解説記事2016年01月11日 【SCOPE】 相続財産の申告漏れめぐり税理士の調査義務違反を認めず(2016年1月11日号・№625)
相続人らが税理士に対し追徴税額等を賠償請求
相続財産の申告漏れめぐり税理士の調査義務違反を認めず
相続財産の申告漏れをめぐり、修正申告をした相続人らが相続税の申告書類を作成した税理士に対して、相続財産(生命保険金など)の調査義務違反などを理由に損害賠償を請求していた税賠訴訟で東京高裁は平成27年11月19日、相続人らの控訴を棄却する判決を下した(税理士が勝訴)。高裁は、相続財産の調査義務の範囲は相続税申告手続きに関する委任契約の解釈により決すべきと指摘。本件委任契約について高裁は、税理士が相続人らから提供される資料に基づいて相続税の申告書を作成することに限定されたものであったなどと指摘したうえで、本件事実関係のもとで税理士が相続人らから受領した資料について申告漏れの危険に備えるため調査検討すべき義務があったということはできないと判断した。
高裁、調査義務の有無や範囲は委任契約の解釈により決すべき
今回の税賠訴訟で問題となったのは、相続人らから相続税の申告手続きを委任された税理士に申告漏れとなった相続財産(生命保険金など)の調査義務違反があったか否かという点だ。
事実関係をみると、税理士は、相続人らから提供を受けることができた預金通帳や保険の支払通知書などの資料をもとに財産目録を作成し、その財産目録を相続人らに提供したうえで、相続人らが押印をして作成した相続税申告書を税務署に提出した。ところが、税務調査により、一部の相続財産(生命保険金など)について申告漏れがあったことが発覚。相続人らは、その生命保険金などを相続財産に含める内容の修正申告書を提出したが、重加算税などが賦課された。この点に関し相続人らは、相続税本税や重加算税などは税理士の善管注意義務違反(相続財産の調査義務違反)により生じた損害であると主張し、税理士に対し損害賠償を請求した。だが、これに対し東京地裁(平成27年3月9日判決)は、相続人らが主張する税理士の調査義務違反を認めることができないと判断したうえで、相続人らの税理士に対する損害賠償請求を斥ける判決を下していた(本誌600号6頁参照)。
申告漏れは相続人らの書類不交付が原因 地裁判決で敗訴した相続人らは控訴を提起したものの、これに対し東京高裁は、税理士の相続財産の調査義務に関する新たな判断内容を示したうえで、相続人らの控訴を棄却する判決を下した(表参照)。具体的にみると、高裁は、税理士が相続財産について一定の調査義務を負うかどうか、また、その調査義務の範囲は税理士と相続人らとの間で締結される委任契約の解釈により決すべきであるとした。本件委任契約について高裁は、相続人らが税理士に相続財産に関する資料を提供することを約し、税理士がこうして提供される資料に基づいて相続税の申告書を作成することに限定されたものであったと指摘。この点を踏まえ高裁は、生命保険金などに関する申告漏れは相続人らが税理士に対し相続税申告に必要な書類を交付しなかったことによるものであるといわざるを得ないのであって、本件事実関係のもとで税理士が相続人らから受領した資料について申告漏れの危険に備えるため調査検討すべき義務があったということはできないと判断したうえで、相続人らの主張を斥ける判決を下している。
相続財産の申告漏れめぐり税理士の調査義務違反を認めず
相続財産の申告漏れをめぐり、修正申告をした相続人らが相続税の申告書類を作成した税理士に対して、相続財産(生命保険金など)の調査義務違反などを理由に損害賠償を請求していた税賠訴訟で東京高裁は平成27年11月19日、相続人らの控訴を棄却する判決を下した(税理士が勝訴)。高裁は、相続財産の調査義務の範囲は相続税申告手続きに関する委任契約の解釈により決すべきと指摘。本件委任契約について高裁は、税理士が相続人らから提供される資料に基づいて相続税の申告書を作成することに限定されたものであったなどと指摘したうえで、本件事実関係のもとで税理士が相続人らから受領した資料について申告漏れの危険に備えるため調査検討すべき義務があったということはできないと判断した。
高裁、調査義務の有無や範囲は委任契約の解釈により決すべき
今回の税賠訴訟で問題となったのは、相続人らから相続税の申告手続きを委任された税理士に申告漏れとなった相続財産(生命保険金など)の調査義務違反があったか否かという点だ。
事実関係をみると、税理士は、相続人らから提供を受けることができた預金通帳や保険の支払通知書などの資料をもとに財産目録を作成し、その財産目録を相続人らに提供したうえで、相続人らが押印をして作成した相続税申告書を税務署に提出した。ところが、税務調査により、一部の相続財産(生命保険金など)について申告漏れがあったことが発覚。相続人らは、その生命保険金などを相続財産に含める内容の修正申告書を提出したが、重加算税などが賦課された。この点に関し相続人らは、相続税本税や重加算税などは税理士の善管注意義務違反(相続財産の調査義務違反)により生じた損害であると主張し、税理士に対し損害賠償を請求した。だが、これに対し東京地裁(平成27年3月9日判決)は、相続人らが主張する税理士の調査義務違反を認めることができないと判断したうえで、相続人らの税理士に対する損害賠償請求を斥ける判決を下していた(本誌600号6頁参照)。
申告漏れは相続人らの書類不交付が原因 地裁判決で敗訴した相続人らは控訴を提起したものの、これに対し東京高裁は、税理士の相続財産の調査義務に関する新たな判断内容を示したうえで、相続人らの控訴を棄却する判決を下した(表参照)。具体的にみると、高裁は、税理士が相続財産について一定の調査義務を負うかどうか、また、その調査義務の範囲は税理士と相続人らとの間で締結される委任契約の解釈により決すべきであるとした。本件委任契約について高裁は、相続人らが税理士に相続財産に関する資料を提供することを約し、税理士がこうして提供される資料に基づいて相続税の申告書を作成することに限定されたものであったと指摘。この点を踏まえ高裁は、生命保険金などに関する申告漏れは相続人らが税理士に対し相続税申告に必要な書類を交付しなかったことによるものであるといわざるを得ないのであって、本件事実関係のもとで税理士が相続人らから受領した資料について申告漏れの危険に備えるため調査検討すべき義務があったということはできないと判断したうえで、相続人らの主張を斥ける判決を下している。
| 高裁、小規模宅地特例の適用否認をめぐる賠償請求も斥ける |
| 今回の税賠訴訟のなかで相続人らは、相続財産の申告漏れに関する損害賠償請求のほか、税理士が被相続人の住所地の選択を誤ったことにより小規模宅地特例の適用が否認されたと主張したうえで、小規模宅地特例の否認に関する損害賠償も税理士に対し請求していた。しかし、この点に関し東京高裁は、税理士による被相続人の住所地の選択に誤りはない旨を判示した東京地裁判決(本誌600号4頁参照)を全面引用したうえで、相続人らの請求を斥けている。 |
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