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解説記事2020年11月02日 ニュース特集 適正な鑑定評価額の前では固定資産税評価額の合理性の根拠なし(2020年11月2日号・№856)

ニュース特集
東京地裁、国の固定資産税評価額を用いず
適正な鑑定評価額の前では固定資産税評価額の合理性の根拠なし


 競売により一括取得した土地、建物等の評価額が争われた裁判で、東京地方裁判所(清水知恵子裁判長)は令和2年9月1日、国の主張する固定資産税評価額ではなく鑑定評価額によることが相当であるとの判断を示した。東京地裁は、資産の客観的な交換価値を上回らない価額と推認される固定資産税評価額による価額比を用いることは、一般的に合理性を肯定し得ないものではないが、当該資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われた場合には固定資産税評価額による価額比を用いて按分する合理性を肯定する根拠は失われるとした。なお、裁判では原告(納税者)の鑑定評価額は適正ではないとされ、裁判所の鑑定評価額が採用された。その結果、消費税等更正処分等の一部が取り消されているが、現在、控訴がなされている。

競売により一括取得した建物等の評価が問題に

 本件は、飲食店の経営等をする会社の原告が競売により一括取得した東京都港区の土地、建物及び附属設備について、その落札金額を按分してそれぞれの取得価額を算出し、これを基に法人税に係る減価償却費及び消費税の課税仕入れに係る支払対価を計算して確定申告をしたところ、税務署から建物及び附属設備の取得価額の計算が誤っているとして法人税及び消費税等の各更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、その処分の取消しを求めたものである。
 原告である納税者は、本件土地及び建物等の価額を、土地については路線価に基づき、建物等については類似物件を参考とした再調達価格に基づき算出して、これらの価格比により落札金額を按分し、土地を13億1,925万5,895円、建物等を12億7,050万円(うち建物は6億8,010万円)と算出した上で、建物等に係る減価償却費を合計1億6,588万2,000円と計上し、これを損金に算入して法人税の確定申告を行うとともに、建物等の取得価格12億7,050万円を本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めて控除対象仕入税額を計算し、消費税等の確定申告を行った。
 一方、税務署は、固定資産税評価額による土地と建物の各評価額の比率により本件不動産の区分を行うのが合理的であるとし、これによると土地の取得価格は22億792万2,726円、建物等の取得価格は3億8,183万3,169円(うち建物は2億439万5,701円)となり、償却限度額は4,985万3,794円となるから、確定申告における減価償却額は上限限度額を超過しているとして本件処分を行った(なお、その後の審査請求手続では、原告は確定申告における時価による按分に代えて、不動産鑑定士による鑑定評価額に基づき按分すべきなどと主張したが、国税不服審判所は固定資産税評価額の比率によって按分することが相当であるとして、請求人(原告)の主張を斥けている。4頁参照)。

審判所、固定資産税評価額の比率による按分が相当
 原告(納税者)は裁判を提起する前に原処分庁(税務署)の処分を不服として審査請求手続を行っており、その際に原告は、確定申告における時価による按分に代えて、不動産鑑定士による鑑定評価額に基づき按分すべきなどと主張していた。
 しかし、国税不服審判所は、請求人(納税者)の鑑定評価による価額を用いた按分法も一応合理性が認められる方法であるとしたが、請求人が用いた不動産鑑定士の評価額の計算が本件建物と構造の異なる建物に基づく査定を行っているなど必ずしも合理性のある算出方法となっていないと指摘。その上で、原処分庁(税務署)が用いた土地及び家屋の固定資産税評価額は、いずれも同一の評価機関により算定されたものであり、かつ、同一時期の時価を反映しているものであることから合理性があるとし、固定資産税評価額の比率によって按分することが相当であるとの判断を示した。
 ただし、原処分庁の固定資産税評価額の比率による按分は、本件建物に設置されたディスプレイ設備に係る固定資産税評価額に相当する額が含まれていないことから、原処分庁の計算は誤りであるとして原処分庁の処分を一部取り消している(平27.6.1 東裁(法・諸)平26-112)。

 原告は、固定資産税評価額の価額比による按分には問題点があるなどとして、不動産鑑定士が作成した鑑定評価書に基づき落札金額を按分し、税額が計算されるべきであるなどと主張した(参照)。

