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解説記事2017年07月24日 【税制改正解説】 平成29年度における相続税法等の改正について(下)(2017年7月24日号・№700)

税制改正解説
平成29年度における相続税法等の改正について(下)
 礒貝美里

租税特別措置法等(相続税・贈与税関係)の改正(承前)

四 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の特例の改正

1 改正前の制度の概要
(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
 平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間にその直系尊属(父母、祖父母、養父母等)からの贈与(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により住宅用家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」という。)の取得をした一定の要件を満たす受贈者(以下「特定受贈者」という。)が、次の①から③までのいずれかの要件を満たす場合には、その贈与により取得した住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額(既にこの特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)までの金額又は特別住宅資金非課税限度額(既にこの特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合(平成28年9月30日までに一般の住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等に係る契約を締結してこの特例の適用を受けた場合を除く。)には、その算入しなかった金額を控除した残額)までの金額(平成28年10月1日以後に住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等に係る契約を締結してこの特例の適用を受ける場合には、これらの金額のうちいずれか多い金額)については、贈与税の課税価格に算入しないこととされていた(旧措法70の2①)。
(注)上記の住宅資金非課税限度額及び特別住宅資金非課税限度額とは、次の表のとおり。


① 住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得の場合(旧措法70の2①一)
 イ 住宅取得等資金を贈与により取得した年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額により住宅用家屋を新築するか、建築後使用されたことのない住宅用家屋を取得し、その日までに特定受贈者の居住の用に供していること
 ロ 住宅取得等資金を贈与により取得した年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額により住宅用家屋を新築するか、建築後使用されたことのない住宅用家屋を取得し、その日後遅滞なく特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれること
② 既存住宅用家屋の取得の場合(旧措法70の2①二)
 イ 住宅取得等資金を贈与により取得した年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額により既存住宅用家屋(建築後使用されたことのある住宅用家屋で一定のものをいう。以下同じ。)を取得し、その日までに特定受贈者の居住の用に供していること
 ロ 住宅取得等資金を贈与により取得した年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額により既存住宅用家屋を取得し、その日後遅滞なく特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれること
③ 増改築等の場合(旧措法70の2①三)
 イ 住宅取得等資金を贈与により取得した年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額を特定受贈者が居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てて増改築等を行い、その日までに特定受贈者の居住の用に供していること
 ロ 住宅取得等資金を贈与により取得した年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額を特定受贈者が居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てて増改築等を行い、その日後遅滞なく特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれること
(2)特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例  平成15年1月1日から平成31年6月30日までの間にその年の1月1日において60歳未満の者からの贈与により住宅取得等資金を取得した特定受贈者が、一定の要件を満たす住宅用家屋の新築、取得又は増改築等を行った場合には、その特定受贈者は、相続時精算課税制度を選択することができることとされていた(旧措法70の3)。
 住宅の取得等に関する要件は、上記(1)と同様。
(3)東日本大震災の被災者が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税  平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間(警戒区域設定指示等が行われた日においてその警戒区域設定指示等の対象区域内に所在する家屋をその居住の用に供していた者又はその居住の用に供しようとしていた者については、警戒区域設定指示等が行われた日からその警戒区域設定指示等が解除された日以後1年を経過する日までの間)にその直系尊属(父母、祖父母、養父母等)からの贈与により住宅取得等資金の取得をした被災受贈者が、一定の要件を満たす住宅用家屋の新築、取得又は増改築等を行った場合には、その贈与により取得をした住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額(既にこの特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)までの金額又は特別住宅資金非課税限度額(既にこの特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合(平成28年9月30日までに一般の住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等に係る契約を締結してこの項の規定の適用を受けた場合を除く。)には、その算入しなかった金額を控除した残額)までの金額(平成28年10月1日以後に住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等に係る契約を締結してこの特例の適用を受ける場合には、これらの金額のうちいずれか多い金額)については、贈与税の課税価格に算入しないこととされていた(旧震災税特法38の2①)。
 住宅の取得等に関する要件は、上記(1)と同様。
(注)上記の住宅資金非課税限度額及び特別住宅資金非課税限度額とは、次のとおり。


2 改正の内容
(1)消費税率引上げ延期に伴う改正
 消費税率引上げ時期の延期にあわせて、その導入時期を2年半延期する等の所要の措置を講じた上で、適用期限が2年半延長された。
 なお、住宅資金非課税限度額及び特別住宅資金非課税限度額は、次のとおり。

