カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2018年08月06日 【特別解説】 「収益認識に関する会計基準等への対応」として平成30年度に行われた税法・通達改正の検証(2)(2018年8月6日号・№750)

特別解説
「収益認識に関する会計基準等への対応」として平成30年度に行われた税法・通達改正の検証(2)
 日本税制研究所 代表理事 税理士 朝長英樹

 前回は、中小法人や「収益認識に関する会計基準」の適用前の法人にも平成30年度税制改正後の取扱いを適用して課税を繰り延べることができる部分があること等を踏まえた上で、同改正で改正された法人税法22条4項と新たに創設された22条の2の前提となった22条2項と4項のうち、2項について、昭和40年当時の立法過程の確認も行いつつ、その解釈を確認した。
 第2回目となる今回は、前回同様に22条4項について、昭和42年当時の立法過程も踏まえながら、その解釈を確認する。この22条4項は、他の条項とは異なる固有の性格を有する規定となっているため、その固有の性格を正しく理解した上で、誤りのないように解釈をする必要がある。
 これらの22条2項と4項の解釈の確認は、平成30年度税制改正による22条4項の改正と22条の2の創設や関係通達の改正の検証とそれらの改正への対応策の判断に必要となるだけでなく、法人税法の基本的な考え方や基本的な構造の正しい理解に資するものでもある。

Ⅰ 法人税法22条2項及び4項の確認(承前)

2 法人税法22条4項は何を定めているのか
(1)法人税法22条4項の立法過程の確認
 法人税法22条4項は、昭和40年に22条が創設されてから2年後の昭和42年に、同条に追加されたものである。
 昭和42年に4項を追加する改正を行った趣旨は、政府税制調査会の「税制簡素化についての第一次答申」(昭和41年12月)に詳述されているため、その一部を引用してみると、次のとおりである(注)。
 特に明確性を求める見地から、条理上当然のことと思われるものでも微細に規定する風潮を強くし、さらにいわゆる抜け穴防止のための規定が数多く設けられるにいたつて、毎年のように税制改正が行なわれることとも関連し、逐年複雑化の様相を濃くしてきた。
〔中略〕税制の複雑化の程度がすぎれば、税制はその果たすべき役割や利点をこえて、より多くの弊害を生ずることになる。
〔中略〕税法において課税所得は、納税者たる企業が継続して適用する健全な会計慣行によつて計算する旨の基本規定を設けるとともに、税法においては、企業会計に関する計算原理規定は除外して、必要最小限の税法独自の計算原理を規定することが適当である。
(注)昭和42年当時、法人税法の条文と法人税に関する通達をできるだけ少なくして簡素化する必要があるということが繰り返し語られており、それが4項を創設する主な理由の一つとなったわけであるが、上記の「税制簡素化についての第一次答申」において述べられている「明確性を求める見地から、条理上当然のことと思われるものでも微細に規定する風潮」があること等は、昭和42年当時よりも、なお一層、現在の法人税法と法人税基本通達の状況に当てはまると言ってよい。昭和42年当時と比べると、現在の法人税関係法令の量は、約4倍にまで増えている。
  なお、「税制簡素化についての第一次答申」を作成した税制簡素化専門小委員会の最後の会合は、昭和41年9月8日となっており、その当時は、後に①において引用する昭和41年8月19日の時点における大蔵省主税局第一課の改正案が作られて暫く経った頃で、後に①で述べるとおり、22条2項と3項を削除して適正な会計慣行に従って「所得の金額」を計算することまで想定されていたため、上記引用においては、「企業会計に関する計算原理規定は除外」というような記述まで行われているが、最終的には、2項と3項をそのまま残してそれらの項に定められていることは変更しない改正を行うこととされた。

