解説記事2018年01月15日 【編集部レポート】 会計事務所のための平成29年分所得税確定申告のチェックポイント(2018年1月15日号・№722)
会計事務所のための
平成29年分所得税確定申告のチェックポイント
平成29年分所得税の確定申告が2月16日からスタートする。今回適用される改正では、住宅の耐久性向上改修工事に係る措置の創設や、医療費控除について、領収書に代えて医療費の明細書等を確定申告書に添付することなどの改正が行われている。平成29年分所得税の確定申告から適用される主な改正事項の概要を紹介する。
平成29年分所得税確定申告のチェックポイント
平成29年分所得税の確定申告が2月16日からスタートする。今回適用される改正では、住宅の耐久性向上改修工事に係る措置の創設や、医療費控除について、領収書に代えて医療費の明細書等を確定申告書に添付することなどの改正が行われている。平成29年分所得税の確定申告から適用される主な改正事項の概要を紹介する。
Check | 絶対注意!! 平成29年分所得税の改正事項 | |
▶金融・証券税制 | ||
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 特定口座異動届出書(措 令25 の10 の4) | 特定保管勘定又は特定信用取引等勘定の設定又は廃止に係る特定口座異動届出書を提出する者の個人番号の記載を要しないこととされた。 |
■ | 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等及び特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例(エンジェル税制)(措法37の13、37の13の2、41の19) | 適用対象となる沖縄振興特別措置法の指定会社に係る同法の規定に基づく指定期限が2年延長された。 |
▶土地・住宅税制 | ||
■ | 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例(措法41の3の2) | 適用対象となる工事に特定断熱改修工事等と併せて行う特定耐久性向上改修工事等を加えるとともに、税額控除率2%の対象となる住宅借入金等の範囲に、特定断熱改修工事等と併せて行う特定耐久性向上改修工事等に要した費用に相当する住宅借入金等が加えられた。 (注1)上記の「特定耐久性向上改修工事等」とは、①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、⑥基礎若しくは⑦地盤に関する劣化対策工事又は⑧給排水管若しくは給湯管に関する維持管理若しくは更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであることなど一定の要件を満たすものをいう。 (注2)特定耐久性向上改修工事等の証明書の発行は、建築士法の規定により登録された建築士事務所に所属する建築士等が行う。次の耐久性向上改修工事等についても同じ。 |
■ | 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除(措法41の19の3) | イ 特例の適用対象となる工事に耐久性向上改修工事等で住宅耐震改修又は一般断熱改修工事等と併せて行うものを加えるとともに、その控除額を住宅耐震改修又は一般断熱改修工事等に係る標準的な工事費用相当額及び耐久性向上改修工事等に係る標準的な工事費用相当額の合計額(250万円(一般断熱改修工事等と併せて太陽光発電装置の設置工事を行う場合には、350万円)を限度)の10% に相当する金額とする。 なお、住宅耐震改修及び一般断熱改修工事等と併せて耐久性向上改修工事等を行った場合における控除額は、その住宅耐震改修に係る標準的な工事費用相当額、一般断熱改修工事等に係る標準的な工事費用相当額及び耐久性向上改修工事等に係る標準的な工事費用相当額の合計額(500万円(一般断熱改修工事等と併せて太陽光発電装置の設置工事を行う場合には、600万円)を限度)の10%に相当する金額とする。 (注1)「耐久性向上改修工事等」とは、①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、⑥基礎若しくは⑦地盤に関する劣化対策工事又は⑧給排水管若しくは給湯管に関する維持管理若しくは更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであることなど一定の要件を満たすものをいう。 (注2)「標準的な工事費用相当額」とは、耐久性向上改修工事等の種類ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額に当該耐久性向上改修工事等を行った箇所数等を乗じて計算した金額をいう。 ロ 一般断熱改修工事等を行った個人が、その年の前年以前3年内に行った一般断熱改修工事等に係る本特例の適用を受けている場合には、その年において当該特例は適用しないこととされた。 |
