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解説記事2019年09月30日 実務解説 民事信託が裁判で遺留分侵害目的と認定されて一部分が無効とされた事例の影響(2019年9月30日号・№805)

実務解説
民事信託が裁判で遺留分侵害目的と認定されて一部分が無効とされた事例の影響
―事業承継目的の持ち株信託の留意点―
 一般社団法人民事信託活用支援機構 代表理事 高橋倫彦

まえがき

 本誌第772号(2019年1月28日発行)に昨年秋に出た民事信託に関する下級審の判決が「相続対策の信託をめぐり東京地裁が注目判決」として紹介されている(脚注1)。
 この判決では、外形上は遺留分相当額の受益権を与えつつも、実質的な遺留分価値を奪う方法として信託が利用されたとして、信託契約の一部が無効とされた。無効とされた部分の信託財産は収益を生まない不動産で、遺留分権利者である受益者は信託収益の配当を当初から期待できない状況であった。
 この判決の信託は不動産信託であるが、この判決の理由を一般化すると、同族会社の事業承継において持ち株信託が設定された場合も、非後継者が有する受益権持ち分に対して信託収益の配当が当初から期待できないような場合は、この判決と同様の理由で信託が無効とされることになる。事業承継における持ち株信託は世間で広く行われているので、この判決の影響は大きい。
 この判決については、既に多くの専門誌に判例紹介や批評記事が掲載されているが(脚注2)、事業承継における持ち株信託に対する影響については検討されていない。そこで、本稿はこの裁判の対象となった信託の内容、裁判の争点、裁判所の判断を吟味して、今後同族会社の事業承継のための持ち株信託を仕組む場合、どのような点に留意したらよいかを、信託の実務の観点から検討する。なおこの裁判は上級審にて、このほど和解し、双方が信託全体の有効性を認め、被告が原告の信託権の時価買取に応じたので、確定判決にならなかった模様である。この裁判事例のような信託は、今後無効にならないとしても、遺留分にもとづく減殺請求の対象になるリスクがある。

第1章 地裁判決の内容

1 被相続人の家族関係等
(1)家族関係と法定相続人

 この事件の家族関係と法定相続人は次の図表1のとおりである。被相続人には長男、次男と次女の3人の子があり、その妻は既に亡くなっていた。法定相続人は3人の子であり、この事件では長男が原告として被告の次男に対して信託契約の無効を理由とする共有権確認等請求訴訟を提起した。

(2)信託関係
 被相続人が設定した信託の信託関係は次の図表2のとおりである。すなわち、法定相続人の3人を第1次承継受益者とし、第2次承継受益者は次男の子とする受益者連続型信託であった。

(3)信託財産の種類
 被相続人の財産は次の図表3のとおりである。被相続人は死因贈与契約により被相続人の全財産を次男と次女に遺贈した。その後その主要な財産を信託した。信託財産は収益物件と非収益物件が混在していた。

