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解説記事2020年12月21日 第2特集 Q&Aで読む改正会社法に伴う法務省令のポイント〜株主総会参考書類編〜(2020年12月21日号・№863)

第2特集
役員候補者と親会社の関係に関する記載を充実
Q&Aで読む改正会社法に伴う法務省令のポイント〜株主総会参考書類編〜


 本特集は、改正会社法等を踏まえた会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年法務省令第52号)の概要について、法務省令案に寄せられた意見に対する法務省の考え方などを元にQ&A形式で解説する第二弾。前回(本誌862号参照)の「事業報告編」に引き続き、「株主総会参考書類編」をお伝えする。
 注目すべき項目の1つが上場子会社における少数株主保護の議論等を踏まえた見直しだ。上場子会社(又は従属上場会社)において支配的な株主の影響力行使により少数株主の利益が損なわれる事例が見受けられており、東京証券取引所の「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」は9月1日に中間整理を公表している。今回の改正では、株主総会参考書類において、役員(取締役及び監査役)候補者と親会社等の関係に関する記載事項を拡充することとしている。現行(会社法施行規則74条3項3号)は「候補者が過去5年間に当該他の者の業務執行者であったことを当該株式会社が知っているときは、当該他の者における地位及び担当」とされているが、「過去10年」に拡充されている。

補償契約及び役員等のために締結される保険契約関係

株主参考書類は締結の見込みもある補償契約等も記載
Q

 株主総会参考書類への記載が求められている「補償契約の内容の概要」及び「役員等賠償責任保険契約の内容の概要」(会社法施行規則74条1項5号、6号等)として、どのような記載が必要になるか。また、事業報告においても補償契約及び役員等賠償責任保険契約の内容の概要の記載が求められているが(会社法施行規則121条3号の2ロ、121条の2第3号等)、事業報告において求められる記載と異なる点は何か。
A
 補償契約及び役員等賠償責任保険契約については、類型的に役員等の職務の執行の適正性に影響を与えるおそれがあること、利益相反性が高いこと等から、これらの契約の概要が株主にとって重要な情報であると考えられるため、株主総会参考書類に「補償契約の内容の概要」及び「役員等賠償責任保険契約の内容の概要」の記載が求められている。補償契約や役員等賠償責任保険契約は、多種多様なものがあり得るため、その内容の概要として何を記載することが求められるかは、各株式会社における個別具体的な事情に応じて判断されるべき事項であるが、このような趣旨を踏まえて、株主が当該契約の内容のうち重要な点を理解するに当たり、必要な事項を記載することが求められる。
 また、事業報告においては、補償契約又は役員等賠償責任保険契約によって役員等の業務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置について記載を求めているが、株主総会参考書類においては求めていない。加えて、株主総会参考書類においては、今後締結することが見込まれる補償契約及び役員等賠償責任保険契約の内容について、株主総会参考書類の作成時点において判明している限りにおいてその概要を記載することになるのに対し、事業報告においては、既に締結された補償契約及び役員等賠償責任保険契約の内容の概要を記載することになる。株主総会参考書類及び事業報告において、これらの契約の「内容の概要」としてどの程度の記載が求められるかについては、そのような記載時点の差異等も踏まえてそれぞれ解釈されることになる。

保険契約を締結する予定があるときとは?
Q

 株主総会参考書類への記載が求められている候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を「締結しているとき」「締結する予定があるとき」とは、どのような場合が該当するか。
A
 会社法施行規則74条1項6号の「締結しているとき」とは、当該候補者が当該株式会社の取締役に就任した場合に当該候補者が被保険者に含められることとなる役員等賠償責任保険契約が株主総会参考書類の作成時において存在していることをいう。したがって、(ア)取締役候補者が現任の取締役である場合であって、既に当該取締役を被保険者とする役員等賠償責任保険契約が締結されているとき及び(イ)取締役候補者が新任の候補者である場合であって、当該株式会社の取締役に就任した場合には、当該候補者が被保険者に含まれることとなる内容の役員等賠償責任保険契約が既に締結されているときが含まれる。
 また、会社法施行規則74条1項6号の「締結する予定があるとき」には、当該候補者が当該株式会社の取締役に就任した場合に当該候補者が被保険者に含められることとなる役員等賠償責任保険契約が株主総会参考書類の作成時においては存在しないが、締結する予定があることをいう。したがって、(ウ)取締役候補者が現任の取締役である場合であって、当該取締役を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を締結する予定であるとき及び(エ)取締役候補者が新任の候補者である場合であって、当該株式会社の取締役に就任した場合には、当該候補者が被保険者に含まれることとなる内容の役員等賠償責任保険契約を締結する予定であるときが含まれる(会社法施行規則74条の3第1項8号、75条6号、76条1項8号、77条7号についても同様)。