(2)災害対応 ① 災害により住宅が滅失した場合の居住要件の免除
  住宅取得等資金に係る贈与税の特例は、贈与の年の翌年3月15日までに住宅を新築等し、同年12月31日までにその住宅で居住することが必要とされているが、次に掲げる場合に該当するときは、この居住要件は免除される(措法70の2⑧⑨、70の3⑧⑨、震災税特法38の2⑩⑪)。
 イ 贈与税の申告後に被災した場合 次のいずれかに該当するとき
 (イ)特定受贈者が住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をしてその特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日後遅滞なくこれらの住宅用家屋をその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれることによりこの特例の適用を受けた場合において、これらの住宅用家屋が災害により滅失(通常の修繕によっては原状回復が困難な損壊を含む。以下同じ。)をしたことによってその居住の用に供することができなくなったとき
 (ロ)特定受贈者が既存住宅用家屋をその特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日後遅滞なくその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれることによりこの特例の適用を受けた場合において、その既存住宅用家屋が災害により滅失をしたことによってその居住の用に供することができなくなったとき
 (ハ)特定受贈者が増改築等をした住宅用の家屋をその特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日後遅滞なくその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれることによりこの特例の適用を受けた場合において、その住宅用の家屋が災害により滅失をしたことによってその居住の用に供することができなくなったとき
 ロ 贈与税の申告前に被災した場合 この特例の適用期間内にその直系尊属からの贈与により金銭の取得をした個人が、その金銭を住宅用の家屋(要耐震改修住宅用家屋を含む。以下このロ及び③において同じ。)の新築若しくは取得又はその者が所有している住宅用の家屋につき行う増築(改築その他の工事を含む。)の対価に充ててその贈与により金銭の取得をした日の属する年の翌年3月15日までに新築若しくは取得又は増築をした場合において、その新築若しくは取得又は増築をした住宅用の家屋が災害によって滅失をしたことにより同日までにその居住の用に供することができなくなったとき
 (注)災害とは、震災、風水害、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び火災、鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害をいう(措法70の2⑧、措令40の4の2⑨、震災税特法38の2⑩、震災税特令29の2⑨)。
② 贈与税の申告後に被災した場合における居住期限の延長
  住宅取得等資金についてこの特例の適用を受けた特定受贈者が、贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日後において、次に掲げる場合に該当するときは、新築等をした住宅の居住期限が、贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年12月31日から1年延長される(措法70の2⑩、70の3⑩、震災税特法38の2⑫)。
 イ 特定受贈者が住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をしてその特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日後遅滞なくこれらの住宅用家屋をその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれることによりこの特例の適用を受けた場合において、災害に基因するやむを得ない事情によりこれらの住宅用家屋を同年12月31日までにその特定受贈者の居住の用に供することができなかったとき
 ロ 特定受贈者が既存住宅用家屋をその特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日後遅滞なくその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれることによりこの特例の適用を受けた場合において、災害に基因するやむを得ない事情によりその既存住宅用家屋を同年12月31日までにその特定受贈者の居住の用に供することができなかったとき
 ハ 特定受贈者が増改築等をした住宅用の家屋をその特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日後遅滞なくその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれることによりこの特例の適用を受けた場合において、災害に基因するやむを得ない事情によりその住宅用の家屋を同年12月31日までにその特定受贈者の居住の用に供することができなかったとき
③ 住宅の取得前に被災した場合の取得期限の延長
  この特例の適用期間内にその直系尊属からの贈与により金銭の取得をした個人が、その金銭を住宅用の家屋の新築若しくは取得又はその者が所有している住宅用の家屋につき行う増築(改築その他の工事を含む。)の対価に充ててその新築若しくは取得又は増築をする場合において、災害に基因するやむを得ない事情によりその贈与により金銭の取得をした日の属する年の翌年3月15日までにその新築若しくは取得又は増築ができなかったときは、この期限が1年延長される(措法70の2⑪、70の3⑪、震災税特法38の2⑬)。
④ 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の適用を受けて取得した住宅が滅失した場合のこの特例の再適用
  直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(平成27年度税制改正前の制度を含む。)の適用を受けた特定受贈者が新築若しくは取得をした住宅用家屋、取得をした既存住宅用家屋又は増改築等をした住宅用の家屋が被災者生活再建支援法第2条第2号に規定する政令で定める自然災害により滅失をした場合において、その特定受贈者がこの特例の適用期間内に再びその直系尊属からの贈与により金銭の取得をし、その金銭を住宅用の家屋の新築若しくは取得又はその者が所有している住宅用の家屋につき行う増築(改築その他の工事を含む。)の対価に充ててその新築若しくは取得又は増築をするときは、過去のこの特例の適用はないものとして、再度この特例の適用を受けることができる(措法70の2⑫⑬)。

3 適用関係  上記2(2)の改正は、平成29年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用される(改正法附則88④⑦、104①)。
 なお、平成27年1月1日から平成28年12月31日までの間に贈与により取得をした住宅取得等資金に係る贈与税についてこの特例の適用を受けた受贈者は、平成28年4月1日以後に発生した災害により、以下に掲げる場合に該当することとなったときは、上記2(2)①~③による改正後の規定を適用することができる(改正法附則88⑤⑧、104②)。
① この特例の適用に係る住宅用の家屋の滅失によりその住宅用の家屋を居住の用に供することができなくなった場合
② 贈与により住宅取得等資金を取得した日の属する年の翌年3月15日までに住宅用の家屋の新築、取得若しくは増改築等ができなかった場合
③ 贈与により住宅取得等資金を取得した日の属する年の翌年3月15日までに住宅用の家屋を居住の用に供することができなかった場合
④ 贈与により住宅取得等資金を取得した日の属する年の翌年12月31日までに住宅用の家屋を居住の用に供することができなかった場合

五 山林についての相続税の納税猶予制度の改正の創設

1 改正前の制度の概要
 特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林(立木又は土地をいう。以下五において同じ。)を有していた個人のうち一定の被相続人から相続又は遺贈により特例施業対象山林の取得をした林業経営相続人が、その相続に係る相続税の期限内申告書の提出により納付すべき相続税額のうち、特例山林に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、その相続税の申告書の提出期限までにその納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、その林業経営相続人の死亡の日まで、その納税が猶予される(措法70の6の4①)。
 なお、この制度は、相続税の申告書の提出期限までに、その相続又は遺贈により取得をした山林の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によって分割されていない場合には適用されない(旧措法70の6の4⑥)。