【表】主な当事者の主張

被告(国) 原告(納税者)
・固定資産税評価額は、総務大臣の告示する固定資産評価基準により算出されるものであり、土地については売買実例価額、家屋については再建築価額に基づいて評価されているものであるため、土地及び家屋の適正な時価を反映していると解される上、土地と家屋の価額の算出期間及び算出時期が同一であるから、土地及び家屋の固定資産税評価額はいずれも同一時期の時価を反映していると考えられる。
・落札金額を区分する際の価額比は、固定資産税評
価額の価額比を用いることが合理的であるから、本件土地の固定資産税評価額並びに本件建物及びディスプレイ設備の各固定資産税評価額に相当する額の価額比を用いて落札金額を按分することが相当である。
・原告の鑑定書が「建物再調達原価」の算出の前提とした建設事例は、いずれも本件建物と構造や階数等が異なっており、本件建物と類似したものといえないなど、合理性があるものとはいえない。
・土地の固定資産税評価額は、売買実例等を基にした算出価額の7割程度とされているのに対し、建物の固定資産税評価額は、固定資産評価基準に従い再調達価格による原価を基に決定されている。そして個別性の高い建物の価額は、その評価において土地以上に大きな差異が生じ得るところ、とりわけ本件建物は、繁華街にある飲食店舗用のビルであり、実際の売買においてはその収益性が重視されることから、収益還元法による評価は不可欠であるところ、固定資産税評価額の決定に当たってはそのような評価はされていない。
・一般に鑑定による評価額を用いて土地と建物等の取得価額を区分する方法には合理性が認められるのであり、本件においては不動産鑑定士が作成した鑑定評価書に基づき落札金額を按分し、税額が計算されるべきである。

固定資産税評価額、適正時価を上回わらないものにすぎず

 東京地裁は、固定資産評価基準に従って評価された価格は特段の事情がない限り適正な時価であると推認されるため、本件不動産を構成する各資産に係る固定資産税評価額の価額比を用いて本件落札金額を按分することが合理的である旨の国の主張に対して、最高裁判決を引用し、固定資産評価基準の定める評価方法が、適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであるとしても、この評価方法に従って決定された価格は特段の事情のない限り当該資産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないことが推認されるにとどまるものというべきであるとした(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁)。また、地方税法が固定資産税の課税標準に係る固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を総務大臣の告示に係る評価基準に委ねているのは、固定資産税の賦課期日における土地課税台帳等の登録価格が同期日における当該資産の客観的な交換価値を上回らないようにすることのみならず、全国一律の統一的な評価基準による評価によって、各市町村全体の評価の均衡を図り、評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消することをも目的とするものであり、適正な鑑定の評価の過程において考慮の対象とされる資産の個別的な事情は、ある程度捨象されることも前提としているものということができると指摘した。
 その上で東京地裁は、法人税に係る減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算するために、一括して取得された土地及び建物等の取得価額を按分する方法として、当該資産の客観的な交換価値を上回らない価額と推認される固定資産税評価額による価額比を用いることは、一般的には合理性を肯定し得ないものではないが、当該資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ、その結果、固定資産税評価額と異なる評価がされた場合にはもはや固定資産税評価額による価額比を用いて按分する合理性を肯定する根拠は失われるとの判断を示した。
原告の鑑定評価は適正といえず
 本件については、原告の鑑定の申出により裁判所が鑑定を行っており、本件鑑定の評価額は適正な鑑定に基づくものといえるため、本件不動産を構成する各資産の価額は固定資産税評価額によらずに本件鑑定の評価額によることが相当であるとした。その結果、消費税等更正処分等の一部が取り消されることとなった。
 なお、原告の主張する鑑定評価額は、再調達原価が本件鑑定における再調達原価の2倍を超える上、建物等の実際の工事価格とも大きくかい離するなど、適正な鑑定に基づくものとはいえないとし、落札金額の按分に用いることができないとした。
敷金債務相当額は減価償却資産に加算せず
 そのほか、不動産の取得価額に落札金額に加え敷金債務相当額を加算すべきかについても争点となっていたが、敷金債務相当額は物件の明渡時に賃借人に債務不履行がないとした場合に支払うべき敷金の額に基づくものであるため、建物の購入のために要した費用として減価償却資産の取得価額には加えることができないとの判断を示している。

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