2 この信託の契約の内容は次の通り
(1)主要条項

 被相続人はその次男がその家産を承継することを願い信託を設定した。この信託の主要条項は下記のとおりである。
・信託目的:被相続人(委託者)の次男が委託者の家を継ぎ、その財産を管理し、仏壇等を守ることにより、委託者の家系が末永く繁栄すること。
・信託財産:委託者の有するすべての不動産と金銭の一部
・受託者:委託者の次男とする。
・委託者の権利:委託者の死亡により消滅する。
・当初受益者:委託者とする。
(2)受託者の権限
 委託者は、受託者に下記のとおり広い裁量権を与えた。
・信託財産の管理・処分の方法:受託者がその裁量で行うことができる(受託者は信託不動産の一部を換金し、これを受益者に分配し、その相続税納税資金に充当した)。
・受託者は信託不動産を無償で使用できる。
(3)承継受益者の権利
 委託者は長男を含む法定相続人の全員を第1次承継受益者とし、長男には下記のとおり遺留分相当の受益権割合6分の1を与えた。第1順位の受益者が死亡した時は、その者の受益権が消滅し、第2順位の者が新たな受益権を取得する。
① 委託者(初受益者)の死亡により、委託者の法定相続人が以下の通り受益権を承継取得する。
 第1順位:委託者の長男と次女がそれぞれ受益権割合6分の1、委託者の次男が受益権割合6分の4
 第2順位:次男の子供
② 受益者は信託不動産の売却代金、賃料等の経済的利益を受けることができる。
③ 受益者の一人は他の受益者に対して受益権持ち分の買い取りを請求できる。受益権持ち分の買い取り価額は固定資産評価額とする。
(4)承継受益者の権利行使
 信託金銭は受益者の払い戻し請求があれば引き出し可能であるが、受益者の長男が払い戻し請求を希望しても下記のように次女が反対をすれば引き出せない。
・信託金銭は受益者又は受益者代理人の払い戻し請求がない限り受託者により信託内に留保される。
・受益権は、受託者の承諾なしに譲渡等処分することができない。
・受益者が複数の場合の意思決定は信託法105条に拘わらず次女が行うものとする。

3 遺留分と受益権持ち分
 長男の法定相続分割合は相続財産の3分の1であり、その遺留分割合は6分の1であった。これに対して長男の受益権割合は信託財産の6分の1と遺留分割合と同じであるが、信託財産の価値は相続財産の全体に満たず、かつ長男が他の受益者にその受益権の買い取りを請求しても、買い取り価額は時価より低い固定資産評価額であった。

4 裁判の原告である長男の請求
(1)主位的請求:

 原告である長男は信託契約および死因贈与契約の無効を主張し、被告の次男(受託者第一次共同承継受益者)に対して下記の主位的請求を行った。
① 被告は、信託財産を構成する不動産の所有権移転登記及び信託登記の抹消登記をせよ。
② 被告は、原告に対して共有持ち分権(遺産共有)を有することの確認をせよ。
(2)予備的請求:
 原告は、主体的請求に代わる予備的請求として上記不動産について遺留分減殺を原因として、原告の持分割合とする一部移転登記をせよ。

5 原告と被告の主張の争点
 裁判所は下記のように、裁判上の争点をまとめた。
① 委託者は契約時に法律行為の意味内容を理解する能力を欠く状況にあったか否か。意思能力を欠く状況にあれば信託契約は無効である。
② この信託は、第1順位の受益者の利益に反し第2順位の受益者に財産を残すことが信託目的であり、遺留分制度を破壊するので公序良俗に反し無効になるか、否か。
③ 本件信託が有効な場合、遺留分による減殺の対象は信託財産か受益債権か。
 原告である長男は上記①及び②に基づき信託契約の無効を主張し、その上で遺留分に基づき減殺請求をしたが、被告の次男は信託契約を有効であると主張した。減殺請求の対象については、学説は信託財産説と受益権説とに分かれる。

6 争点に関する裁判所の判断
 裁判所は上記の争点について下記のように判断した。
① 公証人が、信託契約時に委託者の病室に訪れ、委託者がその面前で自分の意思で契約したことを宣誓し、公証人がこれを認証したことなどから、委託者は意思能力を欠く状況であったとは認められない。
② 信託不動産のうち経済的利益の分配が信託設定当初から想定されない不動産の部分(自宅敷地等)の信託は、遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したものであり、公序良俗に反して無効である。
③ 信託契約による信託財産の受託者への移転は信託目的達成のための形式的な移転にすぎない。実質的な権利として移転される受益権を遺留分に基づく減殺請求の対象とする。

7 判決内容
 裁判所は上記の判断に基づき、原告の主位的請求の一部を認容した。
・原告の主位的請求である不動産の所有権移転登記及び信託登記の抹消は、経済的利益の分配が想定されないと思われる不動産についてこれを認容する。
・原告の予備的請求である死因贈与の遺留分減殺を原因とする原告の持ち分の所有権移転登記手続きは、上記不動産について、これを容認する。

