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解説記事2017年03月06日 【税務マエストロ】 外国子会社合算税制の総合的見直し②(2017年3月6日号・№681)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
外国子会社合算税制の総合的見直し②

#184 品川克己
PwC税理士法人

略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。

次回のテーマ
#185 
資産の譲渡等の範囲(3)
税理士 熊王征秀 消費税率引上げ、それに伴う課税の適正化など、消費税法の改正が続く。消費税マエストロが実務ポイントを解説する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 e-mail:ta@lotus21.co.jp

3 総合的見直しの背景
(1)経済活動基準
 現行の「適用除外基準」について、次の見直しを行い、当該制度の発動基準とするとともに名称が「経済活動基準」に改められた。これは、改正後の制度が外国関係会社の租税負担の多寡にかかわらず、経済実体の有無によって合算課税の対象とするという制度の趣旨に合わせるための改正とされているが、経済活動基準のうちいずれかを満たさない外国関係会社について会社単位の合算課税の対象とされることとなるという意味では、改正前の適用除外基準と異なるものではない。また、今回の改正では、一部の特定業種に対しての例外的な取り扱いとして次のように措置されているものの、個別に対応すべき業種は他にも存在していると考えられよう。なお、本質的、抜本的な見直しが期待されていた各基準の原則的な概念については、まったく変更されないようである。
 ① 事業基準  航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国における事業の実体要件を満たすものについては、事業基準を満たすものとする。
 ② 実体基準及び管理支配基準  保険業を営む一定の外国関係会社(「保険委託者」)からその免許の申請等の際に保険業に関する業務を委託するものとして申請等をされた者で一定の要件を満たす者(「保険受託者」)が実体基準又は管理支配基準を満たしている場合には、その外国関係会社(保険委託者)も実体基準又は管理支配基準を満たすものとする。
 ③ 所在地国基準  製造業を主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国において製造に主体的に関与していると認められるものの所在地国基準の判定方法について、所要の整備を行う。これは、来料加工貿易を念頭に置いた改正と考えられる。
 ④ 非関連者基準 (イ)非関連者との間で行う取引対象資産・役務提供が、関連者に移転又は提供されることがあらかじめ定まっている場合には、その非関連者との間の取引は、関連者との間で行われたものとみなす。
(ロ)保険委託者と保険受託者の間で行う取引は関連者取引に該当しないものとする。
(ハ)航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社については、非関連者基準を適用する。
 これら改正は、現在の企業(しかしながら、一部の特定業種)の事業実態を考慮したものとされているが、本質的には、現行の適用除外基準の文言ではこれらの企業の経済合理性のある事業活動まで否認してしまうことが想定されるため(いわゆるオーバーインクルージョン)、そもそもの制度趣旨に鑑み、そうした事態が生じないよう適用関係を明確にしたものと捉えることができよう。しかしながら、これまで適用除外基準の解釈、適用を巡って多くの問題点が指摘されてきている状況下、オーバーインクルージョンを防止するためには、一部の小手先的な改正ではなく、各適用除外基準の本質的な概念、文言を、制度趣旨を的確に反映した適正課税に対応できるよう修正すべきであろう。例えば実体の伴う事業である来料加工貿易についても適用除外基準をクリアできないことがオーバーインクルージョンという評価をしているのであれば、その本質的な問題点は、現行適用除外基準の概念若しくは文言が適切でないと捉えることができよう。本来は、こうした問題点を解決すべく本質的な改正を行うべきである。こうした今回の改正で解決されない本質的な論点は、残念ながら来年度以降に持ち越されたととらえることもできよう。いずれにせよ、現行の適用除外基準が抜本的に見直されたわけでなく、一部の特例的な対応のみであることから、「経済活動基準」への変更は実質的な改正点ではなく、単なる名称変更といえよう。
 また、当局の職員が、外国関係会社が経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提出を求めた場合に、期限までに提出等がされないときは、その外国関係会社は経済活動基準を満たさないものと推定されることとされた。このように適用除外基準を満たすことについての書類の申告書への添付要件は廃止されたものの、「明らかにする書類等」の内容が現在のところ不明確である。この点は、納税者権利の観点も踏まえ、慎重にかつ明瞭にしていく必要があろう。課税当局の裁量の範囲が広がったものと解釈すべきではないと考えられる。なお、次の適用免除の対象とならない外国関係会社は、財務諸表等を確定申告書に添付しなければならない。
(2)適用免除  外国関係会社が「経済活動基準」のいずれかを満たさない場合に、当該外国関係会社の所得が株主法人である内国法人の所得に合算されることとなるが、当該外国関係会社の当該事業年度の租税負担割合が20%以上である場合には、会社単位の合算課税は免除される。これは実質的に現行制度のトリガー税率と同様のものであり、経済実体基準が、実質的に改正前の適用除外基準と異なるものではないことから、この会社単位の合算課税制度は、従前のタックスヘイブン対策税制と同様のものと考えることができよう。

