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解説記事2019年07月08日 【税制改正解説】 令和元年度における所得税関係の改正について(上)(2019年7月8日号・№794)

税制改正解説
令和元年度における所得税関係の改正について(上)
 櫻井秀樹

 消費税率の引上げに際し、需要変動の平準化等の観点から、住宅ローン減税制度の拡充や車体課税の見直しを行うとともに、デフレ脱却と経済再生を確実なものとするための研究開発税制の見直し及び国際的な租税回避についてより効果的に対応するための国際課税制度の見直しを行うほか、経済取引の多様化等を踏まえた納税環境の整備等を行うことを内容とした「所得税法等の一部を改正する法律」は、国会における審議を経て平成31年3月27日に参議院本会議で可決・成立し、3月29日に関係政省令とともに公布され、原則として4月1日から施行されている。
 以下これらの改正の内容について概要を説明する。

第一 所得税法等の改正

Ⅰ 所得税の確定申告及び源泉徴収関係の改正

1 所得税の確定申告に関する改正(所法120等関係)
(1)改正の内容
① 確定申告書の添付書類に関する改正
  給与等、退職手当等又は公的年金等の支払者からその支払を受ける者に交付される源泉徴収票については、一定のものを除いてその支払者から別途、税務署長へ提出することとされていることから、確定申告書への添付を要しないこととされた。
② 確定申告書の記載事項に関する改正
  その年において支払を受けるべき給与等で年末調整の適用を受けたものを有する居住者が確定申告書を提出する場合には、年末調整で適用を受けた所得控除でその額に異動がないものについては、その所得控除の額のみの記載で足りることとされ、年末調整で適用を受けた所得控除の額の合計額に異動がない場合には、それぞれの所得控除の額の記載も要せず、その合計額のみの記載で足りることとされた。
(2)適用関係 ① 上記(1)①の改正は、平成31年4月1日以後に確定申告書を提出する場合について適用し、同日前に確定申告書を提出した場合については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、平成31年4月1日以後に令和元年分以後の所得税に係る確定申告
書を提出する場合について適用し、同日前に確定申告書を提出した場合及び同日以後に平成30年分以前の所得税に係る確定申告書を提出する場合については従前どおりとされている。

2 公的年金等に係る源泉徴収の改正(所法203の3等関係)
(1)改正の内容
① 公的年金等に係る源泉徴収税額の計算の改正
  公的年金等(「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出をすることができないものを除く。以下同じ。)に係る源泉徴収について、公的年金等の支払を受ける居住者でその公的年金等について「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出していないものに対し、その公的年金等の支払者が支払う公的年金等について源泉徴収すべき税額が、公的年金等の金額から公的年金等控除及び基礎控除に対応する控除の額の月割額(その月割額が最低保障額に満たない場合には、最低保障額)に公的年金等の金額に係る月数を乗じて計算した金額を控除した残額に、5%の税率を乗じて計算することとされた。
(注)上記の「最低保障額」は、90,000円(65歳以上の受給者については、135,000円)とされている。
② 「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の改正
 イ 上記①の改正に伴い、公的年金等の受給者全員に「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出義務を課する必要がなくなったことから、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」は、人的控除額の控除の適用を受けるために提出する申告書とされた。
 ロ 「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の記載事項について、同一生計配偶者又は扶養親族のうちに同居特別障害者若しくはその他の特別障害者又は特別障害者以外の障害者がある場合におけるその人数の記載を要しないこととされた。
 ハ 公的年金等の支払を受ける居住者が提出する「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」については、その居住者の押印に代えて、その者の自署によることができることとされた。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、令和2年1月1日以後に支払うべき公的年金等について適用し、同日前に支払うべき公的年金等については従前どおりとされている。

