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解説記事2018年06月25日 【税制改正解説】 平成30年度における国際課税関係の改正について(2018年6月25日号・№744)

税制改正解説
平成30年度における国際課税関係の改正について
 宇山裕人

 国際課税制度においては、従来、国際的二重課税の調整が重視されてきたが、経済のグローバル化が進展する中、近年、一部の多国籍企業グループが各国の税制の隙間や抜け穴を利用して租税回避を行っているとの批判が高まり、二重非課税への対応が重要な課題となっている。国際的な租税回避等に対応し、公平な競争条件をグローバルに整えるためには、国際社会が協調し、世界経済及び企業行動の実態を踏まえた国際課税ルールの再構築に取り組む必要がある。
 このような問題意識により、多国間協調による国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(BaseErosionandProfitShifting:税源浸食・利益移転)に対応することを目指したOECD・G20「BEPSプロジェクト」は、15の行動計画を含む最終報告書を平成27年(2015年)10月に公表した。その取りまとめに当たり主導的役割を果たした我が国としては、引き続き、日本企業の健全な海外展開を支えつつ国際的租税回避に効果的に対応するため、変化する経済実態や諸外国における取組も踏まえながら、BEPSプロジェクトにおける国際合意に則った制度整備を着実に進めていく必要がある。BEPSの合意事項の着実な実施については、平成28年のG7伊勢志摩サミットの首脳宣言など、G7・G20などの国際会議において継続的にその重要性が確認されている。
 また、BEPSプロジェクトにおいて策定されたBEPS防止措置のうち租税条約に関連する措置を既存の租税条約に導入することを目的とした、税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約(以下「BEPS防止措置実施条約」という。)が合意され、我が国も、平成29年6月7日にこれに署名した。
 こうした背景の下、平成30年度税制改正において、BEPSプロジェクトの最終報告書(行動7「恒久的施設認定の人為的回避の防止(PreventingtheArtificialAvoidanceofPermanentEstablishmentStatus)」)、これにより改訂されたOECDモデル租税条約及びBEPS防止措置実施条約の規定を踏まえ、国内税法における恒久的施設(PE;PermanentEstablishment)の規定について、これらの国際的なスタンダードに合わせるなどの改正が行われた。
 具体的には、PE認定の人為的回避を防止するための措置として、従来、PE認定の例外とされてきた企業が資産の保管などの特定の活動のみを行う場所について、その特定の活動が、その企業にとって準備的・補助的な活動に該当しない場合には、PE認定の例外としないこととする等の見直しが行われた。
 また、PEの定義について、租税条約において国内法上の規定と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については、租税条約上のPEを国内法上のPEとする旨の調整規定が整備された。
 平成30年度税制改正においては、そのほか、国際課税関係では主に次のような改正が行われた。
 第一に、外国子会社合算税制について、企業が買収等によって取得した外国企業の傘下に存在するペーパー・カンパニー等を整理するに当たって生ずる一定の譲渡所得を合算対象としないこととする見直しが行われたほか、外国金融子会社等の要件等について、金融機関の事業の実態を踏まえた見直しが行われた。
 第二に、集団投資信託等及び特定目的会社等の収益の分配等に係る内外二重課税の調整に関し、支払の取扱者が交付する収益の分配等について、収益の分配等の交付時における源泉所得税の額からその集団投資信託の信託財産等について納付された外国所得税等を控除する方法により二重課税調整を行うこととされたことに伴い、二重課税調整を申告時に適切に精算するための仕組みとして、外国所得税等を控除した後の実際納付額を源泉徴収税額とした上で、分配時調整外国税相当額の控除制度を創設する等の対応が行われた。
 第三に、BEPS防止措置実施条約等の実施に係る国内法の整備として、不動産関連法人の株式等譲渡益課税における、不動産関連法人の判定時期について、譲渡に先立つ365日の期間のいずれかの時点に見直す等の整備が行われた。
