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解説記事2014年07月21日 【実務解説】 四半期報告書作成上の留意点(平成26年6月第1四半期提出用)(2014年7月21日号・№555)

実務解説
四半期報告書作成上の留意点(平成26年6月第1四半期提出用)
 公益財団法人 財務会計基準機構 企画・開示室 高野裕郎

Ⅰ はじめに

 財務会計基準機構では、四半期報告書セミナーを6月11日から23日にかけて全国9か所11回にわたり開催した。本稿は、同セミナーで説明した内容をもとに、平成26年6月第1四半期報告書の留意点についてまとめたものであり、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」という)等の適用に関する留意点や企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下「企業結合会計基準」という)等の早期適用に関する留意点を中心に解説する。
 なお、文中意見にわたる部分は私見であることをあらかじめお断りしておく。

Ⅱ 退職給付会計基準等の改正に伴う留意点
 平成24年5月17日に企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という)から公表された「退職給付会計基準」及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下「退職給付会計基準等」という)では、四半期報告書に係る事項として、①未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用(以下「未認識項目」という)の処理方法の見直し、②退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直しが行われている。
 ①未認識項目の処理方法の見直しについては、平成25年4月1日以後開始する年度の年度末から既に適用となっており、②退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直しについては、原則、平成26年4月1日以後開始する年度の期首から適用となる。なお、①、②ともに、平成25年4月1日以後開始する年度の期首から早期適用することが可能である。
 また、いずれの改正についても遡及適用しないとされており、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成24年内閣府令第61号)の附則においても、比較情報については改正前の「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成に関する規則」(以下「四半期連結財規」という)に従って記載することが定められている。

1 四半期連結貸借対照表及び四半期連結包括利益計算書  今回の改正により、四半期連結貸借対照表においては、「退職給付に係る負債」及び「退職給付に係る調整累計額」を区分表示することが規定された(四半期連結財規第50条第1項第4号及び四半期連結財規第56条において準用する「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財規」という)第43条の2第1項第5号)。
 四半期連結包括利益計算書においては、数理計算上の差異及び過去勤務費用のうち、当期に費用処理されない部分(未認識項目)については「退職給付に係る調整額」として区分表示することが規定された(四半期連結財規第83条の5において準用する連結財規第69条の5第1項第4号)。
 また、四半期連結貸借対照表及び四半期連結包括利益計算書については、未認識項目の処理方法の見直しを原則適用した場合、比較情報の数値の有無に留意する必要がある。具体的には、四半期連結貸借対照表の比較情報は「前連結会計年度末」に係る事項であり、記載事例1の「退職給付に係る負債」と「退職給付に係る調整累計額」については「XXX」とし、数値が存在する記載となっている。一方、四半期連結包括利益計算書の比較情報は「前第1四半期連結累計期間」に係る事項で、「退職給付に係る調整額」には「-」を記載し、数値は存在しないことを明示している。このような違いは、の冒頭に記載のとおり、今般の退職給付会計基準等は遡及適用しないため、適用するタイミングによって数値の有無が発生するためである。未認識項目の処理方法の見直しに係る改正については、平成25年4月1日以後開始する年度の年度末から原則適用されているため、年度末に係る数値は存在するが、前年の四半期に係る数値は存在しないこととなる。


2 会計方針の変更  記載事例2は、当第1四半期連結会計期間において退職給付会計基準等を適用し、退職給付債務及び勤務費用の計算方法を見直した場合の記載事例である。退職給付会計基準等の改正点のうち、未認識項目の処理方法の見直しは既に原則適用されているため、当第1四半期においては、退職給付債務及び勤務費用の計算方法を見直した場合の注記を記載することとなる。
 この記載事例では、退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直しの内容として、「退職給付見込額の期間帰属方法」及び「割引率の決定方法」を挙げている。また、経過措置について、「退職給付会計基準第37項に定める経過的な取扱いに従って」と明記し、それに続いて、四半期連結貸借対照表に与える影響額及び四半期連結損益計算書に与える影響額を記載している。
 なお、退職給付会計基準等の適用に伴って生じる数理計算に用いる計算基礎の設定方法の変更は、記載事例で記載している割引率の決定方法のほか、例えば、予想昇給率の算定方法の変更があり、これも会計方針の変更に該当するものと考えられる。また、退職給付債務及び勤務費用の定め(退職給付会計基準第16項から第21項)の適用初年度に限っては、期間定額基準を従来採用していた場合であっても、給付算定式基準を選択することができる。この変更についても、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当すると考えられる。


3 追加情報  退職給付債務及び勤務費用の定め並びに特別損益における表示の定めについては、平成26年4月1日以後開始する年度の期首からこれらの定めを適用することが実務上困難な場合には、平成27年4月1日以後開始する年度の期首から適用することができるとされている。その場合には、四半期連結財務諸表において、これらの定めを適用していない旨及びその理由を注記することとなる(退職給付会計基準第35項ただし書き)。
 記載事例3が該当の記載事例であり、追加情報の注記として記載することが考えられる。


