解説記事2017年07月10日 【税制改正解説】 平成29年度における所得税関係の改正について(下)(2017年7月10日号・№698)

税制改正解説
平成29年度における所得税関係の改正について(下)
 御田啓宝

Ⅲ 住宅・土地税制の改正

1 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例等の改正(耐久性向上改修工事等に係る特例)(措法41の3の2関係等)
(1)特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の改正
 本特例の適用対象となる工事に特定断熱改修工事等と併せて行う特定耐久性向上改修工事等を加えるとともに、控除率2%の対象となる住宅借入金等の範囲に、特定断熱改修工事等と併せて行う特定耐久性向上改修工事等に要した費用に相当する住宅借入金等が加えられた。
 この「特定耐久性向上改修工事等」とは、①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、⑥基礎若しくは⑦地盤に関する劣化対策工事又は⑧給排水管若しくは給湯管に関する維持管理若しくは更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであることなど一定の要件を満たすものをいう。
(2)既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の改正  本特例の適用対象となる工事に耐久性向上改修工事等で住宅耐震改修又は一般断熱改修工事等と併せて行うものを加えるとともに、その控除額を住宅耐震改修又は一般断熱改修工事等に係る標準的な工事費用相当額及び耐久性向上改修工事等に係る標準的な工事費用相当額の合計額(250万円(一般断熱改修工事等と併せて太陽光発電装置の設置工事を行う場合には、350万円)を限度)の10%に相当する金額とすることとされた。
 また、住宅耐震改修及び一般断熱改修工事等と併せて耐久性向上改修工事等を行った場合における控除額は、その住宅耐震改修に係る標準的な工事費用相当額、一般断熱改修工事等に係る標準的な工事費用相当額及び耐久性向上改修工事等に係る標準的な工事費用相当額の合計額(500万円(一般断熱改修工事等と併せて太陽光発電装置の設置工事を行う場合には、600万円)を限度)の10%に相当する金額とすることとされた。
 この「耐久性向上改修工事等」とは、①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、⑥基礎若しくは⑦地盤に関する劣化対策工事又は⑧給排水管若しくは給湯管に関する維持管理若しくは更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであることなど一定の要件を満たすものをいう。

2 土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例の改正(措法28の4関係)  適用停止期間が平成32年3月31日まで3年延長された。

3 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の改正(措法31の2関係)
(1)
適用対象に、土地開発公社に対する次に掲げる土地等の譲渡で、その譲渡に係る土地等が独立行政法人都市再生機構が施行するそれぞれ次に定める事業の用に供されるものが追加された。
 ① 被災市街地復興推進地域内にある土地等 被災市街地復興土地区画整理事業
 ② 住宅被災市町村の区域内にある土地等 第二種市街地再開発事業
(2)特定非常災害に基因するやむを得ない事情により、予定期間内に優良住宅地等のための譲渡に該当することが困難となった場合には、税務署長の承認等の要件の下、その予定期間を2年の範囲内の税務署長が認定した日の属する年の12月31日まで延長することとされた。
(3)適用期限が平成31年12月31日まで3年延長された。

