債務を弁済することが困難であったが、債務免除の結果、債務者が資力を回復したというような場合でも、一定の範囲で贈与税が課されないことになる。
 ところで、基本通達36-17は、所得税法9条1項16号が適用されない債務免除益に適用される規定であるところ、債務免除を行った者が個人であるか法人であるかといった債権者の属性によって、債務免除益に課税するか否かについて差異を設ける合理的な理由があるとは認め難い。そうすると、法人である債権者から債務免除を受けた場合、当該債務免除後においても、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合でなければ、全く基本通達36-17の適用がないとすることは、個人から債務免除を受けた場合と比して均衡を失するものといえる。他方、法人である債権者から債務免除を受ける前において、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であれば、当該債務免除の結果債務者が資力を回復した場合であっても、当然に債務免除益全額を収入金額に算入しないというのも、個人から債務免除を受けた場合と比してやはり均衡を失するものといえる。
(3)基本通達9-12の2は、所得税法9条1項10号にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合とは、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいい、これに該当するかどうかは、これらの規定に規定する資産を譲渡した時の現況により判定するとしている。これらの規定が、一定の要件の下に強制換価手続等による資産の譲渡による所得を非課税所得としているのは、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であるために強制換価手続等が行われる者から所得税を徴収することが困難であることや、強制換価手続等による資産の譲渡が本人の意思に基づかない強制的な譲渡であり、あるいはそれと同視できるものであること等を考慮したことによるものと解される。
 そして、所得税法施行令26条は、その文言上、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」であるという要件と「強制換価手続の執行が避けられない」という要件とを並列に扱うと共に、これら各要件が認められる「場合における資産の譲渡」と規定していることからすると、同条は、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難か否かの判断を、強制換価手続の執行が避けられないことに基づきした資産の譲渡の直前の財産状況を前提に行うものとしていると解されるところであって、所得税法9条1項10号も、同号自体が「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における(中略)強制換価手続による資産の譲渡による所得」と、「これに類するものとして」上記所得税法施行令26条が定める所得を非課税とする旨規定していることに照らせば、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であるか否かの判断を、当該強制換価手続による資産の譲渡が行われる直前の財産状況を前提に行うものとしていると解するのが相当である。
(4)会社更生手続又は民事再生手続が開始された法人が受けた債務免除益については、法人税法上(同法59条)、これを益金に算入する扱い自体に変更はないものの、当該債務免除額を限度として、通常の繰越控除の適用期間を経過した欠損金の損金算入を認めるものとされており、法人の再建をより容易にする趣旨の規定が設けられているということができる。これに対し、民事再生手続が開始された個人が受けた債務免除益については、所得税法上、個人の再建を支援する趣旨の特別の規定は設けられていない。これは、民事再生手続が開始された個人の再建を支援することについては、基本通達36-17がその役割を果たしていることによるものと解することもできよう。
(5)以上に検討したところに加え、基本通達36-17が、「債務免除益のうち、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたもの」と規定しており、その文言からは、債務免除を受ける直前の状態において、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であることを要件としていると理解するのが自然であることに照らすと、基本通達36-17は、債務免除を受ける直前において、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合には、当該債務免除益を各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しない旨の取扱いをする旨を定めているものと解すべきである。