3 配偶者特別控除及び源泉徴収の際の配偶者に係る控除の改正(所法83の2等関係)
(1)改正の内容
① 居住者の配偶者が、扶養控除等申告書等に記載された源泉控除対象配偶者がある者として給与等又は公的年金等に係る源泉徴収の規定の適用を受けている場合(その配偶者が、その年分の所得税につき年末調整の適用を受けた者である場合又は確定申告書の提出をし、若しくは決定を受けた者である場合を除く。)には、その居住者は、確定申告において配偶者特別控除の適用を受けることができないこととされた。
② 扶養控除等申告書等を提出した居住者(以下②において「対象居住者」という。)の扶養控除等申告書等に源泉控除対象配偶者である旨の記載がされた配偶者(以下②において「対象配偶者」という。)が、対象居住者を、対象配偶者の提出した扶養控除等申告書等に記載された源泉控除対象配偶者として給与等又は公的年金等に係る源泉徴収の規定の適用を受ける場合には、対象配偶者は対象居住者の提出した扶養控除等申告書等に源泉控除対象配偶者である旨の記載がされていないものとして、給与等又は公的年金等に係る源泉徴収の規定を適用することとされた。
③ 年末調整における配偶者控除又は配偶者特別控除に相当する控除の適用について、その控除の適用を受ける居住者の控除対象配偶者又は生計を一にする配偶者が居住者として源泉控除対象配偶者に関する事項を記載した「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出しているかどうかが、年末調整における配偶者控除又は配偶者特別控除に相当する控除の適用における判定要素に追加された。
(2)適用関係 ① 上記(1)①の改正は、令和2年分以後の所得税について適用し、令和元年分以前の所得税については従前どおりとされている。
② 上記(1)②及び③の改正は、令和2年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について適用し、同日前に支払うべき給与等又は公的年金等については従前どおりとされている。

Ⅱ 金融・証券税制の改正

1 信託財産に係る利子等の課税の特例の改正(所法176関係)
(1)改正の内容
① 集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除することとされている集団投資信託の信託財産について納付した所得税及び外国所得税の額について、その所得税及び外国所得税の課せられた収益を分配するとしたならばその収益の分配につき源泉徴収所得税の課されるべきこととなるものに対応する部分(特別分配金のみに対応する部分を除く。)の額に限ることとされた。
② 収益の分配を受ける個人が確定申告書に記載するその収益の分配に係る源泉徴収税額から控除することとされている控除外国所得税の額について、その計算に当たって用いる集団投資信託の収益の分配及び支払を受けた収益の分配から、特別分配金のみに対応する部分が除外された。
③ 本特例の対象となる受益権を他の証券投資信託の受託者に取得させることを目的とする証券投資信託の範囲に、その受益権を表示する受益証券が発行されていないもののうち信託契約によりその受益権の譲渡が制限されているものが追加された。
(2)適用関係 ① 上記(1)①及び②の改正は、令和2年1月1日以後に支払われる収益の分配について適用し、同日前に支払われた収益の分配については従前どおりとされている。
② 上記(1)③の改正は、令和2年1月1日から施行することとされている。

2 組織再編税制の見直しに伴う改正(所法57の4等関係)
(1)改正の内容
① 承継譲渡制限付株式の範囲に、次に掲げる譲渡制限付株式が追加された。
 イ 合併により被合併法人の特定譲渡制限付株式を有する者に対し交付されるその合併の直前に合併法人との間にその合併法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の譲渡制限付株式
 ロ 分割型分割により分割法人の特定譲渡制限付株式を有する者に対し交付されるその分割型分割の直前に分割承継法人との間にその分割承継法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の譲渡制限付株式
② 合併が行われた場合の旧株の取得価額の付替計算の対象となる合併に、被合併法人の株主等にその法人の合併により合併法人との間にその合併法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の合併が追加された。
③ 分割型分割が行われた場合の所有株式の取得価額の付替計算の対象となる分割型分割に、分割対価資産としてその法人の分割型分割により分割承継法人との間にその分割承継法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の分割型分割が追加された。
④ 株式交換に係る譲渡所得等の特例の対象となる株式交換に、株主にその法人の行った株式交換により株式交換完全親法人との間にその株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の行った株式交換が追加された。
(2)適用関係 ① 上記(1)①の改正は、平成31年4月1日以後に行われる合併及び分割型分割について適用し、同日前に行われた合併及び分割型分割については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、平成31年4月1日以後に行われる合併について適用し、同日前に行われた合併については従前どおりとされている。
③ 上記(1)③の改正は、平成31年4月1日以後に行われる分割型分割について適用し、同日前に行われた分割型分割については従前どおりとされている。
④ 上記(1)④の改正は、平成31年4月1日以後に行われる株式交換について適用し、同日前に行われた株式交換については従前どおりとされている。