任期途中に更新時期がある場合はその旨を記載
Q

 役員等の候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を「締結しているとき」について、当該候補者の任期の途中に当該契約の更新が予定されている場合の取扱いはどのようにすべきか。
A
 株主総会参考書類に役員等賠償責任保険契約に関する記載を求める趣旨は、役員等賠償責任保険契約はその内容によっては役員等の職務の執行の適正性に影響を与えるおそれがあり、また、役員等に対して適切なインセンティブを付与するという意義を有することから、当該候補者が役員等に選任された場合におけるその職務の執行の適正性及び役員等へのインセンティブの付与に関する情報を株主に提供することにある。そのような観点から、任期途中に更新時期が到来する予定がある場合には、当該契約の「内容の概要」としてその旨を記載することが考えられる。

将来の取締役の判断は拘束せず
Q

 株主総会参考書類に役員等賠償責任保険契約を「締結する予定があるとき」に関する記載をすることは、将来の取締役会の判断を縛ることにならないか。
A
 「締結する予定があるとき」(会社法施行規則74条1項6号)に関する記載は、株主総会参考書類作成時点における予定を記載するものであり、将来の取締役会の判断を拘束するものではない。

社外取締役関係

「社外取締役に期待される役割」は非公開会社も記載
Q

 事業報告において、「当該社外役員が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要」の開示が要求される株式会社は公開会社であるが(会社法施行規則124条4号ホ、119条2号)、なぜ、株主総会参考書類において、「社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割の概要」の記載を義務付ける対象は公開会社に限定されていないのか。
A
 社外取締役は、少数株主を含む全ての株主に共通する株主の共同の利益を代弁する立場にある者として、業務執行者から独立した客観的な立場で会社経営の監督を行い、また、経営者あるいは支配株主と少数株主との利益相反の監督を行う等の役割を果たすことが期待されており、その重要性については公開会社においても非公開会社においても違いはないこと、このような社外取締役の重要性に鑑みて、会社法施行規則74条4項2号において、候補者を社外取締役候補者とした理由を株主総会参考書類に記載しなければならない株式会社を公開会社に限定していないこととの整合性の観点等から、同項3号に掲げる事項を記載しなければならない株式会社を公開会社に限定していない。
 他方で、公開会社のコーポレート・ガバナンスにおいて社外取締役に期待される役割は、一般的に非公開会社よりも大きいことに照らせば、公開会社においては、株主が社外取締役の職務の遂行について事後的に検証を行うことが可能となるように、株主総会参考書類における「社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割の概要」の記載のみならず、事業報告においても「当該社外役員が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要」の記載を求めることが適切であるとされている。

現行規定では株主に情報が提供されていないとの問題点
Q

 「当該候補者が社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割の概要」は、現行の会社法施行規則において株主総会参考書類の記載事項とされている「当該候補者を社外取締役候補者とした理由」(会社法施行規則74条4項2号、74条の3第4項2号)及び「経営に関与したことがない候補者であっても社外取締役としての職務を適切に遂行することができるものと当該株式会社が判断した理由」(同74条4項5号、74条の3第4項5号)と記載内容が重複するところがあると考えられるがどうか。
A
 現行の会社法施行規則においては、「当該候補者を社外取締役候補者とした理由」及び「会社の経営に関与したことがない候補者であっても社外取締役としての職務を適切に遂行することができるものと判断した理由」が株主総会参考書類の記載事項とされているが、実務上、これらの規定に基づく記載によっては、社外役員に期待されている機能を果たし得るか否かの評価に資する情報が十分に株主に提供されていないという問題があると指摘されていた。
 このため、上場会社等に社外取締役の設置を義務付けた改正法の趣旨に照らし、社外取締役による監督の実効性を担保するため、現行の会社法施行規則の規定による記載に加え、株式会社が社外取締役候補者に対して、どのような視点から取締役の職務の執行の監督を期待しているかなど、株式会社が当該社外取締役候補者にどのような役割を期待しているかをより具体的に記載することを要求するものとなっている。

その他

親会社が存在する会社の少数株主保護が必要
Q

 取締役の選任に関する議案、監査等委員である取締役の選任に関する議案及び監査役の選任に関する議案に関する株主総会参考書類の記載事項について、それらの議案の候補者が当該株式会社の親会社等や特定関係事業者の業務執行者等であったことを、「過去5年間」から「過去10年間」について記載することとされているが、改正の趣旨及び会社が過去10年間の調査については、会社としてできる限りの調査を尽くした上で開示を行えば足りるという理解でよいか。
A
 近時、特に上場子会社を念頭に、親会社等が存在する株式会社における少数株主の保護の必要性が指摘されている。会社法施行規則74条3項3号等の改正は、取締役等の候補者と親会社等や特定関係事業者との関係についての開示を充実させるものであり、このような考えに沿うものである。
 なお、同号等の規定により株主総会参考書類に記載しなければならないこととなる事項は、当該株式会社が「知っているとき」にのみ記載しなければならないとされているところ、「知っているとき」とは、これらの規定に掲げる事項が開示事項とされていることを前提として行われる調査の結果として知っている場合を指すものと解され、そのような調査をしても知り得なかった事実を記載することを求めるものではないとされている。

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