 要するに「税制の複雑化」によって「多くの弊害」が生ずることを防止するということ、すなわち、上記の答申の題名にあるとおり、「税制簡素化」を行うことが4項の創設の主たる趣旨であったわけである(注)。
(注)財務省『平成30年度 税制改正の解説』の「1 改正前の制度の概要」においては、2項と4項を文語体にした短い文章が記載されるのみとなっており、「収益認識に関する会計基準等への対応」として行われた改正は、法人税法における所得計算の基本規定の一部を成す条文の半世紀ぶりの改正でありながら、同項の創設趣旨等に関する説明も全くなされていないという、極めて異例の説明となっているわけであるが、仮に、「1 改正前の制度の概要」において、同項の創設の趣旨が記載されていたとしたら、同項は法人税法における条文や法人税基本通達の定めをできるだけ減らして税制を簡素化するという趣旨で創設されたものであるということを誰もがまず初めに確認することとなり、「明確化」ということで新たに法律の条文を創って大量に通達を設けるということでは同項の創設の趣旨と正反対のことを行っていることになるのではないか、という疑問を持つ者が少なからず出てくることになったものと考えられる。
  従前から企業会計の変更は数多く行われてきており、企業会計上の当期利益の額の計算方法が変わることも数多くあったわけであるが、その度に法人税法が改正されるなどということになっていなかったことは、周知のとおりである。
  平成30年度の22条の2を創設する改正に関しては、新たな法律の条文を創る必要が本当にあったのか、従前どおりに法人税基本通達によって必要な範囲で会計と税の調整措置を講じたり解説によって会計と税が不一致となる部分の処理を説明したりすることで対応するべきではなかったのか、というような観点から今一度よく検証してみる必要がある。

 ① 立法過程から確認される法人税法22条4項の性格  22条に4項を追加する改正は、当初、22条を全面的に改正し、「所得の金額」を会計慣行によって計算することとすることまで想定して検討が開始されている。
 昭和41年8月19日の時点の大蔵省主税局第一課の改正案は、次のようなものであった。
 所得の金額は、法人が継続して採用する適正な会計慣行によつて計算するものとする。
 この改正案は、「所得の金額」について、その計算を適正な会計慣行に委ねるというものであって、当時、「所得計算の基本規定」と呼ばれている。この改正案は、「益金の額」や「損金の額」ではなく、「所得の金額」について、適正な会計慣行によって計算するというものであるため、この改正案を採る場合には、2項と3項は削除するものとされていた(注)。
(注)仮に、2項と3項を削除し、上記の改正案どおりの規定のみとなっていたとしたら、その適否は別にして、22条の条文が簡素化され、同条の解釈として定められる法人税基本通達にも削除されるものが数多く出てきて、税制が大きく簡素化されることとなったはずである。

 その後、検討が進み、昭和41年12月22日の時点では、大蔵省主税局第一課の改正案は、次の3案となっている。
第1案  第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び第3項に規定する当該事業年度の損金の額に算入すべき金額の計算については、法人が継続して適用する適正な会計慣行に従つて計算するものとする。
第2案  第1項の当該事業年度の益金の額及び当該事業年度の損金の額帰属の時期は、法人が継続して適用する適正な会計慣行によるものとする。
第3案  前項の各事業年度の所得の金額は、別段の定めがあるものを除き、法人が継続して適用する適正な会計慣行によつて計算するものとする。
 第3案は、2項から4項(現在の5項)までを削った上で、新たに2項として第3案の定めを設けるというもので、昭和41年8月19日の改正案の延長線上の案となっている。
 上記の昭和41年8月19日の改正案と第3案とを比べてみると、第3案においては、「別段の定めがあるものを除き」という文言が追加され、「別段の定め」には適用しないこととされている。第3案は、昭和41年8月19日の改正案と比べると、適用対象が22条の適用を受けるもののみに狭まって「別段の定め」には適用しないものとなっているわけである。
 しかし、この第3案は、2項から4項までを削除してしまうと問題が出てくることなどの理由により、採用されていない。
 第2案は、「益金の額」と「損金の額」の「帰属の時期」を「適正な会計慣行」によることとする案となっている。
 この第2案は、既に2項において「当該事業年度の収益の額とする」というように収益の帰属の時期の原則を明らかにしているため、新たに収益の帰属の時期を定める規定を設ける必要はない、という理由で採用されていない。
 このようにして、第2案も退けられて、最終的には、第1案が残ることとなった。
 この第2案と第1案とを比べてみると、第2案は「帰属の時期」に関する定めとなっているが、第1案は「金額の計算」に関する定めとなっており、この点が相違点となっていることが分かる。
 このように、4項の立法過程においては、同項で「帰属の時期」を定めるべきか、あるいは、「金額の計算」を定めるべきか、ということも検討され、結論としては、同項では「帰属の時期」について定めることはせずに「金額の計算」についてのみ定める、ということとされたわけである。
 この事実は、4項の文言が「収益の額」等の「帰属の時期」には全く触れずに「計算」についてのみ定めるものとなっていることとも符合するものである(注)。
(注)『平成30年度 税制改正の解説』においては、22条4項に「別段の定めがあるものを除き」という文言を追加した上で、この「別段の定め」として新たに22条の2を設けたことによって、収益の額を益金の額に算入する時期が明確化された、と説明されているわけであるが(273・280頁)、22条4項の立法過程を確認し、同項の文言を正しく読むと、同項は収益認識の時期を定めたものではない、ということが明確である。
  つまり、22条4項は収益認識の時期を定めていないにもかかわらず、同項が収益認識の時期を定めていると勘違いして、22条4項の改正と22条の2を創設する改正が行われている、ということである。

