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解説記事2019年08月05日 【ニュース特集】 当局、質問応答記録書で臨場感・迫真性を追求(2019年8月5日号・№798)

ニュース特集
動機、背景、目的、理由なども詳細に
当局、質問応答記録書で臨場感・迫真性を追求

 課税当局が示す「質問応答記録書」の作成における留意点が判明。納税者から臨場感、迫真性のある供述を引き出す、時制を明確にする、行為・行動の動機、背景、目的等をできる限り詳細に記載するなどとしている。また、自白信用性の評価基準として、秘密の暴露、説得力ある動機などを挙げている。納税者の非協力などにより質問応答記録書に代えて作成する「調査報告書」について、課税当局は、事実関係をできる限り具体的に書く(推測で書かない)、事実認定に係る証拠を具体的に書くなどとしている。

信用性の高い申述から処分の適法性を判断
 調査時の調査担当者の質問に対する納税者等の回答内容が、争訟において証拠とされ、課税当局による処分等の適法性が判断されるケースがある。
 例えば、隠蔽又は仮装の有無が争われた平成30年12月4日裁決(裁決事例集No.113)では、審判所が、納税者の申述は客観的な証拠や客観的な事実経過と符合することから信用性が高いと評価。その申述から、納税者は消費税等の課税事業者にならないようにする目的で売上金額を減額して所得税を申告することとし、各年次集計表において申告する売上金額に○印や下線を付すなどして売上金額の合計が1,000万円以下になるように調整したと認定し、各年次集計表の調整について、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別の隠蔽又は仮装と評価すべき行為であると判断している。

回答を証拠化する質問応答記録書、調査報告書
 調査担当者が納税者等の回答内容を文書の形で確保・証拠化する方法として、質問応答記録書の作成(本誌751号参照)、調査報告書の作成がある。調査報告書は、納税者等が非協力などの理由から質問応答記録書の形での証拠化が不可能な場合又は同記録書の作成までは要しない内容である場合に同記録書に代えて作成される。また、質問応答記録書を作成した旨なども記録される(参照)。

 質問応答記録書、調査報告書について、課税当局は、事実認定で重要となる契約書、稟議書、メール文書など客観的な資料の意図するところや客観的資料同士を結びつける役割もあるとしている。

質問応答記録書の作成上の留意点とは
 課税当局は、質問応答記録書の作成上の留意点として、あいまいな表現はしない、臨場感、迫真性のある供述を引き出す、納税者の行為・行動について、動機、背景、目的、具体的な理由をできる限り詳細に記載するなどとしている(表1参照)。
信用性の評価基準8項目  また、自白信用性の評価基準として、客観証拠や第三者の供述との整合性、秘密の暴露、自分の不利益をあえて認めているか、内容の一貫性などの8項目を挙げている(表2参照)。

【表1】質問応答記録書の作成における留意点
(1)あいまいな表現、後で別に解釈できる表現はしない(専門用語は使わない、より一般的な言葉を使う) ⇒売上除外、架空計上、過大、過少、虚偽は、一般の人(納税者)は使わない
 (例)「売上除外をしてしまいました。」という供述
(2)臨場感、迫真性のある供述を引き出す  ⇒例えば、納税者が方言を使った場合は、そのまま記載し、それを標準語で説明
 (例)「私は売上を抜いても『分かりっこない』と思いました。『分かりっこない』というのは、方言で『分かるはずがない』という意味です。」
(3)時制を明確にする  ⇒いつから不正を行っていたか、いつから認識していたかも記載
 (例)「売上漏れをして、悪いことをしてしまったと思います。」
  ※いつの時点の認識か分からない(申告の時点ではないと反論される)
        ↓             
  「税金を少なくした申告をしました。それが悪いことであるということは申告する時から分かっていました。」
(4)客観的事実と主観的認識を併せて録取し、両者を明確に分けて押さえておくこと
⇒「Aという行為をしましたが(客観的事実)、それはBという趣旨ではなく、Cという趣旨でやりました(主観的認識)。」
 (例)「売上を計上しませんでしたが(客観的事実)、それは、単に計上し忘れたわけではなく、遊ぶための金が欲しかったからやりました(主観的認識)。」
(5)納税者の行為・行動について、動機、背景、目的、具体的理由などをできる限り詳細に記載する  (例)
 【動機】   子どもの大学費用や自宅のローンの支払に充てる以外にも、自分の小遣いにも使いたかったので、少しでも税金を安くするために、実際にはない仕入金額を計上しようと考えました。
 【理由】   仕入金額を実際に支払った金額よりもわざと多く計上したのは、売上金額をごまかすと、売上金額がそれまでと比べて減少して、税務署に分かってしまうと思ったからです。  【当事者の事情】   ・仕入金額を実際よりも多く計上するための方法として、A社の代表取締役のBさんにウソの領収証を作ってもらいました。
   経理をやっている専務の奥さんは、ウソの領収証を作成することに絶対に「うん」と言わないことが分かっていましたから、A社の2階の社長室で直接、Bさんに依頼しました。   ・依頼したのは領収証の日付の前の日の……〇月25日です。
   うちは、毎月25日が仕入れの支払日で、それに間に合うように前の日にお願いに行ったので、よく覚えています。  【具体的理由】   ・具体的には、200万円を支払った事実はないのに、ウソの領収証を作成してもらい、それを受け取って、その領収証に基づいて、A社から200万円の仕入れがあったように仕入帳に記帳しました。
   ウソの領収証を作ってもらう方法は、以前、ある取引先の社長から「ウソでも、領収証があると税務署でもなかなか分からない。」と聞いたことがあったからです。

【表2】自白信用性の評価基準
① 具体的かつ詳細な内容か
② 客観証拠や第三者の供述等(動かしがたい事実)との整合性があるか
③ 当人でなければ分からない事実(秘密の暴露)か
④ 結論だけでなく、理由にも説得力があるか
  理由⇒意図・動機(なぜその方法を選択したのか)
⑤ 自分の不利益をあえて認めているか
⑥ 一貫した内容であるか(途中で内容が変遷していると信用できない)
⑦ 供述が変遷している場合、その変遷に合理的な理由があるか
⑧ 誘導尋問はないか⇒質問と答えの長さ、「質問は短く、答えは詳細に」が鉄則

調査報告書を作成する際の留意事項
 納税者等が非協力などの場合に作成する調査報告書について、課税当局は、次の事項を作成上の留意点としている。①事実関係をできる限り具体的に書く(事実のみを書き、推測で書かない)、②事実認定に係る証拠を具体的に書く、③納税者等による記載内容の確認が行われないことを踏まえ、メモした調査資料等に基づき、正確に書く、④質問、回答の順番どおりに書く必要はなく、合体させるなどして分かりやすく書く、⑤誰が読んでも同じ解釈(理解)になるように書く(二義を許さない表現)、⑥事実を把握後、速やかに作成し統括官等の決裁を受ける。

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