■ | 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(措法41)等 | ① 給与所得者等が使用者等から使用人である地位に基づいて貸付けを受けた住宅借入金等のうち、本特例の適用対象とならない住宅借入金等に係る利率を0.2%未満(改正前:1%未満)に引き下げる。 ② 適用対象となる省エネ改修工事に、居室の窓の断熱改修工事等又は居室の窓の断熱改修工事等と併せて行う天井、壁若しくは床の断熱改修工事等で、改修後の住宅全体の断熱等性能等級が改修前から一段階相当以上向上し、改修後の住宅全体の省エネ性能が断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4 以上及び断熱等性能等級3となること等の要件を満たすものを加える。 ③ 適用対象となる増改築等に該当することを証明する書類(増改築等工事証明書)及び既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の適用対象となる耐震改修に該当することを証明する書類(住宅耐震改修証明書)の様式を統一する。 なお、上記①の改正は、平成29年1月1日以後に居住用家屋を自己の居住の用に供する場合について適用される。 |
■ | 短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例(措法28の4) | 適用停止措置の期限が3年延長された。 |
■ | 山林所得に係る森林計画特別控除(措法30の2) | 対象に木材の安定供給の確保に関する特別措置法の森林経営計画の認定の特例による森林経営計画に基づいて山林の伐採又は譲渡をした場合が加えられた。 |
■ | 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除(措法34) | 都市緑地法の規定により同法の改正後の緑地保全・緑化推進法人に土地等が買い取られる場合を引き続き本特例の対象とすること等とされた。 なお、この改正は、都市緑地法等の一部を改正する法律の施行の日(平成29年6月15日)以後に行う土地等の譲渡について適用される。 |
▶災害に関する税制上の措置等 | ||
■ | 移転等の支出に充てるための交付金の総収入金額不算入(所法44) | 対象となるやむを得ない事由の範囲に、被災市街地復興土地区画整理事業が施行された場合の換地処分により譲渡した土地の上にある資産の除却が加えられた。 なお、この改正は、平成29年1月1日以後に発生するやむを得ない事由について適用される。 |
■ | 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(措法41) | 適用を受ける家屋が災害により居住の用に供することができなくなった場合には、災害により居住の用に供することができなくなった年に限り本税額控除を適用できることとする改正前の措置に代えて、災害により居住の用に供することができなくなった年以後の従前家屋に係る適用年(次に掲げる年以後の各年を除く)について本税額控除の適用を受けることができる措置が講じられた。 ① 従前家屋若しくはその敷地の用に供されていた土地等又は当該土地等に新たに建築した建物等を事業の用若しくは賃貸の用又は親族等に対する無償による貸付けの用に供した場合(再建支援法適用者が当該土地等に新築等をした家屋について、住宅借入金等特別控除等の適用を受ける場合を除く)における当該事業の用若しくは賃貸の用又は貸付けの用に供した日の属する年 ② 従前家屋又はその敷地の用に供されていた土地等の譲渡をし、その譲渡について居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除又は特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用を受ける場合における当該譲渡の日の属する年 ③ 災害により従前家屋を居住の用に供することができなくなった者 (再建支援法適用者を除く)が取得等をした家屋について住宅借入金等特別控除等の適用を受けた年 (注1)再建支援法適用者が家屋の再取得等をした場合には、従前家屋に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と当該再取得等をした家屋に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除を重複して適用できることとし、その重複して適用できる年における税額控除額は、現行の二以上の居住年に係る住宅の取得等に係る住宅借入金等の金額を有する場合の控除額の調整措置による。 (注2)特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例及び東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例についても同じ。 なお、この改正は、災害により平成28年1月1日以後に従前家屋を居住の用に供することができなくなった個人の平成29年分以後の所得税について適用される。 |