4 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等の改正(措法33関係等)
(1)被災市街地復興土地区画整理事業等に係る措置の創設
① 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
 イ 適用対象に、次に掲げる土地等が次に定める事業の用に供するために地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構(土地開発公社を含む。)に買い取られ、対価を取得する場合が追加された。
 (イ)地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構が被災市街地復興推進地域において施行する減価補償金を交付すべきこととなる被災市街地復興土地区画整理事業の施行区域内にある土地等 公共施設の整備改善に関する事業
 (ロ)地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構が住宅被災市町村の区域において施行する第二種市街地再開発事業の施行区域内にある土地等 第二種市街地再開発事業
 ロ 個人の有する土地等が下記②イに該当することとなったことに伴い、その土地の上にある資産が土地区画整理法の規定により除却される場合において、その資産の損失に対して補償金を取得するときは、その土地の上にある資産について収用等による譲渡があったものとみなすこととされた。
② 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例
 イ 個人が、その有する土地等で被災市街地復興推進地域内にあるものにつき被災市街地復興土地区画整理事業が施行された場合において、その土地等に係る換地処分により代替住宅等を取得したときは、その換地処分により譲渡した土地等の譲渡がなかったものとされた。
 ロ 個人が、その有する土地等で被災市街地復興推進地域内にあるものにつき被災市街地復興土地区画整理事業が施行された場合において、その土地等に係る換地処分により代替住宅等を取得したときは、上記イの適用を受ける場合を除き、その換地処分により取得した住宅又は住宅等は換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例の清算金に該当するものとされた。
③ 収用交換等により取得した代替資産等の取得価額の計算
 上記②イにより取得した代替住宅等に対応する部分の金額としてその代替住宅等の取得価額とされる金額は、譲渡資産の取得価額等のうち、その譲渡資産について譲渡がなかったものとみなされた部分に対応する金額とされたほか、所要の規定の整備が行われた。
(2)特定非常災害に基因するやむを得ない事情により取得指定期間内に代替資産の取得をすることが困難となった場合における取得指定期間の延長の特例  収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例及び交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例について、特定非常災害に基因するやむを得ない事情により、取得指定期間内に代替資産の取得をすることが困難となった場合には、税務署長の承認等の要件の下、その取得指定期間を2年の範囲内の税務署長が認定した日まで延長することとされた。

5 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除の改正(措令22の7関係)  適用対象となる都市緑地法の規定により土地等が買い取られる場合について、適用対象となる買取りを行う者から特定緑地管理機構を除外するとともに、都市緑地法の改正後の緑地保全・緑化推進法人を引き続き適用対象となる買取りを行う者とすることとされた。

6 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の改正(措法34の2関係) 
 適用対象に、被災市街地復興推進地域内にある土地等が次に掲げる場合に該当することとなった場合が追加された。
(1)その土地等が被災市街地復興特別措置法の買取りの申出に基づき都道府県知事等に買い取られる場合。
(2)その土地等につき被災市街地復興土地区画整理事業が施行された場合において、保留地が定められたことに伴い、その土地等に係る換地処分によりその土地等のうち保留地の対価の額に対応する部分の譲渡があったとき。

7 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の改正(措法34の3関係)  農村地域工業等導入促進法の改正による対象業種の拡大等の後も引き続き、実施計画における産業導入地区内の一定の土地等を一定の施設用地に供するために譲渡した場合を本特例の対象とすることとされた。

8 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例等の改正(措法36の2関係)  特定非常災害に基因するやむを得ない事情により取得期限までに買換資産の取得をすることが困難となった場合には、税務署長の承認等の要件の下、その取得期限を、その取得期限の属する年の翌々年12月31日とすることとされた。

9 特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例等の改正(措法37関係等)  次の見直しが行われた上で、適用期限が平成32年12月31日(一部は同年3月31日)まで3年延長された。
(1)既成市街地等の内から外への買換えに係る措置について、譲渡資産から事務所及びその敷地の用に供されている土地等が、買換資産から立地適正化計画を作成した市町村のその立地適正化計画に記載された都市機能誘導区域以外の地域内にある誘導施設に該当するものに係る土地等、建物(その附属設備を含む。)及び構築物が、それぞれ除外された。
(2)所要の経過措置を講じた上で、市街化区域又は既成市街地等の内から外への農業用資産の買換え及び認定農業者又は認定就農者が農用地利用集積計画の定めるところにより行う農用地区域内にある土地等の買換えが本制度の対象となる買換えから除外された。
(3)日本船舶から一定の日本船舶への買換えに係る措置について、次の見直しが行われた。
 ① 譲渡資産及び買換資産から漁業の用に供される船舶を除外
 ② 譲渡資産となる船舶のうち建設業又はひき船業用のものの進水の日から譲渡の日までの期間の上限を40年(改正前:45年)に引下げ
 ③ 買換資産となる船舶のうち沿海運輸業の用に供される船舶(総トン数が2,000トン以上の船舶に限る。)の環境への負荷の低減に係る要件の見直し
(4)特定非常災害に基因するやむを得ない事情により、取得指定期間内に買換資産の取得をすることが困難となった場合には、税務署長の承認等の要件の下、その取得指定期間を2年の範囲内の税務署長が認定した日まで延長することとされた。