2 改正の内容  
(1)林業経営相続人による山林経営の継続が困難となった場合の特例
① 概要
  林業経営相続人が、障害、疾病その他の事由により特例山林について経営を行うことが困難な状態となった場合において、その特例山林の全部の経営をその林業経営相続人の推定相続人で一定の者に経営委託をしたときは、その経営委託をした日から2月以内に、その経営委託をした旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときに限り、その経営委託をした特例山林に係る山林の経営は、廃止していないものとみなされ、納税猶予が継続することとなる(措法70の6の4⑥)。
② 山林経営を行うことが困難な状態
  上記①の山林経営を行うことが困難な状態とは、林業経営相続人(相続税の申告書の提出期限において既に次に掲げる事由が生じていた者(その提出期限後に新たにその事由が生じた者並びにロの身体障害者手帳の交付を受けている者のうち、その提出期限後にその身体障害者手帳に記載された身体上の障害の程度が2級から1級に変更された者及び身体上の障害の程度が1級又は2級である障害がその身体障害者手帳に新たに記載された者を除く。)を除く。)に次に掲げる事由が生じている状態とされている(措令40の7の4⑰、措規23の8の4⑯)。
 イ 林業経営相続人が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令第6条第3項に規定する障害等級が1級である者として記載されているものに限る。)の交付を受けていること
 ロ 林業経営相続人が身体障害者福祉法第15条第4項の規定により身体障害者手帳(身体上の障害の程度が1級又は2級である者として記載されているものに限る。)の交付を受けていること
 ハ 林業経営相続人が介護保険法第19条第1項の規定により要介護認定(その要介護状態区分が要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令第1条第1項第5号に掲げる区分に該当するものに限る。)を受けていること
 ニ イからハまでに掲げる事由のほか、林業経営相続人がその提出期限後に山林の経営を行うことを不可能にさせる故障として農林水産大臣が財務大臣と協議して定めるものを有するに至ったことにつき、市町村長の認定を受けていること
③ 推定相続人で一定の者
  上記①の推定相続人で一定の者とは、林業経営相続人からその林業経営相続人の有する特例山林の全部の経営の委託を受けた個人であって、次に掲げる要件の全てを満たす者をいう(措令40の7の4⑱、措規23の8の4⑰)。
 イ その個人が、経営委託を受けた日において、林業経営相続人の推定相続人であること
 ロ その個人が、特定森林経営計画に従って特例山林の経営を適正かつ確実に行うものと認められる要件として次に掲げるものを満たしていること
 (イ)森林法施行規則第99条第3号及び第4号に掲げる要件に該当することについて同令第100条第1項本文の確認を受けたこの特例の適用を受けようとする林業経営相続人のその確認に係る推定相続人であること
 (ロ)特定森林経営計画について森林法第16条の規定により市町村長等の認定が取り消されたことがある場合にあっては、その取消しの日から起算して10年を経過している者であること
 (ハ)特定森林経営計画についてその期間満了時までに引き続いて市町村長等の認定を受けなかったことがある場合にあっては、その期間満了の日から10年を経過している者であること
 (ニ)その個人が林業経営相続人から経営委託を受けた山林(森林保健施設の整備に係る地区内に存する山林等を除く。)について作業路網の整備が行われる部分の面積の合計が100ha以上であること
 (ホ)その有する山林(森林保健施設の整備に係る地区内に存する山林等を除く。)の全て及びその個人が他の山林の所有者から経営の委託を受けた山林の全てが、特定森林経営計画が定められている区域内に存すること
 (ヘ)次に掲げる事項について、農林水産大臣の確認を受けた者であること
  (i)特定森林経営計画の達成のために必要な機械その他の設備を利用することができること
  (ii)特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林の全てについて、その特定森林経営計画に従って適正かつ確実に経営(その山林の経営の規模の拡大及び作業路網の整備を含む。)を行うことができること
④ 手続
  この特例の適用を受けようとする林業経営相続人は、この特例の適用を受けようとする旨及びその経営委託に関する事項その他次に掲げる事項を記載した届出書をその経営委託をした日から2月以内に、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(措法70の6の4⑥、措令40の7の4⑲、措規23の8の4⑱)。
 イ 林業経営相続人の氏名及び住所又は居所
 ロ 林業経営相続人から経営委託を受けた者(以下④において「経営受託者」という。)の氏名及び住所又は居所並びにその林業経営相続人との続柄
 ハ 林業経営相続人が経営委託を行った年月日
 ニ 経営委託をした山林の所在場所
 ホ その他参考となるべき事項
  また、この届出書には、次に掲げる書類を添付しなければならない(措令40の7の4⑲、措規23の8の4⑲)。
 イ 林業経営相続人の精神障害者保健福祉手帳の写し、身体障害者手帳の写し又は介護保険の被保険者証の写し、その林業経営相続人が上記②ニの市町村長の認定を受けていることを証するその市町村長の書類その他の書類で、相続税の申告書の提出期限後にその林業経営相続人が上記②イからニまでに掲げる事由のいずれかに該当することとなったこと(その林業経営相続人がその提出期限後に新たにその事由が生じた者並びに身体障害者手帳の交付を受けている者のうち、その提出期限後にその身体障害者手帳に記載された身体上の障害の程度が2級から1級に変更された者及び身体上の障害の程度が1級又は2級である障害がその身体障害者手帳に新たに記載された者である場合には、これらの者に該当することとなったこと)及びその該当することとなった年月日を明らかにする書類
 ロ 林業経営相続人が経営受託者との間で締結した経営委託に係る委託契約書の写し
 ハ 経営受託者の戸籍の謄本又は抄本その他の書類で、その経営受託者が経営委託を受けた日において林業経営相続人の推定相続人であった旨を明らかにする書類
 ニ 森林法施行規則第99条第3号及び第4号に掲げる要件に該当することについて林業経営相続人が受けた同令第100条第1項本文の農林水産大臣の確認に係る同条第6項の確認書
 ホ 森林法施行規則第99条第1号に掲げる要件に該当することについて経営受託者が受けた同令第100条第1項本文の農林水産大臣の確認に係る同条第6項の確認書
 ヘ 市町村長の証明書で、経営受託者が上記③(ロ)から(ホ)までに掲げる要件に該当することを証するもの
(2)特例山林が被災した場合の規模拡大期間の延長  経営規模の拡大の達成期間についても、災害等によりその拡大が困難となった場合には、その期間が10年から15年に延長することとされた(措令40の7の4⑫)。
(3)特例の対象となる山林の拡充  一つの林班内にある5ha未満の山林であっても隣接する林班内にある特例山林と一体的に施業ができる場合には、特例の対象とされた(措規23の8の4⑦五)。