Ⅲ その他の改正

1 仮想通貨の売買におけるその取得価額の計算方法の明確化に伴う改正(所法48の2関係)
(1)改正の内容
 居住者の仮想通貨につきその者の事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年12月31日において有する仮想通貨の価額は、その者が仮想通貨について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかった場合又は選定した評価の方法により評価しなかった場合には、法定評価方法(総平均法)により評価した金額)とするほか、所要の整備が行われた。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、令和元年分以後の所得税について適用される。

2 障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度の改正(所令31の2関係)
(1)改正の内容
 適用対象となる障害者等の範囲に、中核市の長から療育手帳の交付を受けている者が加えられた。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、平成31年4月1日から施行されている。

3 家事関連費等の必要経費不算入等の改正(所法45関係)
(1)改正の内容
 居住者が納付する森林環境税及び森林環境税に係る延滞金が家事関連費等の範囲に追加され、必要経費に算入しないこととされた。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、個人が森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律(平成31年法律第3号)附則第1条ただし書に規定する規定の施行の日(令和6年1月1日)以後に納付する森林環境税及び森林環境税に係る延滞金について適用される。

4 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予等の改正(所法137の2等関係)
(1)改正の内容
 民法における時効の中断に係る用語の整理が行われたことに伴い、国外転出をする場合の譲渡所得の特例の適用がある場合の納税猶予及び贈与等により非居住者に資産が移転した場合の特例の適用がある場合の納税猶予(以下「国外転出時特例の適用がある場合等の納税猶予」という。)の継続適用届出書の時効中断効について、それぞれ、納税猶予分の所得税額に相当する所得税並びにその所得税に係る利子税及び延滞税の徴収を目的とする国の権利の時効については、継続適用届出書の提出があった時からその継続適用届出書の提出期限までの間は完成せず、その提出期限の翌日から新たにその進行を始めることとされた。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、令和2年4月1日前に国外転出時特例の適用がある場合等の納税猶予の継続適用届出書の提出があった場合におけるその納税猶予分の所得税額に相当する所得税並びにその所得税に係る利子税及び延滞税の徴収を目的とする国の権利の時効については、従前どおりとされている。

5 遺産分割等があった場合の修正申告の特例の改正(所法151の6関係)
(1)改正の内容
 民法の遺留分制度が見直され、遺留分減殺請求によって相続又は遺贈に係る対象資産の減少・増加が生ずることがなくなることに伴い、「遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと」が、本特例の対象となる「遺産分割等の事由」から除外された。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、令和元年7月1日前に開始した相続又は遺贈により相続又は贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用を受けた居住者について遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定した場合については従前どおりとされている。

6 農業協同組合中央会に対する税制上の措置(所法附則36関係)
(1)改正の内容
 存続都道府県中央会から組織変更をした農業協同組合連合会のうち、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律附則の規定により引き続きその名称中に農業協同組合中央会という文字を用いることができるものは、所得税法別表第1に掲げる法人に該当するものとみなすこととされた。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、平成31年4月1日から施行されている。