 しかし、4項において「金額の計算」のみを定めることとしたとしても、問題がないというわけではなく、同項を収益の額と費用の額の計算規定として定めると、2項・3項の規定と内容が重複するという問題が生ずることとなる。
 この問題の解決策としては、4項を設けないこととするか、あるいは、4項で2項・3項と同じく「金額の計算」について定めるとしても4項と2項・3項との内容が重複しないように4項を2項・3項とは性格の異なる規定として設けることとする、という2つの選択肢しかないわけであるが、この点の検討に関する当時の詳しい状況は確認できないものの、最終的には、この後者が選択された状態となっている。
 この第1案は、その後、「法人が継続して適用する」という部分が消え、「適正な会計慣行」が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に変わって、次の4項となっている。
4 第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。
 このような過程を経て創られた4項の性格について、吉牟田勲先生は、次のとおり、「企業会計を尊重するという計算心得を宣言、確認する規定」となった、と説明しておられる。
 法第22条第2項、第3項をそのまま存置したので、この規定は、税法に特別に規定した所得計算の基準以外は、公正妥当な会計基準に従う、すなわち企業会計を尊重するという計算心得を宣言、確認する規定であると理解され、税法令の制定、改廃を促すような創設的、強制的規定とは解しにくいものとなったのである。
(吉牟田勲「現行法人税法各条の立法過程の研究 27」税務弘報(Vol47 No5)127・128頁)
 このように、22条4項の立法過程を辿ると、同項は、2項の「収益の額」と3項の「原価の額」等の「計算」を行う場合に、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」を「尊重」するべきであるという「計算心得を宣言、確認する規定」であって、2項の収益認識の時期の基準等や3項の債務確定基準等を変更するものではない、ということを明確に確認することができる。
 4項がこのような性格の規定であるとすれば、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」を「尊重」する場面は、実際には、2項の「収益の額」の計算と3項の「原価の額」等の計算について法人税基本通達によって具体的な取扱いを定める場面と税務調査でそれらの取扱いが問題とされる場面ということになる(注)。
(注)2項の「収益の額」の計算と3項の「原価の額」等の計算について法人税基本通達によって具体的な取扱いを定める場面と税務調査でそれらの取扱いが問題とされる場面においては、4項がなかったとしても、会計慣行等に基づいて行われている処理を尊重するのが本来のあるべき姿であって、4項が創設されたことによって、それが改めて確認された、と解すべきである。

