コラム2014年03月17日 【SCOPE】 親子間取引めぐる税務訴訟、売上値引を寄附金と認めず(2014年3月17日号・№539)
法人税更正処分等を全部取り消し
親子間取引めぐる税務訴訟、売上値引を寄附金と認めず
原告子会社(納税者)が親会社に対して行った「売上値引」による売上の減額が寄附金(法法37)に該当するか否かが問題となっていた税務訴訟で東京地裁は今年1月24日、法人税更正処分等の全部を取り消した。問題となった「売上値引」は、親会社に対する販売価格について期末に一定の調整が行われることで発生していた。この点、国側は、原告子会社の利益を親会社に付け替えるものであって、通常の経済取引として是認できる合理的な理由はないから寄附金に該当するなどと主張していたが、裁判所によって斥けられている。なお、国側は控訴を断念しているため、本事案は確定済みだ。
裁判所、原告子会社から親会社への利益供与は認められず
原告子会社(納税者)は、親会社が住宅用外壁の製造部門を分社化して設立された子会社だ。原告子会社は、製造した製品(外壁)を親会社に対してのみ販売していた。
販売価格は、親会社と原告子会社との間で取り交わされた本件覚書により、「原則として合理的な原価計算の基礎に立ち、両社協議の上決定する」旨が規定されていた。
具体的には、親会社役員と原告子会社の代表者が参加する会議において、原告子会社の実績見込みなどから「当初取引価格」を親会社が設定していた。また、親会社は、各半期の期末において、一定の調整を行った「期末決定価格」を原告子会社に通知していた。
このとき、親会社は、各半期の期首以降、「当初取引価格」による金額を支払い、原告子会社は、これを売上として処理していた。また、原告子会社は、各半期の期末において、「当初取引価格」と「期末決定価格」の差額部分(「当初取引価格-期末決定価格」)について、「売上値引」として売上から減額する会計処理を行っていた。
税務署、売上値引は親会社への利益供与 今回の事案で問題となっていたのは、原告子会社が親会社に対して行った「売上値引」による売上の減額が法人税法37条が規定する寄附金に該当するか否かという点だ(図参照)。寄附金に該当するのであれば、そのほとんどが損金不算入となる。
税務署は、親会社と原告子会社との間で合意された販売価格は「当初取引価格」であるとして、「売上値引」による売上の減額は親会社への利益供与であると判断。寄附金に該当するとして、その大部分を損金不算入とする法人税更正処分等を行っていた。
これに対して、原告子会社は、期初に設定された「当初取引価格」は暫定的な価格であり、原告子会社の親会社に対する販売価格は期末に決定されるなどと主張し、更正処分等の取り消しを求める訴訟を提起していた(当事者の主張は表参照)。
合意した販売価格は「期末決定価格」と判示 裁判所は、寄附金の意義を規定した法人税法37条7項の「贈与または無償の供与」の部分について、資産または経済的利益を対価なくほかに移転する場合であって、その行為について通常の経済取引として是認できる合理的な理由が存在しないものを指すと解するのが相当であると判示した。
本事案については、まず、当初取引価格は、予算計画を策定するための基準として利用されることが予定される数値に過ぎないと指摘。原告子会社と親会社との間で、その「当初取引価格」が販売価格として合意されていたとするには相当疑義があるといわざるを得ないと指摘し、両社で合意された販売価格は各半期における「期末決定価格」(売上値引控除後の金額)であると認定した。
そのうえで、裁判所は、「売上値引」により原告会社から親会社に対して利益の供与などがされたとは認められないため、「売上値引」に係る金額は法人税法37条7項の寄附金には該当しないと判断している。
親子間取引めぐる税務訴訟、売上値引を寄附金と認めず
原告子会社(納税者)が親会社に対して行った「売上値引」による売上の減額が寄附金(法法37)に該当するか否かが問題となっていた税務訴訟で東京地裁は今年1月24日、法人税更正処分等の全部を取り消した。問題となった「売上値引」は、親会社に対する販売価格について期末に一定の調整が行われることで発生していた。この点、国側は、原告子会社の利益を親会社に付け替えるものであって、通常の経済取引として是認できる合理的な理由はないから寄附金に該当するなどと主張していたが、裁判所によって斥けられている。なお、国側は控訴を断念しているため、本事案は確定済みだ。