第2章 持ち株信託

1 同族会社の事業承継
(1)同族会社のオーナーがその後継者にその持ち株の支配権を承継する方法

 後継者にその持ち株の支配権を承継するためには一般に次の3方法が考えられる。
① 持ち株を次世代経営者へ贈与又は相続させる。中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置(贈与税・相続税の納税猶予制度)を活用して持ち株を贈与又は相続させるのもこの方法の一種である。
② 持ち株会社に持ち株を移転し、持ち株会社の持ち分を次世代経営者へ贈与又は相続させる。
③ 持ち株信託を設定し、その受益権を次世代経営者へ贈与又は相続させる。
(2)持ち株の承継方法の比較
 この3方法について主として税務の観点から比較すると図表4のようになる。

2 事業承継における遺留分侵害リスク
 同族会社の場合、オーナーの持ち株の価値がその相続財産の価値の大部分を占めることが多い。このオーナーがその後継者にその持ち株を贈与又は相続させると、オーナーの法定相続人の内、後継者以外の法定相続人の遺留分を侵害するリスクが発生する(脚注3)。相続の開始前における遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要であり、家事審判手続に従う(改正民法1049条、家事事件手続法39条)。このリスクを回避するために、持ち株会社の設立又は持ち株の信託が良く行われる(脚注4)。持ち株会社の場合は、後継者がその経営権を取得し、非後継者はその遺留分相当の会社持ち分を取得する。持ち株信託の場合は、後継者がその信託株式の議決権の指図権を取得し、非後継者はその遺留分相当の受益権持ち分を取得する。同族会社の支配権維持のためにその持ち株は市場で換金できないが、持ち株会社の持ち分も受益権持ち分も譲渡制限のため換金できない。また、同族会社が利益を社内に留保し株式配当をしない場合は、持ち株会社も持ち株信託も共に収益の配当が期待できない。
 なお、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の第2章に遺留分に関する民法の特例がある。この特例の対象は株式又は持分の贈与であり、信託受益権は含まない(同法3条2項)。

3 事業承継目的の持ち株信託の留意点
 第1章で紹介した裁判例では、民事信託が遺留分侵害目的と認定されて無効とされた。持ち株信託においても、外形上は遺留分相当額の受益権を与えつつも、実質的な遺留分価値を奪う方法として信託が利用されたと認定されるような場合は信託契約の一部が無効とされる危険がある(脚注5)。非後継者が有する受益権持ち分について信託収益の配当が当初から期待できないような場合は、この問題に留意する必要がある。
(1)受益者連続型の持ち株信託の留意点
 ① 第1順位の承継受益者である非後継者の子の受益権の経済的価値

・受益者連続信託では第1順位の受益者は、その死亡により受益権が消滅するので、その生存中に受託者に対して信託財産を構成する資産を換価処分し、その代金の分配をするように指図する権利か、又は当該資産の収益力が低い場合はこれを収益力の高い資産に入れ替えるように指図する権利(信託財産の支配権)が留保されていなければならない。
・第1順位の受益者がこのような権利を有しない場合は、その受益権に経済的価値があるとは言えない。
 ② 遺留分の算定における受益権の評価
・第2順位の受益者が第1順位の受益者と比べて年齢が若い場合は、第1順位の受益者の死亡により信託財産を承継する可能性が高いと考えられる(脚注6)。遺留分の算定は被相続人が相続開始の時点において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えて算定する(改正民法1043条1項)ので、遺留分の算定において第2順位の受益者の受益権の価額も加える必要がある。
・但し、第2順位の受益権の取得時期が第1順位の受益者の死亡後になるので、その受領時期の遅れを考慮してその評価額は第2順位の受益者が将来受領すべき信託財産の価額を現在価値に割り引いた価額にする必要がある。
 ③ 遺産分割における相続財産評価と相続税評価の乖離
・遺産分割における相続財産評価(遺留分算定のための相続財産評価を含む)では、相続財産の価値を経済的実質に基づき評価する。しかし受益者連続型信託の受益権の相続税評価では、収益を含む受益権の評価額は信託財産の全額とみなされる(相続税法9条の3第1項、相続税法基本通達9の3-1)。
・第1順位の受益権を取得する非後継者の子がその生存中に何ももらわずにその受益権が消滅する可能性が高い場合には、遺産分割における相続財産評価と相続税評価が大きく乖離する結果となる。
 ④ 第2順位の受益者の権利が強い場合
・このような税務におけるみなしの取り扱いが行われる理由は、通常は第1順位の受益者が信託の利益を享受することができるのに対し、第2順位の受益者がこれを享受することができるかどうかわからないことが多い。そのために、第2順位の受益者が「受益者としての権利を現に有する者」(相続税法9条の2第1項)に該当しないためかと思われる。
・しかし、この事例のように、第1順位の受益者の権利が弱くこれを現に有するとは言えないのに対して、第2順位の受益者の権利が強くこれを現に有すると言えるような場合は、その経済的実質から考えて、第1順位の受益者ではなく、第2順位の受益者に対して課税すべきではないかと思われる。
(2)実質的な遺留分価値を奪う方法として信託が利用されたと認定されないようにするための信託の仕組み
 ① 受益権複層化信託の利用

