解説記事2013年09月30日 【最新判決研究】 金融商品(信託受益権)に係る収益配当金の収益計上時期(2013年9月30日号・№517)
最新判決研究
金融商品(信託受益権)に係る収益配当金の収益計上時期
東京地裁平成24年11月2日判決(平成22年(行ウ)第693号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)銀行業務や信託業務等を目的とする株式会社であるX(原告)は、その保有する住宅ローン債権の流動化取引、すなわち自らの保有する住宅ローン債権を信託契約を利用して新たな金融商品を創設して、それを投資家等に売却する取引により、信託受益権として、優先的に償還される優先受益権と優先受益権の元本が全額償還された後に元本が償還される劣後受益権の2種類の信託受益権を創設し、優先受益権を他者を経由して投資家に売却すると共に、劣後受益権をXが保有するという仕組みの取引を行ったが、その劣後受益権による収益配当金の一部について、平成16年3月期、平成17年3月期及び平成18年3月期(以下「本件各事業年度」という。)に係る法人税の益金並びに平成17年3月課税期間及び平成18年3月課税期間(以下「本件各課税期間」という。)の消費税の資産の譲渡等の対価の額に含めずにそれぞれ確定申告をした。これに対し、処分行政庁は、上記劣後受益権の収益配当金は、すべて法人税に係る益金及び消費税に係る資産の譲渡等の対価の額に含まれるとして、本件各事業年度分の法人税の更正及び本件各課税期間分の消費税の更正(以下「本件各更正」という。)並びにこれらに伴う過少申告加算税の賦課決定処分(本件各更正と併せて以下「本件各更正等」という。)をした。そこで、Xは、前審手続を経て、国(被告)に対し、本件更正等の取消しを求めて、本訴を提起した(以下、消費税については、記述を省略する)。
(2)Xは、概要次のとおり、自己が所有する住宅ローン債権を信託を利用して別の金融商品を創設して投資家に売却することにより資金調達を行う取引(以下「本件取引1」という。)を行った。
① Xは、平成15年2月3日、信託銀行Sとの間で、Xを委託者、Sを受託者とする信託契約を締結して、Xが有する住宅ローン債権の一部元本204億7,431万円余(以下「本件債権1」という。)をSに対し信託譲渡した。
② Xは、本件債権1の信託譲渡と引き換えに、Sから元本金額175億円の優先受益権(優先的に元本が償還される受益権。以下「本件優先受益権1」という。)及び元本金額29億7,431万円余の劣後受益権(優先受益権の元本が金額償還された後に元本が償還される受益権。以下「本件劣後受益権1」という。)を受領した。
③ Xは、平成15年2月5日、Sとの間で、1億8,250万円余の金銭を追加信託し、これを本件劣後受益権1の元本に上乗せする旨合意し、本件劣後受益権の元本金額を31億5,682万円余とした。
④ Xは、平成15年2月14日、証券会社Dに対し、本件優先受益権1を代金175億円で売却した。
⑤ 本件の信託契約においては、本件債権1の元本総額を信託の元本とし、本件債権1の利息その他の信託財産から生ずる収益を信託の収益とすること、本件優先受益権1及び本件劣後受益権1に関する信託の元本の償還は、信託受託者により受領されたすべての元本回収金の額から行われ、本件優先受益権1に対する元本の償還は、本件劣後受益権1に対する元本の償還に優先して行われること、本件優先受益権1及び本件劣後受益権1に対する収益の配当は、信託受託者により受領されたすべての利息回収金の額から行われ、本件劣後受益権1に対する収益の配当は、本件債権1の利息その他の信託財産から生ずる信託の収益から、公租公課、信託報酬等の期中運用コストを差し引いた上、本件優先受益権1に対する収益の配当が支払われた後に残余の収益がある場合に行われること、本件劣後受益権1に対する元本の償還は、本件優先受益権1の未払元本残高が零になった後に行われることが定められている。
⑥ Xは、平成15年3月期において、本件劣後受益権1が貸借対照表に計上され続けることから、金融商品会計実務指針37項に規定する「金融資産の消滅時に譲渡人に何らかの権利・義務が存在する場合」に該当するとして、同項の定めに従い、本件優先受益権1の元本金額175億円から同項に規定する譲渡原価(金融資産である本件債権1の消滅直前の帳簿価額204億7,431万円余に本件優先受益権1の時価174億9,998円余を乗じ、本件債権1の時価227億2,312万円余で除した額である157億6,808万円余となる。)を差し引いた額である17億3,191万円余を本件優先受益権1の売却益として計上した。そして、Xは、本件劣後受益権1の帳簿価額を、本件債権1の帳簿価額から本件優先受益権1の譲渡原価を差し引き、上記の追加信託の額を加えた48億8,873万円余とする会計処理を行った。
(3)次に、Xは、概要次のような債権の流動化取引(以下「本件取引2」という。)を行った。
① Xは、平成16年7月30日、有限責任中間法人Nに対し、Xが保有する住宅ローン債権のうち元本総額237億2,274万円余相当分の住宅ローン債権(以下「本件債権2」といい、本件債権1と併せて「本件各債権」という。)を代金255億7,732万円余で売却した。
② Nは、同日、Xとの間で、Nを委託者、Xを受託者として、Xが住宅ローン契約を締結した債務者らに対して有する住宅ローン債権の一部を包括して信託譲渡する旨の契約を締結し、本件債権2を信託譲渡した。
③ Nは、本件債権2の信託譲渡と引き換えに、Xから、元本金額200億円の優先受益権(以下「本件優先受益権2」といい、本件優先受益権1と併せて「本件各優先受益権」という。)、元本金額10億円のメザニン受益権と呼ばれる優先受益権と劣後受益権の中間に位置する受益権(以下「本件メザニン受益権」という。)及び元本金額27億2,274万円余の劣後受益権(以下「本件劣後受益権2」といい、本件劣後受益権1と併せて「本件各劣後受益権」という。)を受領した。
④ Nは、同日、Xに対し、2億6,238万円余の金銭を追加信託し、これを元本に上乗せする旨合意し、本件劣後受益権2の元本金額は29億8,513万円余に増額された。
⑤ Xは、同日、Nから本件メザニン受益権及び本件劣後受益権2を、それぞれ代金10億円、48億3,917万円余で購入した。
⑥ Xは、平成17年3月期において、前記(2)の会計処理に準じて、本件優先受益権2の元本金額200億円から金融商品会計に関する実務指針(日本公認会計士協会・会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品会計実務指針」という。)37項に規定する本件優先受益権の譲渡原価185億4,981万円余(本件債権2の帳簿価額237億2,274万円余に本件優先受益権2の時価200億円を乗じ、本件債権2の時価255億7,732万円余で除した額となる。)を差し引いた額である14億5,018万円余を本件受益権2の売却益として計上した。そして、Xは、本件劣後受益権2の帳簿価額を、本件債権2の帳簿価額に追加信託の金額2億6,238万円余を加え、本件優先受益権2の譲渡原価185億4,981万円余及び本件メザニン受益権の帳簿価額10億円を差し引いた44億3,531万円余とする会計処理を行った。
(4)Xは、本件各劣後受益権に係る収益配当金について、本件各事業年度において、Sから、本件劣後受益権1に係る収益配当金(平成16年3月期4億4,597万円余、平成17年3月期3億2,763万円余及び平成18年3月期2億8,581万円余)を受領し、また、自己の信託勘定から、本件劣後受益権2に係る収益配当金(平成17年3月期2億8,440万円余及び平成18年3月期4億8,975万円余。)を自己の固有勘定に振り替える経理処理を行うことにより受領した(以上の収益配当金を以下「本件収益配当金」という。)。
Xは、本件各事業年度において、本件収益配当金の会計処理につき、金融商品会計実務指針105項の適用があるものとして、同項の「受取利息」に相当する「買入金銭債権利息額」及び同項の「元本の回収」に相当する「買入金銭債権償還額」(平成16年3月期3億3,778万円、平成17年3月期3億4,156万円余及び平成18年3月期3億7,320万円余)に区分し、買入金銭債権利息額のみを収益に計上する一方で、買入金銭債権償還額については収益に計上せず、同額を本件各劣後受益権の帳簿価額から減額する処理を行った。
そして、Xは、買入金銭債権利息額のみを益金の額に算入して本件各事業年度の法人税の確定申告をした。
(5)これらのXの各確定申告に対し、処分行政庁は、上記の各事業年度における買入金銭債権償還額を受取利息として益金の額に含めるべきであるとする本件各更正等をした。
二、争点及び当事者の主張
1 争 点 (1)Xが本件各劣後受益権の収益配当金の会計処理につき、金融商品会計実務指針105項の適用があるものとして、同項の「受取利息」に相当する「買入金銭債権利息額」のみを収益に計上する処理を行ったことは適法な会計処理か。
(2)平等原則違反の有無
(3)租税法律主義違反の有無
2 Xの主張 (1)金融商品会計実務指針105項にいう取得は、債権の売買等の典型的な場合に限られず、何らかの債権の移転が生じたことに伴い、当該債権の金利を反映して債権金額とは異なる取得価額が貸借対照表に計上された場合も、同項にいう取得に該当すると解すべきである。本件においては、第三者に譲渡された本件各優先受益権の金利が市場水準の金利と同様とされたことにより市場水準を上回っていた分の金利が本件各劣後受益権の帳簿価額に反映された結果、本件各劣後受益権の帳簿価額と債権金額との間に差額が生じたのであるから、Xが本件各劣後受益権を保有するに至ったことは、金融商品会計実務指針105項にいう取得に該当する。
(2)Xの行った会計処理は、X以外の者も広く行っており、こうした会計処理に基づく確定申告を行っているはずであるが、Xが知る限りではX以外に更正処分を受けた者はいないから憲法14条の平等原則に違反する。
(3)本件各更正は、納税者であるXにとって全く予測不可能な理由に基づき、明確な法令上の根拠に基づかずになされたものであるから、憲法84条の租税法律主義に違反する。