 また、22条4項の立法過程を辿ると、上記の引用にあるとおり、同項は、最終的には「税法令の制定、改廃を促すような創設的、強制的規定とは解しにくいものとなった」ということも、明確に確認することができる。
 このように、4項が最終的に「税法令の制定、改廃を促すような創設的、強制的規定とは解しにくいものとなった」ということは、仮に、同項に規定されていることが変わったとしても、「税法令の制定、改廃」を行うこととはならない、ということを意味する。もちろん、4項に規定されている「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の内容が変わったとしても、「税法令の制定、改廃」を行うこととはならない(注)。
(注)法人税法には「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の内容に関する定めは設けず、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の内容を勘案した取扱いは法人税基本通達において定めることとされているため、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の内容に変更があった場合には、そのような法人税法と法人税基本通達との合理的な棲み分けの整理を踏まえて、従前どおり、法人税基本通達の中の関係する定めに関して必要な整備を行うという対応が正しい対応ということになる。

 第1案に話を戻すと、第1案は、「第2項に規定する当該事業年度の収益の額〔中略〕の計算については……」というように、2項が適用される場面に適用するものとされていることが明確であり、第1案が23条以下の「別段の定め」が適用される場面に適用されるものではないということが分かるわけであるが、4項の立法過程を詳しく確認しても、4項が適用される場面がこの第1案が適用される場面から変更されたと解すべき事情は全く見当たらない。このため、4項が適用される場面も、第1案が適用される場面と同じで、4項は、23条以下の「別段の定め」が適用される場面には適用されない、と解される。
 もっとも、立法過程の改正案まで確認することができなかったとしても、当時の文献を読むことで、4項が23条以下の「別段の定め」に適用される規定ではないということが確認できるわけであるが、これを最も容易に確認できるのは、次の『昭和42年 改正税法のすべて』における説明である(注)。
 今回の改正を機に当該事業年度の益金の額に算入すべき収益の額および当該事業年度の損金の額に算入すべき売上原価、費用および損失の額は、企業が継続して適用する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算されるものである旨を規定することにより、課税所得と企業利益とは、税法上別段の定めがあるものを除き、原則として一致すべきことを明確にすることとしたのであります。
 (76頁)
(注)『平成30年度 税制改正の解説』においては、4項が2項・3項の「別段の定め」にも適用されるものであって、本来、4項には「別段の定めがあるものを除き」という文言を挿入しておくべきであったにもかかわらず、その文言が漏れてしまっていたため、平成30年に、同項に「別段の定めがあるものを除き」という文言を挿入して是正した上で、その「別段の定め」として、22条の2を設けた、というように解される内容の説明(280頁他)が行われている。
  しかし、この4項が2項・3項の「別段の定め」にも適用されるという理解がそもそも明らかな誤りであることは、上記本文において述べたとおりである。
  4項に関して、このような基本的な理解が誤っているということは、22条に定められた「所得の金額」の計算と企業会計における利益の額の計算との関係に関する基本的な理解が誤っているということを示唆するものである。
  しかしながら、平成30年度税制改正が4項を誤って理解して行われたものであったとしても、その改正が現に行われていることは、否定できない事実である。
  このため、改正後の条文や関係通達に対応することが必要となるわけであるが、その対応を適切に行うためには、その誤りの内容まで含めて詳細を正確に把握することが必須となる。
  これに関しては、後ににおいて詳しく述べることとする。

