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解説記事2017年09月04日 【実務解説】 消費税法における特定新規設立法人の判定(2017年9月4日号・№705)

実務解説
消費税法における特定新規設立法人の判定
 税理士 飯田聡一郎
 税理士 竹内陽一

はじめに

 特定新規設立法人は、平成24年8月の消費税法の改正において創設され、平成26年4月1日以後の新規設立法人から適用されている。
 基準期間のない事業年度開始の日において資本金1,000万円未満の新設法人であっても、一定の大規模事業者等が設立した法人については、事業者免税点を適用しないこととされた。
 本件は法人税法における支配関係と完全支配関係を準用した規定となっているが、消費税独自に、他の者が株主である新設法人の特定要件該当、他の者が株主である法人についての特殊関係法人の規定が定められている(図表参照)。


消費税特有の点は、
(1)判定対象者に係る他の者と新規設立法人の関係が、「他の者は新規設立法人の株式、議決権、社員の持分を有する者に限る。」(財務省「平成25年度 税制改正の解説」P.980)と限定され、50%超の実質支配関係の判定において、間接保有分を含むが、他の者が株主である新規設立法人が対象である。
  他の者が個人である場合は、ここで親族を含めその個人の親族と、これらが100%支配の法人(特殊関係法人)を含めて50%を判定する。
  他の者が法人である場合は、その他の者が株主である新規設立法人について、その他の者が株主である間接完全支配関係の法人を含めて、当該新規設立法人の実質支配関係を判定する。
(2)他の者と特殊関係法人との関係においても、特殊関係法人は、他の者が直接株主である法人に限り、特殊関係法人は、第一に、他の者が株主である法人について、他の者が親族と100%支配の法人を含めて100%支配の法人であり、特定要件の50%超の特定要件の判定に含められ、第二に、他の者又は特殊関係法人のいずれかが課税売上高5億円超の場合に、特定新規設立法人に該当することになる。

解 説
 以下、具体的事例にそって特定新規設立法人に該当するか否かについてそれぞれ解説する。



(解説)  Aは、Hの株式を51%保有しているため、AをHの他の者として判定することで、特定要件に該当する。
 新規設立法人であるHの基準期間に相当する期間における、他の者であるAの課税売上高が5億円超であるため、Aは特定新規設立法人に該当する。


(解説)  Aは、Hの株式を51%保有しているため、AをHの他の者として判定することで、特定要件に該当する。
 Bは、Aに完全支配されているので、Aの特殊関係法人に該当する(消令25の3①一)。
 新規設立法人であるHの基準期間に相当する期間における、他の者であるAの課税売上高が1億円であるため、AとHだけの関係では特定新規設立法人に該当しない。
 ただし、新規設立法人であるHの基準期間に相当する期間における、他の者であるAの特殊関係法人Bの課税売上高が5億円超であるため、Hは特定新規設立法人に該当する。


(解説)  Aは、Aが完全支配しているB(消令25の2①二ロ)と合わせて、Hの株式を51%保有しているので、HはAを他の者として特定要件に該当する。
 新規設立法人であるHの基準期間に相当する期間における、他の者であるAの課税売上高が5億円超であるため、Hは特定新規設立法人に該当する。


(解説)  Aは、Iの株式を51%保有しているため、AをIの他の者として特定要件に該当する。
 新規設立法人であるIの基準期間に相当する期間における、他の者であるAの課税売上高が3億円であるため、Iは特定新規設立法人に該当しない。
 この場合、AはJを完全支配しているわけではないので、JはAの特殊関係法人にはなりえないため、Jの課税売上高はIの納税義務には影響しない。


(解説)  Aは、Iの株式を51%保有しているため、AをIの他の者として特定要件に該当する。
 新規設立法人であるIの基準期間に相当する期間における、他の者であるAの課税売上高が1億円であるため、Iは特定新規設立法人に該当しない。
 なお、AはJを完全支配していないため、JはAの特殊関係法人に該当しない。よってJの売上高は、Iの納税義務の判定には影響しない。


(解説)  個人である甲は、Iの株式を51%保有しているため、Iは甲を他の者として特定要件に該当する。
 甲にとって、別生計親族である乙が完全支配する法人Eは、非支配特殊関係法人に該当する(消令25の3②一)ため、特殊関係法人に該当しない(消令25の3①)。よって、Eの課税売上高は、Iの納税義務の判定には影響しない。


(解説)  個人である甲は、Hの株式を51%保有しているため、Hは甲を他の者として特定要件に該当する。
 Bは、甲及び甲の親族である乙により完全支配されているため特殊関係法人に該当する(消令25の3①一)。
 新規設立法人であるHの基準期間に相当する期間における、他の者である甲の特殊関係法人Bの課税売上高が5億円超であるため、Hは特定新規設立法人に該当する。
 このケースは、老舗の法人の相続対策等で親族に株式が分散している場合、その老舗の法人の経営に関与していない個人が法人を設立する場合などに、気がつかないまま特定新規設立法人に該当してしまうミスが起きやすい事例である。


(解説)  個人である甲は、Iの株式を51%保有しているため、Iは甲を他の者として特定要件に該当する。
 Jは、甲及び甲の親族である乙によって完全支配されていないため、特殊関係法人に該当しない。よって、Jの課税売上高は、Iの納税義務の判定には影響しない。


(解説)  個人である甲は、親族である乙と合わせて、Hの株式を51%保有しているため、Hは、特定要件に該当する。この場合、他の者に該当するのは、甲及び乙となる。
 甲を他の者とした場合は、Bは別生計親族である乙が完全支配する法人であるため、非支配特殊法人に該当する(消令25の3②一)。甲を他の者と捉える判定においては、Bの課税売上高の影響を受けない。
 ただし、乙を他の者として判定した場合は、Bは乙の特殊関係法人に該当する(消令25の3①一)。
 新規設立法人であるHの基準期間に相当する期間における、他の者である乙の特殊関係法人であるBの課税売上高が5億円超であるため、Hは特定新規設立法人に該当する。
 株式を保有する各人が他の者になり得るので、各人ごとに特殊関係法人の範囲を検討することが必要な点は注意が必要である。

まとめ
 特定新規設立法人に該当するか否かについては、課税売上高5億円超の法人が、間接支配する事例4のケース、実際に課税売上高5億円超の会社の経営に全くタッチしていない個人が法人を設立する事例7のケースなど、誤った判定をしやすい事例がある。
 特定新規設立法人に該当するか否かは、「特定要件」に該当するか否かの第一段階の判定と、特定要件に該当した場合に「他の者」及び「特殊関係法人」に該当する者の課税売上高の判定という第二段階の判定を行う。第二段階の判定の際に、他の者が「新規設立法人の株式、議決権、社員の持分を有する者に限る。」という点に注意を要する。
 財務省解説では、法人を設立した者の与り知らないところで消費税法12条の3の規定が適用されることを懸念している。現実的にも、親会社の立場からは孫会社の数字の把握はできても、孫会社の立場から親会社のさらに親会社の数字の把握は困難であろう。つまり、どこまでを射程に含めるかの線引きとして、「直接関係のある者に限定」したと考えることで、条文の趣旨を読み取ることができる。
 なお、本稿では特定新規設立法人に該当するか否かについて中心に述べてきたが、「基準期間に相当する期間」(消令25の4②)は、単純に新設開始日の2年前の日の前日から1年を経過する日までに終了した各事業年度を合わせた期間ではなく、その年度の課税売上高が5億円超でない場合には、次の年度を参照するなど、基準期間に相当する期間の取り方についても特別な取扱いとなっている。

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