(6)所得税法は、23条ないし35条において、所得をその源泉ないし性質によって10種類に分類し、それぞれについて所得金額の計算方法を定めているところ、これらの計算方法は、個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を所得とする趣旨に出たものと解される。このことに鑑みると、同法36条1項が、経済的な利益をもって収入する場合にはその利益の価額を各種所得の計算上収入金額又は総収入金額に算入する旨規定しているのは、当該経済的な利益のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を収入金額及び総収入金額に算入する趣旨をいうものと解すべきである。そして、債務免除を受ける直前において、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、債務者が債務免除によって弁済が著しく困難な債務の弁済を免れたにすぎないといえる場合には、当該債務免除という経済的利益によって債務者の担税力が増加するものとはいえない。そうすると、基本通達36-17本文は、そのような債務免除益を収入金額に算入しないことを定めたものと解するのが相当であり、このような解釈は、所得税法36条の趣旨に整合するものというべきである。
(7)上記に説示したところによれば、債務免除を受ける直前において、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、当該債務免除の額が債務者にとってその債務を弁済することが困難である部分の金額の範囲にとどまる場合には、当該債務免除益に基本通達36-17の適用があると解すべきである。
 次に、基本通達36-17にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」の意義について検討する。
 所得税法9条1項10号及び所得税法施行令26条の規定は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であるために強制換価手続が行われる者又はそれが避けられない者については、租税徴収が困難であることや、強制換価手続等による資産の譲渡が本人の意思に基づかない強制的な譲渡であり、あるいはそれと同視できるものであること等を考慮し、定められたものと解される。そうすると、基本通達9-12の2が、所得税法9条1項10号及び所得税法施行令26条にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」な場合とは、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいい、これに該当するかどうかは、これらの規定に規定する資産を譲渡した時の現況により判定すると規定するのは、上記の趣旨に沿う合理的なものといえる。
 そして、所得税法の規定を受けて制定された基本通達が、同法の規定と同様の文言を用いている以上、特段の事情がない限り、その意義についても同様に解すべきである。したがって、基本通達36-17にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、所得税法9条1項10号及び所得税法施行令26条同様、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいうと解するのが相当である。
(8)以上によれば、債務免除を受ける直前において、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、当該債務免除の額が債務者にとってその債務を弁済することが著しく困難である部分の金額の範囲にとどまる場合には、当該債務免除益は各種所得の計算上収入金額又は総収入金額に算入されないものと解するのが相当である。
(9)証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件債務免除が行われた経緯について、以下の事実が認定できる。
① A機構は、企業再生を円滑に進めるため、平成16年2月にA機構企業再生スキームを作成し、平成16年3月1日、国税庁課税部長に対し、再生計画により債権放棄等が行われた場合の債権者及び債務者における税務上の取扱いについて、照会したところ、国税庁課税部長は、平成16年3月24日、A機構の見解のとおりで差し支えない旨回答した。
② A機構は、Xに対し、企業再生スキームに基づき、医療経営の査定を受けた上で、本件病院を売却するか、本件病院の経営者を交替するか、可能な範囲で負債を一括返済し、その余の免除を受けるか、いずれかを選択することを求め、Xは、平成16年末、A機構の指定したL監査法人の調査を受けた。
③ Xの顧問税理士は、A機構に対し、平成17年6月29日、①同年5月31日時点の病院事業に係る純資産価額はマイナス10億8,819万円余であること、②5億7,000万円の返済をした上で、残債務の免除を受けた場合には、病院事業に係る純資産価額はマイナス5,302万円余となり、病院事業以外のX個人の財産が1,978万円余であるから、なおも約3,300万円の債務超過の状態であることなどを報告した。
④ A機構は、本件債務免除に先立ち、平成17年8月4日、Xから自己資金で7,000万円の弁済を受けたほか、同月3日、Xの兄でXのA機構に対する債務を保証していた乙から150万円の、同月4日、Xの弟で同債務を保証していた丙から550万円の、各支払を受けた。