3 国の主張 (1)本件各劣後受益権は、金融商品会計実務指針291項により、新たな金融資産の購入としてではなく、信託した金融資産である本件各債権の残存部分と評価されるから、同指針105項の取得に該当しない。
(2)Xの平等原則違反に関して主張する事実の存否はいずれも明らかでないから、Xの主張は前提を欠く失当なものである。
(3)本件各更正は、金融商品会計実務指針105項の適用がないことを前提として、法人税法22条2項に基づき行っているから、租税法律主義に違反しない。
三、判決要旨
請求棄却。 (1)一般に、金融商品会計実務指針105項の要件に該当する場合において、その債権の取得価額と債権金額の差額について同項所定の償却原価法により会計処理することは、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従った適法な処理であると解するのが相当であり、この点については当事者間にも争いがない。
しかし、金融商品会計実務指針105項の適用をめぐって当事者間に争いがある。
(2)そこで、まず、Xが、信託契約によって、受託者に譲渡した住宅ローン債権を、受託者において優先と劣後の2つの信託受益権に分け、Xがその劣後受益権を保有するに至った場合が、金融商品会計実務指針105項にいう「債権を取得した場合」に該当するといえるかについて検討するに、信託受益権の評価方法について定めた金融商品会計実務指針100項(2)は、「信託受益権が優先劣後等のように質的に分割されており、信託受益権の保有者が複数である場合には、信託を一種の事業体とみなして、当該受益権を信託に対する金銭債権(貸付金等)の取得又は信託からの有価証券(債券、株式等)の購入とみなして取り扱う。」としつつ、そのただし書きにおいて、「ただし、企業が信託財産構成物である金融資産の委託者である場合で、かつ、信託財産構成物が委託者たる譲渡人にとって金融資産の消滅の認識要件を満たす場合には、譲渡人の保有する信託受益権は新たな金融資産ではなく、譲渡金融資産の残存部分として評価する。」と定めている。そして、このただし書きの背景事情について説明した金融商品会計実務指針291項は、「企業が自ら保有する金融資産を信託するとともに、信託受益権を優先と劣後に分割し、その劣後受益権を自らが保有して優先受益権を第三者に譲渡する場合、…自らが保有する劣後受益権は、新たな金融資産の購入としてではなく、信託した金融資産の残存部分として評価する必要がある。」としている。
すなわち、金融商品会計実務指針100項(2)ただし書き及びこの背景事情について説明した291項によれば、本件のXのような場合においては、Xの保有する劣後受益権は、新たな金融資産の取得としてではなく、信託した金融資産である住宅ローン債権の残存部分として評価する必要があるとしているのであって、Xが信託契約によって保有するに至った本件各劣後受益権は、金融商品会計実務指針105項にいう「債権を取得した場合」には該当しないと解すべきことになる。
(3)この点につき、Xは、金融商品会計実務指針100項(2)及び291項は、信託設定時点の劣後受益権の評価方法を定めたもので、債権を取得した日の属する事業年度以降の配当の取扱いに関する会計処理を定めた同指針105項の解釈とは適用場面を異にする旨主張する。しかしながら、金融商品会計実務指針100項(2)ただし書き及び同指針291項が前述のように定めているのは、一般に、信託受益権を優先と劣後に分割して、劣後受益権を自らが保有する場合は、優先受益権については、金融商品としての価値が高いものとして第三者に売却することで資金調達を円滑に行うことを企図すると共に、その反面として、劣後受益権は、リスクを負担するなど金融商品としての価値が低いものとなるため市場に出さずに自ら負担するものであると解されることから、そのような劣後受益権は、新たな金融商品の取得としてではなく、信託受益権全体から優先受益権を除いた残存部分として自ら保有し続けるものとして評価するのが、信託受益権の評価として相当であるとの判断に基づくものであると解されるところ、この理は、金融商品会計実務指針105項において、同様に優先劣後に分割した信託受益権を評価する場合にも何ら異なることはないというべきであるから、この点についてのXの主張は理由がない。
(4)金融商品会計実務指針105項は、債権の支払日が将来の期日であることから、その間の金利を反映して債権の元本金額よりも高い金額(あるいは低い金額)で取得した場合には、その差額をその支払日までの期間にわたって期間配分するものとして上記のように実効利子率を定め、それに基づいて算定された額をその債権の受取利息とすることが合理的であると考えられるため、その考え方を採用した上で、その方法で算定された受取利息額が、実際に受領した利息額より多ければその差額分を債権の帳簿価額に加算し、少なければその差額分を債権の帳簿価額から減算することによって、実効利子率による利息の計算を会計処理に反映させるように償却原価法による処理を行うこととしたものであると解される。
しかるに、本件劣後受益権1の帳簿価額は、本件優先受益権1と本件劣後受益権1を合わせた信託受益権全体と信託債権である本件債権1が対応する関係にあることから、本件債権1の帳簿価額から本件優先受益権1の帳簿価額(譲渡原価額)を差し引いた金額として計上されるところ、本件優先受益権1の帳簿価額(譲渡原価額)については、本件債権1全体の時価を算定して各受益権の時価の割合に応じて算出しているのに対し、本件劣後受益権1の帳簿価額の算定においては、本件債権1の帳簿価額から、上記のとおり時価評価を前提として各受益権に按分計算された本件優先受益権1の帳簿価額(譲渡原価額)を差し引くという計算をすることになるために、その帳簿価額と債権価額の間に帳簿処理という技術的な理由によって差異が生じざるを得ないことになる。そして、本件劣後受益権2の帳簿価額もまた、本件劣後受益権1について上に述べたことが当てはまるものである。
そうすると、本件各劣後受益権の帳簿価額と債権金額の差額は、帳簿処理に伴う技術的な理由によって計上されたものにすぎず、各受益権の支払日までの金利を反映して定められた金額ではなく、また、その帳簿価額は、各受益権の客観的な価値を把握した金額ではないから、本件各劣後受益権については、およそ金融商品会計実務指針105項適用の前提を欠くものであることは明らかである。
(5)また、金融商品会計実務指針105項は、上記のとおり「債務者からの入金額」を実効利子率に基づいて「元本の回収」と「受取利息」とに区分する旨定めているが、本件各劣後受益権は、そもそもXが保有していた住宅ローン債権の債務者が債務不履行になったり破産したりした場合のリスクを引き受けることによって本件各優先受益権の金融商品としての価値を高めることに1つの重要な意味があると解され、このような本件各劣後受益権は、そもそも金融商品会計実務指針105項が想定する「債権の支払日までの金利を反映し」た債権ではないことはもとより、そのような本件各劣後受益権を「元本の回収」と「受取利息」に分けることはおよそ同項が予定するものではないと言わざるを得ない。
(6)平成14年改正前の商法においては、その285条の4が、金銭債権の評価について「債権金額ヲ付スルコトヲ要ス」ことを原則とした上で、ただし書きで債権金額と異なる代金で「買入レタルトキ」は、相当の増額又は減額ができると規定していた。そして、金融商品会計実務指針105項は、平成14年改正前の商法285条の4が通則として意味を有していたころから存在していたのであって、そうすると少なくともその当時は、同項にいう債権の「取得」とは債権を「買入レタルトキ」として解釈されていたと考えられ、ここにいう「取得」が本来、他者から取得した場合を想定し、信託等によって実質上自ら創設したものは想定していなかったと解されるところ、その解釈が特に変更されたことを窺わせる資料もない。
(7)以上によれば、Xが本件各劣後受益権の収益配当金の会計処理につき、金融商品会計実務指針105項の適用があるものとして、同項の「受取利息」に相当する「買入金銭債権利息額」のみを収益に計上する処理を行ったことは適法な会計処理とはいえないものと解される。
(8)Xは、憲法14条の平等原則に違反する旨主張するが、本件全証拠によっても、X以外に本件のような事例で更正を受けた者がおらず、Xのみが不平等な取り扱いを受けたことを認めるに足りないから、この点についてのXの主張は採用できない。
(9)本件各更正は、法人税法22条2項に基づき、本件各劣後受益権の収益配当の全額が有償による役務の提供に係る収益に当たるとして益金の額に算入したものであり、何ら租税法律主義に違反しない。
(10)以上によれば、本件各劣後受益権の収益配当金を平成16年3月期、平成17年3月期及び平成18年3月期のXの各法人税の所得計算上は益金の額に算入した本件各更正等はいずれも適法である。
四、解説
はじめに 本件は、銀行業務等を業とするXが、その保有する住宅ローン債権の流動化取引の方法として当該住宅ローン債権を信託契約を利用して新たな金融商品を創設して、本件各優先受益権、本件メザニン受益権及び本件各劣後受益権を取得し、その本件各優先受益権及び本件メザニン受益権を投資家等に譲渡し、残りの本件各劣後受益権を保有した上で、本件各劣後受益権に係る本件収益配当金の全部を法人税の所得金額の計算上益金の額に算入すべきか否かが争われたものである。
本件においては、本件収益配当金のうち買入金銭債権償還額について、金融商品会計実務指針105項が適用されるか否かが争われることとなったが、法人税法における金融商品に係る収益計上において、何故に日本公認会計士協会が定めた実務指針が法人税法22条4項にいう一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に該当するか否かについては、必ずしも明確に検討されているとも考えられない。そこで、それらの問題を明らかにした上で、本判決の論点について検討することとする。