 事業承継を目的とする持ち株信託は受益者連続型信託ではなく受益権複層化信託にすることも考えられる。受益権複層化信託の元本受益者は信託財産の持ち株の議決権行使の指図権を有し、収益受益者はこの指図権を有しないので、事業の後継者である子に元本受益権を与え、後継者でない子には収益受益権を与える受益権複層化信託の利用が考えられる。
 この信託が実質的な遺留分価値を奪う方法として信託が利用されたと認定されないようにするためには、持ち株の株式配当額が減少しても収益受益者に対して一定額の信託配当を確保できるように手当する必要がある(脚注7)。この確保ができない場合は収益受益者が受託者に対して信託財産の換金処分を指図できる権利を与える必要がある。収益受益者のためのこのような工夫がない場合は、遺留分侵害の問題が出てくる。
 この信託が受益者連続型信託になる場合は、オーナーの相続発生時に、収益受益者である非後継者の子に信託財産の持ち株全体の相続税がかかる危険があるので、受益者連続型信託にならないようにする必要がある。そこで、信託は、受益者のいずれかが死亡した時に終了し、受益者が連続すると認定されないようにする(脚注8)。この信託は、信託の終了により収益受益権が消滅するが、元本受益権(残余財産受益権)は消滅しないので、後継者である子は、信託終了時に信託元本である持ち株の交付を受ける。以下に取り上げる事例は、この受益権複層化信託のものである。
 ② 税務の取り扱い
 この信託は受益者等課税信託であり、他益信託である。収益受益者は収益受益権の贈与を受けたものとみなして贈与税を申告納税し、元本受益者は元本受益権の贈与を受けたものとみなして贈与税を申告納税する(相続税法9条の2第1項)。この信託は受益者が連続しないので受益者連続型信託(相続税法9条の3第1項)にならないが、収益受益者も元本受益者も課税されるので、信託財産の全額が課税されることになり、節税になるわけではない。
 収益受益者に分配すべき金銭は源泉徴収税を差し引いた受け取り配当金から信託報酬及びその消費税を控除後の純収益額である。収益受益者は源泉徴収税込みの配当金額を自己の所得として所得税を申告し納税する。申告分離の場合は、源泉徴収税は税額控除できるが、信託報酬及びその消費税は所得控除できない。
 信託終了時に元本受益者の受領する信託財産は信託元本の払い戻しであるから課税されない。
 ③ 後継者の持ち株の取得
 後継者は元本受益権の取得に対して課税されるが、課税価額は持ち株そのものの贈与の場合より低くなる。また中小企業の経営者は会社の利益を株式配当ではなく、その役員報酬として受け取ることが多い。後継者は持ち株を直接に取得しなくても、会社の利益を享受できることが多い。