3 適用関係  上記2の改正は、平成29年4月1日以後に相続又は遺贈により取得をする特例施業対象山林に係る相続税について適用され、同日前に相続又は遺贈により取得をした特例施業対象山林に係る相続税については、従前どおりとされている(改正法附則88⑨)。

六 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の改正

1 改正前の制度の概要
 平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、個人(教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の者に限る。)が、その直系尊属と受託者との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権(以下「信託受益権」という。)を取得した場合、その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき銀行等の営業所、事務所その他これらに準ずるもので日本国内にあるもの(以下「営業所等」という。)において預金若しくは貯金として預入をした場合又は教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭若しくは公社債投資信託のうち一定のもの(以下「金銭等」という。)で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託受益権、金銭又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額(既にこの特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされている(措法70の2の2①)。

2 改正の内容  取扱金融機関に提出する領収書等について、紙の提出だけでなく、インターネット等を利用して電子的に提供できることとされた(措法70の2の2⑦)。 

3 適用関係  上記2の改正は、平成29年6月1日以後に提出する領収書等について適用される(改正法附則88⑥)。

租税特別措置法等(登録免許税関係)の改正

一 自然災害の被災者等が新築等をした建物に係る所有権の保存登記等の非課税措置の創設

1 制度の内容
(1)自然災害の被災者等が新築又は取得をした建物に係る所有権の保存登記等の免税
 自然災害(被災者生活再建支援法第2条第2号に規定する政令で定める自然災害をいう。以下一において同じ。)の被災者であって一定のもの又はその者の相続人その他の一定の者(一において「被災者等」という。)がその自然災害により滅失した建物又はその自然災害により損壊したため取り壊した建物(一において「滅失建物等」という。)に代わるものとして新築又は取得をした一定の建物の所有権の保存又は移転の登記については、その自然災害の発生した日から同日以後5年を経過する日までの間に受けるものに限り、登録免許税が免税とされる(措法84の4①)。
 また、この特例の適用を受ける建物の新築又は取得のための資金の貸付け(貸付けに係る債務の保証を含む。以下一において同じ。)が行われる場合又はその対価の支払が賦払の方法により行われる場合におけるその貸付けに係る債権(その保証に係る求償権を含む。以下一において同じ。)又はその賦払金に係る債権を担保するために受けるその建物を目的とする抵当権の設定の登記については、その建物の所有権の保存又は移転の登記と同時に受けるものに限り、登録免許税が免税とされる(措法84の4②)。
 この特例の適用対象者、適用対象建物、適用要件は次のとおりとされている。
① 特例の適用対象者(措令44の2①②)
 イ 自然災害の被災者であって、滅失建物等の所有者であることにつき、その滅失建物等の所在地の市町村長又は特別区の区長から証明を受けた者(分割により滅失建物等に係る事業に関して有する権利義務を承継させた分割法人を除く。)
 ロ 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ各号に定める者
 (イ)自然災害の被災者が個人であってイの証明を受けた後に死亡した場合 その被災者が死亡したときにおけるその者の相続人
 (ロ)自然災害の被災者が個人であってイの証明を受ける前に死亡した場合 その被災者が死亡したときにおけるその者の相続人であってその被災者が滅失建物等の所有者であったことにつき、その滅失建物等の所在地の市町村長又は特別区の区長から証明を受けたもの
 (ハ)自然災害の被災者が法人であってイの証明を受けた後に合併により消滅した場合又は分割により滅失建物等に係る事業に関して有する権利義務を承継させた場合 その合併に係る合併法人又はその分割に係る分割承継法人
 (ニ)自然災害の被災者が法人であってイの証明を受ける前に合併により消滅した場合又は分割により滅失建物等に係る事業に関して有する権利義務を承継させた場合 その合併に係る合併法人又はその分割に係る分割承継法人であってその被災者がその滅失建物等の所有者であったことにつき、その滅失建物等の所在地の市町村長又は特別区の区長から証明を受けたもの
 (ホ)自然災害の被災者がイの証明を受けた個人であってこの特例の適用を受ける建物(住宅用の建物に限る。)の新築又は取得をすることができない場合((イ)に掲げる場合に該当する場合を除く。) その証明を受けた個人の三親等内の親族で次に掲げる要件の全てを満たす者
  (i)自然災害が発生した日の前日において滅失建物等にその証明を受けた個人と同居していた者であること
  (ii)建物にその証明を受けた個人と同居する者であること
② 特例の適用対象建物
  次のいずれかに該当する建物とされている(措令44の2③、措規31の8③~⑤)。
 イ 自然災害に際し、被災者生活再建支援法が適用された市町村(特別区を含む。)の区域内に所在する建物
 ロ 個人が新築又は取得をした住宅用の建物(イに掲げるものを除く。)で、その登記簿の表題部に記録された主たる建物の種類が居宅、寄宿舎又は共同住宅(これらの種類に類するもの及びこれらの種類とこれら以外の種類がともに記録されているものを含む。)とされているもの