Ⅲ「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」の改正に伴う留意点
 平成25年12月25日に実務対応報告第30号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」が公表され、平成26年4月1日以後開始する年度の期首から適用されることとなった。当実務対応報告は、従業員への福利厚生を目的として、従業員又は従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引について、当面必要と考えられる実務上の取扱いを明らかにすることを目的としたものである。
 記載事例4は、当実務対応報告を適用した場合の会計方針の変更の注記である。記載事例は従業員持株会に信託を通じて取引した場合のものを想定している。なお、当実務対応報告は、自社の株式を受け取ることができる権利を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引もあるため、この他にも様々なケースが想定される。
 また、当実務対応報告には経過措置が定められており、適用初年度の期首より前もしくは適用した四半期より前に締結された信託契約に係る会計処理については、従来採用していた方法を継続することができるとされている。その場合であっても、会計方針の変更に該当すると考えられる。


Ⅳ 企業結合会計基準等の早期適用に伴う留意点
 平成25年9月13日に、ASBJから、企業結合会計基準及び関連する他の会計基準等(以下、「企業結合会計基準等」という)の改正が公表され、主に次の項目が改正されている。

① 非支配株主持分の取扱い
(1)支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動に関する会計処理の見直し
(2)当期純利益等の表示科目の名称変更
② 取得関連費用の取扱い
③ 暫定的な会計処理の確定の取扱い
※③暫定的な会計処理の確定の取扱いの改正に伴い、平成26年5月16日に、ASBJから企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」等の改正が公表されている。

 上記①~③の適用時期については、次のとおりである。
 原則適用は、①非支配株主持分の取扱い、②取得関連費用の取扱いについては、平成27年4月1日以後開始する年度の期首から、③暫定的な会計処理の確定の取扱いは平成27年4月1日以後開始する年度の期首以後実施される企業結合からとなっている(脚注1)。
 早期適用は、①(2)当期純利益等の表示科目の名称変更については認められていないが、①(1)支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動に関する会計処理の見直し、②取得関連費用の取扱いについては、平成26年4月1日以後開始する年度の期首から、③暫定的な会計処理の確定の取扱いは平成26年4月1日以後開始する年度の期首以後実施される企業結合から可能となっている(脚注2)。ただし、①(1)、②、及び③を早期適用する場合には、同時に適用する必要がある。

1 会計方針の変更  非支配株主との取引及び取得関連費用に関する定めを適用するにあたっては、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の、適用初年度の期首時点の累積的影響額を適用初年度の期首の資本剰余金及び利益剰余金に加減し、期首残高から新たな会計方針を適用することとされている。ただし、新たな会計方針を、適用初年度の期首から将来にわたって適用することができるとされている。したがって、当第1四半期連結会計期間より企業結合会計基準等を早期適用した場合の会計方針の変更の注記である記載事例5においては、上段及び下段(点線枠内)で2通りの記載事例を掲げている。

 上段の記載事例は、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の記載事例である。第1段落の冒頭では、会計基準等の名称について、「企業結合会計基準」、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」及び企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」の3つの会計基準を挙げている。今般の改正では、この他にも会計基準や適用指針が改正されているが、それらの改正については、「事業分離等に関する会計基準」の直後に記載している「等」に含めている。
 第2段落では、「過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の当第1四半期連結会計期間の期首時点の累積的影響額を資本剰余金及び利益剰余金に加減している」と経過措置について記載している。そして第3段落の影響額の記載においては、当第1四半期連結会計期間の期首における資本剰余金及び利益剰余金に加減した結果を記載し、また、四半期連結損益計算書の項目の影響額も記載している。
 下段(点線枠内)の記載事例は、当第1四半期連結会計期間から新たな会計方針を将来にわたって適用する場合の記載事例である。この場合の四半期連結損益計算書に係る項目の影響額は、将来にわたって適用することとなるため、当第1四半期連結累計期間において、従来の会計方針を適用した場合と新たな会計方針を適用した場合の差額を記載している。また、四半期連結貸借対照表の項目における影響額については、当第1四半期連結会計期間末の資本剰余金に対する影響額を記載している。

2 株主資本等関係  企業結合会計基準等を早期適用した場合、支配の変動を伴わない子会社株式の追加取得等により、前連結会計年度末から資本剰余金の金額に重要な変動が生じる可能性がある。その場合は、四半期連結財規第92条において求められている株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記の対象と考えられる。

3 企業結合等関係注記
(1)取得による企業結合が行われた場合の注記
 改正後四半期連結財規第20条第1項第3号において、当四半期連結会計期間において他の企業又は企業を構成する事業の取得による企業結合が行われた場合、所定の注記が求められているが、その1つに、被取得企業又は取得した事業の取得原価及び対価の種類ごとの内訳の注記が求められている。
 記載事例6は被取得企業の取得原価及び対価の種類ごとの内訳の注記の記載事例である。改正前は、企業結合における取得関連費用のうち一部については、取得原価に含めることとされていたが、企業結合会計基準等の改正により、取得関連費用は発生した年度の費用として取扱われることとなった。したがって、企業結合会計基準等を早期適用する場合は、当注記の箇所に、アドバイザリー費用等取得に直接要した費用の記載は行わないものと考えられる。