1 法人税法上の収益計上時期 (1)法人税法の益金(収益)計上の基本規定である法人税法22条2項は、「各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売……その他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」と定めている。また、法人税法22条4項は、「第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と定めている。
このような法人税法上の収益計上に関する各規定から当該収益の計上時期をどのように解するかについては、法人税法22条2項の規定から、益金の額に算入すべき収益の額は、当該事業年度の対外的な取引により実現したものであると当然に解釈し得るとする見解(注1)と社会通念に従うこととし、健全な会計慣行を探求し、それにより法令の解釈に当たるべきとする見解(注2)に分かれる。しかし、法人税法22条2項の文理から明らかに収益の計上時期が導き出されるわけではなく、法人税法22条4項の存在を考慮すれば、後者の見解の方が妥当であると考えられる(注3)。また、法人税の収益計上についても、いわゆる権利確定主義が妥当とする見解(注4)も有力である。
なお、本件の金融商品に関係する有価証券の譲渡損益については、かつては、棚卸資産と同様に法人税基本通達が定める引渡し基準によって計上することとされていたが、平成12年の税制改正によって、「その譲渡に係る契約をした日」の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することにしている(法法61の2①)(注5)。
以上の法人税法上の収益計上をめぐる各規定の中で特に問題となるのが、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の内容であり、それに関する解釈論である(注6)。この解釈論についても、種々の論争が行われてきたのであるが、この基準は、立法当初から、客観的な規範性をもつ公正妥当と認められる会計処理の基準という意味であり、「企業会計原則」のように明文化された基準を指すものではないと解されてきた(注7)。したがって、企業会計原則、会計基準、会社法の会社計算規則等の明文の規定は、当該解釈の一つの参考になるにすぎないことになる(注8)。その意味では、本判決において、本件各劣後受益権に係る収益の計上について、専ら金融商品に関する会計基準の運用方針を定めた日本公認会計士協会の実務指針該当の有無が争われていることに若干の違和感がある。けだし、当該実務指針の基となっている金融商品に関する会計基準が、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に該当するか否かが一層説得的に判断されて然るべきである。
(2)法人税法における収益計上時期に関する法令の規定とそれに係る主な解釈論は以上のとおりであるが、実務では、それらの法令の規定や解釈論を基にした法人税基本通達の取扱いが重視されている。
まず、資産の譲渡から生じる収益については、棚卸資産の販売につき、「棚卸資産の販売による収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。」(法基通2-1-1)と定めている。この収益計上基準は、引渡し基準と称せられ、有価証券や短期売買商品を除く他の資産の譲渡に係る収益計上の基となっている(法基通2-1-5、2-1-14等参照)。また、この引渡し基準は、企業会計上の実現主義や販売基準に共通するものと考えられる。もっとも、法人税基本通達では、課税の統一(公平)を図るため、「引渡しの日」等を明確に定め、その継続適用を求めていることに特徴がある(法基通2-1-2、2-1-6、2-1-15等参照)。
また、役務の提供に係る収益計上については、原則として、「その約した役務の全部を完了した日の属する事業年度」に計上することとしている(法基通2-1-5、2-1-12等参照)。次に、貸付金等から生ずる利子の額は、原則として、「その利子の計算期間の経過に応じ当該事業年度に係る金額を当該事業年度の益金の額に算入する。」(法基通2-1-24)ということで発生主義によることとし、剰余金の配当は、「当該配当の効力を生ずる日」、利益の配当又は剰余金の分配は、社員総会等において、「当該利益の配当又剰余金の分配に関する決議があった日」の属する事業年度に計上することとしている(法基通2-1-27)。
本件で問題となっている金融商品に係る収益については、当該金融商品に係る譲渡、取得、収益分配等から複合的に生ずる場合があるので、留意を要する。
2 金融商品(債権)に係る収益計上 (1)本件で問題となっている信託受益権のような金融商品に係る収益の計上時期については、法人税法が企業会計上の会計処理に強く影響されている分野でもある。例えば、平成12年の法人税法改正において、有価証券の譲渡損益の計上等について大幅に改正されたが、それは、前年に企業会計審議会が公表した「金融商品に関する会計基準」に影響を受けている。
そこで、金融商品に関する会計基準における会計処理方法を検討してみるに、本件のような場合の債権の取得等について、その貸借対照表価額を次のように定めている(同会計基準Ⅳの1の14)。
「14. 受取手形、売掛金、貸付金その他の債権の貸借対照表価額は、取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とする。ただし、債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債権金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法(注5)に基づいて算定された価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額としなければならない。」
そして、上記会計処理における償却原価法については、次のように説明している(同会計基準(注5))。
「(注5) 償却原価法について
償却原価法とは、金融資産又は金融負債を債権額又は債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいう。なお、この場合、当該加減額を受取利息又は支払利息に含めて処理する。」
このような金融商品に関する会計基準は、そもそも債権を取得した場合の貸借対照表価額を明示しているのであるが、その場合に適用される償却原価法の具体的な適用方法について、金融商品会計実務指針では、次のように取り扱うことにしている(同指針105項)。
「 債権の支払日までの金利を反映して債権金額と異なる価額で債権を取得した場合には、取得時に取得価額で貸借対照表に計上し、取得価額と債権金額との差額(以下「取得差額」という。)について償却原価法に基づき処理を行う。この場合、将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額に一致するような割引率(実効利子率)に基づいて、債務者からの入金額を元本の回収と受取利息とに区分する。償却原価法の適用については利息法によることを原則とするが、契約上、元利の支払いが弁済期限に一括して行われる場合又は規則的に行われることとなっている場合には、定額法によることができる。……(以下略)」
(2)以上のような金融商品に関する会計基準における会計処理は、基本的には、金融商品取引法が適用される上場企業等に適用されるべきものであろうが、中小企業等の非上場企業の会計処理においても容認されている。
まず、企業会計基準委員会等が中心になって定めている「中小企業の会計に関する指針」では、金銭債権の取得価額と債権金額とが異なる場合の処理について、次のように定めている(同指針各論11)。
「 債権の支払日までの金利を反映して債権金額と異なる価額で債権を取得したときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする。償却原価法とは、金融資産を債権額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいう。ただし、取得価額と債権金額との差額に重要性が乏しい場合には、決済時点において差額を損益として認識することもできる。」
また、中小企業庁、金融庁が中心になって定めている「中小企業の会計に関する基本要領」では、「金銭債権は、原則として、取得価額で計上する。」(同要領各論3(1))と定め、同要領の解釈で、「社債を額面金額未満で購入する場合には、決算において、額面金額と取得価額との差額を購入から償還までの期間で按分して受取利息として計上するとともに、貸借対照表の金額を増額させることができます。」と述べ、償却原価法の具体的処理方法を説明している(注9)。
(3)次に、商法又は会社法では、「債権」の取得等に関する会計処理について、次のように定めている。まず、金融商品に関する会計基準が制定された当時(平成11年)の商法285条の4第1項は、「金銭債権ニ付テハ其ノ債権金額ヲ附スルコトヲ要ス但シ債権金額ヨリ低キ代金ニテ買入レタルトキ其ノ他相当ノ理由アルトキハ相当ノ減額ヲ為スコトヲ得」と定めていた。
その後、平成14年の商法改正によって、会社計算規定が商法本法から法務省令へ移行することとなり、それが平成17年に商法を分割して制定された会社法へ引き継がれることになった。現行の会社計算規則(法務省令)では、「資産については、この省令又は法以外の法令に別段の定めがある場合を除き、会計帳簿にその取得価額を付さなければならない。」(同規則5①)と定め、「債権については、その取得価額が債権金額と異なる場合その他相当の理由がある場合には、適正な価格を付すことができる。」(同規則5⑤)と定めている。
このような会社法上の各規定の解釈等については、会社法431条が、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」と定め、会社計算規則3条が、「この省令の用語の解釈及び規定の適用に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行をしん酌しなければならない。」と定めている。
これらの商法及び会社法の改正の経緯並びに現行の会社法及び会社計算規則の各規定に照らせば、債権の取得価額と債権金額が異なる場合の会計処理については、会社法上も前述の償却原価法が容認されているものと解される。
