解説記事2018年12月03日 【SCOPE】 株主総会資料の電子提供、株主総会の3週間前の日から(2018年12月3日号・№765)

EDINETの使用も可能
株主総会資料の電子提供、株主総会の3週間前の日から

 法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会(部会長:神田秀樹学習院大学法科大学院教授)は、新たに株主総会資料の電子提供制度を導入する方針だが、その概要が固まった。電子提供措置開始日については、株主総会の日の3週間前の日(又は株主総会の招集の通知を発した日のいずれか早い日)とされることが分かった。また、定時株主総会に係る事項が記載された有価証券報告書の提出の手続についてEDINETを使用して行う場合には、電子提供措置をとることを要しないこととする特例を設ける。上場会社等にとっては朗報といえよう。

定款により個別承諾なしで株主総会資料の電子提供が可能
 今回の会社法の見直しでは、株主総会資料の電子提供制度を導入する。「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日閣議決定)を受け、経済産業省が設置した株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会が平成28年4月21日に株主総会資料についての新たな電子提供制度の整備についての提言を取りまとめており、今回の見直しはこれを踏まえたものとなっている。現行の招集通知及び関連書類の電子提供に関しては、株主から事前に個別承諾を得る必要があるとされており、実際には電子提供できる書類の一部にとどまっているなどの問題点が指摘されていた。
 株主総会資料の電子提供制度とは、インターネットを利用する方法による株主総会資料の提供を促進するため、取締役が株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を書面により通知した場合には、株主の個別の承諾を得ていない場合であっても、株主に対して株主総会資料を適法に提供したものとする制度のこと。株式会社は取締役が株主総会を招集するときは、株主総会参考書類、議決権行使書面、計算書類及び事業報告、連結計算書類の交付又は提供に代えて、株主がインターネットにより提供を受けることができる旨を定款で定めることができるようにする。
 なお、振替株式を発行している株式会社は、改正会社法の施行日において施行日を効力発生日とする定款の定めを設ける定款の変更の決議をしたものとみなされる。また、電子提供措置をとる旨の定款の定めがあるときは、その定めを登記しなければならないものとしている。
総会の4週間前では企業側の対応が困難  電子提供をする場合においては、取締役は電子提供措置の開始日から株主総会の日以後3か月を経過する日までの間、株主総会の招集通知や株主総会参考書類等に記載すべき事項などに係る情報を継続してウェブサイトに掲載することとされている(図表1参照)。

【図表1】主な電子提供措置事項
① 株主総会の日時及び場所
② 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
③ 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
④ 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 なお、電子提供措置開始日については、中間試案(平成30年2月14日公表)では①株主総会の日の4週間前の日又は株主総会の招集の通知を発した日のいずれか早い日、②株主総会の日の3週間前の日又は株主総会の招集の通知を発した日のいずれか早い日の2つの案が示されていたが、②の案となった(図表2参照)。電子提供には会計監査が必要な計算書類等も含まれるため、株主総会の4週間前とした場合には企業が対応できなくなるといった意見を踏まえてのものである。

法令上EDINETの使用が前提  そのほか、定時株主総会に係る事項が記載された有価証券報告書の提出の手続についてEDINETを使用して行う場合には、当該事項について電子提供措置をとることを要しないものとする特例を設ける。EDINETは行政サービスとして実施されているにすぎないため、当初はEDINETにより特例を設けることは困難とされていたが、事業報告及び計算書類と有価証券報告書を一体的に開示する取組みや、株主総会前に有価証券報告書を開示する取組みを促進する観点から、法令上EDINETを使用して提出された有価証券報告書がインターネットを通じて公衆の縦覧に供されるものとされることを前提に認めるもの。今後、金融庁はEDINETの法的な位置づけについて検討することになる。
招集通知の発送期限は現行どおり  また、招集通知の発送期限も現行どおり株主総会の2週間前とされている(図表2参照)。こちらも中間試案では複数案出ていたものだが、企業の実務に配慮した形となっている。株主総会の招集の通知には、「電子提供を行っているときはその旨(EDINETを使用しているときはその旨)」のほか、「株主総会の日時及び場所」「株主総会の目的である事項があるときは、当該事項」「電子提供措置事項に係る情報を掲載するウェブサイトのアドレス」等を記載することが求められる。
株主からの請求があれば書面で  高齢者など、インターネットを利用することができない株主に対しては、書面交付請求を認める。株主総会の電子提供を行う株式会社であっても、株主から書面交付請求があった場合には、株主総会の日から2週間前までに電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければならないとしている。
 ただし、書面交付請求をした株主がいる場合において、その書面交付請求の日から1年を経過したときは、株式会社は当該株主に対し書面交付を終了する旨を通知、かつ、これに異議のある場合には一定期間内に異議を述べる旨を催告することができることとしている。

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