税務ニュース2010年07月12日 形式的なみなし共同事業要件の充足を問題視、繰越欠損金引継ぎを否認(2010年7月12日号・№362) 企業再編税制で包括否認規定適用、子会社株式の取得価額も争点に
形式的なみなし共同事業要件の充足を問題視、繰越欠損金引継ぎを否認
企業再編税制で包括否認規定適用、子会社株式の取得価額も争点に
みなし共同事業要件を満たすことにより、買収した子会社の吸収合併に伴う繰越欠損金を引き継いだ事例に対し、課税当局は包括否認規定を適用、繰越欠損金の引継ぎを否認した。
また、課税当局は、子会社株式の取得価額にも着目、抱合せ株式として譲渡損失を出すスキームとしても問題意識を持っている可能性がありそうだ。
「事業上の必要性」を認めず 今回のケースで争点となるのは、主に2点。1つは「みなし共同事業要件」だ。
法人税法上、合併法人と被合併法人の特定資本関係の経過期間が5年未満で、かつ、みなし共同事業要件を満たさない場合には、被合併法人の繰越欠損金額の引継ぎは認められない(法法57③)。今回のケースでは、A社は平成21年2月、B社を子会社化、同年3月にB社を吸収合併した。B社との特定資本関係発生から5年未満での合併ということで、A社は、みなし共同事業要件を充足することにより、B社の繰越欠損金を引き継いだ。
これに対し課税当局は、「本合併等が事業上の必要性から進められたものとは認められない」「A社の代表取締役がB社の取締役副社長に就任したのは、繰越欠損金引継ぎの要件を満たすための形式的なもの」等として、事業関連性要件や経営参画要件の形式的な充足の背景に節税意図があるとし、繰越欠損金の引継ぎを否認した模様。
もう1つの争点が、B社株式の取得価額だ。課税当局は、「B社の買収価格の算定が、見込みのない収益予想等の実態と異なる基礎資料に基づいて行われていた」としており、A社によるB社株式の取得価額を問題視していることがうかがえる。課税当局は、A社がB社株式を高値で取得し、抱合せ株式として譲渡損失を出すスキームを活用したものととらえている可能性がありそうだ。ちなみに、高値で株式を取得し、抱合せ株式として譲渡損失を出すスキームは、平成22年度改正で手当てされた非適格合併における抱合せ株式の譲渡損益の否認規定(法法61の2③)のターゲットにもなっている。
A社側は、企業再編税制に係る包括否認規定について、「会社の行為を無視して当局が課税を行うことができる強権であるにもかかわらず、当局の指摘は慎重さを欠いている」とし、「このような法適用は、租税法律主義に反する」として、国税不服審判所に対する審査請求を行い、仮に審査の結果、不服申立てが認められない場合には訴訟を提起する構えだ。
実務家の間では、今回の件をきっかけに、今後企業再編税制に関する税務調査が本格化する可能性を指摘する声もあがっている。
企業再編税制で包括否認規定適用、子会社株式の取得価額も争点に
みなし共同事業要件を満たすことにより、買収した子会社の吸収合併に伴う繰越欠損金を引き継いだ事例に対し、課税当局は包括否認規定を適用、繰越欠損金の引継ぎを否認した。
また、課税当局は、子会社株式の取得価額にも着目、抱合せ株式として譲渡損失を出すスキームとしても問題意識を持っている可能性がありそうだ。
「事業上の必要性」を認めず 今回のケースで争点となるのは、主に2点。1つは「みなし共同事業要件」だ。
法人税法上、合併法人と被合併法人の特定資本関係の経過期間が5年未満で、かつ、みなし共同事業要件を満たさない場合には、被合併法人の繰越欠損金額の引継ぎは認められない(法法57③)。今回のケースでは、A社は平成21年2月、B社を子会社化、同年3月にB社を吸収合併した。B社との特定資本関係発生から5年未満での合併ということで、A社は、みなし共同事業要件を充足することにより、B社の繰越欠損金を引き継いだ。
これに対し課税当局は、「本合併等が事業上の必要性から進められたものとは認められない」「A社の代表取締役がB社の取締役副社長に就任したのは、繰越欠損金引継ぎの要件を満たすための形式的なもの」等として、事業関連性要件や経営参画要件の形式的な充足の背景に節税意図があるとし、繰越欠損金の引継ぎを否認した模様。
もう1つの争点が、B社株式の取得価額だ。課税当局は、「B社の買収価格の算定が、見込みのない収益予想等の実態と異なる基礎資料に基づいて行われていた」としており、A社によるB社株式の取得価額を問題視していることがうかがえる。課税当局は、A社がB社株式を高値で取得し、抱合せ株式として譲渡損失を出すスキームを活用したものととらえている可能性がありそうだ。ちなみに、高値で株式を取得し、抱合せ株式として譲渡損失を出すスキームは、平成22年度改正で手当てされた非適格合併における抱合せ株式の譲渡損益の否認規定(法法61の2③)のターゲットにもなっている。
A社側は、企業再編税制に係る包括否認規定について、「会社の行為を無視して当局が課税を行うことができる強権であるにもかかわらず、当局の指摘は慎重さを欠いている」とし、「このような法適用は、租税法律主義に反する」として、国税不服審判所に対する審査請求を行い、仮に審査の結果、不服申立てが認められない場合には訴訟を提起する構えだ。
実務家の間では、今回の件をきっかけに、今後企業再編税制に関する税務調査が本格化する可能性を指摘する声もあがっている。
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