(4)以上のような企業会計における債権の取得等に関する収益計上の会計処理に対して、法人税法では、前記1で述べたように、それらに対応して直接定めた法令上の規定は存しない。そうであれば、法人税法22条4項に定める「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従うことになるものと解されるが、それとても、当該基準は、前記1で述べたように、一律に明らかにされているわけではない。その意味では、法人税法においては、前述の金融商品に関する会計基準や日本公認会計士協会が定めた金融商品会計実務指針の取扱いがそのまま適用され得るわけではなく、それらは「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の解釈において参考となるものに過ぎない。
また、前記1において、法人税法上の収益計上については、実務上、法人税基本通達等の取扱いに依存する場合が多いことを述べた。本件のような債権の取得等における税務上の処理についても、次のような取扱いが定められている(法基通2-1-34)。
「 金銭債権をその債権金額に満たない価額で取得した場合又は債権金額を超える価額で取得した場合において、その債権金額とその取得に要した価額との差額に相当する金額(実質的な贈与と認められる部分の金額を除く。以下2-1-34において「取得差額」という。)の全部又は一部が金利の調整により生じたものと認められるときは、当該金銭債権に係る支払期日までの期間の経過に応じ、利息法又は定額法に基づき当該取得差額の範囲内において金利の調整により生じた部分の金額(以下2-1-34において「調整差額」という。)を益金の額又は損金の額に算入する。
ただし、調整差額を算定することが困難である場合又は当該金銭債権につき2-1-33の(6)イ及び(注)((償還有価証券の範囲))に掲げる事実がある場合には、この限りではない。
(注)1~3は省略。
4 利息法とは、調整差額を元本額の残高に対する利回りが一定となるように支払期日までの各期間に配分する方法をいい、定額法とは、調整差額を支払期日までの各期間の日数等に応じて当該各期間に均等に配分する方法をいう。」
このような取扱いは、金融商品に関する会計基準や金融商品会計実務指針105項等の影響を受けているが、金利の調整であるか否かについては、一層厳格に判定することとしている(注10)。
3 本件各劣後債権に係る収益配当金の収益計上時期 (1)本件においては、銀行業、信託業等を業とするXが、その所有する住宅ローン債権の流動化を図るため、当該債権を信託して、それによって得た本件各優先受益権等を投資家等に譲渡し、残りの本件各劣後受益権を保有した場合に、本件各劣後受益権から得た本件収益配当金の収益計上(時期)が争われたものである。
Xは、本件各事業年度において、本件収益配当金合計16億2,319万円につき、受取利息に相当するとする買入金銭債権利息額合計7億7,043万円余と元本の回収に相当するとする買入金銭債権償還額合計10億5,255万円余に区分し、前者は企業会計上の利益及び法人税法上の収益の額に該当するが、後者は本件各劣後受益権の帳簿価額を減額する会計処理を行い、法人税法上の収益の額に計上しなかったものである。Xは、その会計処理の根拠として、本件各劣後受益権の取得と本件収益配当金の受領には、金融商品会計実務指針105項の適用があると主張している。
このような会計処理については、これを積極的に支持し、本判決の結論を反対する見解(注11)もみられる。
これに対し、処分行政庁は、本件収益配当金の受領には金融商品会計実務指針105項の適用はなく、その全額が本件各事業年度の益金の額に算入すべきであるとする本件更正等を行い、本訴において、国も、その旨主張した。
(2)かくして、本判決は、金融商品会計実務指針105項が法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当するとした上で、同指針100項及び291項によれば、Xが信託契約によって保有するに至った本件各劣後受益権の取得は、金融商品会計実務指針105項にいう「債権を取得した場合」には該当しない旨判示し、平成14年改正前の商法285条の4の規定も参考にした上で、「Xが本件各劣後受益権の収益配当金の会計処理につき、金融商品会計実務指針105項の適用があるものとして、同項の「受取利息」に相当する「買入金銭債権利息額」と同項の「元本の回収」に相当する「買入金銭債権償還額」とに区分し、前者のみを収益に計上する処理を行ったことは適法な会計処理とはいえない」と判示した。
(3)本判決は、要するに、Xが本件各劣後債権を保有していることは金融商品会計実務指針105項にいう「債権を取得した場合」に該当しないから、本件収益配当金の受領につき、償却原価法を適用する余地はない、と判断したものである。このことは、同指針の基となっている金融商品に関する会計基準14項が「債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合に、償却原価法を適用する」としているのであるから、同会計基準の取扱いに適合しないことを明らかにしたものでもある。
また、前掲の法人税基本通達2-1-34の適用においては、「あくまで金利の調整により生じた取得差額部分につきその算定が可能であるものが対象とされており、債務者の信用リスクを反映して不良債権を債権金額より低く取得したような場合には、適用されない(注12)」としていることにも通じている。
これらに対し、Xは、本件収益配当金が金融商品会計実務指針105項がいう「実効利子率」を上回っていたため、その上回った部分を「買入金銭債権償還額」と称して「元本の回収」に当たるとして、収益の繰り延べを図ったものと推定される。しかし、そのような会計処理は、企業会計上は一つの方法として成り立つとしても、確定した収益は課税するという建前(権利確定主義が一層適合)を採用している税法の下では認め難いものと考えられる。すなわち、本件のような場合に当該実務指針105項を適用する会計処理は、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当しないものと考えられる。
4 本判決の意義と問題点 (1)以上のように、本件においては、銀行業等を業とするXが、その所有する住宅ローン債権を信託受益権に代え、その一部である本件各劣後受益権に係る本件収益配当金の収益計上の時期が争われたのであるが、具体的には、Xが、本件収益配当金のうち、実効利子率を上回る部分を「買入金銭債権償還額」として金融商品会計実務指針105項にいう「元本の回収」であるとしたことの適否が問題とされた。
本判決は、前述のように、本件各劣後受益権の取得が金融商品会計実務指針105項にいう「債権の取得」に当たらないから、同項がいう償却原価法としての収益の繰延べは認められない旨判示し、本件収益配当金の全額を本件各事業年度の益金の額に算入した本件各更正を適法である旨判示した。
このように、金融商品の中でも特殊な形態であるともいえる本件各劣後受益権に係る本件収益配当金の収益計上について、それが金融商品会計実務指針105項の適用があるか否か、また、本件収益配当金を法人税法上の益金の額として認識し得るか否かについて初めて判決が下されたことは、意義のあることである。しかも、本判決は、金融商品に関する会計基準の運用について、日本公認会計士協会という民間団体が定めた金融商品会計実務指針の取扱いをストレートに法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当することを認めたことは、その是非はともかくとして、注目される。
(2)しかしながら、本件で問題となっている「債権の取得」における会計処理方法を定め、かつ、その場合の償却原価法を定義している金融商品に関する会計基準については、まず、当該会計基準における償却原価法の取扱いが、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当するか否かが判断されて然るべきであると考えられる。
また、本件収益配当金の支払基準が本判決に挙示されている各証拠から明らかでないため、本件収益配当金のうち「実効利子率」を上回る部分が「元本の回収」であるというXの主張も説得力を欠いているものと考えられる。本件が控訴審で争われるのであれば、それらの事実関係が明らかにされて然るべきであると考えられる。
なお、本判決は、Xが主張する平等原則違反につき、「本件全証拠によっても、X以外に本件のような事例で更正処分を受けた者がおら」ないことを理由に当該主張を排斥しているが、他に更正処分を受けた者がいないことを問題にしているのであるから、いささか論理矛盾を来たしている。
(注1)吉国二郎「法人税法(実務篇)」(財経詳報社 昭和46年)94頁等参照。
(注2)忠佐市「税務会計法 第3版」(大蔵財務協会)205頁等参照。
(注3)品川芳宣「課税所得と企業利益」(税務研究会 昭和57年)21頁等参照。
(注4)金子宏「所得の年度帰属 総論」日税研論集22号3頁等参照。
(注5)平成12年の法人税法改正は、基本的には、平成11年1月22日に公表された「金融商品に関する会計基準」(企業会計審議会)に対応している。
(注6)当該規定の立法趣旨及び当該基準の解釈については、武田昌輔「公正処理基準と税法」租税法研究第4号(企業課税の諸問題)71頁等参照。
(注7)国税庁「昭和42年 改正税法のすべて」藤掛一雄「法人税法の改正」75頁、吉国二郎・武田昌輔「法人税法〔理論篇〕」(財経詳報社 昭和47年)170頁等参照。
(注8)前出(6)88頁等参照。
(注9)金銭債権及び金銭債務に関する中小企業の会計(いわゆる中小指針と中小会計要領との関係等)と税務との関係については、品川芳宣「中小企業の会計と税務」(大蔵財務協会 平成25年)163頁等参照。
(注10)当該通達の取扱いについては、森文人編著「法人税基本通達逐条解説 六訂版」(税務研究会 平成23年)170頁参照。
(注11)秋葉賢一「債権流動化における劣後受益権に関する収益認識」税務弘報2013年4月号132頁参照。