高橋倫彦 たかはし ともひこ
 東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)、外資系の信託銀行を経て、ベルニナ信託(現FPG信託)の取締役。現在一般社団法人民事信託活用支援機構の代表理事。富裕層向けの信託の設計、家族信託の設計では日本でも数少ない専門家。本誌に掲載された論文「受益者複層化信託の税務の取扱い─所得課税と相続課税─」は第39回日税研究賞の奨励賞を受賞。
 著書に『信託を活用した ケース別 相続・贈与・事業承継対策』日本法令(共著)等多数がある。

脚注
1 東京地裁平成30年9月12日判決(平成27年(ワ)第24934号共有権確認等請求事件)。
2 金融法務事情No.2104、2018.12.25、判例の評釈:金融法務事情No.2106、2019.1.25、司法書士渋谷陽一郎「家族信託と遺留分制度」、No.2107、2019.2.10、弁護士小室太一「民事信託の活用と今後の課題」、私法判例リマークス第59号(2019年下)東京大学教授 沖野眞巳「民法17親族相続 一遺留分制度を潜脱する意図でされた信託の効力、二信託に対する遺留分減殺の対象」。
3 遺留分を侵害された場合は、改正前民法では遺留分減殺請求権の行使により物権的効果が生じ財産の共有関係が生じることになっていたが、改正民法では遺留分の侵害に相当する金銭の支払いを請求できることになった(改正民法1046条1項、2019年7月改正法施行)。しかし、多くの場合後継者にはこれを支払う金銭がなく、また持ち株の一部を非後継者に相続させると会社の支配権を維持することができないので、後継者が持ち株の全部を承継する結果、非後継者の遺留分を侵害することになる。
4 非公開会社においては、会社法上、議決権について株主ごとに異なる取扱いを定めることが認められている(第109条2項)ため、複数の受益者のうち特定の者に議決権行使の指図権を集中させても、会社法上の問題は生じない(平成20年9月中小企業庁信託を活用した中小企業の事業承継円滑化に関する研究会「信託を活用した中小企業の事業承継円滑化に関する研究会」中間整理8頁)。
5 UAPリポートVol.144号2019/2/27「自宅などの民事信託設定が公序良俗違反で無効する東京地裁判決の影響は?」。
6 第1順位の受益者が死亡し、第2順位の受益者が生存する事象が起こる確率は、第1順位の死亡率×第2順位の生存率である。逆に第1順位が生存し、第2順位が死亡する確率は第1順位の生存率×第2順位の死亡率である。それぞれの順位の受益者が信託財産をもらえる確率は、両事象の確率の相対的比率に従う。
7 不足資金について元本受益者による一種のキャッシュ・デフィシェンシー・サポートを設ける。他の方法としては、後継者でない子に定期金受益権を付与する方法もある。
8 受益者が連続する定めがない信託において、元本受益者が信託の満期前に死亡して、元本受益者の子がこの受益権を代襲相続した場合は、信託行為の定めによる承継取得ではない。H200528課税第一情報大阪115(信託受益権を元本受益権と収益受益権に分割した場合の信託の課税関係について平成20年5月28日)は、「受益権が順次移転するという点では、本信託の効果は実質的に相続税法施行令1条の8第2号に規定する信託(一定の事由の発生により受益権が移転する定めのある信託)と同様であることから、本信託は同条3号に規定する『前2号に掲げる信託でこれらの信託に類するもの』に該当すると解するのが相当である」として受益者連続型信託の受益権の取得に該当するとした。これは大阪国税局が照会に対し回答したものであり、国税庁の見解ではない。
 私見では、信託設定者が本信託を受益者連続型信託にしたければ、信託契約にその定めを置くことができた。又受益権の相続が受益者連続型信託に該当するのであれば同施行令1条において『定めのある信託』と典型例を示す必要がない。この情報115のように『前2号に掲げる信託でこれらの信託に類するもの』の範囲を解釈で広げることは、法的安定性の観点から疑問がある。

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