10 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例の改正(措法37の5関係)  特定非常災害に基因するやむを得ない事情により取得指定期間内に買換資産の取得をすることが困難となった場合には、税務署長の承認等の要件の下、その取得指定期間を2年の範囲内の税務署長が認定した日まで延長することとされた。

11 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正(措法41の5関係)  特定非常災害に基因するやむを得ない事情により取得期限までに買換資産の取得をすることが困難となった場合には、税務署長の承認等の要件の下、その取得期限を、その取得期限の属する年の翌々年12月31日とすることとされた。

12 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(住宅ローン税額控除)等の改正(措法41関係等)
(1)災害により居住の用に供することができなくなった場合の住宅ローン税額控除の継続適用及び重複適用
 住宅ローン税額控除の適用を受ける家屋(以下「従前家屋」という。)が災害により居住の用に供することができなくなった場合には、災害により居住の用に供することができなくなった年に限り住宅ローン税額控除を適用できることとする改正前の措置に代えて、災害により居住の用に供することができなくなった年以後の従前家屋に係る適用年(次に掲げる年以後の各年を除く。)について住宅ローン税額控除の適用を受けることができることとされた。
① 従前家屋若しくはその敷地の用に供されていた土地等又はその土地等に新たに建築した建物等を事業の用若しくは賃貸の用又は親族等に対する無償による貸付けの用に供した場合(災害に際し被災者生活再建支援法が適用された市町村の区域内に所在する従前家屋をその災害により居住の用に供することができなくなった者(以下「再建支援法適用者」という。)がその土地等に新築等をした家屋について、住宅ローン税額控除又は認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の適用を受ける場合を除く。)における事業の用若しくは賃貸の用又は貸付けの用に供した日の属する年
② 従前家屋又はその敷地の用に供されていた土地等の譲渡をし、その譲渡について居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除又は特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用を受ける場合におけるその譲渡の日の属する年
③ 災害により従前家屋を居住の用に供することができなくなった者(再建支援法適用者を除く。)が取得等をした家屋について住宅ローン税額控除又は認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の適用を受けた年
 なお、再建支援法適用者が家屋の再取得等をした場合には、従前家屋に係る住宅ローン税額控除と再取得等をした家屋に係る住宅ローン税額控除を重複して適用できることとし、その重複して適用できる年における税額控除額は、改正前の2以上の住宅の取得等に係る住宅借入金等の金額を有する場合の控除額の調整措置によることとされた。
(2)適用対象となる省エネ改修工事の範囲の拡充  住宅ローン税額控除等の適用対象となる省エネ改修工事に、居室の窓の断熱改修工事等又は居室の窓の断熱改修工事等と併せて行う天井、壁若しくは床の断熱改修工事等で、改修後の住宅全体の断熱等性能等級が改修前から一段階相当以上向上し、改修後の住宅全体の省エネ性能が断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上及び断熱等性能等級3となること等の要件を満たすものを加えることとされた。
(3)増改築等工事証明書等の改正  住宅ローン税額控除等の適用対象となる増改築等に該当することを証明する書類(増改築等工事証明書)及び既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の適用対象となる耐震改修に該当することを証明する書類(住宅耐震改修証明書)の様式を統一することとされた。
(4)住宅ローン税額控除の対象とならない「給与所得者等が使用者等から使用人である地位に基づいて貸付けを受けた住宅借入金等」に係る利率の引下げ  給与所得者等が使用者等から使用人である地位に基づいて貸付けを受けた住宅借入金等のうち、住宅ローン税額控除の適用対象とならない住宅借入金等に係る利率を0.2%未満(改正前:1%未満)に引き下げることとされた。
(5)消費税率の10%への引上げ時期の変更を踏まえた住宅ローン税額控除等の適用期限の延長  消費税率10%への引上げの実施時期が2年6月後の平成31年10月1日に変更されることと併せて、住宅ローン税額控除等の適用期限が平成33年12月31日まで2年6月延長された。

Ⅳ 事業所得等に係る税制の改正

1 山林所得に係る森林計画特別控除の改正(措法30の2関係)
 適用対象に、木材の安定供給の確保に関する特別措置法の改正により創設された森林経営計画の認定の特例により認定又は変更の認定がされた森林経営計画に基づいて山林の伐採又は譲渡をした場合が加えられた。

