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解説記事2016年06月13日 【ニュース特集】 消費税率引上げ延期の影響と法改正の行方(2016年6月13日号・№646)

ニュース特集
住宅資金贈与特例の拡充、インボイス、車体課税……etc.
消費税率引上げ延期の影響と法改正の行方

 消費税率10%への引上げが先送りされたが、平成27年度税制改正や28年度税制改正のほか、一見消費税とは関係のない制度にも、10%への引き上げを前提とした改正事項が少なからず含まれており、これらにも影響が及ぶことになる。その中には、企業の予算や事務負担などに影響を及ぼすものもある。
 本特集では、消費税率引上げ延期がもたらす影響や今後の法改正の行方について整理した。

法改正時期のカギを握る経過措置、住宅資金贈与特例
 平成29年4月1日からの消費税率10%への引上げは、いわゆる抜本改革法(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律)の附則1条二に規定されている。その先送り決定を受け、まずこの条文の改正が必要になる。
 消費税率10%への引上げが先送りされるのは今回が2回目だが、この際には、平成27年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」の18条により、抜本改革法第3条に規定する施行日(抜本改革法附則1条二)を「平成27年10月1日」から「平成29年4月1日」に改正するという手法がとられている。
 ただ、今回の先送りが平成29年度税制改正で実施されることになるとは限らない。その理由として、まず、平成29年4月1日からの税率引上げを前提に、経過措置における「指定日」が「平成28年10月1日」とされていることが挙げられる。また、平成27年度税制改正では、消費税率10%への引上げによる駆け込み需要とその反動による需要減を平準化するため、「平成28年10月1日から29年9月30日までに住宅購入の契約をした者」に対しては、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の限度額を3,000万円に拡大する措置が実施されている。税率引上げ延期に伴い、この措置も実施が延期される可能性が高いが、その場合、平成28年10 月1日前に改正法が施行される必要がある。今回は平成29年度税制改正を待たず、秋の臨時国会で法改正が実施される可能性が高そうだ。

平成27年度税制改正事項への影響
 消費税率8%→10%への引上げは平成27年度税制改正で実施されているため、今回の10%への引上げ延期は平成27年度税制改正事項にも影響を与えることになる。
 消費税率引上げの際には大量の経過措置が手当てされることになるが、8%→10%時の経過措置は平成27年度税制改正に盛り込まれている。請負工事等、資産の貸付け、指定役務の提供、予約販売に係る書籍等、通信販売、有料老人ホームなど、「指定日(平成28年10月1日)」前の契約等が前提となる経過措置は、指定日を2年半後ろ倒し(平成28年10月1日→平成31年4月1日)する形で、実施時期がスライドすることになろう。もっとも、各経過措置の考え方に変更があるわけではないため、平成27年度税制改正で規定された通り、基本的には5→8%への税率引き上げ(平成26年4月1日~)に伴う経過措置が準用されることになる。
 また、上述のとおり、平成27年度税制改正では、消費税率10%への引上げ前後における需要の平準化等を図るため、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の適用期限を平成31年6月30日まで延長した上で、平成28年10月1日から29年9月30日までに消費税率10%で住宅購入の契約をした者に対しては非課税枠を最大3,000万円(通常1,200万円)まで拡充する措置が導入されている。この非課税枠拡大措置も、次回消費税率引上げ日(平成31年10月1日)を挟んだ1年間、すなわち「平成31年4月1日~平成32年3月31日」に実施期間がスライドすることが予想される。その後、非課税枠は1年ごとに「1,500万円」→「1,200万円」と引き下げられるが、この点も維持されたまま実施期間のみスライドすることになろう。
 このほか平成27年度税制改正では、平成29年末までが適用期限とされていた最大50万円の所得税が減税される住宅ローン控除の適用期限が平成31年6月末まで延長されている。消費税率引上げの先送りに伴い、この措置の適用期限も2年半延長され、「平成33年12月31日」までとされることが予想される。ただ、今回の消費税率引上げ延期に伴い、いったん減税額が縮小される可能性も否定はできない。あるいは、景気への影響を考慮し、現状制度を維持したまま、次回消費税率引上げ以降まで適用期限が延長されるこもあり得るだろう。

平成28年度税制改正事項への影響
 平成28年度税制改正事項の中で確実に影響を受けそうなのが地方法人税だ。
 消費税率が引き上げられた場合、東京都のような地方交付税の不交付団体では地方消費税の増税分だけ増収となるのに対し、地方では地方消費税の増加分だけ地方交付税が減少し、両者の格差がますます拡大するという問題が生じる。そこで平成28年度税制改正では、消費税率が8%に引き上げられた平成26年度税制改正時と同様、法人住民税法人税割の一部を地方法人税(全額が交付税の原資となる)に組み替えるとともに、これまで偏在是正の臨時措置として存在していた地方法人特別税を廃止する一方、恒久的措置として地方法人税を拡大することが決まっている。消費税率の引上げ見送りに伴い、少なくとも地方法人特別税の廃止・地方法人税の拡大は見送られる可能性が高い。
 東京都は先月5月25日に第2回東京都議会定例会において提案する法人事業税、法人住民税の税率(案)を公表しているが、こちらの案も見直されることになりそうだ。
 また、平成28年度税制改正では、住宅と並び消費税率引上げの影響を大きく受ける自動車の需要を維持するため、自動車取得税を平成29年4月1日に廃止するとともに、同日から、自動車税及び軽自動車税において、自動車取得税のグリーン化機能を維持・強化する「環境性能割」を導入している。これも消費税率10%への引上げが前提になっていることから、次回消費税率引き上げまで見送られることになろう。

インボイス制度の先送りはある?
 軽減税率の導入は平成28年度税制改正の大きな目玉となったが、これも消費税率10%への引上げが大前提であるため、先送りされることになる。軽減税率対象となる食料品を扱う小売業者や、軽減税率の対象となる商品とならない商品が混在する外食事業者は、軽減税率に対応するためのシステム構築や現場のオペレーションの整備に苦慮しているという話も聞かれただけに、消費税率引上げの先送りは大きな時間的余裕をもたらすことになる。
 平成28年度税制改正では、軽減税率の導入とともにインボイス方式を「平成33年4月1日」から導入することが決まっている。普通に考えれば、軽減税率導入先送りとともにインボイス方式の導入も先送りされることになるが、インボイス方式自体は消費税の納税の健全化に資するということで、当初予定どおりの時期に導入されるのではないかと予想する声もある。企業の事務負担への影響は非常に大きいだけに、政府の判断が注目される。

しばらく続く「税抜表示」
 このほか、前回10%への税率引上げが平成29年4月1日に延期された際には、いわゆる転嫁対策特別措置法(消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法)の適用期限が平成30年9月30まで延期されている。今回、10%への税率引上げが2年半延期されたことから、転嫁対策特別措置法も同様に平成33年3月31日まで2年半延期されることになろう。
 この転嫁対策特別措置法の中で規定されている「総額表示義務の特例」も自動的に延長されることになる。本来、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う際には、消費税額と販売価格と合わせて「総額」で表示しなければならないが(事業者間取引を除く)、消費税率が段階的な上昇に合わせ価格表示を改訂しなければならないとなれば、事業者に膨大なコストと事務負担が生じる。そこで、消費税転嫁対策特別措置法では、平成30年9月30日まで「税抜き表示」を認めているが、これも平成33年3月31日まで認められることになる。

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