■ | 勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄の利子所得等の非課税(措法4の2、4の3) | 財産形成非課税住宅(年金)貯蓄申告書を提出した個人が災害等の事由により、当該災害等の事由が生じた日から同日以後1年を経過する日までの間に、財産形成住宅(年金)貯蓄の目的外払出しを行う場合には、その貯蓄に係る利子等に対する遡及課税等は行われないこととされた。 なお、平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に当該災害等の事由による財産形成住宅(年金)貯蓄の払出しを行った当該個人で、その払出しの際に当該財産形成住宅(年金)貯蓄に係る利子等について徴収された所得税の額がある者は、平成30年3月31日までに、納税地の所轄税務署長に対し、当該徴収された所得税の額の還付を請求することができることとする措置が講じられている。 |
■ | 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の2) | 適用対象に独立行政法人都市再生機構が被災市街地復興推進地域内において施行する被災市街地復興土地区画整理事業等の用に供される土地等が土地開発公社に買い取られる場合が加えられた。 なお、この改正は、平成29年1月1日以後に都市計画決定がされた都市計画に定められた被災市街地復興推進地域内にある土地等の同日以後に行う譲渡について適用される。 |
■ | 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)等 | 適用を受ける者が、特定非常災害として指定された非常災害に基因するやむを得ない事情により、予定期間等内にその買換資産等の取得等をすることが困難となった場合には、税務署長の承認等の一定の要件の下、その予定期間等を2年の範囲内で延長する措置が講じられた。 なお、この改正は、予定期間等の末日が平成29年4月1日以後である買換資産等について適用される。 |
■ | 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(措法33)等 | 適用対象に、次に掲げる土地等が次に定める事業の用に供するために地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構(土地開発公社を含む)に買い取られ、対価を取得する場合が加えられた。 ① 地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構が被災市街地復興推進地域において施行する減価補償金を交付すべきこととなる被災市街地復興土地区画整理事業の施行区域内にある土地等 公共施設の整備改善に関する事業 ② 地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構が住宅被災市町村の区域において施行する第二種市街地再開発事業の施行区域内にある土地等 その第二種市街地再開発事業 なお、この改正は、平成29年1月1日以後に都市計画決定がされた都市計画に定められた被災市街地復興推進地域において施行される被災市街地復興土地区画整理事業の施行区域内にある土地等又は同日以後に住宅被災市町村となった市町村の区域において施行される第二種市街地再開発事業の施行区域内にある土地等の同日以後に行う譲渡について適用される。 |
■ | 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例(措法33の3) | 適用対象に被災市街地復興土地区画整理事業が施行された場合において、個人が有する土地等に係る換地処分により代替住宅等を取得した場合が加えられた。 なお、この改正は、平成29年1月1日以後に都市計画決定がされた都市計画に定められた被災市街地復興推進地域内にある土地等の同日以後に行う譲渡について適用される。 |
■ | 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除(措法34の2) | 適用対象に被災市街地復興推進地域内にある土地等が、被災市街地復興特別措置法の買取りの申出に基づき都道府県知事等に買い取られる場合等に該当することとなった場合が加えられた。 なお、この改正は、平成29年1月1日以後に都市計画決定がされた都市計画に定められた被災市街地復興推進地域内にある土地等の同日以後に行う譲渡について適用される。 |
■ | 被災代替資産等の特別償却の特例(措法11の3) | 個人が、特定非常災害として指定された非常災害に係る特定非常災害発生日からその特定非常災害発生日の翌日以後5 年を経過する日までの間に、次に掲げる減価償却資産でその特定非常災害に基因してその個人の事業の用に供することができなくなった建物等、構築物若しくは機械装置に代わるものの取得等をして、その個人の事業の用に供した場合又は次に掲げる減価償却資産の取得等をして、被災区域及びその被災区域である土地に付随して一体的に使用される土地の区域内においてその個人の事業の用に供した場合には、これらの減価償却資産につき、次に掲げる被災代替資産等ごとのその取得価額にその取得等の時期に応じそれぞれ次に定める償却割合を乗じて計算した金額の特別償却ができることとされた。 なお、平成28年分について本制度を適用した場合、被災代替資産等に該当することとなる減価償却資産について、平成29年分において当該特例被災代替資産等を有する場合には、同年分において当該特例被災代替資産等に係る特別償却額に相当する金額を必要経費に算入することができる償却費の額とみなして本特例が適用される措置が講じられている。 ① 建物等又は構築物 イ その特定非常災害発生日からその特定非常災害発生日の翌日以後3年を経過する日までの間に取得又は建設をしたもの 100 分の15(中小事業者にあっては、100分の18) ロ その特定非常災害発生日の翌日から起算して3年を経過した日以後に取得又は建設をしたもの 100分の10(中小事業者にあっては、100分の12) ② 機械装置 イ その特定非常災害発生日からその特定非常災害発生日の翌日以後3年を経過する日までの間に取得又は製作をしたもの 100分の30(中小事業者にあっては、100分の36) ロ その発災後3年経過日以後に取得又は製作をしたもの 100分の20(中小事業者にあっては、100分の24) |
■ | 避難解除区域等において機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(震災特例法10の2の3)等 | 対象地域に特定復興再生拠点区域復興再生計画に記載された特定復興再生拠点区域が加えられた。 |
■ | 被災者向け優良賃貸住宅の割増償却制度(震災特例法11の2) | 次のとおり見直しが行われた上、その適用期限が4年延長された。 ① 対象となる特定激甚災害地域から認定復興推進計画に定められた復興居住区域を除外した上、特別償却額をその普通償却額に次に掲げる被災者向け優良賃貸住宅の区分に応じそれぞれ次に定める償却割合を乗じて計算した金額とする。 イ 被災者向け優良賃貸住宅のうち、その新築の時における耐用年数が35年未満であるもの 100 分の40(平成31年4月1日以後に取得又は新築をしたものについては、100分の20) ロ 被災者向け優良賃貸住宅のうち、その新築の時における耐用年数が35 年以上であるもの 100分の56(平成31年4月1日以後に取得又は新築をしたものについては、100分の28) ② 確定申告書等に添付すべき書類に、被災者向け優良賃貸住宅の所在地を管轄する市町村長のその被災者向け優良賃貸住宅の所在地が復興居住区域でない旨を証する書類を加える。 |
▶事業所得等関係 | ||
■ | 年の中途で業務の用に供した減価償却資産等の償却費の特例(所令132) | 月割計算を行う資産の対象に営業権が含められた。 |
■ | エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(環境関連投資促進税制)(措法10の2) | 適用除外となる電気事業法の電気事業の用に供した場合につき、同法の発電事業者に該当する個人のうち、同法の小売電気事業者、一般送配電事業者、送電事業者又は特定送配電事業者のいずれかに該当するもの等が発電の用に供した場合とされた。 |
■ | 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(中小企業投資促進税制)(措法10の3) | 特定生産性向上設備等についてその取得価額から普通償却額を控除した金額までの特別償却(即時償却)とその取得価額の100分の10相当額の税額控除との選択適用ができる措置を廃止する等の見直しが行われた上、その適用期限が2年延長された。 |
■ | 地域経済牽(けん)引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(地域中核企業向け設備投資促進税制)(措法10の4) | 青色申告書を提出する個人で地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律の承認地域経済牽引事業者であるものが、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律の施行の日(平成29年7月31日)から平成31年3月31日までの間に、その個人の行う承認地域経済牽引事業に係る促進区域内においてその承認地域経済牽引事業に係る承認地域経済牽引事業計画に従って特定地域経済牽引事業施設等の新設又は増設をする場合において、その新設又は増設に係る特定地域経済牽引事業施設等を構成する機械装置、器具備品、建物等及び構築物の取得等をして、その承認地域経済牽引事業の用に供したときは、その取得価額(その特定事業用機械等に係る一の特定地域経済牽引事業施設等を構成する機械等の取得価額の合計額が100億円を超える場合には、100億円にその特定事業用機械等の取得価額がその合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額)の100分の40(建物等及び構築物については、100分の20)相当額の特別償却とその取得価額の100分の4(建物等及び構築物については、100分の2)相当額の税額控除(適用年分の税額の100分の20相当額を限度とします。)との選択適用ができることとされた。 |