2 肉用牛の売却による農業所得の課税の特例の改正(措法25関係)  適用期限が平成32年まで3年延長された。

3 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の改正(措令25の17関係)  承認手続の特例の対象となる贈与等の範囲について、公益社団法人、公益財団法人、都道府県知事所轄の学校法人又は社会福祉法人に対する贈与等で一定の要件を満たすものが追加され、一定の株式等に係る贈与等が除外された。

4 公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除の改正(措令26の28の2関係)  本特例の対象となる社会福祉法人の情報公開要件について、社会福祉法の改正に伴う整備が行われた。

5 試験研究を行った場合の所得税額の特別控除制度の改正(措法10関係)
(1)試験研究費の総額に係る特別税額控除制度
① 税額控除割合が、次の増減試験研究費割合の区分に応じ次に定める割合(その年が事業を開始した日の属する年であるとき又は比較試験研究費の額が零であるときは、8.5%)とされた。
 イ 増減試験研究費割合が5%超の場合……9%+(増減試験研究費割合-5%)×0.3(上限:10%(平成30年及び平成31年の2年間は14%))
 ロ 増減試験研究費割合が5%以下の場合……9%-(5%-増減試験研究費割合)×0.1(下限:6%)
② 平成30年及び平成31年の2年間の時限措置として、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、税額控除額の上限を、調整前事業所得税額の25%相当額に、調整前事業所得税額に試験研究費割合から10%を控除した割合に2を乗じて計算した割合(上限:10%)を乗じて計算した金額を加算した金額とする措置が講じられた。
(2)中小企業基盤強化税制 ① 平成30年及び平成31年の2年間の時限措置として、増減試験研究費割合が5%を超える場合には、次の措置が講じられた。
 イ 税額控除割合に(増減試験研究費割合-5%)×0.3を加算(上限:17%)
 ロ 税額控除額の上限を調整前事業所得税額の35%相当額に拡充
② 上記(1)②と同じ措置が講じられた。
(3)特別試験研究費の額に係る特別税額控除制度  大学等又は他の者との共同研究に係るその共同研究に係る個人の試験研究費の額及び大学等又は特定中小企業者等への委託研究におけるその委託研究に係る個人の委託試験研究費の額について、大学等、他の者又は特定中小企業者等が支出するこれらの試験研究に要した費用の項目の限定(改正前:原材料費、人件費、旅費、経費及び外注費に限定)が撤廃され、これらの研究に要した費用で個人が負担したものに係るものとされた。
(4)試験研究費の増加額又は平均売上金額の10%相当額を超える試験研究費の額に係る特別税額控除制度  試験研究費の増加額に係る特別税額控除制度が適用期限(平成29年)の到来をもって廃止されるとともに、平均売上金額の10%相当額を超える試験研究費の額に係る特別税額控除制度の適用期限が平成31年まで2年延長された。
(5)試験研究費の範囲について、対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用が追加された。
(6)この制度を含めた次の6から14まで及び震災税特法に定められた所得税の事業所得等に係る税額控除に関する制度について、その適用に係る申告要件の見直しが行われた。

6 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(措法10の2関係)  適用除外となる「新エネルギー利用設備等を電気事業法の電気事業の用に供した場合」が、「新エネルギー利用設備等を同法の発電事業者に該当する個人のうち、同法の小売電気事業者、一般送配電事業者、送電事業者若しくは特定送配電事業者のいずれかに該当するもの又は大規模な発電を行うものが発電の用に供した場合」とされた。

7 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(措法10の3関係)  次の見直しが行われた上で、適用期限が平成31年3月31日まで2年延長された。
(1)特定生産性向上設備等に係る上乗せ措置が適用期限(平成29年3月31日)の到来をもって廃止された。
(2)対象資産から器具備品が除外された。
(3)税額控除額の上限が、この制度、特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の所得税額の特別控除制度及び特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税額の特別控除制度における税額控除の合計でその年分の調整前事業所得税額の20%相当額とされた。