裁判所、原告子会社から親会社への利益供与は認められず
原告子会社(納税者)は、親会社が住宅用外壁の製造部門を分社化して設立された子会社だ。原告子会社は、製造した製品(外壁)を親会社に対してのみ販売していた。
販売価格は、親会社と原告子会社との間で取り交わされた本件覚書により、「原則として合理的な原価計算の基礎に立ち、両社協議の上決定する」旨が規定されていた。
具体的には、親会社役員と原告子会社の代表者が参加する会議において、原告子会社の実績見込みなどから「当初取引価格」を親会社が設定していた。また、親会社は、各半期の期末において、一定の調整を行った「期末決定価格」を原告子会社に通知していた。
このとき、親会社は、各半期の期首以降、「当初取引価格」による金額を支払い、原告子会社は、これを売上として処理していた。また、原告子会社は、各半期の期末において、「当初取引価格」と「期末決定価格」の差額部分(「当初取引価格-期末決定価格」)について、「売上値引」として売上から減額する会計処理を行っていた。
税務署、売上値引は親会社への利益供与 今回の事案で問題となっていたのは、原告子会社が親会社に対して行った「売上値引」による売上の減額が法人税法37条が規定する寄附金に該当するか否かという点だ(図参照)。寄附金に該当するのであれば、そのほとんどが損金不算入となる。

税務署は、親会社と原告子会社との間で合意された販売価格は「当初取引価格」であるとして、「売上値引」による売上の減額は親会社への利益供与であると判断。寄附金に該当するとして、その大部分を損金不算入とする法人税更正処分等を行っていた。
これに対して、原告子会社は、期初に設定された「当初取引価格」は暫定的な価格であり、原告子会社の親会社に対する販売価格は期末に決定されるなどと主張し、更正処分等の取り消しを求める訴訟を提起していた(当事者の主張は表参照)。
【表】納税者および国側の主張(「売上値引」の寄附金該当性について) |
原告子会社(納税者) | 国(処分行政庁) |
・本件覚書等が交わされた経緯からすれば、契約価格は、期末に実際原価に一定の上乗せ利益を加算するとの方法で決定される価格となるものであり、当初取引価格は暫定的な価格にすぎない。 ・本件販売契約における契約価格、すなわち本件覚書の「合理的な原価計算の基礎に立ち、甲乙協議の上決定」された価格は、期末決定価格である。 ・「売上値引」は、合理的な原価計算による公正価格への変更であって、実質的贈与性を欠いている。したがって、「売上値引」に係る金額は、寄附金には当たらない。 | ・原告子会社と親会社との間の取引価格は、当初取引価格であると認められる。 ・「売上値引」は、単に原告子会社の利益を親会社に付け替えるだけのものであって、その実質は単なる贈与ないし債権放棄であり、通常の経済取引として是認できる合理的理由は何ら存しない。 ・本件販売契約における契約価格は、当初取引価格であり、「売上値引」は、経済的に見て贈与と同視し得る利益の供与である。したがって、「売上値引」に係る金額は、法人税法37条7項所定の寄附金に該当する。 |
合意した販売価格は「期末決定価格」と判示 裁判所は、寄附金の意義を規定した法人税法37条7項の「贈与または無償の供与」の部分について、資産または経済的利益を対価なくほかに移転する場合であって、その行為について通常の経済取引として是認できる合理的な理由が存在しないものを指すと解するのが相当であると判示した。
本事案については、まず、当初取引価格は、予算計画を策定するための基準として利用されることが予定される数値に過ぎないと指摘。原告子会社と親会社との間で、その「当初取引価格」が販売価格として合意されていたとするには相当疑義があるといわざるを得ないと指摘し、両社で合意された販売価格は各半期における「期末決定価格」(売上値引控除後の金額)であると認定した。
そのうえで、裁判所は、「売上値引」により原告会社から親会社に対して利益の供与などがされたとは認められないため、「売上値引」に係る金額は法人税法37条7項の寄附金には該当しないと判断している。
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