(10)上記で認定した事実を総合すると、Xは、A機構から、本件病院を売却するか、本件病院の経営者を交替するか、可能な範囲で負債の一括返済を行い、その余の免除を受けるか、いずれかを選択するよう求められたため、G銀行から融資を受けた5億円に、自己資金の7,000万円を加えてA機構等に弁済することを選択したものである。そして、本件債務免除を受ける前の時点において、Xにこれ以上の資金調達能力があったことをうかがわせる事情はない。また、A機構は、XのA機構に対する債務の保証人からも、本件債務免除に先立ち、合計700万円を回収していたものであり、保証人からこれ以上の額を回収できたことをうかがわせる事情もない。さらに、本件債務免除は合理的な事業再生スキームであるA機構企業再生スキームに準じたスキームに基づき行われているものであり、Xの資産状況について、監査法人の調査が実施され、また、A機構による検討が行われ、それらを踏まえて本件債務免除が行われたものである。本件債務免除(平成17年8月9日)直前の時点において、XがA機構等に対して負担していた債務の総額は29億1,033万円余に上り、しかも、いずれの債務についても期限の利益を喪失していたことに加え、Xは、本件債務免除後もなお債務超過の状態であったことも併せ考慮すると、Xの債務超過の状態が著しく、Xの信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと優に認められるものであって、Xは本件債務免除を受ける直前において資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、本件債務免除の額がXにとってその債務を弁済することが著しく困難である部分の金額の範囲にとどまるものと認められるから、本件債務免除益については基本通達36-17が適用される。

四、解説

はじめに
 本件は、病院経営者であるXが、当該病院の開設(平成2年10月)、運営等のため、公的な融資機関であるA機構等又は市中銀行から融資を受け、その後、当該借入金に対する返済を滞らせ、平成17年8月現在、総額29億1,033万円の借財を抱えていたところ、A機構等から24億1,033万円の債務免除を受けたことの利益(本件債務免除益)がXの事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきか否かが争われたものである。
 所得税法では、債務免除益のような経済的な利益の全てが各種所得の総収入金額又は収入金額が含まれるものとされ(所法36①②)、特定の事実に基づいて収入する所得のみ非課税とされている(所法9)。ところが、本件債務免除益を総収入金額に算入すべきか否かの判定の基となった取扱いが基本通達36-17であり、それは、所得税法36条の解釈上の取扱いを定めるものであって、非課税所得を定めている同法9条に係るものではない。そのことが、所得税法上の関係規定の解釈に疑義を生じさせている。
 また、個人又は法人が資力を喪失して債務免除を受けることはままあることであるが、当該債務免除益の課税上の取扱いが必ずしも統一されているわけでもない。そのことが、本件債務免除益の処理のあり方にも影響している。
 本件においては、病院経営に行き詰ったXが、当該病院を再建するために、医療法人化する過程の中で、24億円余という多額な債務免除が行われ、その結果、医療法人化した後の病院の経営も順調に行き、Xも相当多額な報酬を得ているというのであるが、かかる場合の債務免除益(本件債務免除益)について課税する必要はない旨本判決は判断している。
 このような判断も一つの考え方であろうが、債務免除益の課税方法について、所得税法内において、又は税目間の取扱いにおいて、必ずしも整合性があるとも思われないので、それらの点も含めて検討する。

1 事業所得の総収入金額と債務免除益 (1)Xが経営する病院から生じる所得は事業所得となる(所法27①)が、事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額である(所法27②)。
 この場合、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の額)である(所法36①)。そして、「金銭以外の物又は権利その他の経済的な利益の額」は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額である(所法36②)。
 このように、所得税法が所得金額計算において収入すべき金額又は総収入金額を広範に捕えているのは、所得税法上の所得概念に起因する。すなわち、所得税法上の「所得」については、一般に、包括的所得概念が採用されており、人の担税力を増加させる経済的利得の全てが所得を構成するものと解されるから、反覆的・継続的利得のみではなく、一時的・偶発的・恩恵的利益も所得に含まれることになる(注1)。
(2)このような全ての経済的利得が所得税の課税対象になることについては、基本通達36-1が「法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない。」と定めていることに繋がる。この取扱いは、個人の支配下に入った経済的利得が権利が確定することのない違法なもの(違法所得)であっても課税の対象になることを明確にしている(注2)。