(2)共通支配下の取引等の注記  共通支配下の取引等において、子会社株式を追加取得した場合、改正前の四半期連結財規第22条第1項第3号においては、四半期連結財規第20条第1項第3号、第4号及び第6号に準ずる事項の記載が求められていた。一方、改正後の四半期連結財規第22条第1項第3号においては、第20条第1項第6号に準ずる事項、つまり、発生したのれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間等の記載が求められなくなった。企業結合会計基準等の改正により、追加取得等を行った場合の会計処理について、支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動による差額は、資本剰余金に計上することとなり、のれんが発生しないため、当改正が行われたと考えられる。

4 四半期連結キャッシュ・フロー計算書  企業結合会計基準等を早期適用した場合、第2四半期における四半期連結キャッシュ・フロー計算書の作成にあたっては、次の事項に留意する必要がある(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」第8- 2項、第9- 2項及び第26- 4項)。
a. 連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に係るキャッシュ・フローについては、「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する。
b. 連結範囲の変動を伴う子会社株式の取得関連費用もしくは連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に関連して生じた費用に係るキャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する。
 なお、企業結合会計基準等の適用初年度においては、a及びbの表示を行った場合、表示方法の変更を行うこととなるが、比較情報の組替えは行わないとされている。

Ⅴ 国際会計基準(IFRS)の任意適用要件の緩和に伴う変更点
 平成25年6月19日に、企業会計審議会から「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(以下「当面の方針」という)が公表され、「IFRSの任意適用要件の緩和」、「IFRSの適用方法」及び「単体開示の簡素化」について考え方が整理された。
 当面の方針を踏まえて、金融庁は、平成25年10月28日に「IFRSの任意適用要件の緩和」について次の改正を行っている。
・IFRSの任意適用が可能な会社の要件について、上場企業及び国際的な財務活動・事業活動の要件を撤廃し、IFRSに基づいて作成する連結財務諸表の適正性を確保する取組・体制整備のみとする。
・第1四半期だけでなく、各四半期からでもIFRSに基づく四半期連結財務諸表の作成を可能とする。
・四半期報告書に四半期連結財務諸表の適正性を確保する取組に関する記載が行えるよう、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という)の様式の「記載上の注意」を改正する。

1 四半期連結財規における変更点  IFRSを任意適用して四半期連結財務諸表を作成する場合は、「特定会社」に該当する必要があるが、特定会社の要件は四半期連結財規第1条の2において定められている。
 改正前は、①金融商品取引所に上場していること、②外国に資本金20億円以上の連結子会社を有している等の国際的な財務活動・事業活動を行っていることが必要であったが、この2要件が撤廃され、改正後は、四半期連結財規第1条の2第1号において四半期連結財務諸表の適正性を確保するための特段の取組みに係る記載について、同条第2号で適正性を確保に作成することができる体制の整備の要件が新たに規定されている。
 この他、各四半期からIFRSに基づく四半期連結財務諸表の作成が可能であるとされている。

2 開示府令における変更点  開示府令においては、開示府令第四号の三様式記載上の注意(18)fが追加され、提出会社が提出する四半期連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取組みを行っている場合には、その旨及びその取組みの具体的な内容を記載することとされた(脚注3)。これは、四半期連結財規等の改正を踏まえて、四半期報告書にも、四半期連結財務諸表の適正性を確保する取組みに関する記載が行えるよう、記載上の注意を改正したものと考えられる。
 ただし、前年度の有価証券報告書又は当四半期連結累計期間に提出した有価証券届出書に記載された連結財務諸表及び財務諸表の適正性を確保するための特段の取組みに重要な変更がない場合には、記載を要しないとされている(開示府令第四号の三様式記載上の注意(18)fただし書き)。つまり、前年度の有価証券報告書に記載された特段の取組みから重要な変更がない場合には、その記載は省略可能となる。

Ⅵ その他

1 四半期レビュー報告書
 平成26年2月12日に日本公認会計士協会より、自主規制・業務本部 平成26年審理通達第1号「EDINETで提出する監査報告書の欄外記載の変更及びXBRLデータが訂正された場合の監査上の取扱い」が公表された。それに伴い、四半期レビュー報告書の欄外記載を変更することとなる。
 記載事例7は四半期レビュー報告書の欄外記載の記載事例である。注2については、改正前は「四半期連結財務諸表の範囲にはXBRLデータ自体は含まれていません。」と記載していたが、改正後は記載事例7のように記載することとなる。


脚注
1 ③暫定的な会計処理の確定の取扱いの改正に伴う「四半期財務諸表に関する会計基準」等の改正の適用時期については、企業結合会計基準の暫定的な会計処理の確定の取扱いに係る事項の適用時期と同様とされている。
2 前掲・脚注1を参照。
3 特段の取組みについて記載する場合は、経理の状況の冒頭記載に記載することが考えられる。

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