解説記事2018年04月02日 【SCOPE】 土地周辺の路線地設定で固定資産税の評価ミス(2018年4月2日号・№733)
過納付額約1,450万円の賠償を都に命じる
土地周辺の路線地設定で固定資産税の評価ミス
固定資産の評価ミスをめぐり、土地の所有者である納税者が東京都に対して損害賠償を求めていた事件で東京地裁は平成29年1月30日、東京都担当職員の注意義務違反を認めたうえで、過大納付額約1,450万円の損害賠償を東京都に対して命じる判決を下した(確定済み)。問題となった本件土地について東京都(都税事務所長)は、本件土地の四方(東西南北)すべてに路線価があることを前提とした固定資産評価を行っていた。これに対し地裁は、本件土地が沿接する南側区有地にY通りの道路区域設定がなく、本件土地がY通りに沿接していないことは調査により容易に認識できたと指摘。また、東側区有地(区道)が客観的に道路と認められる形態を有していないことは実地調査により容易に認識できたなどと指摘し、東京都担当職員の注意義務違反を認めた。
南側が沿接道か否か、東側に路線価を付すべきか否かが問題に
固定資産評価額が問題となった本件土地(法人である納税者の事務所が所在)は、北側に区道、東側に区有地及び無番地区道(以下「A部分」)、そのさらに東側に区道(以下「B部分」)、南側に区有地(その9m上にはY通りが存在)、西側にX通りが沿接していた(図参照)。
本件土地に対し東京都は、平成6年度分から平成19年度分までの固定資産税等について南側に沿接する土地を南側区有地からY通りに変更し、正面路線価をY通りとしたうえで、本件土地を「四方において路線に接する画地」(四方路線地)に該当するとして固定資産評価額を決定していた。これに対し本件土地の所有者である納税者は、本件土地の平成24年度の固定資産課税台帳に登録された価格について、本件土地は高低差のあるY通りではなく西側のX通りを正面路線価として価格を決定するのが妥当である旨の審査申出を行った。その後、調査を経て東京都は、本件土地について「従来、本件土地はY通りを正面路線として評価していたが、調査の結果、Y通りに面していないことが判明したため、X通り側を正面路線価として評価する。」としたうえで、納税者に対して平成20年度分から平成23年度分までの固定資産税等を還付した。納税者は、東京都が平成19年度分以前の還付に応じなかったことから、東京都担当職員らが本件土地を過大に評価した違法により固定資産税等を過大に納付させられたと主張し、国賠法1条1項に基づき平成19年度分以前の過納付額約1,450万円の損害賠償等を請求する訴訟を提起した。
地裁、担当職員の注意義務違反を認める 東京地裁はまず、東京都担当職員が評価資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と認定、判断したと認め得るような事情のある限り、国賠法1条1項にいう違法があったものとの評価を受けるという判断基準を示した。
そして本件土地の南側について地裁は、沿接する区有地にY通りの道路区域設定がなく、本件土地がY通りに沿接していないことは平成6年度の賦課処分の段階において現地で公図等の図面資料も参照しながら確認さえすれば容易に認識できたと指摘。東京都担当職員が本件土地の南側がY通りに沿接するとして本件土地を評価し、賦課処分を行う際に職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と認定し、判断したと言わざるを得ないとした。
客観的に道路と認められる形態は有せず また東側区有地(A部分)に路線価を付設したことについて地裁は、東側区有地はその東側の区道と合わせて特別区道としての供用が開始されたものの、①A部分とB部分(区道)との間には金網が設けられて南部分で約2mの段差があること、②B部分には複数の自転車が駐輪されているものの人の通行は可能である一方で、東側区有地を含むA部分の南端は行き止まりとなっていること、③A部分には道路法3条の道路での禁止行為とされている交通の妨げとなる町内会の物置があり、占有許可がとられたような形跡は認められないことを認定。この点を踏まえ地裁は、A部分が人の通行を想定しているとはいえないため、A部分が客観的に道路と認められる形態を有するものとは認められないとした。
そのうえで地裁は、東側区有地の客観的状況は実地調査を行えば容易に認識し得たと指摘。東京都が本件土地の実地調査を行った結果に基づいて東側区有地について客観的に道路と認められる形態を有するかどうかの検討をした証拠がないことから、東京都担当職員には東側区有地について客観的に道路と認める形態を有しないのに漫然と路線価を付設し、本件土地を評価した結果に基づき賦課処分をしたことについて職務上の注意義務違反があると判断した。
以上を踏まえ地裁は、納税者に過失は認められないという判断も示したうえで、東京都に対して過納付相当額約1,450万円の損害賠償を命じた。