 ハ 滅失建物等に代わるものとして新築又は取得をした建物(イ及びロに掲げるものを除く。)であることにつき、証明を受けたもの
 (注)この証明は、この特例の適用を受けようとする者の申請に基づき、その者が行う事業のうち主たるものを所管する主務大臣が、その申請に係る建物が滅失建物等に代わるものとして新築又は取得をした建物に該当する旨を記載した書類により行う。
  なお、この証明を受けようとする者は、その申請書に、その所有していた建物が滅失建物等に該当する旨を証する市町村長又は特別区の区長の書類の写し及びその建物に代わるものとして新築又は取得をした建物の詳細を明らかにする書類を添付しなければならない。
③ 特例の適用要件
  この特例の適用を受けようとする被災者等は、その登記の申請書に、上記①イ又はロ(ロ)(ニ)の市町村長又は特別区の区長のり災証明書(その証明書に記載された者が滅失建物等の所有者でない場合には、その証明書及び滅失建物等の所有者を明らかにする書類)を添付しなければならない(措規31の8①②)。
  なお、上記①ロの相続人若しくは合併法人若しくは分割承継法人又は三親等内の親族がこの特例の適用を受けようとする場合には、その登記の申請書に、次に掲げる者の区分に応じ、それぞれ次に定める書類を添付しなければならない。ただし、ロ又はハに掲げる者がその者の会社法人等番号(商業登記法に規定する会社法人等番号をいう。)を登記所に提供した場合には、その書類(ハに掲げる者にあっては、ハの分割承継法人に該当することを証する書類に限る。)の添付は必要ない。
 イ 相続人 その相続人の戸籍の謄本その他の書類でその適用を受けようとする者がその相続人に該当することを証するもの
 ロ 合併法人 その合併法人の登記事項証明書その他の書類でその適用を受けようとする者がその合併法人に該当することを証するもの
 ハ 分割承継法人 その分割承継法人の登記事項証明書その他の書類でその適用を受けようとする者がその分割承継法人に該当することを証するもの並びに滅失建物等に係る事業に関して有する権利義務をその分割承継法人が承継したことをその分割承継法人に係る分割法人及び分割承継法人が共同して証明するもの
 ニ 三親等内の親族 次に掲げる書類
 (イ)滅失建物等所有者が、代替建物の新築又は取得をすることができないことを明らかにする書類
 (ロ)戸籍の謄本その他の書類でその適用を受けようとする者が滅失建物等所有者の三親等内の親族であることを証する書類
 (ハ)滅失建物等が所在していた市町村(特別区を含む。(ニ)において同じ。)の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第252条の19第1項の指定都市にあっては、区長又は総合区長とする。(ニ)において同じ。)から交付を受けた滅失建物等所有者の属する世帯の住民票の写し又は消除された住民票の写しその他の書類で、自然災害が発生した日の前日においてその適用を受けようとする者がその滅失建物等にその滅失建物等所有者と同居していたことを証するもの
 (ニ)代替建物が所在する市町村の市町村長から交付を受けた滅失建物等所有者の属する世帯の住民票の写しその他の書類で、その適用を受けようとする者がその代替建物にその滅失建物等所有者と同居する者であることを証するもの(登記の申請の日までにその滅失建物等所有者と同居していない場合にあっては、その滅失建物等所有者と同居すると見込まれることを明らかにするもの)
(2)自然災害の被災者等が被災代替建物に係る土地を取得した場合の所有権の移転登記等の免税  自然災害の被災者等が上記(1)の特例の適用を受ける建物(以下一において「被災代替建物」という。)の敷地の用に供される土地の所有権又は地上権若しくは賃借権の取得をした場合において、その土地(一定の面積を超えない部分に限る。)の所有権の移転又は地上権若しくは賃借権の設定若しくは移転の登記については、その自然災害の発生した日から同日以後5年を経過する日までの間に受けるものに限り、登録免許税が免税とされる(措法84の5①)。
 また、この特例の適用を受ける土地の所有権若しくは地上権若しくは賃借権の取得のための資金の貸付けが行われる場合又はその対価の支払が賦払の方法により行われる場合におけるその貸付けに係る債権又はその賦払金に係る債権を担保するために受けるその土地を目的とする抵当権の設定の登記については、その土地の所有権の移転又は地上権若しくは賃借権の設定若しくは移転の登記と同時に受けるものに限り、登録免許税が免税とされる(措法84の5②)。
 この特例の適用対象となる土地の面積の上限は、滅失建物等の床面積の合計(その滅失建物等が区分所有建物である場合には、被災者等の専有部分の床面積)に6(住宅用の建物にあっては、2)を乗じて計算した面積とその滅失建物等の敷地の用に供されていた土地の面積とのいずれか大きい面積とされている(措令44の3)。
 この特例の適用を受けようとする被災者等は、その登記の申請書に、滅失建物等の床面積の合計又はその滅失建物等の敷地の用に供されていた土地の面積を明らかにする書類のほか、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める書類を添付しなければならない(措規31の9)。
① この特例の適用を受けようとする土地が、被災代替建物の敷地の用に供されると見込まれる土地である場合 次に掲げる書類
 イ 上記(1)①イ又はロ(ロ)(ニ)の市町村長又は特別区の区長のり災証明書(その証明書に記載された者が滅失建物等の所有者でない場合には、その証明書及び滅失建物等の所有者を明らかにする書類)
 ロ その土地が、被災代替建物の敷地の用に供されると見込まれる土地であることを明らかにする書類
 ハ その登記を受けようとする者が上記(1)③ニに掲げる者である場合にあっては上記(1)③ニ(イ)から(ハ)までに掲げる書類
② この特例の適用を受けようとする土地が、被災代替建物の敷地の用に既に供されている土地である場合 次に掲げる書類
 イ ①イに掲げる書類
 ロ その土地が、被災代替建物の敷地の用に既に供されている土地であることを明らかにする書類
 ハ その土地に係る被災代替建物が上記(1)②ハに該当する場合には、その証明に係る書類の写し