 ② 立法過程から確認される「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の捉え方  上記において確認したとおり、昭和41年8月19日の改正案と昭和41年12月22日の第3案及び第1案(第2案は、益金の額と損金の額の帰属時期に関する案であるため、ここでは除外している。)のいずれにおいても、「適正な会計慣行」という用語を用いて、「適正な会計慣行によつて計算するものとする」(改正案・第3案)、「適正な会計慣行に従つて計算するものとする」(第1案)とされていた。
 ところが、4項では、この部分が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする」という文言に変わっている。
 このように変わった理由は、「「適正な会計慣行」とは常識的にわかつていても必ずしも明確なものではない。」ということが第1案の問題点として指摘されており、これに対する対応として、「適正」という用語を「一般に公正妥当と認められる」という用語に変えた上で「会計慣行」を「会計処理の基準」に変更したためであると考えられる。
 このように変わったことで、何か4項の内容が変わったのかというと、同項の規定する内容が明確になったという変化はあるものの、筆者が見た限りでは、当時の立法過程を知ることができる資料の中には、同項の内容が変わったと解すべき記述は、全く見当たらない。
 そして、『昭和42年 改正税法のすべて』においては、次のように、「適正な会計慣行に従つて計算するものとする」という規定が設けられたかのような説明や「基準」と「慣行」を同じように捉えた説明がなされている。
 この課税所得の計算は、税法において完結的に規制するよりも、適切に運用されている企業の会計慣行にゆだねることの方がより適切であると思われる部分が相当多いことも事実であります。事実、法人税においては、このような現実を前提として従来課税所得の計算を行なってきたところであります。
 (75・76頁)
 この規定は、具体的には企業が会計処理において用いている基準ないし慣行のうち、一般に公正妥当と認められないもののみを税法で認めないこととし、原則としては企業の会計処理を認めるという基本方針を示したものであるといえましょう。
 (76頁)
 上記1(1)〔本誌2018.7.30号6頁〕において確認したとおり、昭和40年の22条2項を創設する改正においては、「実現主義」を採る改正案が最後の段階で変わっており、昭和42年の4項の改正も、それと殆ど同じような経過を辿って、「適正な会計慣行に従つて計算するものとする」とする改正案が最後の段階で「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする」に変わっているわけであるが、両者の解説の仕方は、全く異なっている。
 昭和40年の2項を創設する改正に関しては、上記1(1)〔本誌2018.7.30号8頁〕において引用したとおり、『昭和40年 改正税法のすべて』において、「実現主義」を採らないこととした理由が詳しく説明されている。
 これに対して、昭和42年の4項を創設する改正に関しては、上記の2つの引用のとおり、『昭和42年 改正税法のすべて』において、「適正な会計慣行に従つて計算するものとする」という規定が設けられたかのような説明や「基準」と「慣行」を同じように捉えた説明がなされているわけである。
 このような事情に鑑みると、4項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」というところは、第1案において「適正な会計慣行」としていたところをより一層妥当と判断される書き方にしただけであって、内容が変わっているわけではない、と考えてよいはずである。
 このような「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の捉え方は、上記において確認した4項の理解、すなわち、同項は、2項の「収益の額」と3項の「原価の額」等の「計算」を行う場合に、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」を「尊重」するべきであるという「計算心得を宣言、確認する規定」であるという理解と平仄が合うものである。
 また、この「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に関しては、商法や会社法などにおける取扱いを含むものであって、中小法人に適用されるものと公開会社に適用されるものとが違うなどというような捉え方はされていない、という点にも留意する必要がある。
 この点は、上記の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」を「尊重」するべきであるという「計算心得を宣言、確認する規定」という性格とも関連するものであるが、4項においては、例えば、中小法人にとっては公開会社に適用される会計基準は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とはならないなどという考え方は採られておらず、中小法人においても公開会社に適用される会計基準が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」となるわけである。
 このように、4項においては、法人が異なれば「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」も異なるなどという考え方は採られていない、という点に、十分、留意する必要がある(注)。
(注)この点は、平成30年度税制改正に伴って新設されたり改正されたりした法人税基本通達が全法人の中で約98%を占める中小法人や「収益認識に関する会計基準」の適用前の法人(この法人税基本通達の改正が最初に適用される平成30年4月1日以後に終了する最初の事業年度で判断すると、ほぼ100%近くの法人)に適用されるのか否かということを考えるに当たっても重要となる。つまり、ほぼ100%近くの法人に適用されない大量の通達を創って遡及してまで適用するなどということは、常識的に考えて有り得ず、改正後の法人税基本通達は、全法人に適用される、ということである。