■ | 地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(措法10の4の2) | 平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に地方活力向上地域特定業務施設整備計画の認定を受けた個人が取得等をした特定建物等の税額控除額をその取得価額の100分の4(その認定地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、100分の7)相当額とされ、これまでの税額控除割合を維持することとされた。 |
■ | 特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(措法10の5の2) | 税額控除額については、本制度、「中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度」及び「特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度」の税額控除措置と合計して適用年分の税額の100分の20相当額を限度とされた上、その適用期限が2年延長された。 |
■ | 特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(措法10の5の3) | 特定中小事業者(中小事業者で青色申告書を提出する個人のうち、中小企業等経営強化法の認定を受けた同法に規定する中小企業者等に該当するものをいう)が、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物附属設備及び一定のソフトウエアで、経営力向上設備等に該当するもののうち一定の規模のものの取得等をして、その特定中小事業者の営む事業の用に供した場合には、その取得価額から普通償却額を控除した金額までの特別償却(即時償却)とその取得価額の100分の10相当額の税額控除との選択適用ができることとされた。 なお、税額控除額については、本制度、「中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度」及び「特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度」の税額控除措置と合計して適用年分の税額の100分の20相当額を限度とし、繰越税額控除限度超過額については1年間の繰越しができることとされた。 |
■ | 試験研究を行った場合の所得税額の特別控除制度(措法10)等 | 当初申告の確定申告書等に適用金額を記載した場合等に限り適用を受けることができる制度のうち税額の一定額を上限とする措置について、納税者の立証すべき事項及び当初申告の要否が明確化され、要件を満たす場合には税額控除額を変更できることが明らかにされた。 |
■ | 特定設備等の特別償却(措法11) | ① 公害防止用設備に係る措置について、取得価額要件を600万円以上に引き上げた上、その適用期限が2年延長された。 ② 船舶に係る措置について、電気推進船に準ずる環境性能を有する内航船舶の要件につき、航海支援システムを有することを加えた上、推進効率改良型プロペラ等を有することとの選択とするとともに、環境への負荷の低減に係る要件の見直しを行う等をした上、その適用期限が2年延長された。 |
■ | 自動車教習用貨物自動車の特別償却制度(措法11①三) | 自動車の運転に関する技能及び知識の教授に係る学習支援業を営む中小事業者で道路交通法の指定自動車教習所として指定された自動車教習所を設置するものが、その自動車教習所においてその学習支援業の用に供される車両運搬具のうち貨物を運搬する構造の一定の自動車の取得又は製作をして、その中小事業者の学習支援業の用に供した場合には、その取得価額の100分の20相当額の特別償却ができることとされた。 |
■ | 特定地域における工業用機械等の特別償却制度(措法12) | ① 過疎地域に係る措置について、対象事業につき農林水産物等販売業を加えるとともに、情報通信技術利用事業を除外した上、その適用期限が2年延長された。 ② 沖縄の産業高度化・事業革新促進地域に係る措置、沖縄の国際物流拠点産業集積地域に係る措置、沖縄の経済金融活性化特別地区に係る措置及び沖縄の離島の地域に係る措置の適用期限が2年延長された。 ③ 半島振興対策実施地域に係る措置、離島振興対策実施地域に係る措置、奄美群島に係る措置及び振興山村に係る措置の適用期限が2年延長された。 |
■ | 医療用機器の特別償却制度(措法12の2) | 対象機器の見直しを行った上、適用期限が2年延長された。 |
■ | 事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却制度(措法13の3) | 青色申告書を提出する個人で農業競争力強化支援法の認定事業再編事業者(同法の施行の日(平成29年8月1日)から平成31年3月31日までの間に認定を受けた個人に限る)であるものが、その認定に係る認定事業再編計画に係る実施期間内において、その認定事業再編計画に記載された事業再編促進設備等を構成する機械装置、建物等及び構築物の取得等をして、その事業者の事業再編促進対象事業の用に供した場合には、その事業再編促進機械等につき、5年間、償却費の100分の140(建物等及び構築物については、100分の145)相当額の割増償却ができることとされた。 |
■ | サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却制度(旧措法14) | 所要の経過措置が講じられた上、廃止された(旧措法14)。 |
■ | 特定都市再生建築物等の割増償却制度(措法14) | 適用対象から中心市街地の活性化に関する法律の認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づいて行われる特定民間中心市街地経済活力向上事業により整備される一定の建築物及び構築物に係る措置が除外等された上、その適用期限が2年延長された。 |
■ | 農業経営基盤強化準備金制度(措法24の2) | 適用期限が1年延長された。 |
■ | 肉用牛の売却による農業所得の課税の特例(措法25) | 適用期限が3年延長された。 |
■ | 特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例(措法37、37の4) | 既成市街地等の内から外への買換えについて、譲渡資産から事務所として使用されている建物等又はその敷地の用に供されている土地等を、買換資産から都市再生特別措置法の立地適正化計画を作成した市町村のその立地適正化計画に記載された都市機能誘導区域以外の地域内にあるその立地適正化計画に記載された誘導施設に係る土地等、建物及び構築物を、それぞれ除外する等された上、その適用期限が3年延長された。 |
▶国際課税 | ||
■ | 非永住者の課税所得の範囲(所法7) | 範囲から国外にある有価証券の譲渡により生ずる一定の所得が除外された。 |
■ | 外国税額控除制度(所法95、165の6) | 適用金額の計算の基礎となる控除対象外国所得税の額等を納税者の立証すべき事項として明確化することとされた。 |
■ | 合併等により外国親法人株式の交付を受ける場合の課税の特例(措法37の14の3) | 内国法人の非居住者株主がその内国法人の行った特定株式分配により交付を受ける外国完全子法人株式の価額に相当する金額については、配当等とみなされる部分の金額を除き、一般株式等に係る譲渡所得等又は上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税することとされた。 |
▶その他 | ||
■ | 配当所得(所法24)等 | 株式分配が配当所得の対象となる剰余金の配当又は利益の配当から除外された上、法人の株主等が適格株式分配に該当しない株式分配により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭その他の資産の価額の合計額がその法人の資本金等の額のうちその交付の基因となったその法人の株式等に対応する部分の金額を超える場合におけるその超える部分の金額は、配当等とみなす等の措置が講じられた。 |
■ | 納税地の変更に関する届出書(所法16)等 | 以下の届出書について、税務署長への提出が不要とされた。 ① 納税地の変更に関する届出書 その変更後の納税地の所轄税務署長 ② 納税地の異動に関する届出書 その異動後の納税地の所轄税務署長 ③ 個人事業の開業・廃業等届出書 その個人の納税地の所轄税務署長(その個人が、事業に係る事務所等を移転した場合で、その移転前の事務所等の所在地を納税地としていたときは、その移転前の納税地の所轄税務署長)以外の税務署長 ④ 給与支払事務所等の移転届出書 その移転後の給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長 |
■ | 退職所得控除額に係る勤続年数の計算(所令69) | 確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金に係る退職所得控除額の計算の基礎となる組合員等であった期間に、他制度から移換を受けた資産等の額の算定の基礎となった期間のうち、企業型(個人型)年金加入者期間に準ずる一定の期間が加えられた。 |
■ | 譲渡制限付株式の価額等(所令84) | 収入金額とすべき経済的な利益の価額が譲渡についての制限が解除された日における価額とされる特定譲渡制限付株式及び承継譲渡制限付株式の範囲に、役務提供を受けた法人以外の法人が交付する一定の株式を加えることとされた。 |
■ | 有価証券の取得価額(所令109~117) | 法人の行った株式分配(その法人の株主等に対して、完全子法人の株式又は出資のみが、現物分配法人の各株主等の有するその現物分配法人の発行済株式等の数又は金額の割合に応じて交付されたものに限る)により取得した当該完全子法人の株式又は出資の取得価額の計算方法を定めることとされた。 |