8 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の創設(措法10の4関係)  青色申告書を提出する個人で地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律の承認地域経済牽引事業者であるものが、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律の施行の日から平成31年3月31日までの間に、その個人の行う承認地域経済牽引事業に係る促進区域内においてその承認地域経済牽引事業に係る承認地域経済牽引事業計画に従って特定地域経済牽引事業施設等の新設又は増設をする場合において、その新設又は増設に係る特定事業用機械等の取得等をして、これをその承認地域経済牽引事業の用に供したときは、その用に供した年においてその特定事業用機械等の取得価額(その特定事業用機械等に係る一の特定地域経済牽引事業施設等を構成する機械等の取得価額の合計額が100億円を超える場合には、100億円にその特定事業用機械等の取得価額がその合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額。以下「基準取得価額」という。)の40%(建物等及び構築物については、20%)相当額の特別償却とその基準取得価額の4%(建物等及び構築物については、2%)相当額の合計額の税額控除との選択適用ができることとされた。

9 地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(措法10の4の2)  平成29年4月1日から平成30年3月31日までの期間に地方活力向上地域特定業務施設整備計画について認定を受けた個人の税額控除割合が特定建物等の取得価額の4%(その地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、7%)とされ、これまでの税額控除割合が維持されることとなった。

10 特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度の改正(措法10の5関係)  地方事業所基準雇用者数に係る措置について、地方事業所税額控除限度額が次に掲げる金額の合計額(改正前:20万円(基準雇用者割合が10%以上であること等の証明がされた場合には、50万円)にその個人の適用年の地方事業所基準雇用者数(その適用年の基準雇用者数が限度。以下同じ。)を乗じて計算した金額)とされた。
(1)30万円(基準雇用者割合が10%以上であること等の証明がされた場合には、60万円)に、その適用年の地方事業所基準雇用者数のうちその個人が受けた地域再生法の認定に係る特定業務施設においてその適用年に新たに雇用された次に掲げる要件を満たす雇用者でその適用年の12月31日においてその特定業務施設に勤務するものの数として証明がされた数(以下「特定新規雇用者数」という。)に達するまでの数を乗じて計算した金額
 ① その個人との間で労働契約法の有期労働契約以外の労働契約を締結していること。
 ② 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の短時間労働者でないこと。
(2)20万円(基準雇用者割合が10%以上であること等の証明がされた場合には、50万円)に、その個人が受けた地域再生法の認定に係る特定業務施設においてその適用年に新たに雇用された雇用者でその適用年の12月31日においてその特定業務施設に勤務するものの総数として証明がされた数(以下「新規雇用者総数」という。)から特定新規雇用者数を控除した数のうちその新規雇用者総数の40%相当数に達するまでの数とその地方事業所基準雇用者数からその新規雇用者総数を控除した数とを合計した数を乗じて計算した金額
(3)10万円(基準雇用者割合が10%以上であること等の証明がされた場合には、40万円)に、新規雇用者総数から特定新規雇用者数を控除した数のうちその新規雇用者総数の40%相当数を超える部分の数を乗じて計算した金額

11 特定中小事業者が特定経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(措法10の5の2関係)
(1)
本制度の適用期限が平成31年3月31日まで2年延長された。
(2)税額控除を選択した場合の控除限度額について、本制度、中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除制度及び特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税額の特別控除制度の規定により控除される金額の合計額で、調整前事業所得税額の20%相当額とされた。

12 特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の創設(措法10の5の3関係)  特定中小事業者が、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、特定経営力向上設備等の取得等をして、これを国内にあるその特定中小事業者の営む指定事業の用に供した場合には、その指定事業の用に供した年においてその特定経営力向上設備等の取得価額から普通償却額を控除した金額に相当する金額の特別償却(即時償却)とその取得価額の10%相当額の税額控除との選択適用ができることとされた。

13 雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除制度の改正(措法10の5の4関係)
(1)
中小事業者で平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額のその比較平均給与等支給額に対する割合が2%以上であることとの要件を満たすものの税額控除限度額が、雇用者給与等支給増加額の10%相当額に、その雇用者給与等支給増加額のうちその個人の雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額に12%を乗じて計算した金額を加算した金額(改正前:雇用者給与等支給増加額の10%相当額)とされた。
(2)中小事業者以外の個人の平均給与等支給額に係る要件が、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額のその比較平均給与等支給額に対する割合が2%以上であること(改正前:平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること)とされた上、税額控除限度額が雇用者給与等支給増加額の10%相当額に、その雇用者給与等支給増加額のうちその個人の雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額に2%を乗じて計算した金額を加算した金額(改正前:雇用者給与等支給増加額の10%相当額)とされた。