2 適用関係
(1)
上記1(1)は、平成28年4月1日以後に発生した自然災害に係る滅失建物等に代わる建物の新築又は取得をする場合におけるその建物の所有権の保存若しくは移転又はその建物を目的とする抵当権の設定の登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則89③)。
  また、上記1(1)は、被災者等が平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に発生した自然災害に係る滅失建物等に代わる建物の新築又は取得をした場合において、その期間内に受けたその建物の所有権の保存若しくは移転又はその建物を目的とする抵当権の設定の登記に係る登録免許税について準用される(改正法附則89④)。
  この場合において、登録免許税法第31条第2項の請求をする場合には、登録免許税法施行令第31条第2項の請求書に、上記1(1)③の書類及び被災者等が上記1(1)③イからニまでに掲げる者である場合にはそれぞれイからニまでに定める書類を添付して提出しなければならない(改正規附則17)。
(2)上記1(2)は、平成28年4月1日以後に発生した自然災害に係る被災代替建物の敷地の用に供される土地の取得をする場合におけるその土地の所有権の移転若しくは地上権若しくは賃借権の設定若しくは移転又はその土地を目的とする抵当権の設定の登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則89⑤)。
  また、上記1(2)は、被災者等が平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に発生した自然災害に係る被災代替建物の敷地の用に供される土地の取得をした場合において、その期間内に受けたその土地の所有権の移転若しくは地上権若しくは賃借権の設定若しくは移転又はその土地を目的とする抵当権の設定の登記に係る登録免許税について準用される(改正法附則89⑥)。
  この場合において、登録免許税法第31条第2項の請求をする場合には、登録免許税法施行令第31条第2項の請求書に、上記1(2)①又は②の区分に応じそれぞれ①又は②に定める書類を添付して提出しなければならない(改正規附則17)。

二 農業競争力強化支援法に係る認定事業再編計画に基づき行う登記の税率の軽減措置の創設

1 制度の内容
 次に掲げる事項について登記を受ける場合において、その事項が、農業競争力強化支援法に規定する認定事業再編計画に係る認定に係るものであって同法の施行の日から平成31年3月31日までの間にされたその認定に係るものであるときは、その登記に係る登録免許税の税率は、その認定の日から1年以内に登記を受けるものに限り、次に掲げる事項の区分に応じ、それぞれに次に定める割合とされる(措法80③)。
① 株式会社の設立又は資本金の額の増加(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分及び②③に掲げるものを除く。) 1,000分の3.5
② 合併による株式会社の設立又は資本金の額の増加 イ又はロに掲げる部分の区分に応じイ又はロに定める割合
 イ 資本金の額又は合併により増加した資本金の額のうち、合併により消滅した会社のその合併の直前における資本金の額に対応する部分 1,000分の1
 ロ イに掲げる部分以外の部分(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分を除く。) 1,000分の3.5
③ 分割による株式会社の設立又は資本金の額の増加(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分を除く。) 1,000分の5
④ 法人の設立、資本金若しくは出資金の額の増加又は事業に必要な資産の譲受けの場合における不動産の所有権の取得(⑤⑥に掲げるものを除く。) 1,000分の16
⑤ 合併による法人の設立又は資本金若しくは出資金の額の増加の場合における不動産の所有権の取得 1,000分の2
⑥ 分割による法人の設立又は資本金若しくは出資金の額の増加の場合における不動産の所有権の取得 1,000分の4
 この特例の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に、その登記が上記に該当するものであることについての主務大臣の証明書で、その登記を受ける事項が上記に該当すること及びその事項が記載された認定事業再編計画に係る認定の日の記載があるものを添付しなければならない(措規30の2⑤)。

2 適用関係  上記1は、農業競争力強化支援法(平成29年法律第35号)の施行の日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則1十一)。

