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解説記事2019年07月22日 【ニュース特集】 剰余金配当の課税関係で東京高裁が注目判決(2019年7月22日号・№796)

ニュース特集
利益及び資本剰余金を原資とする配当で新たな解釈を示す
剰余金配当の課税関係で東京高裁が注目判決

 納税者(内国法人)が外国子会社から受け取った利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資とする配当の法人課税上の取扱いなどが問題となっていた税務訴訟で、東京高裁が注目すべき判決を下した(令和元年5月29日判決)。東京高裁は、利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当はその全額が「資本の払戻し」に該当するとした課税当局の主張を採用した一審判決を覆すかたちで、原則として資本剰余金を原資とする配当は「資本の払戻し」(法法24①四)の対象になる一方で、利益剰余金を原資とする配当は益金不算入となる「剰余金の配当」(法法23①一)の対象になるという判断を示した(納税者の全面勝訴)。なお、全面敗訴した課税当局は、上告受理申立てを行っている。課税当局が主張した法令解釈を否定した控訴審判決が確定すれば、法人課税上の取扱いに影響を与える可能性があるだけに、最高裁の判断に注目が集まりそうだ。

資本配当は「資本の払戻し」の対象で利益配当は益金不算入の対象と判断
 本件で問題となっていたのは、内国法人である納税者が外国子会社から受け取った利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする配当の法人課税上の取扱いである。
 事実関係をみていくと、内国法人である納税者は、完全支配する外国子会社(米国デラウェア州法に基づき設立されたLLC)から、日本の会社法上、利益剰余金及び資本剰余金に相当する各金額を原資とする剰余金の配当(以下「利益配当」と「資本配当」という)を受けた。納税者は、利益配当は益金不算入となる「剰余金の配当」(法法23①一)に該当するとして益金不算入、資本配当は「資本の払戻し」(法法24①四)に該当するとしてプロラタ計算により生じた株式評価損を損金に算入していた。これに対し課税当局は、利益配当及び資本配当は各決議日や効力発生日が同一であることなどから、その全額が「資本の払戻し」(法法24①四)に該当するとして、法人税更正処分を行った。これを不服とした納税者は、一審のなかで、利益配当及び資本配当はそれぞれ別個の議案により決議された別個のものであり、このうち利益剰余金を原資とする利益配当は「資本の払戻し」(法法24①四)には該当しない旨などを主張して、法人税更正処分の取り消しを求めた。

「受取配当の益金不算入」(法人税法23条)  内国法人が「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものを除く。)」(法法23①一)の額を受けるときは、その額はその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されない。

「資本の払戻しのみなし配当」(法人税法24条)  法人の株主等である内国法人が当該法人の資本の払戻しの一態様である「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」(法法24①四)により金銭の交付を受けた場合において、その金銭の額が当該法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の「株式又は出資に対応する部分の金額」を超えるときは、その超える部分の金額は、法人税法23条1項1号の剰余金の配当の額とみなされる。

 一審の東京地裁は、法人税法24条1項4号規定の「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る)」とは、「資本剰余金のみを原資とする剰余金の配当」及び「資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」を指すという解釈を示したうえ、納税者の主張を斥けていた(なお、本件は別の争点で納税者が勝訴している(下の囲みを参照))。

地裁、本件についてプロラタ計算に係る法令は違法無効と判断して更正処分を取消す
 一審の東京地裁は、利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資とする配当は「資本の払戻し」(法法24①四)に該当すると判断して課税当局の主張を採用していた。その一方で地裁は、法人税法は法令23条1項4号によるプロラタ計算によりみなし配当の金額を計算した場合に利益剰余金を原資とする部分の配当が「株式又は出資に対応する部分の金額」に含まれて「有価証券の譲渡に係る対価の額」(法法61条の2①一)と認識されて法人税の課税を受ける(益金不算入の対象とならない)という事態は想定していないと指摘。本件については、法令23条1項4号の規定は法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なもので無効と判断して法人税更正処分を取り消していた(本誌730号40頁参照)。

課税当局の主張を採用した一審判決を覆す  東京高裁は、「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る)」(法法24①四)とは、資本剰余金を原資とする配当について適用されるという判断を示したうえで、例外として資本剰余金と利益剰余金の双方を同時に減少して剰余金の配当を行った場合でいずれの配当が先に行われたとみるかによって課税関係に差異が生じる場合はこれを「資本の払戻し」と整理して同配当は「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うもの)」(法法24①四)の対象になるという判断を示した(課税関係のイメージは図表2及び3参照)。そして本件について高裁は、例外に当たらないことから、利益配当は益金不算入となる「剰余金の配当」(法法23①一)の対象になる一方で、資本配当は「資本の払戻し」(法法24①四)の対象になると判断した。

 なお、高裁は、仮に配当全体が「資本の払戻し」に該当する(課税当局の主張を採用する)と解するとしても、利益配当の原資が留保利益(利益剰余金)であるにもかかわらず、これに資本配当として課税されることになることは法人税法の委任の範囲を超えることになると指摘。本件については法令23条1項4号の規定を違法無効であると判断した一審判決を支持している。

【図表1】剰余金の配当に係る課税関係に関する当事者双方の主張(要旨)
課税当局(国) 納税者
 剰余金の配当は配当の手法にかかわらず、その全体が資本と利益とが混合したものであると考えて、その全額を「資本の払戻し」(法法24①四)と整理する。例外的に、配当原資が利益剰余金のみであることが明らかな剰余金の配当のみが益金不算入の対象となる「剰余金の配当」(法法23①一)に該当する。  法人税法24条1項4号規定の「資本剰余金の額の減少に伴うもの」とは、資本剰余金を原資とする配当を指し、利益剰余金を原資とする配当は含まれない。利益剰余金を原資とする配当は益金不算入の対象となる「剰余金の配当」(法法23①一)に該当し、資本剰余金を原資とする配当は「資本の払戻し」(法法24①四)に該当する。

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