(注12)前出(10)172頁。
金融商品(信託受益権)に係る収益配当金の収益計上時期
東京地裁平成24年11月2日判決(平成22年(行ウ)第693号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)銀行業務や信託業務等を目的とする株式会社であるX(原告)は、その保有する住宅ローン債権の流動化取引、すなわち自らの保有する住宅ローン債権を信託契約を利用して新たな金融商品を創設して、それを投資家等に売却する取引により、信託受益権として、優先的に償還される優先受益権と優先受益権の元本が全額償還された後に元本が償還される劣後受益権の2種類の信託受益権を創設し、優先受益権を他者を経由して投資家に売却すると共に、劣後受益権をXが保有するという仕組みの取引を行ったが、その劣後受益権による収益配当金の一部について、平成16年3月期、平成17年3月期及び平成18年3月期(以下「本件各事業年度」という。)に係る法人税の益金並びに平成17年3月課税期間及び平成18年3月課税期間(以下「本件各課税期間」という。)の消費税の資産の譲渡等の対価の額に含めずにそれぞれ確定申告をした。これに対し、処分行政庁は、上記劣後受益権の収益配当金は、すべて法人税に係る益金及び消費税に係る資産の譲渡等の対価の額に含まれるとして、本件各事業年度分の法人税の更正及び本件各課税期間分の消費税の更正(以下「本件各更正」という。)並びにこれらに伴う過少申告加算税の賦課決定処分(本件各更正と併せて以下「本件各更正等」という。)をした。そこで、Xは、前審手続を経て、国(被告)に対し、本件更正等の取消しを求めて、本訴を提起した(以下、消費税については、記述を省略する)。
(2)Xは、概要次のとおり、自己が所有する住宅ローン債権を信託を利用して別の金融商品を創設して投資家に売却することにより資金調達を行う取引(以下「本件取引1」という。)を行った。
① Xは、平成15年2月3日、信託銀行Sとの間で、Xを委託者、Sを受託者とする信託契約を締結して、Xが有する住宅ローン債権の一部元本204億7,431万円余(以下「本件債権1」という。)をSに対し信託譲渡した。
② Xは、本件債権1の信託譲渡と引き換えに、Sから元本金額175億円の優先受益権(優先的に元本が償還される受益権。以下「本件優先受益権1」という。)及び元本金額29億7,431万円余の劣後受益権(優先受益権の元本が金額償還された後に元本が償還される受益権。以下「本件劣後受益権1」という。)を受領した。
③ Xは、平成15年2月5日、Sとの間で、1億8,250万円余の金銭を追加信託し、これを本件劣後受益権1の元本に上乗せする旨合意し、本件劣後受益権の元本金額を31億5,682万円余とした。
④ Xは、平成15年2月14日、証券会社Dに対し、本件優先受益権1を代金175億円で売却した。
⑤ 本件の信託契約においては、本件債権1の元本総額を信託の元本とし、本件債権1の利息その他の信託財産から生ずる収益を信託の収益とすること、本件優先受益権1及び本件劣後受益権1に関する信託の元本の償還は、信託受託者により受領されたすべての元本回収金の額から行われ、本件優先受益権1に対する元本の償還は、本件劣後受益権1に対する元本の償還に優先して行われること、本件優先受益権1及び本件劣後受益権1に対する収益の配当は、信託受託者により受領されたすべての利息回収金の額から行われ、本件劣後受益権1に対する収益の配当は、本件債権1の利息その他の信託財産から生ずる信託の収益から、公租公課、信託報酬等の期中運用コストを差し引いた上、本件優先受益権1に対する収益の配当が支払われた後に残余の収益がある場合に行われること、本件劣後受益権1に対する元本の償還は、本件優先受益権1の未払元本残高が零になった後に行われることが定められている。
⑥ Xは、平成15年3月期において、本件劣後受益権1が貸借対照表に計上され続けることから、金融商品会計実務指針37項に規定する「金融資産の消滅時に譲渡人に何らかの権利・義務が存在する場合」に該当するとして、同項の定めに従い、本件優先受益権1の元本金額175億円から同項に規定する譲渡原価(金融資産である本件債権1の消滅直前の帳簿価額204億7,431万円余に本件優先受益権1の時価174億9,998円余を乗じ、本件債権1の時価227億2,312万円余で除した額である157億6,808万円余となる。)を差し引いた額である17億3,191万円余を本件優先受益権1の売却益として計上した。そして、Xは、本件劣後受益権1の帳簿価額を、本件債権1の帳簿価額から本件優先受益権1の譲渡原価を差し引き、上記の追加信託の額を加えた48億8,873万円余とする会計処理を行った。
(3)次に、Xは、概要次のような債権の流動化取引(以下「本件取引2」という。)を行った。
① Xは、平成16年7月30日、有限責任中間法人Nに対し、Xが保有する住宅ローン債権のうち元本総額237億2,274万円余相当分の住宅ローン債権(以下「本件債権2」といい、本件債権1と併せて「本件各債権」という。)を代金255億7,732万円余で売却した。
② Nは、同日、Xとの間で、Nを委託者、Xを受託者として、Xが住宅ローン契約を締結した債務者らに対して有する住宅ローン債権の一部を包括して信託譲渡する旨の契約を締結し、本件債権2を信託譲渡した。
③ Nは、本件債権2の信託譲渡と引き換えに、Xから、元本金額200億円の優先受益権(以下「本件優先受益権2」といい、本件優先受益権1と併せて「本件各優先受益権」という。)、元本金額10億円のメザニン受益権と呼ばれる優先受益権と劣後受益権の中間に位置する受益権(以下「本件メザニン受益権」という。)及び元本金額27億2,274万円余の劣後受益権(以下「本件劣後受益権2」といい、本件劣後受益権1と併せて「本件各劣後受益権」という。)を受領した。
④ Nは、同日、Xに対し、2億6,238万円余の金銭を追加信託し、これを元本に上乗せする旨合意し、本件劣後受益権2の元本金額は29億8,513万円余に増額された。
⑤ Xは、同日、Nから本件メザニン受益権及び本件劣後受益権2を、それぞれ代金10億円、48億3,917万円余で購入した。
⑥ Xは、平成17年3月期において、前記(2)の会計処理に準じて、本件優先受益権2の元本金額200億円から金融商品会計に関する実務指針(日本公認会計士協会・会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品会計実務指針」という。)37項に規定する本件優先受益権の譲渡原価185億4,981万円余(本件債権2の帳簿価額237億2,274万円余に本件優先受益権2の時価200億円を乗じ、本件債権2の時価255億7,732万円余で除した額となる。)を差し引いた額である14億5,018万円余を本件受益権2の売却益として計上した。そして、Xは、本件劣後受益権2の帳簿価額を、本件債権2の帳簿価額に追加信託の金額2億6,238万円余を加え、本件優先受益権2の譲渡原価185億4,981万円余及び本件メザニン受益権の帳簿価額10億円を差し引いた44億3,531万円余とする会計処理を行った。
(4)Xは、本件各劣後受益権に係る収益配当金について、本件各事業年度において、Sから、本件劣後受益権1に係る収益配当金(平成16年3月期4億4,597万円余、平成17年3月期3億2,763万円余及び平成18年3月期2億8,581万円余)を受領し、また、自己の信託勘定から、本件劣後受益権2に係る収益配当金(平成17年3月期2億8,440万円余及び平成18年3月期4億8,975万円余。)を自己の固有勘定に振り替える経理処理を行うことにより受領した(以上の収益配当金を以下「本件収益配当金」という。)。
Xは、本件各事業年度において、本件収益配当金の会計処理につき、金融商品会計実務指針105項の適用があるものとして、同項の「受取利息」に相当する「買入金銭債権利息額」及び同項の「元本の回収」に相当する「買入金銭債権償還額」(平成16年3月期3億3,778万円、平成17年3月期3億4,156万円余及び平成18年3月期3億7,320万円余)に区分し、買入金銭債権利息額のみを収益に計上する一方で、買入金銭債権償還額については収益に計上せず、同額を本件各劣後受益権の帳簿価額から減額する処理を行った。
そして、Xは、買入金銭債権利息額のみを益金の額に算入して本件各事業年度の法人税の確定申告をした。
(5)これらのXの各確定申告に対し、処分行政庁は、上記の各事業年度における買入金銭債権償還額を受取利息として益金の額に含めるべきであるとする本件各更正等をした。
二、争点及び当事者の主張
1 争 点 (1)Xが本件各劣後受益権の収益配当金の会計処理につき、金融商品会計実務指針105項の適用があるものとして、同項の「受取利息」に相当する「買入金銭債権利息額」のみを収益に計上する処理を行ったことは適法な会計処理か。
(2)平等原則違反の有無
(3)租税法律主義違反の有無
2 Xの主張 (1)金融商品会計実務指針105項にいう取得は、債権の売買等の典型的な場合に限られず、何らかの債権の移転が生じたことに伴い、当該債権の金利を反映して債権金額とは異なる取得価額が貸借対照表に計上された場合も、同項にいう取得に該当すると解すべきである。本件においては、第三者に譲渡された本件各優先受益権の金利が市場水準の金利と同様とされたことにより市場水準を上回っていた分の金利が本件各劣後受益権の帳簿価額に反映された結果、本件各劣後受益権の帳簿価額と債権金額との間に差額が生じたのであるから、Xが本件各劣後受益権を保有するに至ったことは、金融商品会計実務指針105項にいう取得に該当する。
(2)Xの行った会計処理は、X以外の者も広く行っており、こうした会計処理に基づく確定申告を行っているはずであるが、Xが知る限りではX以外に更正処分を受けた者はいないから憲法14条の平等原則に違反する。
(3)本件各更正は、納税者であるXにとって全く予測不可能な理由に基づき、明確な法令上の根拠に基づかずになされたものであるから、憲法84条の租税法律主義に違反する。
3 国の主張 (1)本件各劣後受益権は、金融商品会計実務指針291項により、新たな金融資産の購入としてではなく、信託した金融資産である本件各債権の残存部分と評価されるから、同指針105項の取得に該当しない。