14 所得税の額から控除される特別控除額の特例の改正(措法10の6関係)  この制度の適用に係る申告要件の見直しが行われた。

15 特定設備等の特別償却制度の改正(措法11関係)
(1)
公害防止用設備の特別償却制度について、取得価額要件を600万円以上(現行:300万円以上)に引き上げた上、その適用期限を2年延長することとされた。
(2)船舶に係る措置について、電気推進船に準ずる環境性能を有する内航船舶の要件につき、航海支援システムを有することを加えた上、推進効率改良型プロペラ等を有することとの選択とするとともに、環境への負荷の低減に係る要件の見直しを行う等をした上、その適用期限を2年延長することとされた。
(3)青色申告書を提出する中小企業者等のうち指定自動車教習所における自動車運転技能等の学習支援業を営むものが、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、自動車教習所用の準中型自動車の取得等をして、その事業の用に供した場合には、その取得価額の20%の特別償却ができることとされた。

16 被災代替資産等の特別償却制度の創設(措法11の3関係)  個人が、特定非常災害に係る特定非常災害発生日からその特定非常災害発生日の翌日以後5年を経過する日までの間に、次に掲げる減価償却資産でその特定非常災害に基因してその個人の事業の用に供することができなくなった建物等、構築物若しくは機械装置に代わるものの取得等をして、その個人の事業の用に供した場合又は次に掲げる減価償却資産の取得等をして、被災区域及びその被災区域である土地に付随して一体的に使用される土地の区域内においてその個人の事業の用に供した場合には、これらの減価償却資産(以下「被災代替資産等」という。)につき、次に掲げる被災代替資産等ごとのその取得価額にその取得等の時期に応じそれぞれ次に定める償却割合を乗じて計算した金額の特別償却ができることとされた。なお、平成28年分について本制度を適用したならば、被災代替資産等に該当することとなる減価償却資産(以下「特例被災代替資産等」という。)について、平成29年分において当該特例被災代替資産等を有する場合には、同年分において当該特例被災代替資産等に係る特別償却額に相当する金額を必要経費に算入することができる償却費の額とみなして本特例が適用される措置が講じられた。
① 建物等又は構築物
 イ その特定非常災害発生日からその特定非常災害発生日の翌日以後3年を経過する日までの間に取得又は建設をしたもの 100分の15(中小事業者にあっては、100分の18)
 ロ その特定非常災害発生日の翌日から起算して3年を経過した日(以下「発災後3年経過日」という。)以後に取得又は建設をしたもの 100分の10(中小事業者にあっては、100分の12)
② 機械装置
 イ その特定非常災害発生日からその特定非常災害発生日の翌日以後3年を経過する日までの間に取得又は製作をしたもの 100分の30(中小事業者にあっては、100分の36)
 ロ その発災後3年経過日以後に取得又は製作をしたもの 100分の20(中小事業者にあっては、100分の24)

17 特定地域における工業用機械等の特別償却制度の改正(措法12関係)  過疎地域に係る措置の対象となる事業について、農林水産物等販売業が追加されるとともに、商品又は役務に関する情報の提供等の業務に係る事業が除外された上で、適用期限が平成31年3月31日まで2年延長された。

18 医療用機器の特別償却制度の改正(措法12の2関係)  対象となる医療用機器の見直し(追加:14機器、除外:29機器)が行われた上で、適用期限が平成31年3月31日まで2年延長された。

19 事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却制度の創設(措法13の3関係)  青色申告書を提出する個人で農業競争力強化支援法の認定事業再編事業者(同法の施行の日から平成31年3月31日までの間に認定を受けた個人に限る。)であるものが、その認定事業再編計画の実施期間内において、事業再編促進機械等の取得等をして、これをその個人の事業再編促進対象事業の用に供した場合には、その事業再編促進対象事業の用に供した年から5年間(その用に供している期間に限る。)、その事業再編促進機械等の普通償却額の40%(建物及びその附属設備並びに構築物については、45%)相当額の割増償却ができることとされた。