 第四に、租税条約等に基づく情報交換の実施に係る国内法の整備として、租税条約等における提供済情報の外国当局による利用範囲を明確化するとともに、その利用に係る同意の要件・手続を整備する等の対応が行われた。

1 恒久的施設関連規定の改正
(1)恒久的施設の定義の見直し
① 恒久的施設認定の人為的回避防止措置の導入
 イ コミッショネア契約等を通じた恒久的施設認定の人為的回避防止措置
(イ)従属代理人の範囲の見直し
 恒久的施設とされる従属代理人とは、国内において非居住者又は外国法人(以下「非居住者等」という。)に代わって、その事業に関し、反復して一定の契約の締結等をする者をいうこととされた(所令1の2⑦、法令4の4⑦)。
(ロ)独立代理人の範囲の見直し
 独立代理人の範囲から、専ら又は主として一又は二以上の自己と特殊の関係にある者に代わって行動する者が除外された(所令1の2⑧、法令4の4⑧)。
 ロ 特定活動の除外を通じた恒久的施設認定の人為的回避防止措置
(イ)恒久的施設を有するとはされない活動の範囲の見直し
 非居住者等が特定の活動のみを行う場所は、その活動がその事業の遂行にとって準備的又は補助的な性格のものである場合に限り、恒久的施設とされる支店等に含まれないものとされた(所令1の2④、法令4の4④)。
(ロ)事業活動の細分化を通じた恒久的施設認定の人為的回避防止措置の創設
 上記(イ)の取扱いは、事業を行う一定の場所を使用し、又は保有する非居住者等がその事業を行う一定の場所において事業上の活動を行う場合において、その非居住者等がその事業を行う他の場所がその非居住者等の恒久的施設に該当するとき(これらの場所において行う事業上の活動が一体的な業務の一部として補完的な機能を果たすときに限る。)等の一定の要件に該当するときは、その事業を行う一定の場所については、適用しないこととされた(所令1の2⑤、法令4の4⑤)。
(注)非居住者等が恒久的施設とされる長期建設工事現場等又は従属代理人を有する場合についても、上記と同様の措置が講じられている(所令1の2④⑥⑦、法令4の4④⑥⑦)。
 ハ 契約分割を通じた恒久的施設認定の人為的回避防止措置
  恒久的施設とされる長期建設工事現場等の期間要件について、契約を分割して建設工事等の期間を1年以下とすることにより恒久的施設とされる長期建設工事現場等を構成しないことがその契約の分割の主たる目的の一つであった場合には、分割された期間を合計して判定を行うことされた(所令1の2③、法令4の4③)。
(注)外国居住者等所得相互免除法上の国内事業所等とされる長期建設工事現場等についても、上記と同趣旨の人為的回避防止措置が創設された(外国居住者等所得相互免除令4③)。
② 租税条約上の恒久的施設の定義と異なる場合の調整規定の整備等
 イ 租税条約上の恒久的施設の定義と異なる場合の調整規定の整備
  我が国が締結した租税条約において、国内法上の恒久的施設と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については、その租税条約上の恒久的施設を国内法上の恒久的施設とすることとされた(所法2①八の四ただし書、法法2十二の十九ただし書)。
(注)外国居住者等所得相互免除法上の国内事業所等についても、上記と同趣旨の調整規定が整備された(外国居住者等所得相互免除法4の2)。
 ロ その他の改正
(イ)恒久的施設とされる支店等の範囲の見直し
  恒久的施設とされる支店等の範囲を、国内にある支店等、天然資源を採取する場所その他事業を行う一定の場所に見直すこととされた(所令1の2①、法令4の4①)。
(ロ)恒久的施設とされる長期建設工事現場等の範囲の見直し
  恒久的施設とされる長期建設工事現場等の範囲を、国内にある長期建設工事等を行う場所等に限定することとされた(所法2①八の四ロ、所令1の2②、法法2十二の十九ロ、法令4の4②)。
(ハ)恒久的施設とされる代理人の範囲の見直し
  恒久的施設とされる代理人について、その範囲から在庫保有代理人及び注文取得代理人を除外するとともに、従属代理人の範囲から同業者代理人を除外する措置を廃止することとされた(旧所令1の2③各号、旧法令4の4③各号)。
(2)恒久的施設の定義の見直しに伴う所要の改正 ① 外国組合員に対する課税の特例の改組
 外国組合員に対する課税の特例について、恒久的施設帰属所得に対する所得税及び法人税を非課税とする措置に改組された(措法41の21①~③⑪、67の16①~③⑤、措令26の30⑩⑱⑲、39の33①⑤⑥、措規19の12⑭、22の19の2②)。