■ | 医療費控除(所法73) | 適用を受ける者は、医療費の明細書又は医療保険者等の医療費通知書を確定申告書の提出の際に添付しなければならないこととされた。 この場合、税務署長は、その適用を受ける者に対し、確定申告期限等から5年間、当該明細書に係る医療費の領収書(次に掲げるものを除く)の提示又は提出を求めることができることとし、当該求めがあったときは、その適用を受ける者は、当該領収書の提示又は提出をしなければならないこととされた。 ① 確定申告書の提出の際に、医療保険者等の医療費通知書を添付した場合における当該医療費通知書に係る医療費の領収書 ② 電子情報処理組織を使用して確定申告を行った際に、医療保険者等から通知を受けた医療費通知情報でその医療保険者等の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを送信した場合における当該医療費通知情報に係る医療費の領収書 なお、この改正は、平成29年分以後の確定申告書を平成30年1月1日以後に提出する場合について適用され、平成29年分から平成31年分までの確定申告については、改正前の医療費の領収書の添付又は提示による医療費控除の適用もできることとされた。 (注)セルフメディケーション税制(措法41の17の2)の適用を受ける者についても、医療保険者等の医療費通知書に関する事項を除き、上記と同様の改正が行われた。 |
■ | 一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例(措法37の10)及び上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例(措法37の11) | 法人の株主等がその法人の行った株式分配(その法人の株主等に対して、完全子法人の株式又は出資のみが、現物分配法人の各株主等の有するその現物分配法人の発行済株式等の数又は金額の割合に応じて交付されたものを除く)により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額については、配当等とみなされる部分の金額を除き、一般株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額又は上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税することとされた。 |
■ | 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例(措法37の11の3) | 特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、法人が行った株式分配(その法人の株主等に対して、完全子法人の株式又は出資のみが、現物分配法人の各株主等の有するその現物分配法人の発行済株式等の数又は金額の割合に応じて交付されたものに限る)により取得する完全子法人の株式又は出資が加えられた。 |
■ | 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税(措法40) | 特例の対象となる贈与等の範囲について、公益社団法人、公益財団法人、私立大学等を設置する学校法人以外の一定の学校法人又は社会福祉法人に対する一定の贈与等を加え、贈与等を受けた財産が一定の株式等である贈与等が除外された。 |
■ | 公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除(措法41の18の3) | 適用対象となる社会福祉法人が閲覧対象とすべき書類の範囲に、事業の概要等を記載した書類等が加えられた。 |
Check | 平成26年度の改正事項のうち、平成29年分の所得税から適用される主なもの | |
■ | 給与所得控除(所法28) | 給与収入1,000万円を超える場合の給与所得控除額が220万円に引き下げられた。 |
Check | 平成26年度及び平成27年度の改正事項のうち、平成29年分の所得税から適用される主なもの | |
■ | 非永住者の課税所得の範囲(所法7①) | 非永住者の課税所得の範囲を、国外源泉所得以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたものとされた。 |
■ | 国内源泉所得(所法161) | 平成26年度税制改正前の国内において行う事業から生ずる所得に代えて恒久的施設帰属所得を国内源泉所得の一つとする。 |
■ | 非居住者に対する課税の方法(所法164) | 非居住者に対して課する所得税の額は、非居住者の有する国内源泉所得の種類に応じて、①居住者の課税標準及び所得税の額の計算に準じて計算した金額及び②他の所得と分離してその国内源泉所得に一定の税率を乗じて計算した金額とする。 |
■ | 総合課税に係る所得税の額の計算(所法164①、165) | 非居住者の総合課税に係る所得税の額の計算は、次に掲げる非居住者の区分に応じそれぞれ次に定める国内源泉所得について、居住者に係る所得税の課税標準、税額等の計算の規定に準じて計算した金額とする。 (1)恒久的施設を有する非居住者 次に掲げる国内源泉所得 ① 恒久的施設帰属所得 ② 総合課税の対象となる国内源泉所得(①を除く。) (2)恒久的施設を有しない非居住者 総合課税の対象となる国内源泉所得 |
■ | 恒久的施設に帰せられるべき純資産に対応する負債の利子の必要経費不算入(所法165の3) | 非居住者の恒久的施設に係る純資産の額が、恒久的施設に帰せられるべき純資産の額に満たない場合には、恒久的施設を通じて行う事業に係る負債の利子のうち、その満たない金額に対応する部分の金額は、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。 |