4 特定の外国関係会社の特例的課税
(1)制度の概要
 次の①から③のいずれかに該当する外国関係会社は、会社単位の合算課税の対象となることとされた。すなわち、②または③に該当する外国関係会社は、経済活動基準を満たしているとしても、原則として、合算課税の対象となる。
① 次に掲げる要件のいずれも満たさない外国関係会社(いわゆるペーパーカンパニー)
(イ)その主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有していること(保険業を営む一定の外国関係会社にあっては、これらを有している場合と同様の状況にある場合を含む)。
(ロ)その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること(保険業を営む一定の外国関係会社にあっては、これらを自ら行っている場合と同様の状況にある場合を含む)。
  なお、当局の職員が、上記の(イ)又は(ロ)の要件を明らかにする書類等の提出等を求めた場合に、期限までに提出等されないときは、その外国関係会社は(イ)又は(ロ)の要件を満たさないものと推定される。
② 総資産の額に対する有価証券、貸付金及び無形固定資産等の合計額の割合が50%を超える外国関係会社で、総資産の額に対する部分合算所得の合計額の割合が30%を超えるもの(いわゆるキャッシュボックス)
  なお、金融子会社等における当該割合は、金融子会社等に係る部分合算課税対象所得(超過利潤を除く)による。
③ 租税情報の交換に非協力的な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店等を有する外国関係会社
(2)適用免除  この特定の外国関係会社の特例的合算課税は、上記①から③の外国関係会社の当該事業年度の租税負担割合が30%以上である場合には、免除される。つまり、こうした外国関係会社の場合は、合算課税の適用に関するトリガー税率としては30%とされたことになる(より課税されやすくなる)。また、実体基準及び管理支配基準を満たさない外国関係会社については、実質的に、トリガー税率が30%に引き上げられたことになる。
(3)各制度の評価
 ① ペーパーカンパニー
 ペーパーカンパニーそのものの意義は特に明示されていないが、改正案では、現行適用除外基準の実体基準及び管理支配基準を満たしていない法人をペーパーカンパニーとして、特例的な会社単位の合算課税の対象としている。この結果、実体基準及び管理支配基準の両基準を満たしていない場合には、他の基準を満たしていても、実質的に30%の税負担を基準として合算課税の対象となるため、現行制度より課税強化されることとなる。
 なお、事業実態のないような法人をいわゆるペーパーカンパニーとして、こうした法人に対してはより厳しい姿勢で臨むことは十分理解できることであり、また聞こえの良い政策的対応といえる。しかしながら、そもそも実体基準及び管理支配基準の本質的な概念が修正されていない状況で、この両基準を満たさない法人をペーパーカンパニーとすることは、かなり短絡的な解釈であるといえよう。現に、これらの基準を濫用的解釈することにより課税された事案として、たとえばレンタルオフィス事件が存在しているが、このケースでも当該法人は実体があり、ビジネスが行われているという判決がなされている。レンタルオフィス事件では、納税者勝訴となったが、実務的には、同様の濫用的解釈により、強引な課税に結びつくことが危惧される。
 ② キャッシュボックス  多額の金融資産及び無形資産を保有し、当該資産を運用することによって利益を得る法人をキャッシュボックスとしている。こうした法人は、実体がなくとも、当該資産を保有・運用することで利益を得ることが可能であるという前提に立っている。改正案では、総資産に対する部分合算所得(ほぼ資産性所得)が30%を超える場合が想定されているが、金融資産の運用益が30%を超えるということはなかなか想定できない。したがって、この項目のターゲットは、主に無形資産におかれていると考えられる。具体的なケースとしては、評価額としては低い無形資産を外国関係会社(海外子会社)へ移転させ(この場合日本でのキャピタルゲインはほぼ生じない)、これをベースにロイヤルティを得ていくケースが該当してくるのではないかと考えられる。
 ③ 非協力的指定国  租税情報の交換に非協力的な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店等を有する外国関係会社が該当することになるが、具体的には、情報交換協定を締結しない国をイメージしているのであろう。こうした措置は、いわゆる非協力的なタックスヘイブンに対し、情報交換協定を締結することの圧力として働く効果はあるところであるが、それは国家間の問題である。こうした国家間の問題を、個別の企業への課税により担保することは、税制としては極めて合理性を欠いており、かなり問題のある制度、措置といえよう。ある国が情報交換に消極的、非協力であるからといって、そのことを理由に結果的に高い税負担を負うことになるのは、まさしくその国で事業を行う日本企業となる。実体があるビジネスをしていても、合算課税の対象となる。これはタックスヘイブン対策税制若しくは外国子会社合算税制の制度趣旨には全く反することとなるが、そもそも税制としていかがなものかという印象がぬぐえない。

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