② その他の改正
 上記①のほか、上記(1)の恒久的施設の定義の見直しに伴い、所得税法・法人税法の恒久的施設関連規定について、所要の整備が行われた(所令225の2②、225の5、279、282、304二、法令145の2②、145の5、176、179)。
(3)適用関係 ① 上記(1)の改正は、非居住者の所得税に関しては、平成31年分以後の所得税又は同年1月1日以後に支払を受けるべき国内源泉所得について適用し、平成30年分以前の所得税又は同日前に支払を受けるべき国内源泉所得については従前どおり(改正法附則3①)。
② 上記(1)の改正は、外国法人の所得税に関しては、平成31年1月1日以後に開始する事業年度において支払を受けるべき外国法人課税所得について適用し、同日前に開始した事業年度において支払を受けるべき外国法人課税所得については従前どおり(改正法附則3②)。
③ 上記(1)の改正は、外国法人の法人税に関しては、外国法人の平成31年1月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用し、外国法人の同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については従前どおり(改正法附則21①)。
④ 上記(2)①の改正は、所得税の特例に関しては、外国組合員である非居住者が平成31年以後の各年において有することとなる国内源泉所得又は外国組合員である外国法人が同年1月1日以後に開始する事業年度において支払を受けるべき国内源泉所得について適用し、外国組合員である非居住者が平成30年以前の各年において有することとなった国内源泉所得又は外国組合員である外国法人が同日前に開始した事業年度において支払を受けるべき国内源泉所得については従前どおり(改正法附則84①)。
⑤ 上記(2)①の改正は、法人税の特例に関しては、外国組合員である外国法人が平成31年1月1日以後に開始する事業年度において有することとなる国内源泉所得について適用し、外国組合員である外国法人が同日前に開始した事業年度において有することとなった国内源泉所得については従前どおり(改正法附則100①)。
⑥ 上記(2)②の改正は、平成31年分以後の所得税又は同年1月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用し、平成30年分以前の所得税又は同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については従前どおり(改正法附則3①、21①、改正所令附則15、16、改正法令附則16、17)。

2 外国関係会社に係る所得等の課税の特例の改正  内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)について、次の改正が行われた。なお、居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例及び連結法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例についても同趣旨の改正が行われた。
(1)外国関係会社  外国金融機関に該当する外国法人で外国金融持株会社等との間に、その外国金融持株会社等がその外国法人の経営管理を行っている関係その他の特殊の関係がある外国法人が外国関係会社の範囲に追加された(措法66の6②一ハ、措令39の14の2⑤)。
(2)会社単位の合算課税制度 ① 特定外国関係会社
 清算外国金融子会社等に該当する外国法人の特定清算事業年度における事実上のキャッシュ・ボックスに該当するかどうかの判定について、特定金融所得金額がないものとして計算することとされた(措法66の6②二ロ)。
② 対象外国関係会社
 株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社のうち、一定の外国金融持株会社について、事業基準を満たすこととされた(措法66の6②三イ(2))。
③ 適用対象金額
 適用対象金額について、一定の外国関係会社が行う特定部分対象外国関係会社株式等の特定譲渡に係る譲渡利益額を控除することとされた(措令39の15①五②十八、措規22の11⑤⑥)。
(3)部分合算課税制度 ① 特定所得の金額
 イ 受取利子等