第二 租税特別措置法等(所得税関係)の改正

Ⅰ 住宅・土地税制の改正

1 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度等の改正(措法41等関係)
(1)改正の内容
① 消費税率引上げによる住宅に係る駆け込み・反動減対策のための控除期間の特例
  住宅については、昨年10月15日の総理発言等を踏まえ、需要変動の平準化の観点から、消費税率引上げ後の購入にメリットが出るよう、税制・予算両面の対策が検討された。このうち税制面では、消費税率10%が適用される住宅取得等について、住宅ローン税額控除の控除期間を現行の10年間から13年間へと3年延長することとされた。その際、消費税率2%引上げの負担に着目し、延長する3年間で消費税率引上げ分にあたる「建物購入価格の2%」の範囲で更なる減税を行う仕組みとされた。
  今回の改正による税制上の措置は、次の3つの区分に応じ、それぞれ次のとおりとされている。
イ 一般の住宅(認定住宅以外の住宅)の場合
(イ)制度の概要
  個人が、住宅の取得等で特別特定取得に該当するものをし、かつ、その住宅の取得等をした家屋を令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合(住宅の取得等の日から6月以内に自己の居住の用に供した場合に限る。)において、適用年の11年目から13年目までの各年においてその住宅の取得等に係る住宅借入金等(以下「特別特定住宅借入金等」という。)の金額を有するときは、その年12月31日における特別特定住宅借入金等の金額の合計額(その合計額が4,000万円を超える場合には、4,000万円)に1%を乗じて計算した金額(その金額が控除限度額を超える場合には控除限度額)をその年における住宅ローン税額控除額として、その者のその年分の所得税額から控除することができることとされた。
  改正前の住宅ローン税額控除は、控除期間が10年間とされているが、この改正後の制度は、消費税率10%が適用される一定の期間内の住宅の取得等に限り、控除期間が3年間延長され13年間となる。なお、適用年の1年目から10年目までの各年の住宅ローン税額控除については、改正前と同様の金額を控除できることとされている(下記ロ及びハにおいても同様。)。
  また、適用年の11年目から13年目までの各年を住宅ローン税額控除における適用年とすることとされているため、住宅ローン税額控除の再居住の特例などについても、控除期間を13年間として適用されるほか、原則として、改正前の住宅ローン税額控除と同様の要件等が適用される(下記ロ及びハにおいても同様。)。
(ロ)特別特定取得
  個人の住宅の取得等をした家屋の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等合計額の全額が、10%の税率により課されるべき消費税額等合計額である場合の住宅の取得等をいう。以下同じ。
(注)上記の「消費税額等合計額」とは、消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額をいう。以下同じ。
(ハ)控除限度額
  今回の措置は、消費税率2%の引上げによる負担増に着目して行われたものであり、消費税率2%引上げ分を減税額の上限とするため、この控除限度額が設定されている。具体的には、住宅の取得等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額又は費用の額からその住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等合計額を控除した残額として一定の金額(その金額が4,000万円を超える場合には、4,000万円)に2%を乗じて計算した金額を3で除して計算した金額とされている。
(注1)上記の「一定の金額」とは、住宅の取得等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額又は費用の額(その家屋のうちにその者の居住の用以外の用に供する部分がある場合には、その住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に、次に掲げる家屋の区分に応じそれぞれ次に定める割合を乗じて計算した金額。以下この(注1)において同じ。)からその住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等合計額を控除した残額とされている。
 1 新築又は取得をした居住用家屋又は既存住宅……これらの家屋の床面積のうちにその居住の用に供する部分の床面積の占める割合
 2 増改築等をした家屋……その増改築等に要した費用の額のうちにその居住の用に供する部分の増改築等に要した費用の額の占める割合