(2)Xの平等原則違反に関して主張する事実の存否はいずれも明らかでないから、Xの主張は前提を欠く失当なものである。
(3)本件各更正は、金融商品会計実務指針105項の適用がないことを前提として、法人税法22条2項に基づき行っているから、租税法律主義に違反しない。
三、判決要旨
請求棄却。 (1)一般に、金融商品会計実務指針105項の要件に該当する場合において、その債権の取得価額と債権金額の差額について同項所定の償却原価法により会計処理することは、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従った適法な処理であると解するのが相当であり、この点については当事者間にも争いがない。
しかし、金融商品会計実務指針105項の適用をめぐって当事者間に争いがある。
(2)そこで、まず、Xが、信託契約によって、受託者に譲渡した住宅ローン債権を、受託者において優先と劣後の2つの信託受益権に分け、Xがその劣後受益権を保有するに至った場合が、金融商品会計実務指針105項にいう「債権を取得した場合」に該当するといえるかについて検討するに、信託受益権の評価方法について定めた金融商品会計実務指針100項(2)は、「信託受益権が優先劣後等のように質的に分割されており、信託受益権の保有者が複数である場合には、信託を一種の事業体とみなして、当該受益権を信託に対する金銭債権(貸付金等)の取得又は信託からの有価証券(債券、株式等)の購入とみなして取り扱う。」としつつ、そのただし書きにおいて、「ただし、企業が信託財産構成物である金融資産の委託者である場合で、かつ、信託財産構成物が委託者たる譲渡人にとって金融資産の消滅の認識要件を満たす場合には、譲渡人の保有する信託受益権は新たな金融資産ではなく、譲渡金融資産の残存部分として評価する。」と定めている。そして、このただし書きの背景事情について説明した金融商品会計実務指針291項は、「企業が自ら保有する金融資産を信託するとともに、信託受益権を優先と劣後に分割し、その劣後受益権を自らが保有して優先受益権を第三者に譲渡する場合、…自らが保有する劣後受益権は、新たな金融資産の購入としてではなく、信託した金融資産の残存部分として評価する必要がある。」としている。
すなわち、金融商品会計実務指針100項(2)ただし書き及びこの背景事情について説明した291項によれば、本件のXのような場合においては、Xの保有する劣後受益権は、新たな金融資産の取得としてではなく、信託した金融資産である住宅ローン債権の残存部分として評価する必要があるとしているのであって、Xが信託契約によって保有するに至った本件各劣後受益権は、金融商品会計実務指針105項にいう「債権を取得した場合」には該当しないと解すべきことになる。
(3)この点につき、Xは、金融商品会計実務指針100項(2)及び291項は、信託設定時点の劣後受益権の評価方法を定めたもので、債権を取得した日の属する事業年度以降の配当の取扱いに関する会計処理を定めた同指針105項の解釈とは適用場面を異にする旨主張する。しかしながら、金融商品会計実務指針100項(2)ただし書き及び同指針291項が前述のように定めているのは、一般に、信託受益権を優先と劣後に分割して、劣後受益権を自らが保有する場合は、優先受益権については、金融商品としての価値が高いものとして第三者に売却することで資金調達を円滑に行うことを企図すると共に、その反面として、劣後受益権は、リスクを負担するなど金融商品としての価値が低いものとなるため市場に出さずに自ら負担するものであると解されることから、そのような劣後受益権は、新たな金融商品の取得としてではなく、信託受益権全体から優先受益権を除いた残存部分として自ら保有し続けるものとして評価するのが、信託受益権の評価として相当であるとの判断に基づくものであると解されるところ、この理は、金融商品会計実務指針105項において、同様に優先劣後に分割した信託受益権を評価する場合にも何ら異なることはないというべきであるから、この点についてのXの主張は理由がない。
(4)金融商品会計実務指針105項は、債権の支払日が将来の期日であることから、その間の金利を反映して債権の元本金額よりも高い金額(あるいは低い金額)で取得した場合には、その差額をその支払日までの期間にわたって期間配分するものとして上記のように実効利子率を定め、それに基づいて算定された額をその債権の受取利息とすることが合理的であると考えられるため、その考え方を採用した上で、その方法で算定された受取利息額が、実際に受領した利息額より多ければその差額分を債権の帳簿価額に加算し、少なければその差額分を債権の帳簿価額から減算することによって、実効利子率による利息の計算を会計処理に反映させるように償却原価法による処理を行うこととしたものであると解される。
しかるに、本件劣後受益権1の帳簿価額は、本件優先受益権1と本件劣後受益権1を合わせた信託受益権全体と信託債権である本件債権1が対応する関係にあることから、本件債権1の帳簿価額から本件優先受益権1の帳簿価額(譲渡原価額)を差し引いた金額として計上されるところ、本件優先受益権1の帳簿価額(譲渡原価額)については、本件債権1全体の時価を算定して各受益権の時価の割合に応じて算出しているのに対し、本件劣後受益権1の帳簿価額の算定においては、本件債権1の帳簿価額から、上記のとおり時価評価を前提として各受益権に按分計算された本件優先受益権1の帳簿価額(譲渡原価額)を差し引くという計算をすることになるために、その帳簿価額と債権価額の間に帳簿処理という技術的な理由によって差異が生じざるを得ないことになる。そして、本件劣後受益権2の帳簿価額もまた、本件劣後受益権1について上に述べたことが当てはまるものである。
そうすると、本件各劣後受益権の帳簿価額と債権金額の差額は、帳簿処理に伴う技術的な理由によって計上されたものにすぎず、各受益権の支払日までの金利を反映して定められた金額ではなく、また、その帳簿価額は、各受益権の客観的な価値を把握した金額ではないから、本件各劣後受益権については、およそ金融商品会計実務指針105項適用の前提を欠くものであることは明らかである。
(5)また、金融商品会計実務指針105項は、上記のとおり「債務者からの入金額」を実効利子率に基づいて「元本の回収」と「受取利息」とに区分する旨定めているが、本件各劣後受益権は、そもそもXが保有していた住宅ローン債権の債務者が債務不履行になったり破産したりした場合のリスクを引き受けることによって本件各優先受益権の金融商品としての価値を高めることに1つの重要な意味があると解され、このような本件各劣後受益権は、そもそも金融商品会計実務指針105項が想定する「債権の支払日までの金利を反映し」た債権ではないことはもとより、そのような本件各劣後受益権を「元本の回収」と「受取利息」に分けることはおよそ同項が予定するものではないと言わざるを得ない。
(6)平成14年改正前の商法においては、その285条の4が、金銭債権の評価について「債権金額ヲ付スルコトヲ要ス」ことを原則とした上で、ただし書きで債権金額と異なる代金で「買入レタルトキ」は、相当の増額又は減額ができると規定していた。そして、金融商品会計実務指針105項は、平成14年改正前の商法285条の4が通則として意味を有していたころから存在していたのであって、そうすると少なくともその当時は、同項にいう債権の「取得」とは債権を「買入レタルトキ」として解釈されていたと考えられ、ここにいう「取得」が本来、他者から取得した場合を想定し、信託等によって実質上自ら創設したものは想定していなかったと解されるところ、その解釈が特に変更されたことを窺わせる資料もない。
(7)以上によれば、Xが本件各劣後受益権の収益配当金の会計処理につき、金融商品会計実務指針105項の適用があるものとして、同項の「受取利息」に相当する「買入金銭債権利息額」のみを収益に計上する処理を行ったことは適法な会計処理とはいえないものと解される。
(8)Xは、憲法14条の平等原則に違反する旨主張するが、本件全証拠によっても、X以外に本件のような事例で更正を受けた者がおらず、Xのみが不平等な取り扱いを受けたことを認めるに足りないから、この点についてのXの主張は採用できない。
(9)本件各更正は、法人税法22条2項に基づき、本件各劣後受益権の収益配当の全額が有償による役務の提供に係る収益に当たるとして益金の額に算入したものであり、何ら租税法律主義に違反しない。
(10)以上によれば、本件各劣後受益権の収益配当金を平成16年3月期、平成17年3月期及び平成18年3月期のXの各法人税の所得計算上は益金の額に算入した本件各更正等はいずれも適法である。
四、解説
はじめに 本件は、銀行業務等を業とするXが、その保有する住宅ローン債権の流動化取引の方法として当該住宅ローン債権を信託契約を利用して新たな金融商品を創設して、本件各優先受益権、本件メザニン受益権及び本件各劣後受益権を取得し、その本件各優先受益権及び本件メザニン受益権を投資家等に譲渡し、残りの本件各劣後受益権を保有した上で、本件各劣後受益権に係る本件収益配当金の全部を法人税の所得金額の計算上益金の額に算入すべきか否かが争われたものである。
本件においては、本件収益配当金のうち買入金銭債権償還額について、金融商品会計実務指針105項が適用されるか否かが争われることとなったが、法人税法における金融商品に係る収益計上において、何故に日本公認会計士協会が定めた実務指針が法人税法22条4項にいう一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に該当するか否かについては、必ずしも明確に検討されているとも考えられない。そこで、それらの問題を明らかにした上で、本判決の論点について検討することとする。
1 法人税法上の収益計上時期 (1)法人税法の益金(収益)計上の基本規定である法人税法22条2項は、「各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売……その他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」と定めている。また、法人税法22条4項は、「第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と定めている。