(イ)経済的な性質が利子に準ずるものの範囲から、一定の金利スワップ等に係る損益の額を除外することとされた(措令39の17の3⑨、措規22の11⑪)。
(ロ)部分合算課税の対象から除外することとされる一定のグループファイナンスに係る利子について、その対象となる関連者等の範囲から個人を除外することとされた(措令39の17の3⑩二)。
 ロ 固定資産の貸付けによる対価
 固定資産の貸付けによる対価の額について、その貸付けの範囲に不動産又は不動産の上に存する権利を使用させる行為を含むこととされた(措法66の6⑥⑦、措令39の17の3⑱)。
② 清算外国金融子会社等の扱い
 解散により外国金融子会社等に該当しないこととなった部分対象外国関係会社(清算外国金融子会社等)の特定清算事業年度について、特定金融所得金額がないものとして、特定所得の金額及び部分適用対象金額を計算することとされた(措法66の6⑥⑦、措令39の17の3①② )。
(4)外国金融子会社等に係る合算課税制度 ① 外国金融子会社等
 イ 外国金融機関
  英国ロイズ市場において、現地の法令に従って設立された保険引受子会社と管理運営子会社が一体となって保険業を営む場合には、これらを一体として外国金融子会社等の該当要件の判定を行うこととされた。また、英国ロイズ市場以外で、保険委託者と保険受託者を別会社とした上で、現地の法令に従って、これらが一体となって保険業を営む場合も同様とすることとされた(措法66の6②七、措令39の17①②)。
 ロ 外国金融持株会社等
  外国金融子会社等に該当する一定の外国金融持株会社の要件について、進出先国の出資規制により発行済株式等の50%超を保有することが認められない外国金融機関の経営管理を行っている場合、中間持株会社を通じて外国金融機関の株式等を保有する場合、金融業に付随・関連する業務を行う外国関係会社の株式等を保有する場合等に対応した要件の見直しが行われた(措令39の17③⑧⑨)。
② 特定所得の金額
 異常な水準の資本に係る所得の課税の対象となる部分対象外国関係会社に関する「一の内国法人によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている部分対象外国関係会社である」旨の要件について、「一の内国法人及びその一の内国法人との間に特定資本関係のある内国法人によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている部分対象外国関係会社である」旨の要件に見直すこととされた(措法66の6⑧一、措令39の17の4②~⑤)。
(5)租税負担割合の計算  無税国に所在する外国関係会社の租税負担割合は、その外国関係会社に係る各事業年度の租税の額(本店所在地国以外の国において課される外国法人税の額)の所得の金額(決算に基づく所得の金額を基に、税法令がある国に所在する外国関係会社の租税負担割合の計算における調整と同様の調整を加えて計算した額)に対する割合とすることとされた(措令39の17の2②)。
(6)二重課税調整  内国法人が合算課税の適用を受ける場合に、その外国関係会社に対して課された所得税、法人税、復興特別所得税、地方法人税及び法人住民税(改正前:所得税、法人税及び復興特別所得税)の額の合計額のうち合算対象とされた金額に対応する部分に相当する金額をその内国法人の法人税及び地方法人税(改正前:法人税)の額から控除することとされた(措法66の7④⑦~⑬、措令39の18⑲)。
(7)特殊関係株主等である内国法人等に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例(コーポレート・インバージョン対策合算税制)の改正  特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例について、外国子会社合算税制と同様の改正が行われた(措法66の9の2、66の9の3、措令39の20の2~39の20の5、39の20の7、措規22の11の2)。なお、特殊関係株主等である居住者に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例及び特殊関係株主等である連結法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例についても同趣旨の改正が行われた。