 かくして、所得税法36条にいう「経済的な利益」には、当該個人にとっての経済的利得の全てが含まれるものと解されるところ、基本通達36-15は、多くの経済的な利益を例示しており、「買掛金その他の債務の免除を受けた場合におけるその免除を受けた金額又は自己の債務を他人が負担した場合における当該負担した金額に相当する利益」(同通達(5))も経済的な利益に含まれることを明示している。
 以上の所得税法の規定、同規定の解釈論、基本通達の取扱い等に照らせば、本件債務免除益も、当然に、所得税が課税される「総収入金額」に算入されることになる。

2 債務免除益と非課税規定(取扱い) (1)前述したように、所得税法では、債務免除益を含めて全ての経済的利得について課税の対象としているのであるが、租税政策上特定の所得については所得税を課税しないこととされている(所法9等参照)。その中で、本件のように、債務者が窮状に陥った場合の経済的利得に対して非課税としているものは、次のとおりである。
 まず、所得税法9条1項10号では、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における国税通則法第2条第10号(定義)に規定する強制換価手続による資産の譲渡による所得その他これに類するものとして政令で定める所得(第33条第2項第1号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)」を課税しないこととしている。
 また、「政令で定める所得」については、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、国税通則法(昭和37年法律第66号)第2条第10号(定義)に規定する強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられたものとする。」(所令26)と定められている。
(2)このような非課税規定の取扱いについて、基本通達9-12の2は、次のように定めている。
「「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合とは、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいい、これに該当するかどうかは、これらの規定に規定する資産を譲渡した時の現況により判定する。」
 また、この取扱いについて、国税庁の担当者は、次のように説明している(注3)。
「本通達は、非課税所得の要件の一つである「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合」とは、譲渡者の債務超過の状態が著しく、近い将来においてもその資力を回復することができないと認められるような状態をいうものとし、たとえ現に債務超過の状態にあっても、その者の信用、才能等を活用すれば、近い将来においてその債務の全部を弁済する資金の調達能力があると認められる場合には、これに該当しないことを明らかにしている。」
 以上のように、所得税法9条1項10号によって非課税とされるのは、滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売等の強制換価手続(通法2・十)によって(又はその強制換価手続が避けられないときにおいて)資産を譲渡した場合の譲渡所得に適用されるものであって、本件のような事業所得に直接適用されることはない。
(3)かくして、本件のように、債務者が事業所得に関して債務免除益を受けても、所得税法上の非課税規定が適用されることはないが、本件で問題となっている基本通達36-17では、次のように取り扱うこととしている。
「債務免除益のうち、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたものについては、各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しないものとする。ただし、次に掲げる場合に該当するときは、それぞれ次に掲げる金額(次のいずれの場合にも該当するときは、その合計額)の部分については、この限りでない。(以下略)」
 このような取扱いについては、国税庁担当者は、「これはむしろ単に形式上の所得であって、免除を受けたことによってそれだけ担税力のある所得を得たものとみるのは必ずしも実情に即したものとはいえない」(注4)からであると説明している。
 もっとも、このような通達の取扱いによって特定の所得(経済的な利益)を非課税とするのは、法令の根拠を欠くものであって、租税法律主義違反の疑義があるとも言える。このような取扱いに合理性があれば、所得税法9条又は同法36条にその根拠を明確にすべきであろう(注5)。

3 債務免除益をめぐる税目間の異同 (1)本件では、所得税法における債務免除益の課税方法が問題とされたのであるが、相続税法や法人税法においても、類似する課税問題があり、本訴の審理においても参照されているように、所得税との取扱いの異同が問題となる。まず、相続税法8条では、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済(以下「債務の免除等」という。)による利益を受けた場合においては、当該債務の免除等があった時において、当該債務の免除等による利益を受けた者が、当該債務の免除等した者から贈与(当該債務の免除等が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなしている。