(注2)住宅ローン税額控除額の計算においては、住宅の取得等に関し、補助金等の交付を受ける場合又は直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等の適用を受ける場合にはその住宅の取得等の対価の額又は費用の額から補助金等の額又はその適用を受けた住宅取得等資金の額を控除することとされているが、この控除限度額における「住宅の取得等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額又は費用の額」からは補助金等の額又はその適用を受けた住宅取得等資金の額を控除しないこととされている(下記ロ(ハ)及びハ(ハ)においても同様。)。
(注3)控除限度額の計算における上記の「住宅の取得等」には、土地等の取得は含まれない。
ロ 認定住宅の場合の特例
(イ)制度の概要
  個人が、認定住宅の新築等で特別特定取得に該当するものをし、かつ、その認定住宅の新築等をした家屋を令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合(認定住宅の新築等の日から6月以内に自己の居住の用に供した場合に限る。)において、適用年の11年目から13年目までの各年においてその認定住宅の新築等に係る住宅借入金等(以下「認定特別特定住宅借入金等」という。)の金額を有するときは、その年12月31日における認定特別特定住宅借入金等の金額の合計額(その合計額が5,000万円を超える場合には、5,000万円)に1%を乗じて計算した金額(その金額が認定住宅控除限度額を超える場合には認定住宅控除限度額)をその年における住宅ローン税額控除額として、その者のその年分の所得税額から控除することができることとされた。
(ロ)この②の認定住宅の場合の特例の適用ができる場合
  この②の認定住宅の場合の特例の適用ができる場合は、次に掲げる場合とされている。
 (a)適用年の10年目において認定住宅の新築等に係る認定住宅借入金等の金額につき、認定住宅の住宅ローン税額控除の適用を受けている場合
 (b)適用年の1年目から9年目までのいずれかの年において認定住宅の新築等に係る認定住宅借入金等の金額につき、認定住宅の住宅ローン税額控除の適用を受けている場合((a)に掲げる場合に該当する場合を除く。)
 (c)適用年の10年目までの各年において認定住宅の新築等に係る認定住宅借入金等の金額につき、住宅ローン税額控除の適用を受けていない場合であって、適用年の11年目から13年目までの各年のいずれかの年において、その者の選択により、このロの認定住宅の場合の特例の適用を受けようとする場合
(ハ)認定住宅控除限度額
  認定住宅の新築等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額からその認定住宅の新築等に係る対価の額に含まれる消費税額等合計額を控除した残額として一定の金額(その金額が5,000万円を超える場合には、5,000万円)に2%を乗じて計算した金額を3で除して計算した金額とされている。
(注1)上記の「一定の金額」とは、認定住宅の新築等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額(その家屋のうちにその者の居住の用以外の用に供する部分がある場合には、その認定住宅の新築等に係る対価の額に、その家屋の床面積のうちにその居住の用に供する部分の床面積の占める割合を乗じて計算した金額。以下この(注1)において同じ。)からその認定住宅の新築等に係る対価の額に含まれる消費税額等合計額を控除した残額とされている。
(注2)認定住宅控除限度額の計算における上記の「認定住宅の新築等」には、土地等の取得は含まれない。
ハ 住宅被災者の場合の特例
(イ)制度の概要
  東日本大震災によって自己の所有する家屋(従前住宅)が被害を受けたことにより自己の居住の用に供することができなくなった個人(以下「住宅被災者」という。)が、住宅の新築取得等で特別特定取得に該当するものをし、かつ、その住宅の新築取得等をした家屋を令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合(住宅の新築取得等の日から6月以内に自己の居住の用に供した場合に限る。)において、適用年の11年目から13年目までの各年においてその住宅の新築取得等(再建住宅にあっては、従前住宅を居住の用に供することができなくなった日以後最初に居住の用に供したものに係る住宅の新築取得等に限る)に係る住宅借入金等(以下「再建特別特定住宅借入金等」という。)の金額を有するときは、その年12月31日における再建特別特定住宅借入金等の金額の合計額(その合計額が5,000万円を超える場合には、5,000万円)に1.2%を乗じて計算した金額(その金額が再建特別特定控除限度額を超える場合には再建特別特定控除限度額とされる。)をその年における住宅ローン税額控除額として、その者のその年分の所得税額から控除することができることとされた。