(8)適用関係 ① 上記(1)から(5)までの改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融子会社等部分適用対象金額及びその金融子会社等部分適用対象金額に係る金融子会社等部分課税対象金額について適用し、外国関係会社の同日前に開始した事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融子会社等部分適用対象金額及びその金融子会社等部分適用対象金額に係る金融子会社等部分課税対象金額については従前どおり(改正法附則98①、改正措令附則29②)。
② 上記(6)の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に係る所得税等の額について適用される(改正法附則98②)。
③ 上記(7)の改正は、外国関係法人の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融関係法人部分適用対象金額及びその金融関係法人部分適用対象金額に係る金融関係法人部分課税対象金額について適用し、外国関係法人の同日前に開始した事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融関係法人部分適用対象金額及びその金融関係法人部分適用対象金額に係る金融関係法人部分課税対象金額については従前どおり(改正法附則98⑤)。

3 集団投資信託の収益の分配等に係る二重課税調整の改正
(1)受託者が外国法人である場合
① 集団投資信託の収益の分配の支払を受ける者が確定申告書に記載するその収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除外国所得税の額(その収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除された外国所得税の額に、その収益の分配の額の総額のうちにその者が支払を受けた収益の分配の額の占める割合を乗じて計算した金額)を控除することとされた(所令306の2②)。
② 集団投資信託を引き受けた外国法人は、その集団投資信託の収益の分配の支払を受ける者に対して通知外国所得税の額その他の事項を通知しなければならないこととされた(所令306の2④⑥)。
③ 集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除する外国所得税の額は、その収益の分配に係る源泉徴収所得税の額にその集団投資信託の外貨建資産割合を乗じて計算した金額を限度とすることとされた(所令306の2②)。
④ 受益権投資目的証券投資信託について、その設定に係る受益権の募集を一定の公募により行われたものとする要件が撤廃された(所令306の2①)。
(2)分配時調整外国税相当額の控除制度の創設 ① 所得税関係
 イ 所得税における分配時調整外国税相当額の控除
(イ)居住者が集団投資信託の収益の分配の支払を受ける場合には、その収益の分配に係る分配時調整外国税相当額(その収益の分配に係る外国所得税の額でその収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除された金額のうちその支払を受ける収益の分配に対応する部分の金額に相当する金額をいう。以下(2)において同じ。)は、その年分の所得税の額から控除することとされた(所法93①)。
(ロ)恒久的施設を有する非居住者が集団投資信託の収益の分配の支払を受ける場合(恒久的施設帰属所得に該当するものの支払を受ける場合に限る。)には、その収益の分配に係る分配時調整外国税相当額は、控除限度額を限度として、その年分の所得税の額から控除することとされた(所法165の5の3①)。
 ロ 復興特別所得税における分配時調整外国税相当額の控除
  復興特別所得税申告書を提出する居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、その年分の所得税の額から控除しきれない分配時調整外国税相当額がある場合には、その年分の復興特別所得税の額から控除することとされた(財確法13の2①②)。
② 法人税関係
 イ 法人税における分配時調整外国税相当額の控除
(イ)内国法人が集団投資信託の収益の分配の支払を受ける場合には、その収益の分配に係る分配時調整外国税相当額(一定の集団投資信託の収益の分配に係る分配時調整外国税相当額は、所有期間按分計算をした金額とされる。以下ロまで及び(3)③において同じ。)は、その事業年度の所得に対する法人税の額から控除することとされた(法法69の2①、81の15の2①)。