(2)法人税法22条4項の条文の解釈の確認  平成30年度税制改正前の22条4項について、同項の文言を見ながら、同項がどのような解釈となるのかということを確認することとする。
 4項の文言を見ると、同項は、2項の「収益の額」と3項の「各号に掲げる額」とについて、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算することを定めるものとなっていることが分かる。
 仮に、この4項が2項や3項と同じように「創設的、強制的規定」というものであったとしたら、どうなるのか、ということを考えてみよう。
 2項においては、「当該事業年度の収益の額」と定め、この部分の「の」に関しては「帰属する」という意味であると説明し、法人税基本通達で「引渡基準」と「完了基準」を収益認識の時期の判断基準とするという解釈を行っていたことは、既に述べたとおりである。
 これが、仮に、この2項の「の」の解釈である「引渡基準」と「完了基準」が4項によって「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従うものとされるということになると、どうなるのかというと、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」においては「実現主義」が収益認識の時期の判断基準とされていたため、法人税における収益認識の時期の判断基準は、2項で「引渡基準」と「完了基準」とされるものの、それが4項によって「実現主義」とされることとなってしまい、最終的には、法人税における収益認識の時期の判断基準は「実現主義」である、ということになってしまう。
 無償による資産の譲渡の例で考えてみると、なお一層、2項と4項の関係が明確になる。
 2項においては、無償による資産の譲渡においても、有償による資産の譲渡と同じように、時価に基づいて「収益の額」が計算されるものとされている。
 これが、仮に、この2項の無償による資産の譲渡における「収益の額」が4項によって「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算されるということになると、どうなるのかというと、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」においては無償による資産の譲渡は事実に即して無償による取引として処理されることとなるため、無償による資産の譲渡は、2項によって時価による取引とされるものの、それが4項によって再び無償による取引とされることとなってしまい、最終的には、無償による資産の譲渡においては「収益の額」が認識されない、ということになってしまう。
 4項が上記の2つの例のように2項の定めを変更する「創設的、強制的規定」と解されていないことは、周知のとおりである。
 4項は、3項各号に掲げる額に関する定めともなっているため、3項と4項の関係においても、同じことが言える。
 3項2号の「費用の額」に関しては、周知のとおり、「債務確定基準(債務確定主義)」が採られているわけであるが、仮に、4項によって3項2号の「費用の額」が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算されるということになると、どうなるのかというと、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」においては「債務確定基準(債務確定主義)」は採られていないため、3項2号の「費用の額」は、同号によって債務が確定したものに限定されることとなるものの、最終的には、4項によって債務が確定したものに限定されることはない、ということになってしまう。
 賞与引当金などのさまざまな引当金の例で考えてみると、なお一層、3項と4項の関係が明確になる。
 3項1号の「原価の額」や2号の「費用の額」に関しては、賞与引当金などのさまざまな引当金の繰入損を含めることができないこととされているわけであるが(注)、仮に、4項によって、3項1号の「原価の額」や2号の「費用の額」が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算されるということになると、どうなるのかというと、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」においては賞与引当金などのさまざまな引当金を計上しなければならないこととされているため、3項1号の「原価の額」や2号の「費用の額」は、これらの規定によって賞与引当金などのさまざまな引当金の繰入損を含まないものとされることとなるものの、最終的には、4項によって賞与引当金などのさまざまな引当金の繰入損を含むものとされる、ということになってしまう。
(注)平成10年度税制改正前には、賞与引当金の繰入損の損金算入が認められていたわけであるが、これは、22条4項を根拠として認められていたわけではなく、旧54条(賞与引当金)を根拠として認められていたものである。
  賞与引当金の繰入損については、22条3項においては損金算入が認められないが、同項の「別段の定め」として旧54条が設けられていたために損金算入が認められる、ということになっていたわけである。
  平成30年度税制改正において廃止された返品調整引当金についても、同様である。

