解説記事2016年06月06日 【SCOPE】 株式交換後に買取請求撤回も、株式の引渡しは認められず(2016年6月6日号・№645)
地裁、株価相当額の金銭支払いを命じる
株式交換後に買取請求撤回も、株式の引渡しは認められず
株式交換に反対する株主の株式買取請求をめぐり、株式交換の効力発生日後に同請求を撤回した原告株主が被告子会社に対して、株式の引渡しまたは株価相当額の金銭の支払いなどを請求していた事件で東京地裁は平成28年1月28日、被告子会社に対し株式の価格相当額の金銭の支払いを命じる判決を下した(一部敗訴した原告株主は控訴を提起)。裁判所は、株式交換の効力発生により被告子会社の株式は親会社が取得しているため、被告子会社がその株式を返還することは不可能であるなどと指摘したうえで、被告子会社は株式買取請求に係る株式の代金相当額の金銭を返還する義務を負うことになるという判断を示している。
原告株主、株式買取請求を撤回し親会社株式の引渡しなどを請求
株式交換に反対する完全子会社の株主は、その完全子会社に対し自らが保有する株式の買取りを請求することができるが、株式交換の効力発生日から60日以内に価格決定の申立てがないときは、その株式買取請求を撤回することができる(会社法785、786③)。
本件は、株式交換の効力発生日後に株式買取請求を撤回した原告株主が被告子会社に対して、主位的請求として親会社株式の引渡し(証券保管振替機構の口座への振り替え)を請求するとともに、予備的請求として被告子会社の株主としての地位の確認または買取請求に係る株式の価格相当額の金銭の支払いなどを請求していた事件だ。
事実関係をみると、東証二部に上場していた被告子会社は、東証一部上場企業である親会社との間で同社を完全親会社とし被告子会社を完全子会社とする株式交換を行うこと、株式交換において被告子会社の株式1株に対し親会社の株式0.34株を割当交付することを公表した。これに対し原告株主は、株式交換を行うことを決議する臨時株主総会で反対し、被告子会社に対し株式交換に関する反対株主の株式買取請求を行ったものの、被告子会社との間で買取価格の合意には至らなかった。その後、原告株主は、被告子会社が株式交換の効力発生日から60日以内に価格決定の申立てを行わなかったことを受け、被告子会社に対する株式買取請求を撤回していた。
原告株主は、裁判のなかで、株式買取請求の撤回により、株式交換の効力は原告株主にも及んでいることから原告株主は完全親会社の株主になっていると主張した。また、原告株主は、仮に原告株主に株式交換の効力が及んでいないのであれば原告株主は被告子会社の株主の地位を有することになると主張するとともに、株式の返還が不可能である場合には株式の返還に代えて、被告子会社は買取請求に係る株式の時価相当額を支払うべきであるなどと主張した。
撤回時点の親会社株式の終値をもとに、子会社株式の代金相当額を算定
裁判所は、株式交換に反対する株主による株式買取請求に係る株式買取りは効力発生日にその効力が生じるため(旧会社法786⑤)、株式買取請求を行った反対株主が完全親会社の株主になることはないと指摘。
また、株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合には、完全親会社が完全子会社の株式を取得しているため完全子会社が完全子会社株式を返還することは不可能であると指摘し、完全子会社は株式買取請求に係る株式の代金相当額の金銭を返還する義務を負うことになるという判断を示した。
そして、株式買取請求を撤回した時点で被告子会社が被告子会社株式を現物返還することは不可能であるため、撤回時を基準としてその時点における被告子会社株式の価格相当額を返還すべきであると指摘。株式買取請求を撤回した時点における親会社株式の終値について株式交換比率(被告子会社株式1株につき親会社株式0.34株)を用いて換算した金額が原告株主が受領すべき代金相当額になると判断したうえで、同額の支払いを被告子会社に対し命じた。
株式交換後に買取請求撤回も、株式の引渡しは認められず
株式交換に反対する株主の株式買取請求をめぐり、株式交換の効力発生日後に同請求を撤回した原告株主が被告子会社に対して、株式の引渡しまたは株価相当額の金銭の支払いなどを請求していた事件で東京地裁は平成28年1月28日、被告子会社に対し株式の価格相当額の金銭の支払いを命じる判決を下した(一部敗訴した原告株主は控訴を提起)。裁判所は、株式交換の効力発生により被告子会社の株式は親会社が取得しているため、被告子会社がその株式を返還することは不可能であるなどと指摘したうえで、被告子会社は株式買取請求に係る株式の代金相当額の金銭を返還する義務を負うことになるという判断を示している。
原告株主、株式買取請求を撤回し親会社株式の引渡しなどを請求
株式交換に反対する完全子会社の株主は、その完全子会社に対し自らが保有する株式の買取りを請求することができるが、株式交換の効力発生日から60日以内に価格決定の申立てがないときは、その株式買取請求を撤回することができる(会社法785、786③)。
本件は、株式交換の効力発生日後に株式買取請求を撤回した原告株主が被告子会社に対して、主位的請求として親会社株式の引渡し(証券保管振替機構の口座への振り替え)を請求するとともに、予備的請求として被告子会社の株主としての地位の確認または買取請求に係る株式の価格相当額の金銭の支払いなどを請求していた事件だ。
事実関係をみると、東証二部に上場していた被告子会社は、東証一部上場企業である親会社との間で同社を完全親会社とし被告子会社を完全子会社とする株式交換を行うこと、株式交換において被告子会社の株式1株に対し親会社の株式0.34株を割当交付することを公表した。これに対し原告株主は、株式交換を行うことを決議する臨時株主総会で反対し、被告子会社に対し株式交換に関する反対株主の株式買取請求を行ったものの、被告子会社との間で買取価格の合意には至らなかった。その後、原告株主は、被告子会社が株式交換の効力発生日から60日以内に価格決定の申立てを行わなかったことを受け、被告子会社に対する株式買取請求を撤回していた。
原告株主は、裁判のなかで、株式買取請求の撤回により、株式交換の効力は原告株主にも及んでいることから原告株主は完全親会社の株主になっていると主張した。また、原告株主は、仮に原告株主に株式交換の効力が及んでいないのであれば原告株主は被告子会社の株主の地位を有することになると主張するとともに、株式の返還が不可能である場合には株式の返還に代えて、被告子会社は買取請求に係る株式の時価相当額を支払うべきであるなどと主張した。
撤回時点の親会社株式の終値をもとに、子会社株式の代金相当額を算定
裁判所は、株式交換に反対する株主による株式買取請求に係る株式買取りは効力発生日にその効力が生じるため(旧会社法786⑤)、株式買取請求を行った反対株主が完全親会社の株主になることはないと指摘。
また、株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合には、完全親会社が完全子会社の株式を取得しているため完全子会社が完全子会社株式を返還することは不可能であると指摘し、完全子会社は株式買取請求に係る株式の代金相当額の金銭を返還する義務を負うことになるという判断を示した。
そして、株式買取請求を撤回した時点で被告子会社が被告子会社株式を現物返還することは不可能であるため、撤回時を基準としてその時点における被告子会社株式の価格相当額を返還すべきであると指摘。株式買取請求を撤回した時点における親会社株式の終値について株式交換比率(被告子会社株式1株につき親会社株式0.34株)を用いて換算した金額が原告株主が受領すべき代金相当額になると判断したうえで、同額の支払いを被告子会社に対し命じた。

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