(ロ)恒久的施設を有する外国法人が集団投資信託の収益の分配の支払を受ける場合(恒久的施設帰属所得に該当するものの支払を受ける場合に限る。)には、その収益の分配に係る分配時調整外国税相当額は、その事業年度の恒久的施設帰属所得に係る所得に対する法人税の額から控除することとされた(法法144の2の2①)。
 ロ 地方法人税における分配時調整外国税相当額の控除
  各課税事業年度の分配時調整外国税相当額が内国法人又は恒久的施設を有する外国法人のその課税事業年度の基準法人税額を超えるときは、その超える金額をその課税事業年度の地方法人税の額から控除することとされた(地法法12の2①~③)。
 ハ 分配時調整外国税相当額の損金不算入制度の創設
  法人が支払を受ける集団投資信託の収益の分配に係る所得税の額に係る分配時調整外国税相当額につき控除を受ける場合には、その分配時調整外国税相当額は損金の額に算入しないこととされた(法法41の2、81の8の2、142の6の2)。
(3)適用関係 ① 上記(1)の改正は、平成32年1月1日以後に支払われる収益の分配について適用し、同日前に支払われた収益の分配については従前どおり(改正所令附則19)。
② 上記(2)①の改正は、平成32年1月1日以後に支払を受ける集団投資信託の収益の分配に係る分配時調整外国税相当額について適用される(改正法附則9、13)。
③ 上記(2)②イ及びロの改正は、平成32年1月1日以後に支払を受ける集団投資信託の収益の分配に係る分配時調整外国税相当額について適用される(改正法附則30、35、40)。
④ 上記(2)②ハの改正は、平成32年1月1日以後に支払を受ける集団投資信託の収益の分配に係る所得税の額に係る分配時調整外国税相当額について適用される(改正法附則23、34、39)。

4 特定目的会社の利益の配当等に係る二重課税調整の改正
(1)利益の配当の支払時における二重課税調整の適正化
 特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収所得税の額にその特定目的会社の外貨建資産割合を乗じて計算した金額を限度として計算した外国法人税の額を、その源泉徴収所得税の額から控除することとされた(措法9の6①、措令4の9①②)。
(2)特定目的会社分配時調整外国税相当額の控除  特定目的会社分配時調整外国税相当額(特定目的会社が納付した外国法人税の額で利益の配当に係る源泉徴収所得税の額から控除された金額のうちその支払を受ける利益の配当に対応する部分の金額に相当する金額をいう。)は、分配時調整外国税相当額の控除制度によりその年分の所得税の額又はその事業年度の所得に対する法人税の額から控除できることとされた(措法9の6③④)。
(3)通知外国法人税相当額の通知制度  特定目的会社は、その特定目的会社の利益の配当の支払を受ける者に対して、その通知外国法人税相当額その他の事項を通知しなければならないこととされた(措令4の9⑪⑬)。
(4)適用関係  上記(1)から(3)までの改正は、平成32年1月1日以後に支払われる特定目的会社の利益の配当等について適用し、同日前に支払われた特定目的会社の利益の配当等の額については従前どおり(改正法附則61、99)。

5 BEPS防止措置実施条約等の実施に係る国内法の整備
(1)不動産関連法人の株式等譲渡益課税の改正(BEPS防止措置実施条約第9条(主として不動産から価値が構成される団体の株式又は持分の譲渡から生ずる収益)等関係)
 不動産関連法人の判定時期を、「株式の譲渡の日から起算して365日前の日からその譲渡の直前の時までの間のいずれかの時」とすることとされた(所令281①五⑧~⑩、法令178①五⑧~⑩)。
(2)租税条約の特典条項に基づく相手国居住者等に係る認定に関する手続等の改正(BEPS防止措置実施条約第10条(第三国内に存在する恒久的施設に関する濫用を防止する規則)等関係) ① 租税条約の特典条項に基づく相手国居住者等に係る認定に関する手続の改正
 相手国居住者等が、国税庁長官から第三国恒久的施設濫用防止ルールにおける権限ある当局による特典の付与に関する規定に基づく認定を受けるための手続の整備等が行われた(認定省令1~4)。
② 特典条項の適用がある租税条約の規定に基づき軽減又は免除を受ける者の手続の改正
 相手国居住者等が、国税庁長官から第三国恒久的施設濫用防止ルールにおける権限ある当局による特典の付与に関する規定に基づく認定を受けた場合の条約適用手続の整備等が行われた(実特規9の2③⑤二、9の3②、9の4②④、9の5②)。
