カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2015年12月14日 【ニュース特集】 国税通則法改正の全容(2015年12月14日号・№622)

ニュース特集
事前通知後の申告にもペナルティ、重課税率は50%に
国税通則法改正の全容

 平成28年度税制改正により、国税通則法が大幅に改正される。
 その背景には、現行規定を逆手にとった課税逃れが相次いでいることがある。無申告者や過少申告者が税務署から「事前通知」を受けてから申告を行った場合におけるペナルティ課税を実施するほか、短期間で仮装・隠蔽や無申告を繰り返した者に対しては最高50%の重加算税を課す措置が導入される。一方、減額更正後に当初申告額に満たない増額更正がされた場合において、当該増額更正による増差税額に延滞税は発生しないとした最高裁判決を受け、延滞税を課さない期間を大幅に増やす。
 本特集では、平成28年度税制改正の目玉となる国税通則法改正の全容を明らかにする。

事前通知後の修正申告に対するペナルティ

過少申告加のケース
 今回の一連の改正の中で実務的に最も大きな影響が出そうなのが、事前通知を受けてから「修正申告」を行う場合における加算税の見直しだ。
 国税通則法上、過少申告加算税は、修正申告書の提出が「更正があるべきことを予知してされたものでない場合」には課されないことになっている(国税通則法65条⑤)。「更正があるべきことを予知していた場合」には、「その事業者に対する臨場調査、その事業者の取引先に対する反面調査又はその事業者の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該事業者が具体的な調査があったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合」が該当する一方、「臨場のための日時の連絡(事前通知)を行った段階で修正申告書が提出された場合」は、「更正があるべきことを予知」していたことにはならない(申告所得税及び復興所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)参照)。そして、後段の事前通知は、国税通則法上、税務署の義務とされている(国税通則法74条の9①)。これらの規定を逆手に取り、更正を受ける可能性があることを知りながら意図的に(あるいは、更正を受けない可能性に賭けて)過少申告を行う者が少なくなく、税務当局内で問題視されていたようだ。
 そこで平成28年度税制改正では、図表1のとおり、「事前通知の連絡を受けてから、更正があるべきことを予知するまでの期間」について、(新)過少申告加算税5%又は10%を課す。

無申告のケース  同様の制度は、「無申告」の場合にも導入される。無申告の納税者の中には、事前通知を受けるまで意図的に無申告を継続する者がおり、やはり税務当局内で問題視されてきた。無申告加算税の税率は、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%とされているが、税務調査を受ける前に自主的に申告を行った場合には、この税率は5%に軽減される(国税通則法66条⑤)。すなわち、無申告の状態で税務当局から「事前通知」を受けた場合、直ちに修正申告を行えば、無申告加算税を軽減することができてしまうわけだ。
 そこで平成28年度税制改正では、無申告者が事前通知後に修正申告を行った場合には、「事前通知の連絡を受けてから、更正があるべきことを予知するまでの期間」について、(新)無申告加算税10%又は15%(50万円を超える部分)を課す。
ペナルティ課税の対象とらないケース  もっとも、事前通知後に修正申告が行われた場合でも、今回導入される新加算税の対象とならないケースもある。
 第一に、調査対象を区分する場合において、「調査対象とならない部分」について修正申告が行われる場合だ。例えば、移転価格調査とそれ以外の部分の調査を区分する場合や、一部の連結子法人の調査を行わない場合などがこれに該当する。
 第二に、他税目における更正の請求に基づく減額更正に伴い、当該税目における修正申告が必要となる場合である。例えば、消費税の減額更正をしたところ、控除対象外消費税額が少なくなり、法人税額が増えるようなケースが考えられる。
 第三に、源泉所得税に係る事前通知後の見直しは、“当面”新加算税の対象外とする。

短期間で仮装隠蔽や無申告を繰り返した場合のペナルティ
 現行国税通則法上、重加算税は、仮装隠蔽が行われた場合において、無申告加算税、過少申告加算税、不納付加算税に「代えて」課されるものであり、税率は「過少申告加算税に代えて課す場合」と「不納付加算税に代えて課す場合」が35%、「無申告加算税に代えて課す場合」が40%とされている。
 このような厳しい課税が行われるにもかかわらず、短期間で仮装隠蔽を繰り返し、再び重加算税の対象となるケースが後を絶たないようだ。そこで平成28年度税制改正では、重加算税を受けた者が、当該処分から「5年間」の間に再度「仮装・隠蔽による過少申告、不納付、無申告」を繰り返した場合には、現行の重加算税率に10%の税率を加重する措置を講じる。この結果、「過少申告加算税」「不納付加算税」に代えて重加算税が課される場合の税率は45%、「無申告加算税」に代えて重加算税が課される場合の税率は50%におよぶことになる(図表2参照)。

 また、同様に、無申告加算税の課税処分を受けた者が課税処分から5年以内に再び「無申告」を繰り返した場合にも、現行の無申告加算税率に10%の税率を加重する措置が導入される。これにより、無申告加算税率は、納付すべき税額が50万円までは25%、50万円を超える部分は30%となる。
 なお、5頁の「事前通知の連絡を受けてから、更正があるべきことを予知するまでの期間」について課される(新)無申告加算税は、この税率加重措置の対象外となっている。
 また、地方税には、国税の不申告加算税、重加算税に相当する「不申告加算金」「重加算金」が設けられているが(42頁参照)、これらについても、国税と同様の措置が手当てされる。

当初申告額に満たない増額更正における延滞税
 平成26年12月12日に下された最高裁判決(平成25年(行ヒ)第449号 延滞税納付債務不存在確認等請求事件)では、減額更正後に、同一論点について当初申告額に満たない増額更正がされた場合においては、当該増額更正による増差税額に延滞税は発生しないとの判断が示されたところだ。簡単な例で説明すると、問題となったのは、100を納税した後、更正請求により税額が50に減額、その後国税当局から同一論点について増額更正を受け、税額が80となったようなケース。国税当局は、国税通則法60条1項2号、2項及び61条1項1号に基づき、増額更正に伴う増差税額30(80-50)について延滞税を課したが、最高裁は「同一論点」の場合には延滞税は課されないとし、納税者側に軍配を上げている。
 この最高裁判決を受け国税庁は今年1月、過去における同様の事案に係る延滞税を還付する旨を明らかにするとともに、今後同様の事案が発生した場合には最高裁判決に基づき延滞税を計算することとしていたが(「最高裁判所判決に基づく延滞税計算の概要等について」参照)、平成28年度税制改正では、最高裁判決の内容を踏まえ国税通則法を改正し、これを明文化する。
 もっとも、平成28年度税制改正の内容は最高裁判決と完全に一致しているわけではない。図表3のとおり、平成28年度税制改正では、「同一論点の場合には延滞税は課さない」という最高裁判決の判示内容と同様の改正を行った上で、さらに最高裁判決よりも一歩踏み込み、増額更正が行われるまでの期間については原則として延滞税を課さないこととする。

 ただし、更正請求に基づく限り、減額更正時から最大1年間の延滞税を課す。また、未納期間についても延滞税が課される。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索