(ロ)このハの住宅被災者の場合の特例の適用ができる場合
  このハの住宅被災者の場合の特例の適用ができる場合は、次に掲げる場合とされている。
 (a)適用年の10年目において住宅の新築取得等に係る再建住宅借入金等の金額につき、東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例(以下「再建住宅の住宅ローン税額控除」という。)の適用を受けている場合
 (b)適用年の1年目から9年目までのいずれかの年において住宅の新築取得等に係る再建住宅借入金等の金額につき、再建住宅の住宅ローン税額控除の適用を受けている場合((a)に掲げる場合に該当する場合を除く。)
 (c)適用年の10年目までの各年において住宅の新築取得等に係る再建住宅借入金等の金額につき、住宅ローン税額控除の適用を受けていない場合であって、適用年の11年目から13年目までの各年のいずれかの年において、その者の選択により、このハの住宅被災者の場合の特例の適用を受けようとする場合
(注)この場合において、住宅被災者が、二以上のこのハの住宅被災者の場合の特例の適用ができる住宅の新築取得等をし、かつ、これらの住宅の新築取得等をした家屋を同一の年中にその者の居住の用に供したときは、上記の選択は、これらの住宅の新築取得等に係る再建特別特定住宅借入金等の金額の全てについてしなければならないこととされている。
(ハ)再建特別特定控除限度額
  住宅の新築取得等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額又は費用の額からその住宅の新築取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等合計額を控除した残額として一定の金額(その金額が5,000万円を超える場合には、5,000万円)に2%を乗じて計算した金額を3で除して計算した金額とされている。
(注1)上記の「一定の金額」とは、住宅の新築取得等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額又は費用の額(その家屋のうちにその者の居住の用以外の用に供する部分がある場合には、その住宅の新築取得等に係る対価の額又は費用の額に、次に掲げる家屋の区分に応じ次に定める割合を乗じて計算した金額。以下この(注1)において同じ。)からその住宅の新築取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等合計額を控除した残額とされている。
 1 新築又は取得をした居住用家屋若しくは既存住宅又は認定住宅……これらの家屋の床面積のうちにその居住の用に供する部分の床面積の占める割合
 2 増改築等をした家屋……その増改築等に要した費用の額のうちにその居住の用に供する部分の増改築等に要した費用の額の占める割合
(注2)再建特別特定控除限度額の計算における上記の「住宅の新築取得等」には、土地等の取得は含まれない。
② 二以上の住宅の新築取得等に係る住宅借入金等の金額を有する場合の控除額の計算の改正
  「二以上の住宅の新築取得等に係る住宅借入金等の金額を有する場合の住宅ローン税額控除額の計算」について、上記①の改正に伴う所要の整備が行われた。
③ 住宅借入金等を有する場合の所得税額特別控除証明書の改正
  「住宅借入金等を有する場合の所得税額特別控除証明書」の記載事項が、法令上、明確化された。
④ 「給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書」の記載事項の改正
  「給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書」について、住宅の新築取得等をした年月日等の記載を要しないこととされた。
(2)適用関係 ① 上記(1)①及び②の改正は、平成31年4月1日から施行されている。
② 上記(1)③の改正は、居住日の属する年分(令和元年から令和3年までの各年分に限る。)又はその翌年以後の適用期間のいずれかの年分の所得税につき住宅ローン税額控除の適用を受けた個人に対し令和2年10月1日以後に交付する証明書について適用し、同日前に交付した証明書及び居住日の属する年分(平成30年以前の各年分に限る。)又はその翌年以後の適用期間のいずれかの年分の所得税につき住宅ローン税額控除の適用を受けた個人に対し令和2年10月1日以後に交付する証明書については従前どおりとされている。
③ 上記(1)④の改正は、平成31年4月1日以後に提出する「給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書」について適用し、同日前に提出した「給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書」については従前どおりとされている。