20 サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却制度の廃止(旧措法14関係)  適用期限(平成29年3月31日)の到来をもって廃止された。

21 特定都市再生建築物等の割増償却制度の改正(措法14関係)
 次の見直しが行われた上で、適用期限が平成31年3月31日まで2年延長された。
(1)
都市再生特別措置法の認定計画等に基づく都市再生事業により整備される建築物に係る措置について、特定都市再生緊急整備地域に該当しない都市再生緊急整備地域内において行われる都市再生事業の要件のうち、その都市再生事業の施行される事業区域内に整備される建築物の延べ面積の要件が75,000㎡以上(改正前:50,000㎡以上)に引き上げられた。
(2)適用対象から、中心市街地の活性化に関する法律の認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づく特定民間中心市街地経済活力向上事業により整備される建築物及び構築物に係る措置が除外された。
(3)雨水貯留利用施設に係る措置について、対象となる資産から雨水貯留利用施設と併せて設置される減菌装置及びろ過装置が除外された。

22 農業経営基盤強化準備金制度の改正(措法24の2関係)  適用期限が平成30年3月31日まで1年延長された。

Ⅴ 東日本大震災の特例(所得税関係)の改正

1 復興産業集積区域等において機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(震災税特法10の2関係)
 復興居住区域に係る措置について、福島県又は福島県の区域内の市町村以外の認定地方公共団体の指定を受けた個人が取得等をする被災者向け優良賃貸住宅の特別償却限度額及び税額控除限度額が次のとおりとされた上で、適用期限が平成33年3月31日まで4年延長された。
(1)特別償却限度額……その取得価額の25%(平成32年4月1日から平成33年3月31日までの間に取得等をしたものについては、17%)相当額(改正前:その取得価額の25%相当額)
(2)税額控除限度額……その取得価額の8%(平成32年4月1日から平成33年3月31日までの間に取得等をしたものについては、6%)相当額(改正前:その取得価額の8%相当額)

2 避難解除区域等において機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(震災税特法10の2の3関係)  この制度の適用期間の始期に特定復興再生拠点区域復興再生計画につき認定があった日が追加され、適用期間が避難等指示が解除された日又は特定復興再生拠点区域復興再生計画につき認定があった日のいずれか早い日からその避難等指示が解除された日又は居住等制限指示が解除された日のいずれか遅い日以後5年を経過する日までの期間とされる等の見直しが行われた。

3 避難解除区域等において避難対象雇用者等を雇用した場合の所得税額の特別控除制度の改正(震災税特法10の3の3関係)  この制度の福島県知事の確認を受けることができる期間(確認期間)の始期に特定復興再生拠点区域復興再生計画につき認定があった日が追加され、確認期間が避難等指示が解除された日又は特定復興再生拠点区域復興再生計画につき認定があった日のいずれか早い日からその避難等指示が解除された日又は居住等制限指示が解除された日のいずれか遅い日以後3年を経過する日までの期間とされる等の見直しが行われた。

4 被災者向け優良賃貸住宅の割増償却制度の改正(震災税特法11の2関係)  次のとおり見直しが行われた上で、適用期限が平成33年3月31日まで4年延長された。
(1)対象となる特定激甚災害地域から認定復興推進計画に定められた復興居住区域が除外された。
(2)この制度の割増償却限度額が、次に掲げる被災者向け優良賃貸住宅の区分に応じそれぞれ次に定める金額とされた。
① 被災者向け優良賃貸住宅のうちその新築の時における耐用年数が35年未満であるもの……普通償却額の40%(平成31年4月1日から平成33年3月31日までの間に取得し、又は新築したものについては、20%)相当額(改正前:普通償却額の50%相当額)
② 被災者向け優良賃貸住宅のうちその新築の時における耐用年数が35年以上であるもの……普通償却額の56%(平成31年4月1日から平成33年3月31日までの間に取得し、又は新築したものについては、28%)相当額(改正前:普通償却額の70%相当額)

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