 つまり、上記の2つの例からも分かるとおり、3項各号の損金の額を見ても、4項が3項各号の定めを変更する「創設的、強制的規定」と解されていないことは、明確に確認できるわけである。
 このように、4項は、2項の収益認識の基準等や3項の債務確定基準等を変更するものとはなっていないわけである。
 このため、上記(1)①においても述べたとおり、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」を「尊重」する場面は、実際には、2項の「収益の額」の計算と3項の「原価の額」等の計算について法人税基本通達によって具体的な取扱いを定める場面と税務調査でそれらの取扱いが問題とされる場面ということになる(注)。
(注)『平成30年度 税制改正の解説』においては、「収益認識に関する会計基準に従った収益の額の計算のうち、法人税の所得の金額の計算として認めるべきでない部分があれば、その部分を明示する必要が生ずることとなります。」(270頁)というように、「収益認識に関する会計基準」が制定されたことが22条の2を創設する理由となると説明されているわけであるが、法律のレベルでは、「収益認識に関する会計基準」が22条2項の「収益の額」の取扱いを変えることはないため、「法人税の所得の金額の計算として認めるべきでない部分」を法律で「明示する必要が生ずる」ということは有り得ず、この説明は、誤りということになる。
  「法人税の所得の金額の計算として認めるべきでない部分」の「明示」は、法人税法において行うべきことではなく、法人税基本通達において行うべきことであって、このような合理的な棲み分けを変更しなければならない事情は生じていない。

 ところで、4項の文言を良く眺めてみると、同項には、「前2項の規定を適用する場合において、……」という規定の仕方や「……として前2項の規定を適用する。」という規定の仕方とはされていないという条文作成技術上の特徴がある。
 このため、4項は、2項や3項が適用される場面のみに適用されるのか、あるいは、2項や3項の「別段の定め」が適用される場面をも含めて適用されるのか、ということを判断することが必要となる。
 この点に関しては、他の条項の中にも、適用場面を限定した定め方となってはいないが、文脈から判断して当然に限定した場面にのみ適用すると解釈される、というものが数多く存在すること、そして、『昭和42年 改正税法のすべて』において「税法上別段の定めがあるもの」を除いて適用されるという説明が行われていることから判断すれば、4項は、2項と3項の「別段の定め」が適用される場面においては適用されず、2項と3項が適用される場面においてのみ適用される、と解釈するのが適当であると考えられる(注)。
(注)さらに言えば、4項をそのように解釈した上で、文理解釈上は「別段の定め」を含めて適用されるとも解釈される規定振りとなっていることが同項の文言に関する大きな疑問点となっている、と整理するのが適当であると考えられる。

 この解釈は、上記(1)①で立法過程を辿って確認した解釈と同じものである。
 ただし、この解釈は、4項に規定する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」が2項と3項の計算に適用される、ということを言うものに止まり、「所得の金額」の計算の基底に「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って行われている処理が存在すると考えられることを否定するものではない、という点に留意する必要がある。
 2項と3項の「別段の定め」も、その取扱いの全てを完全に書き切ることができているとは限らないため、「別段の定め」の取扱いにおいて、一部、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って行われる処理と同じ処理をする部分が出てきたとしても、何らおかしなことではない。その場合の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」は、法人税の「所得の金額」の計算の基底にあると考えてよい処理の基準となっている「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」であって、4項に規定する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」ではない(注)。
(注)上記(1)①において確認した昭和41年8月19日の時点における大蔵省主税局第一課の改正案と同年12月22日の時点における第3案は、「所得の金額」について、「適正な会計慣行」によって計算するというものであり、そこで規定されている「適正な会計慣行」とは、法人税の「所得の金額」の全ての計算の基底にあると考えてよい実際の全ての計算の基準となっているものであって、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」という用語を用いるとすれば、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って実際の計算が行われることによって出来上がるものである。
  しかし、上記(1)①において確認したとおり、その後、「適正な会計慣行」は、そのようなものから変わって行くこととなり、2項の「収益の額」と3項の「損金の額」の「金額の計算」について適用されるという案(昭和41年12月22日の時点における第1案)を経て、最終的には、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」が2項の「収益の額」と3項の「原価の額」等の「計算」に適用されるというものとなった。
  このように、昭和41年8月19日の改正案及び同年12月22日の第3案における「適正な会計慣行」と同日の第1案における「適正な会計慣行」及び4項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とは、前者の一部が後者となっているという関係にはあるものの、それらの適用対象は異なっている、ということを正確に理解しておく必要がある。
 (第3回に続く)

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索