このような法人税法上の収益計上に関する各規定から当該収益の計上時期をどのように解するかについては、法人税法22条2項の規定から、益金の額に算入すべき収益の額は、当該事業年度の対外的な取引により実現したものであると当然に解釈し得るとする見解(注1)と社会通念に従うこととし、健全な会計慣行を探求し、それにより法令の解釈に当たるべきとする見解(注2)に分かれる。しかし、法人税法22条2項の文理から明らかに収益の計上時期が導き出されるわけではなく、法人税法22条4項の存在を考慮すれば、後者の見解の方が妥当であると考えられる(注3)。また、法人税の収益計上についても、いわゆる権利確定主義が妥当とする見解(注4)も有力である。
なお、本件の金融商品に関係する有価証券の譲渡損益については、かつては、棚卸資産と同様に法人税基本通達が定める引渡し基準によって計上することとされていたが、平成12年の税制改正によって、「その譲渡に係る契約をした日」の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することにしている(法法61の2①)(注5)。
以上の法人税法上の収益計上をめぐる各規定の中で特に問題となるのが、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の内容であり、それに関する解釈論である(注6)。この解釈論についても、種々の論争が行われてきたのであるが、この基準は、立法当初から、客観的な規範性をもつ公正妥当と認められる会計処理の基準という意味であり、「企業会計原則」のように明文化された基準を指すものではないと解されてきた(注7)。したがって、企業会計原則、会計基準、会社法の会社計算規則等の明文の規定は、当該解釈の一つの参考になるにすぎないことになる(注8)。その意味では、本判決において、本件各劣後受益権に係る収益の計上について、専ら金融商品に関する会計基準の運用方針を定めた日本公認会計士協会の実務指針該当の有無が争われていることに若干の違和感がある。けだし、当該実務指針の基となっている金融商品に関する会計基準が、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に該当するか否かが一層説得的に判断されて然るべきである。
(2)法人税法における収益計上時期に関する法令の規定とそれに係る主な解釈論は以上のとおりであるが、実務では、それらの法令の規定や解釈論を基にした法人税基本通達の取扱いが重視されている。
まず、資産の譲渡から生じる収益については、棚卸資産の販売につき、「棚卸資産の販売による収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。」(法基通2-1-1)と定めている。この収益計上基準は、引渡し基準と称せられ、有価証券や短期売買商品を除く他の資産の譲渡に係る収益計上の基となっている(法基通2-1-5、2-1-14等参照)。また、この引渡し基準は、企業会計上の実現主義や販売基準に共通するものと考えられる。もっとも、法人税基本通達では、課税の統一(公平)を図るため、「引渡しの日」等を明確に定め、その継続適用を求めていることに特徴がある(法基通2-1-2、2-1-6、2-1-15等参照)。
また、役務の提供に係る収益計上については、原則として、「その約した役務の全部を完了した日の属する事業年度」に計上することとしている(法基通2-1-5、2-1-12等参照)。次に、貸付金等から生ずる利子の額は、原則として、「その利子の計算期間の経過に応じ当該事業年度に係る金額を当該事業年度の益金の額に算入する。」(法基通2-1-24)ということで発生主義によることとし、剰余金の配当は、「当該配当の効力を生ずる日」、利益の配当又は剰余金の分配は、社員総会等において、「当該利益の配当又剰余金の分配に関する決議があった日」の属する事業年度に計上することとしている(法基通2-1-27)。
本件で問題となっている金融商品に係る収益については、当該金融商品に係る譲渡、取得、収益分配等から複合的に生ずる場合があるので、留意を要する。
2 金融商品(債権)に係る収益計上 (1)本件で問題となっている信託受益権のような金融商品に係る収益の計上時期については、法人税法が企業会計上の会計処理に強く影響されている分野でもある。例えば、平成12年の法人税法改正において、有価証券の譲渡損益の計上等について大幅に改正されたが、それは、前年に企業会計審議会が公表した「金融商品に関する会計基準」に影響を受けている。
そこで、金融商品に関する会計基準における会計処理方法を検討してみるに、本件のような場合の債権の取得等について、その貸借対照表価額を次のように定めている(同会計基準Ⅳの1の14)。
「14. 受取手形、売掛金、貸付金その他の債権の貸借対照表価額は、取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とする。ただし、債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債権金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法(注5)に基づいて算定された価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額としなければならない。」
そして、上記会計処理における償却原価法については、次のように説明している(同会計基準(注5))。
「(注5) 償却原価法について
償却原価法とは、金融資産又は金融負債を債権額又は債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいう。なお、この場合、当該加減額を受取利息又は支払利息に含めて処理する。」
このような金融商品に関する会計基準は、そもそも債権を取得した場合の貸借対照表価額を明示しているのであるが、その場合に適用される償却原価法の具体的な適用方法について、金融商品会計実務指針では、次のように取り扱うことにしている(同指針105項)。
「 債権の支払日までの金利を反映して債権金額と異なる価額で債権を取得した場合には、取得時に取得価額で貸借対照表に計上し、取得価額と債権金額との差額(以下「取得差額」という。)について償却原価法に基づき処理を行う。この場合、将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額に一致するような割引率(実効利子率)に基づいて、債務者からの入金額を元本の回収と受取利息とに区分する。償却原価法の適用については利息法によることを原則とするが、契約上、元利の支払いが弁済期限に一括して行われる場合又は規則的に行われることとなっている場合には、定額法によることができる。……(以下略)」
(2)以上のような金融商品に関する会計基準における会計処理は、基本的には、金融商品取引法が適用される上場企業等に適用されるべきものであろうが、中小企業等の非上場企業の会計処理においても容認されている。
まず、企業会計基準委員会等が中心になって定めている「中小企業の会計に関する指針」では、金銭債権の取得価額と債権金額とが異なる場合の処理について、次のように定めている(同指針各論11)。
「 債権の支払日までの金利を反映して債権金額と異なる価額で債権を取得したときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする。償却原価法とは、金融資産を債権額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいう。ただし、取得価額と債権金額との差額に重要性が乏しい場合には、決済時点において差額を損益として認識することもできる。」
また、中小企業庁、金融庁が中心になって定めている「中小企業の会計に関する基本要領」では、「金銭債権は、原則として、取得価額で計上する。」(同要領各論3(1))と定め、同要領の解釈で、「社債を額面金額未満で購入する場合には、決算において、額面金額と取得価額との差額を購入から償還までの期間で按分して受取利息として計上するとともに、貸借対照表の金額を増額させることができます。」と述べ、償却原価法の具体的処理方法を説明している(注9)。
(3)次に、商法又は会社法では、「債権」の取得等に関する会計処理について、次のように定めている。まず、金融商品に関する会計基準が制定された当時(平成11年)の商法285条の4第1項は、「金銭債権ニ付テハ其ノ債権金額ヲ附スルコトヲ要ス但シ債権金額ヨリ低キ代金ニテ買入レタルトキ其ノ他相当ノ理由アルトキハ相当ノ減額ヲ為スコトヲ得」と定めていた。
その後、平成14年の商法改正によって、会社計算規定が商法本法から法務省令へ移行することとなり、それが平成17年に商法を分割して制定された会社法へ引き継がれることになった。現行の会社計算規則(法務省令)では、「資産については、この省令又は法以外の法令に別段の定めがある場合を除き、会計帳簿にその取得価額を付さなければならない。」(同規則5①)と定め、「債権については、その取得価額が債権金額と異なる場合その他相当の理由がある場合には、適正な価格を付すことができる。」(同規則5⑤)と定めている。
このような会社法上の各規定の解釈等については、会社法431条が、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」と定め、会社計算規則3条が、「この省令の用語の解釈及び規定の適用に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行をしん酌しなければならない。」と定めている。
これらの商法及び会社法の改正の経緯並びに現行の会社法及び会社計算規則の各規定に照らせば、債権の取得価額と債権金額が異なる場合の会計処理については、会社法上も前述の償却原価法が容認されているものと解される。