 もっとも、このような場合であっても、次のいずれかに該当する場合においては、その債務を弁済することが困難である部分の金額について贈与等とみなされないこととしている(相法8ただし書)。
① 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
② 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によって当該債務の全部又は一部の引受け又は弁済がなされたとき。
 このように、債務免除が贈与とみなされない場合の「資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合」とは、「その者の債務の金額が積極財産の価額を超えるときのように社会通念上債務の支払が不能(破産原因となる程に至らないものを含む。)と認められるものというものとする。」(相基通7-4、8-4)と取り扱われている。
(2)他方、法人税法においては、法人税の課税標準となる各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除して計算される(法法21、22①)。そして、当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額である(法法22②)。
 この法人税法22条2項の解釈については、法人税においても所得税と同様に包括的所得概念(又は純資産増加説)が適応するものと解される(注6)から、債務免除益等の経済的利益の収受に係る収益についても当然に益金の額を構成することになる(法基通9-2-10参照)。しかも、法人税法22条2項にいう「別段の定め」においても、債務免除益を収益から除外するような規定はない。ただし、債務の免除を受けるような法人は、通常、欠損金を多額に抱えている場合が多いことであろうから、債務免除益が発生しても、青色申告法人であれば、原則として、9年前までの欠損金を損金の額に算入でき(法法57)、結果的に課税所得が生じない場合が多い。
 更に、法人税法57条の規定によってもなお損金の額に算入できない欠損金を抱えている法人に対して債務免除等が行われた場合には、会社更生等における所定の債務免除等に対応した欠損金の損金算入が可能となる(法59)。この法人税法59条の規定は、確かに、債務超過の企業再建を支援するために設けられたものであるが、それはあくまでも立法政策的なものであるから、本判決が判示するように本件で問題となっている基本通達36-17と同視できるものではない。けだし、基本通達36-17は、単に、国税庁の通達によって特定の債務免除益を総収入金額に算入しない旨取り扱っているに過ぎないからであり、そのこと自体、租税法律主義の観点から検討を要すべき事柄でもある。

4 本件債務免除益の非課税該当性 (1)以上のように、債務免除益に係る課税関係(法令の規定と取扱い通達)を他税目を含めて検討してきたところであるが、本件債務免除益についてどのように適用されるかが問題となる。本件においては、病院経営者であるXが、平成17年8月当時、A機構等から29億1,033万円余の借入金を抱え、そのうち5億円を銀行から調達して返済した後、残りの24億1,033万円余について債務免除(本件債務免除)を受け、なお、約3,300万円の債務超過の状況にあったというものである。その後、本件病院は医療法人へ組織替えし、Xは、同法人の理事長として、月250万円の報酬と地代月額60万円を受領していたというものである。そして、本件更正等においては、本件債務免除益のうち、10億2,116万円余を事業所得の総収入金額に算入したのであるが、その適否が本訴で争われることとなった。
(2)本判決では、「Xの債務超過の状態が著しく、Xの信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと優に認められるものであって、Xは本件債務免除を受ける直前において資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、本件債務免除の額がXにとってその債務を弁済することが著しく困難である部分の金額の範囲にとどまるものと認められるから、本件債務免除益については基本通達36-17が適用され、各種所得の計算上収入金額又は総収入金額に算入されないものと解するのが相当である。」と判示した。
 また、国が、Xが本件医療法人から月額250万円の報酬等を得ているなど経済的余裕があることを主張したのであるが、本判決は、「「債務者の債務超過の状態が著しく、……」か否かは、債務免除が行われない状態を前提に検討すべきである」と判示し、国の当該主張は上記結論を何ら左右するものではない旨判示している。
(3)このような判示は、基本通達36-17がいう「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」につき、基本通達9-12の2が「債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合」と解していることに、本件債務免除益をそのまま適用し得ると認定したものである。