土地周辺の路線地設定で固定資産税の評価ミス
固定資産の評価ミスをめぐり、土地の所有者である納税者が東京都に対して損害賠償を求めていた事件で東京地裁は平成29年1月30日、東京都担当職員の注意義務違反を認めたうえで、過大納付額約1,450万円の損害賠償を東京都に対して命じる判決を下した(確定済み)。問題となった本件土地について東京都(都税事務所長)は、本件土地の四方(東西南北)すべてに路線価があることを前提とした固定資産評価を行っていた。これに対し地裁は、本件土地が沿接する南側区有地にY通りの道路区域設定がなく、本件土地がY通りに沿接していないことは調査により容易に認識できたと指摘。また、東側区有地(区道)が客観的に道路と認められる形態を有していないことは実地調査により容易に認識できたなどと指摘し、東京都担当職員の注意義務違反を認めた。
南側が沿接道か否か、東側に路線価を付すべきか否かが問題に
固定資産評価額が問題となった本件土地(法人である納税者の事務所が所在)は、北側に区道、東側に区有地及び無番地区道(以下「A部分」)、そのさらに東側に区道(以下「B部分」)、南側に区有地(その9m上にはY通りが存在)、西側にX通りが沿接していた(図参照)。

本件土地に対し東京都は、平成6年度分から平成19年度分までの固定資産税等について南側に沿接する土地を南側区有地からY通りに変更し、正面路線価をY通りとしたうえで、本件土地を「四方において路線に接する画地」(四方路線地)に該当するとして固定資産評価額を決定していた。これに対し本件土地の所有者である納税者は、本件土地の平成24年度の固定資産課税台帳に登録された価格について、本件土地は高低差のあるY通りではなく西側のX通りを正面路線価として価格を決定するのが妥当である旨の審査申出を行った。その後、調査を経て東京都は、本件土地について「従来、本件土地はY通りを正面路線として評価していたが、調査の結果、Y通りに面していないことが判明したため、X通り側を正面路線価として評価する。」としたうえで、納税者に対して平成20年度分から平成23年度分までの固定資産税等を還付した。納税者は、東京都が平成19年度分以前の還付に応じなかったことから、東京都担当職員らが本件土地を過大に評価した違法により固定資産税等を過大に納付させられたと主張し、国賠法1条1項に基づき平成19年度分以前の過納付額約1,450万円の損害賠償等を請求する訴訟を提起した。
地裁、担当職員の注意義務違反を認める 東京地裁はまず、東京都担当職員が評価資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と認定、判断したと認め得るような事情のある限り、国賠法1条1項にいう違法があったものとの評価を受けるという判断基準を示した。
そして本件土地の南側について地裁は、沿接する区有地にY通りの道路区域設定がなく、本件土地がY通りに沿接していないことは平成6年度の賦課処分の段階において現地で公図等の図面資料も参照しながら確認さえすれば容易に認識できたと指摘。東京都担当職員が本件土地の南側がY通りに沿接するとして本件土地を評価し、賦課処分を行う際に職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と認定し、判断したと言わざるを得ないとした。
客観的に道路と認められる形態は有せず また東側区有地(A部分)に路線価を付設したことについて地裁は、東側区有地はその東側の区道と合わせて特別区道としての供用が開始されたものの、①A部分とB部分(区道)との間には金網が設けられて南部分で約2mの段差があること、②B部分には複数の自転車が駐輪されているものの人の通行は可能である一方で、東側区有地を含むA部分の南端は行き止まりとなっていること、③A部分には道路法3条の道路での禁止行為とされている交通の妨げとなる町内会の物置があり、占有許可がとられたような形跡は認められないことを認定。この点を踏まえ地裁は、A部分が人の通行を想定しているとはいえないため、A部分が客観的に道路と認められる形態を有するものとは認められないとした。
そのうえで地裁は、東側区有地の客観的状況は実地調査を行えば容易に認識し得たと指摘。東京都が本件土地の実地調査を行った結果に基づいて東側区有地について客観的に道路と認められる形態を有するかどうかの検討をした証拠がないことから、東京都担当職員には東側区有地について客観的に道路と認める形態を有しないのに漫然と路線価を付設し、本件土地を評価した結果に基づき賦課処分をしたことについて職務上の注意義務違反があると判断した。
以上を踏まえ地裁は、納税者に過失は認められないという判断も示したうえで、東京都に対して過納付相当額約1,450万円の損害賠償を命じた。
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