三 特例事業者が不動産特定共同事業契約により不動産を取得した場合の所有権の移転登記等の税率の軽減措置の改正

1 改正前の制度の概要
(1)
特例事業者が、不動産特定共同事業法に規定する不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる不動産で次に掲げるものの取得をした場合には、その不動産の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率は、不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(平成25年法律第56号)の施行の日(平成25年12月20日)から平成29年3月31日までの間に登記を受けるものについては、1,000分の13(本則1,000分の20)に軽減されていた(旧措法83の3①)。
① 建替えが必要な建築物の建替え又は開発(更地を取得しその更地に建築物を建築することをいう。)により特定建築物の新築又は改築(以下「新築等」という。)をする場合のその特定建築物の敷地の用に供することとされている土地
② ①の土地を敷地とする①の建替えが必要な建築物
③ 特定建築物とするために増築、修繕又は模様替(以下「増築等」という。)をすることが必要な建築物
④ ③の建築物の敷地の用に供されている土地
(2)特例事業者が、上記(1)①の特定建築物の新築等をした場合又は上記(1)③の特定建築物の増築等をした場合には、その建築物の所有権の保存登記に対する登録免許税の税率は、上記(1)の期間内に登記を受けるものについては、1,000分の3(本則1,000分の4)に軽減されていた(旧措法83の3②)。

2 改正の内容
(1)小規模不動産特定共同事業に係る特例の創設
① 概要
 イ 不動産特定共同事業法に規定する小規模不動産特定共同事業者又は小規模特例事業者が、不動産特定共同事業契約(一定のものに限る。)に係る不動産取引の目的となる建築物で次に掲げるものの取得をした場合には、その建築物の所有権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(平成29年法律第46号)の施行の日から平成31年3月31日までの間に登記を受けるものに限り、1,000分の13とされる(措法83の3③)。
 (イ)建替えにより一定の用途に供する建築物(以下(1)において「特例建築物」という。)の新築又は改築をする場合におけるその建替えが必要な建築後使用されたことのある建築物
 (ロ)特例建築物とするために増築、修繕又は模様替で一定のもの(以下(1)において「特例増築等」という。)をすることが必要な建築後使用されたことのある建築物
 ロ 小規模不動産特定共同事業者又は小規模特例事業者が、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる建築物(特例建築物又は上記イ(ロ)に掲げる建築物に限る。)の新築、改築又は特例増築等をした場合には、その建築物(特例増築等の場合にあっては、その特例増築等部分に限る。)の所有権の保存の登記に係る登録免許税の税率は、上記の期間内に登記を受けるものに限り、1,000分の3とされる(措法83の3④)。
② 不動産特定共同事業契約
  事業契約の内容として次に掲げる事項の全てが定められているものとされている(措令43の3⑥)。
 イ 小規模不動産特定共同事業者又は小規模特例事業者による事業契約に係る不動産取引の目的となる不動産(ハにおいて「対象不動産」という。)の取得は、その事業契約締結後に行うものであること
 ロ 小規模不動産特定共同事業者又は小規模特例事業者が、特例建築物又は上記①イ(イ)若しくは(ロ)に掲げる建築物を取得するものであること
 ハ 次に掲げる対象不動産の区分に応じ、それぞれ次に定める事項
 (イ)上記①イ(イ)に掲げる建築物 その建築物の取得後2年以内に特例建築物の新築等に着手すること
 (ロ)上記①イ(ロ)に掲げる建築物 その建築物の取得後2年以内に特例増築等に着手すること
 (ハ)特例建築物の敷地の用に供することとされている土地(土地の上に存する権利を含む。) その土地の取得後2年以内にその特例建築物の新築等に着手すること
 ニ その他国土交通大臣が財務大臣と協議して定める事項
③ 特例建築物の用途
  特例建築物の用途は、住宅、事務所、店舗、旅館、ホテル、料理店、駐車場、学校、病院、介護施設、図書館、博物館、会館、公会堂、劇場、映画館、遊技場又は倉庫とされている。ただし、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する店舗型性風俗特殊営業及び店舗型電話異性紹介営業の用は除かれる(措令43の3⑦)。
④ 特例増築等の要件
  特例増築等は、上記①イ(ロ)に掲げる建築物につき行う増築、修繕又は模様替の工事(その工事と併せて行うその建築物と一体となって効用を果たす設備の取替え又は取付けに係る工事を含む。)であって、その工事に要した費用の額(その工事の費用に関し補助金等(国又は地方公共団体から交付される補助金又は給付金その他これらに準ずるものをいう。)の交付を受ける場合には、その工事に要した費用の額からその補助金等の額を控除した残額)が300万円以上であるものとされている(措令43の3⑨)。
⑤ 手続
 イ 上記①イの特例の適用を受けようとする小規模不動産特定共同事業者又は小規模特例事業者は、その登記の申請書に、その登記が上記①イに該当するものであることについての国土交通大臣の証明書で、次に掲げる事項の記載があるものを添付しなければならない(措規31の5の2⑥)。
 (イ)その登記に係る建築物の取得をした者が小規模不動産特定共同事業者又は小規模特例事業者であること
 (ロ)その登記に係る建築物が不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる建築物であること及びその建築物の次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める事項
  (i)上記①イ(イ)に掲げる建築物 その建築物が上記①イ(イ)に掲げる建築物であること及び建替えにより新築等をする建築物が上記③の用途に供される建築物であること
  (ii)上記①イ(ロ)に掲げる建築物 その建築物が上記①イ(ロ)に掲げる建築物であること、その建築物が上記③の用途に供される建築物であること及びその建築物の増築、修繕又は模様替が上記④の特例増築等であること
 (ハ)不動産特定共同事業契約の内容として上記②に掲げる事項の全てが定められていること。
 ロ 上記①ロの特例の適用を受けようとする小規模不動産特定共同事業者又は小規模特例事業者は、その登記の申請書に、その登記が上記①ロに該当するものであることについての国土交通大臣の証明書で、次に掲げる事項の記載があるものを添付しなければならない(措規31の5の2⑦)。
 (イ)その登記に係る建築物の新築等又は特例増築等をした者が小規模不動産特定共同事業者又は小規模特例事業者であること
 (ロ)その登記に係る建築物が不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる建築物であること及びその建築物の次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める事項
  (i)特例建築物 その特例建築物が上記③の用途に供する建築物であること及び建替えによりその特例建築物の新築等をした場合にあってはその建替えが上記①イ(イ)に掲げる建築物の建替えであること
  (ii)上記①イ(ロ)に掲げる建築物 その建築物が上記③の用途に供する建築物であること並びにその建築物の増築、修繕又は模様替が上記①イ(ロ)に掲げる建築物の増築、修繕又は模様替であること及び上記④の特例増築等であること
 (ハ)不動産特定共同事業契約の内容として上記②に掲げる事項の全てが定められていること。
(2)特例事業者に係る特例の改正 ① 適用期限の延長
  この特例の適用期限が、平成31年3月31日まで2年延長された(措法83の3①②)。
② 適用対象者の追加
  この特例の適用対象者に、不動産特定共同事業法に規定する適格特例投資家限定事業者が追加された(措法83の3①②、措令43の3①)。
(注1)適格特例投資家限定事業者とは、適格特例投資家のみを相手方又は事業参加者とするものをいい、適格特例投資家とは、銀行、信託会社等の一定の者のうち、不動産に対する投資に係る専門的知識及び経験を特に有すると認められる者として一定の者をいう。
(注2)この特例の適用対象となる適格特例投資家限定事業とは、オフバランス型の事業(事業契約に基づき行われる不動産取引に係る業務の全てを宅地建物取引業者に委託する。)に限られる。
③ 特定建築物の要件の見直し
  改正前の特定建築物の構造上の要件は、耐火建築物又は準耐火建築物とされていたが、本改正により、この要件に加えて、耐震建築物(建築基準法施行令第3章及び第5章の4の規定又は国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準に適合するもの)であることが追加された(措令43の3③)。