 このような判断は、本件のような債務免除益について、基本通達36-17を適用した一事例としては評価できる。しかしながら、基本通達9-12の2の運用については、「たとえ現に債務超過の状態にあっても、その者の信用、才能等を活用すれば、近い将来においてその債務の全部を弁済する資金の調達能力があると認められる場合には、これに該当しない」(注7)としているところ、本件においては、Xは、本件債務免除によって実質的に債務超過の状態を脱することができ、本件病院が医療法人化した後に、毎月310万円の報酬等を得ることができたというのであるから、本件債務免除益を全額非課税とすることには疑問が残る。けだし、Xは、本件債務免除によってその設立に約10億円要したであろう本件病院を僅か3,000万円余の債務によって再生できたのであるから、相当多額な経済的な利益を得たことになるからである。しかも、基本通達36-17は、所得税法36条の規定を緩和したいわゆる緩和通達(注8)と称せられるものであるから、その適用は一層厳しくあって然るべきであると考えられるからである。
 そのため、本件債務免除について、本件更正等の課税処分が行われたものであろうが、本件更正等においても、本件債務免除益24億1,033万円余のうち、10億2,116万円余のみ総収入金額に算入すべきとした論拠が何ら明らかにされていない。そうなると、本件更正等についても、いささか腰だめ的なところが見受けられ、適法性について説得力を欠くものとも言える。
 なお、本判決は、法人税法と所得税法とにおける債務免除益に対する課税方法のバランスにつき、前者が同法59条の立法によって措置されているのに対し、後者は基本通達36-17によって措置されているものとして、本件債務免除益の同通達適用を正当化しようとしている。しかし、法人税法59条は、会社更生等の所定の手続が行われている場合の債務免除益につき、損金算入の対象とならない欠損金が存していたときに、当該債務免除益の範囲で当該欠損金の損金算入を認めているのに対し、基本通達36-17は、法令でない取扱いによって、繰越控除の対象となる純損失(所法70)の有無にかかわらず、債務免除益そのものを総収入金額に算入しないものであるから、両者は、法的性格等を全く異にするものである。よって、所得税法には、法人税法59条のような規定がないから、基本通達36-17を弾力的に適用し得るとする考え方に賛同しかねる。

5 本判決の意義と問題点 (1)所得税法は、債務免除益のような経済的な利益を含めて全ての経済的利益を所得税の課税対象とするのが原則である(所法36①②、所基通36-1等参照)。ただし、政策的に非課税所得となるものを定めている(所法9①)が、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合」には、国税通則法2条10号に定める強制換価手続によって資産を譲渡した場合の譲渡所得に対してのみ非課税としているに過ぎない(所法9①十)。もっとも、「資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合」に、個人間において債務免除等が行われた時には、例外的に贈与税が課税されないこととなっている(相法8ただし書)。
 したがって、本件のように、事業所得の金額の計算上債務免除が行われた場合には、法令上は当該債務免除益も他の経済的利益と同様に総収入金額に算入されることになる(所法36①②)。しかしながら、基本通達36-17は、所得税法9条1項10号又は相続税法8条ただし書の場合に準じて、当該債務免除益を総収入金額に算入しないこととしている。このような通達の取扱いが租税法律主義上許容し得るか否かはともかくとして、本件更正等について、本判決が当該通達を適用して非課税とすべきとしたことは、先例として注目される。
(2)しかしながら、前述したように、本判決の考え方には幾つかの問題がある。その中でも、本判決は、基本通達36-17の適用に当たっては、「債務免除が行われない状態を前提」にすることに拘っているのであるが、同通達の適用においては、本判決も参考にしている基本通達9-12の2では、「債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合」と定めているところ、当該規定の判断が余りに形式的であるように考えられる。
 けだし、本件においては、Xは、本件債務免除によって、本来であれば、その設立に当たって10数億円のコストを要するところ、そのコストの負担を免れて本件病院の経営を継続でき、その経済的メリット(多額な報酬と地代の収受)を享受しているわけであるから、その点について、厳格に基本通達9-12の2との関係を考慮して基本通達36-17を適用すべきであったと考えられる。
(注1)金子宏『租税法 第17版』(弘文堂、平成24年)176頁等参照。
(注2)後藤昇他共編『所得税基本通達逐条解説 平成24年版』(大蔵財務協会、平成24年)257頁参照。
(注3)前出(注2)72頁。
(注4)前出(注2)283頁。
(注5)基本通達36-21以下にも、「課税しない経済的利益」が列挙されているが、同じことが言えるはずである(品川芳宣編著『現物給付の税務』(新日本法規、平成12年)12頁等参照)。
(注6)前出(注1)278頁等参照。
(注7)前出(注2)72頁参照。
(注8)緩和通達の法的性格とその運用のあり方については、品川芳宣『租税法律主義と税務通達』(ぎょうせい、平成16年)40頁、128頁等参照。

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