(4)以上のような企業会計における債権の取得等に関する収益計上の会計処理に対して、法人税法では、前記1で述べたように、それらに対応して直接定めた法令上の規定は存しない。そうであれば、法人税法22条4項に定める「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従うことになるものと解されるが、それとても、当該基準は、前記1で述べたように、一律に明らかにされているわけではない。その意味では、法人税法においては、前述の金融商品に関する会計基準や日本公認会計士協会が定めた金融商品会計実務指針の取扱いがそのまま適用され得るわけではなく、それらは「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の解釈において参考となるものに過ぎない。
また、前記1において、法人税法上の収益計上については、実務上、法人税基本通達等の取扱いに依存する場合が多いことを述べた。本件のような債権の取得等における税務上の処理についても、次のような取扱いが定められている(法基通2-1-34)。
「 金銭債権をその債権金額に満たない価額で取得した場合又は債権金額を超える価額で取得した場合において、その債権金額とその取得に要した価額との差額に相当する金額(実質的な贈与と認められる部分の金額を除く。以下2-1-34において「取得差額」という。)の全部又は一部が金利の調整により生じたものと認められるときは、当該金銭債権に係る支払期日までの期間の経過に応じ、利息法又は定額法に基づき当該取得差額の範囲内において金利の調整により生じた部分の金額(以下2-1-34において「調整差額」という。)を益金の額又は損金の額に算入する。
ただし、調整差額を算定することが困難である場合又は当該金銭債権につき2-1-33の(6)イ及び(注)((償還有価証券の範囲))に掲げる事実がある場合には、この限りではない。
(注)1~3は省略。
4 利息法とは、調整差額を元本額の残高に対する利回りが一定となるように支払期日までの各期間に配分する方法をいい、定額法とは、調整差額を支払期日までの各期間の日数等に応じて当該各期間に均等に配分する方法をいう。」
このような取扱いは、金融商品に関する会計基準や金融商品会計実務指針105項等の影響を受けているが、金利の調整であるか否かについては、一層厳格に判定することとしている(注10)。
3 本件各劣後債権に係る収益配当金の収益計上時期 (1)本件においては、銀行業、信託業等を業とするXが、その所有する住宅ローン債権の流動化を図るため、当該債権を信託して、それによって得た本件各優先受益権等を投資家等に譲渡し、残りの本件各劣後受益権を保有した場合に、本件各劣後受益権から得た本件収益配当金の収益計上(時期)が争われたものである。
Xは、本件各事業年度において、本件収益配当金合計16億2,319万円につき、受取利息に相当するとする買入金銭債権利息額合計7億7,043万円余と元本の回収に相当するとする買入金銭債権償還額合計10億5,255万円余に区分し、前者は企業会計上の利益及び法人税法上の収益の額に該当するが、後者は本件各劣後受益権の帳簿価額を減額する会計処理を行い、法人税法上の収益の額に計上しなかったものである。Xは、その会計処理の根拠として、本件各劣後受益権の取得と本件収益配当金の受領には、金融商品会計実務指針105項の適用があると主張している。
このような会計処理については、これを積極的に支持し、本判決の結論を反対する見解(注11)もみられる。
これに対し、処分行政庁は、本件収益配当金の受領には金融商品会計実務指針105項の適用はなく、その全額が本件各事業年度の益金の額に算入すべきであるとする本件更正等を行い、本訴において、国も、その旨主張した。
(2)かくして、本判決は、金融商品会計実務指針105項が法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当するとした上で、同指針100項及び291項によれば、Xが信託契約によって保有するに至った本件各劣後受益権の取得は、金融商品会計実務指針105項にいう「債権を取得した場合」には該当しない旨判示し、平成14年改正前の商法285条の4の規定も参考にした上で、「Xが本件各劣後受益権の収益配当金の会計処理につき、金融商品会計実務指針105項の適用があるものとして、同項の「受取利息」に相当する「買入金銭債権利息額」と同項の「元本の回収」に相当する「買入金銭債権償還額」とに区分し、前者のみを収益に計上する処理を行ったことは適法な会計処理とはいえない」と判示した。
(3)本判決は、要するに、Xが本件各劣後債権を保有していることは金融商品会計実務指針105項にいう「債権を取得した場合」に該当しないから、本件収益配当金の受領につき、償却原価法を適用する余地はない、と判断したものである。このことは、同指針の基となっている金融商品に関する会計基準14項が「債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合に、償却原価法を適用する」としているのであるから、同会計基準の取扱いに適合しないことを明らかにしたものでもある。
また、前掲の法人税基本通達2-1-34の適用においては、「あくまで金利の調整により生じた取得差額部分につきその算定が可能であるものが対象とされており、債務者の信用リスクを反映して不良債権を債権金額より低く取得したような場合には、適用されない(注12)」としていることにも通じている。
これらに対し、Xは、本件収益配当金が金融商品会計実務指針105項がいう「実効利子率」を上回っていたため、その上回った部分を「買入金銭債権償還額」と称して「元本の回収」に当たるとして、収益の繰り延べを図ったものと推定される。しかし、そのような会計処理は、企業会計上は一つの方法として成り立つとしても、確定した収益は課税するという建前(権利確定主義が一層適合)を採用している税法の下では認め難いものと考えられる。すなわち、本件のような場合に当該実務指針105項を適用する会計処理は、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当しないものと考えられる。
4 本判決の意義と問題点 (1)以上のように、本件においては、銀行業等を業とするXが、その所有する住宅ローン債権を信託受益権に代え、その一部である本件各劣後受益権に係る本件収益配当金の収益計上の時期が争われたのであるが、具体的には、Xが、本件収益配当金のうち、実効利子率を上回る部分を「買入金銭債権償還額」として金融商品会計実務指針105項にいう「元本の回収」であるとしたことの適否が問題とされた。
本判決は、前述のように、本件各劣後受益権の取得が金融商品会計実務指針105項にいう「債権の取得」に当たらないから、同項がいう償却原価法としての収益の繰延べは認められない旨判示し、本件収益配当金の全額を本件各事業年度の益金の額に算入した本件各更正を適法である旨判示した。
このように、金融商品の中でも特殊な形態であるともいえる本件各劣後受益権に係る本件収益配当金の収益計上について、それが金融商品会計実務指針105項の適用があるか否か、また、本件収益配当金を法人税法上の益金の額として認識し得るか否かについて初めて判決が下されたことは、意義のあることである。しかも、本判決は、金融商品に関する会計基準の運用について、日本公認会計士協会という民間団体が定めた金融商品会計実務指針の取扱いをストレートに法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当することを認めたことは、その是非はともかくとして、注目される。
(2)しかしながら、本件で問題となっている「債権の取得」における会計処理方法を定め、かつ、その場合の償却原価法を定義している金融商品に関する会計基準については、まず、当該会計基準における償却原価法の取扱いが、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当するか否かが判断されて然るべきであると考えられる。
また、本件収益配当金の支払基準が本判決に挙示されている各証拠から明らかでないため、本件収益配当金のうち「実効利子率」を上回る部分が「元本の回収」であるというXの主張も説得力を欠いているものと考えられる。本件が控訴審で争われるのであれば、それらの事実関係が明らかにされて然るべきであると考えられる。
なお、本判決は、Xが主張する平等原則違反につき、「本件全証拠によっても、X以外に本件のような事例で更正処分を受けた者がおら」ないことを理由に当該主張を排斥しているが、他に更正処分を受けた者がいないことを問題にしているのであるから、いささか論理矛盾を来たしている。
(注1)吉国二郎「法人税法(実務篇)」(財経詳報社 昭和46年)94頁等参照。
(注2)忠佐市「税務会計法 第3版」(大蔵財務協会)205頁等参照。
(注3)品川芳宣「課税所得と企業利益」(税務研究会 昭和57年)21頁等参照。
(注4)金子宏「所得の年度帰属 総論」日税研論集22号3頁等参照。
(注5)平成12年の法人税法改正は、基本的には、平成11年1月22日に公表された「金融商品に関する会計基準」(企業会計審議会)に対応している。
(注6)当該規定の立法趣旨及び当該基準の解釈については、武田昌輔「公正処理基準と税法」租税法研究第4号(企業課税の諸問題)71頁等参照。
(注7)国税庁「昭和42年 改正税法のすべて」藤掛一雄「法人税法の改正」75頁、吉国二郎・武田昌輔「法人税法〔理論篇〕」(財経詳報社 昭和47年)170頁等参照。
(注8)前出(6)88頁等参照。
(注9)金銭債権及び金銭債務に関する中小企業の会計(いわゆる中小指針と中小会計要領との関係等)と税務との関係については、品川芳宣「中小企業の会計と税務」(大蔵財務協会 平成25年)163頁等参照。
(注10)当該通達の取扱いについては、森文人編著「法人税基本通達逐条解説 六訂版」(税務研究会 平成23年)170頁参照。
(注11)秋葉賢一「債権流動化における劣後受益権に関する収益認識」税務弘報2013年4月号132頁参照。
(注12)前出(10)172頁。
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