■ | 配賦経費に関する書類の保存がない場合における配賦経費の必要経費不算入(所法165の5) | 非居住者の配賦経費につき、その配分の基礎となる書類の保存がない場合には、その書類の保存がなかった配賦経費については、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。 |
■ | 非居住者に係る外国税額の控除(所法165の6) | 非居住者が外国所得税を納付することとなる場合には、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額に係る所得税の額のうち国外所得金額に対応する金額を限度として、その外国所得税の額をその年の所得税の額から控除する。 |
■ | 恒久的施設に係る取引に係る文書化(所法166の2) | 恒久的施設帰属所得を有する非居住者は、当該非居住者が他の者との間で行った取引で当該取引から生ずる所得が当該非居住者の恒久的施設に帰せられるものに係る明細を記載した書類及び非居住者の事業場等と恒久的施設との間の内部取引に係る明細を記載した書類を作成しなければならない。 |
■ | 租税回避の防止(所法168の2) | 非居住者の行為又は計算で、これを容認した場合には所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、恒久的施設帰属所得に係る所得に対する所得税の課税標準、税額等を計算することができる。 |
Check | 平成28年度の改正事項のうち、平成29年分の所得税等から適用される主なもの | |
▶事業所得等関係 | ||
■ | 特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度(雇用促進税制)(措法10の5) | 地方活力向上地域特定業務施設整備計画に係る措置以外の措置について、税額控除額の計算の基礎となる基準雇用者数を地域雇用開発促進法の同意雇用開発促進地域内に所在する事業者の事業所において新たに雇用され、その年の12月31日においてその事業所に勤務する一定の要件を満たす雇用者の数とした上、その適用期限が2年延長された。 なお、特定地域基準雇用者数は、その事業所のみをその事業者の事業所とみなした場合における基準雇用者数及びその事業者の基準雇用者数が上限とされている。 |
■ | 雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除制度(所得拡大促進税制)(措法10の5の3) | 特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度の適用を受ける年分においても適用できることとされた。 なお、その年において特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度の適用を受ける場合には、控除の対象となる雇用者給与等支給増加額から特定地域基準雇用者数、地方事業所基準雇用者数及び地方事業所特別基準雇用者数の算定の基礎となった者に対する給与等の支給額を控除することとされている。 |
■ | 金属鉱業等鉱害防止準備金制度(措法20) | 積立限度額を独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構に鉱害防止積立金として積み立てた金額の100分の80相当額に引き下げた上、その適用期限が2年延長された。 |
■ | 特定災害防止準備金制度(措法20の2) | 積立限度額は、独立行政法人環境再生保全機構に維持管理積立金として積み立てた金額のうち廃棄物の処理及び清掃に関する法律の通知する額に相当する金額であることを明確化した上、その適用期限が2年延長された。 |
■ | 探鉱準備金制度(措法22) | 前年から繰り越された準備金の金額がある場合における総収入金額に算入する準備金の金額は、積立てをした年の翌年1月1日から5年(改正前:3年)を経過した準備金の金額とされた上、その適用期限が3年延長された。 |
▶その他 | ||
■ | セルフメディケーション税制(措法41の17の2) | 医療保険各法等の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高い一般用医薬品等の使用を推進する観点から、居住者が平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定一般用医薬品等購入費を支払った場合において当該居住者がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行っているときにおけるその年分の医療費控除については、その者の選択により、その年中に支払った特定一般用医薬品等購入費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補填される部分の金額を除く)の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(8万8千円を限度)を、控除額とすることができることとされた。 |
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