(3)適用関係 ① 上記(1)の改正は、非居住者の平成31年分以後の所得税又は外国法人の平成30年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用し、非居住者の同年分以前の所得税又は外国法人の同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については従前どおり(改正所令附則17、改正法令附則21)。
② 上記(2)の改正は、平成30年4月1日から施行される(改正認定省令附則、改正実特規附則①一)。

6 租税条約等に基づく情報交換の実施に係る国内法の整備
(1)租税条約等における提供済情報の外国当局による利用範囲の明確化及び要件・手続の整備
 租税条約等に基づき提供された情報について情報提供国の権限のある当局の許可等を要件として情報受領国による租税犯罪以外の犯罪の刑事手続での利用を許容するとの租税条約等の規定に対応するなどの観点から、我が国が租税条約等に基づき提供した情報の相手国等の当局による利用範囲を明確化するとともに、その利用に係る同意の要件・手続の整備が行われた(実特法8の2①~③)。
(2)非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の改正  非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度における「報告対象国」として、83か国・地域が定められた(実特規16の12⑧、別表)。
(3)適用関係 ① 上記(1)の改正は、平成30年4月1日から施行される(改正法附則1)。
② 上記(2)の改正は、平成29年12月28日から施行される(平成29年12月改正実特規附則)。

7 その他の国際課税の改正
(1)外国金融機関等の店頭デリバティブ取引の証拠金に係る利子の課税の特例の改正
 適用期限が平成33年3月31日まで3年延長された(措法42①②)。
(2)公的年金等控除の見直しに伴う国際課税の改正  非居住者が支払を受けるべき年金に対する源泉徴収等の控除額計算の基礎額が、年齢65歳未満の者については5万円(改正前:6万円)に、年齢65歳以上の者については9万5千円(改正前:10万円)に、それぞれ引き下げられた(所法213①一イ、措法41の15の3③)。
(3)納税環境整備 ① 外国法人の法人税等の申告書における自署押印制度
 外国法人について、国内源泉所得に係る責任者及び国内源泉所得に係る経理責任者に対する自書及び押印は廃止し、国内源泉所得に係る責任者の記名及び押印を求めることとされた(法法151)。
② 連結法人の国外関連者の名称等を記載した書類の提出先の一元化
 連結親法人が電子申告を行う場合において、電子情報処理組織を使用する方法その他の方法により「国外関連者の名称等」を提供したときは、連結子法人が国外関連者の名称等を記載した書類を添付して、これをその所轄税務署長に提出したものとみなすこととされた(措法68の88⑳)。
③ 相手国等の租税の徴収の共助
 今般の国税徴収法の改正において、参加差押えをした税務署長による換価執行制度が創設されたことに伴い、相手国等の租税の徴収の共助について所要の整備が行われた(実特法11④、実特令7①)。
(4)適用関係 ① 上記(1)の改正は、平成30年4月1日から施行される(改正法附則1)。
② 上記(2)の改正は、平成32年1月1日以後に支払うべき年金について適用し、同日前に支払うべき年金については従前どおり(改正法附則14、81②)。
③ 上記(3)①の改正は、外国法人の平成30年4月1日以後に終了する事業年度の確定申告書、外国法人の同日以後に納税義務が成立する中間申告書に係る法人税の中間申告書並びに外国法人の確定申告書及び中間申告書に係る修正申告書で外国法人が同日以後に提出するものについて適用し、外国法人の同日前に終了した事業年度の確定申告書、外国法人の同日前に納税義務が成立した中間申告書に係る法人税の中間申告書並びにこれらの申告書に係る修正申告書で外国法人が同日前に提出したものに係る自署及び押印については従前どおり(改正法附則41)。
④ 上記(3)②の改正は、平成32年4月1日以後に終了する連結事業年度に係る国外関連者の名称等を記載した書類について適用される(改正法附則115)。
⑤ 上記(3)③の改正は、平成31年1月1日から施行される(改正法附則1四ヘ、改正徴収令附則①)。

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