3 適用関係  上記2(2)①③を除く。)の改正は、不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(平成29年法律第46号)の施行の日以後に受ける登記について適用される(改正法附則1十六)。
 上記2(2)③の改正は、平成29年4月1日以後に特例事業者又は適格特例投資家限定事業者が締結する不動産特定共同事業契約に係る建築物の新築、改築又は特定増築等をする場合におけるその建築物の所有権の保存の登記に係る登録免許税について適用され、同日前に特例事業者が締結した不動産特定共同事業契約に係る建築物の新築、改築又は増築等をした場合におけるその建築物の所有権の保存の登記に係る登録免許税については、従前どおりとされている(改正措令附則31①)。

四 租税特別措置等の適用期限の延長等

(1)
利用権設定等促進事業により農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置の改正
① 改正前の制度の概要
  農業を営む者で一定のものが、昭和56年4月1日から平成29年3月31日までの間に、農業経営基盤強化促進法に規定する利用権設定等促進事業により、一定の区域内において、農用地等の取得をした場合には、その所有権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、その利用権設定等促進事業に係る農用地利用集積計画の公告の日以後1年以内に登記を受けるものに限り、1,000分の8とされていた(旧措法77)。
② 改正の内容
  この特例の軽減税率が1,000分の10に引き上げられるとともに、その適用期限が平成31年3月31日まで2年間延長された(措法77)。
③ 適用関係
  上記②の改正は、平成29年4月1日以後に農用地等を取得する場合におけるその所有権の移転の登記に係る登録免許税について適用され、同日前に農用地等を取得した場合におけるその所有権の移転の登記に係る登録免許税については従前どおりとされている(改正法附則89①)。
(2)以下に掲げる租税特別措置の適用期限が、平成32年3月31日まで3年延長された。
① 住宅用家屋の所有権の保存登記の税率の軽減(措法72の2)
② 住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減(措法73)
③ 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の税率の軽減(措法75)
(3)以下に掲げる租税特別措置等の適用期限が、平成31年3月31日まで2年延長された。
① 土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減(措法72)
② 信用保証協会等が受ける抵当権の設定登記等の税率の軽減(措法78)
③ 経営強化計画に基づき行う登記の税率の軽減(措法80の2、震災税特法41の2)
④ 認定民間都市再生事業計画に基づき建築物を建築した場合の所有権の保存登記の税率の軽減(措法83)
⑤ 特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合等の所有権の移転登記の税率の軽減(措法83の2)

五 租税特別措置の廃止(認定公社管理道路運営事業に係る公共施設等運営権の設定登録の税率の軽減)

1 廃止前の制度の概要
 構造改革特別区域法に規定する公社管理道路運営権者が、国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律(平成27年法律第56号)附則第1条第2号に定める日から平成29年3月31日までの間に認定公社管理道路運営事業に係る公共施設等運営権の設定を受ける場合には、その公共施設等運営権の設定の登録に係る登録免許税の税率は、その設定後1年以内に登録を受けるものに限り、1,000分の0.5とされていた(旧措法82)。

2 経過措置  平成29年4月1日前に公社管理道路運営権者が公共施設等運営権の設定を受けた場合におけるその公共施設等運営権の設定の登録に係る登録免許税については従前どおりとされている(改正法附則89②)。

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