2 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の改正(措法31の2関係)
(1)改正の内容
 本特例の対象となる「優良住宅地等のための譲渡」の範囲に、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の地域福利増進事業を実施する者に対する一定の土地等の譲渡で、その譲渡に係る一定の土地等が地域福利増進事業の用に供されるものが追加された。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、個人が令和元年6月1日以後に行う優良住宅地等のための譲渡に該当する譲渡について適用される。

3 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の改正(措法33等関係)
(1)改正の内容
① 土地収用法等の範囲の拡充
  本特例における「土地収用法等」に所有者不明土地法が追加され、本特例の対象となる「土地収用法等の規定により取得した資産の対価又は資産の損失に対する補償金」の範囲に、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の規定に基づいて資産が収用されることにより取得した補償金が追加された。
② 簡易証明制度の対象の縮減
  簡易証明制度の対象から「一団地の津波防災拠点市街地形成施設の整備に準ずる事業」が除外された。
(2)適用関係 ① 上記(1)①の改正は、令和元年6月1日以後に資産が収用され補償金を取得する場合又は資産の損失に対する補償金を取得する場合について適用し、同日前に資産が収用され補償金を取得した場合又は資産の損失に対する補償金を取得した場合については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、簡易証明書に記載されたその証明の日が平成31年3月31日以前であるものについては従前どおりとされている。

4 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除の改正(措法34等関係)
(1)改正の内容
① 文化財保存活用支援団体に買い取られる場合の適用対象への追加
  本特例の対象に、重要文化財、史跡、名勝又は天然記念物として指定された土地が文化財保護法に規定する文化財保存活用支援団体(一定のものに限る。)に買い取られる一定の場合が追加された。
② 農業経営基盤強化促進法の改正に伴う本特例の改正
  本特例の対象に、農業経営基盤強化促進法の農用地利用規程の特例に係る事項が定められた農用地利用規程に基づいて行われる農用地利用改善事業の実施区域内にある農用地が、その農用地の所有者等の申出に基づき一定の農地中間管理機構に買い取られる場合が追加された。
(2)適用関係 ① 上記(1)①の改正は、個人が平成31年4月1日以後に行う土地等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った土地等の譲渡については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、個人が農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第12号)の施行の日以後に行う土地等の譲渡について適用される。

5 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の改正(措法34の2関係)
(1)改正の内容
 農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第12号)において、農地利用集積円滑化団体及び農地利用集積円滑化事業が廃止されたことに伴い、「農業経営基盤強化促進法の買取り協議に基づき農用地区域内にある農用地が農地利用集積円滑化団体に買い取られる場合」が本特例の対象から除外された。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、個人が農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第12号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日以後に行う土地等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った土地等の譲渡については従前どおりとされている。

6 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の改正(措令22の9関係)
(1)改正の内容
 農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第12号)において、農地利用集積円滑化団体及び農地利用集積円滑化事業が廃止されたことに伴い、「農地保有の合理化に資するため、農地利用集積円滑化団体に対し、農業振興地域の整備に関する法律に規定する農用地区域内にある農地等を譲渡した場合」が本特例の対象から除外された。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、個人が農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第12号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日以後に行う土地等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った土地等の譲渡については従前どおりとされている。

7 居住用財産の譲渡所得の特別控除制度の特例の改正(措法35関係)
(1)改正の内容
 本特例の対象となる被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の範囲に、老人ホーム等に入居していたこと等の特定事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合(一定の要件を満たす場合に限る。)におけるその居住の用に供されなくなる直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋及びその家屋の敷地の用に供されていた土地等が追加された上で、適用期限が令和5年12月31日まで4年延長された。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、個人が平成31年4月1日以後に行う対象譲渡について適用し、個人が同日前に行った対象譲渡については従前どおりとされている。

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