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解説記事2021年02月22日 未公開裁決事例紹介 顧客へのキャッシュバックは課税仕入れの対価か否か(2021年2月22日号・№871)

未公開裁決事例紹介
顧客へのキャッシュバックは課税仕入れの対価か否か
審判所、個別具体的な資産の譲渡等との対応関係なし


○通信回線販売取次業を営む請求人のホームページを介してインターネットサービスに係る申込みを行った顧客に対しキャッシュバックした金員が「課税仕入れに係る支払対価の額」に含まれるかなどが争われた事案。国税不服審判所は、顧客は①利用申し込みを請求人のホームページを介して行うこと及び②キャッシュバックの振込先口座の登録をすることのみを条件として請求人からキャッシュバックを受領するものであると指摘。顧客から請求人に対して個別具体的な資産の譲渡等が行われたことを条件として支払われたものといい得る対応関係があるとは認められないとし、課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないと判断した(東裁(諸)令元第83号、令和2年3月10日、棄却)。

主  文

 審査請求をいずれも棄却する。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、通信回線販売取次業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人のホームページを介してインターネットサービスに係る申込みを行った顧客に対しキャッシュバックした金員を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等の確定申告を行ったところ、原処分庁が、当該金員は顧客から受けた役務の提供に対する対価とは認められず、課税仕入れに係る支払対価の額には該当しないなどとして、消費税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、その全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令等(略)
(3)基礎事実

 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人は、平成24年6月15日に設立された、通信回線販売取次業務等を目的とする法人であり、代表取締役は××××である。
  なお、請求人は、電気通信事業法第2条《定義》第5号に規定する電気通信事業者(以下「電気通信事業者」という。)ではない。
ロ ××××××××(以下「本件通信事業者」という。)は、電気通信事業者であり、光インターネットを使用して行う電気通信サービス「××××××」を提供している。
ハ ××××××××(本件通信事業者と併せて「本件通信事業者等」という。)は、本件通信事業者から委託を受け、××××に係る販売代理店事業を行っている。
ニ 請求人は、××との間で、平成26年1月24日付で、××××の取次業務に関し、委託者を××、受託者を請求人とする業務委託基本契約書(以下「本件契約書」といい、本件契約書による契約を「本件契約」という。)を取り交わした。
  本件契約の内容は、要旨次のとおりである。
(イ)××及び請求人は、××の取り扱うサービス(以下「本件サービス」という。)の取次業務に関し契約を締結する(本件契約書前文)。
(ロ)××は請求人に対し、次に定める各業務(以下「本件委託業務」という。)を委託し、請求人はこれを受託する(本件契約書第1条1)。
 A 本件サービスの広告宣伝、利用申込みの勧誘、並びに本件サービス、本件サービス利用契約及びこれに付随する契約等についての顧客への説明及び顧客からの質問・問合せへの対応業務
 B 本件サービスの利用申込受付業務
 C 本件サービスの利用契約者に対し請求人が売却・引渡しをした本件サービスの利用に必要な端末商品及びその付属品(以下「本件商品等」という。)についての顧客への使用方法の説明及び使用テスト実施業務
 D 本件サービスに関わる登録事項及び登録製品変更等についての顧客への説明、必要書類の受領及び××への送付業務
 E 本件サービス及び本件商品等についてのアフターサービス
 F 上記AないしEに付随する業務
(ハ)請求人は、本件契約により××が請求人に対し本件サービスに関する顧客との契約締結の代理権又は代理人の地位を与えるものではないことを確認了承する(本件契約書第1条2)。
(ニ)本件委託業務の完了に対する対価・支払条件等の手数料に関する事項は、別途定めるものとする(本件契約書第4条1)。
ホ ××が作成した請求人宛の「業務委託手数料確認通知書」と題する書面には、上記ニの(ニ)に定める手数料について記載され、その支払条件は要旨次のとおりである。
(イ)上記ニの(ロ)のCの顧客につき、××××への会員登録が完了していること(ただし、当該会員登録が完了した月に会員登録が抹消された場合を除く。)。
(ロ)会員登録が完了した会員の決済情報登録が完了していること。
(ハ)会員登録が完了した月の翌月から六月以内に会員による××××の利用が可能となっていること。
へ 本件通信事業者が電気通信事業に関わる代理店向けに作成した「代理店販売ガイドラインVer1.1」と題する書面(以下「本件ガイドライン」という。)には、要旨次のとおり記載されている。
(イ)本件ガイドラインの適用範囲は、代理店業務に従事する全従業員を対象とし、代理店業務の全部又は一部を再委託する場合は、同一内容を再委託先にも適用する(総則)。
(ロ)代理店独自のキャンペーンやオプションサービスを実施する場合、提供開始前に本件通信事業者へ報告を行うものとする(1−5−8)。
ト 請求人は、本件通信事業者のキャンペーンとは別に、代理店独自のキャンペーンとして、請求人のホームページを介して××××の申込みを行った顧客(以下「本件顧客」という。)に対し金員の支払を行っていた(以下、請求人が支払う当該金員を「本件キャッシュバック」という。)。請求人のホームページには、本件キャッシュバックについて要旨次のとおり記載されている。
(イ)当該キャンペーンは継続、又は予告なく終了する場合がある。
(ロ)本件キャッシュバックの受取方法
 A 本件キャッシュバックの受取の対象となるのは、××××の申込みから六月後の月末までに××××の利用を開始した本件顧客である。
 B 請求人は、××××が開通した月の翌月15日頃に、本件顧客のメールアドレス宛に本件キャッシュバックに係る手続メールを送信する。これにより、本件顧客は、本件キャッシュバックの振込先口座を登録する。
 C 請求人は、上記Bの登録を確認後、当該登録があった月の月末若しくはその翌月末に、本件キャッシュバックを上記Bの振込先口座へ振り込む。
(4)審査請求に至る経緯(略)

争点および主張

(1)本件各更正処分の理由の提示に不備があるか否か(争点1)。(略)
(2)本件キャッシュバックは、消費税法第30条第1項に規定する「課税仕入れに係る支払対価の額」に含まれるか否か(争点2)。(表1参照)
(3)本件キャッシュバックは、消費税法第38条第1項に規定する「売上げに係る対価の返還等」に該当するか否か(争点3)。(表2参照)

【表1】争点2(本件キャッシュバックは、消費税法第30条第1項に規定する「課税仕入れに係る支払対価の額」に含まれるか否か。)について

原処分庁 請 求 人
 次のことから、本件キャッシュバックは、消費税法第30条第1項に規定する「課税仕入れに係る支払対価の額」に含まれない。
イ 本件キャッシュバックは、本件顧客が、××××の申込みから六月後の月末までに利用を開始したことに対するキャッシュバックとして支払われたものであり、請求人が本件顧客から役務の提供を受けたことに対するものではない。
ロ その他、本件顧客が、請求人に対し、資産の譲渡若しくは貸付け、又は役務の提供を行っている事実は認められない。
 次のことから、本件キャッシュバックは、消費税法第30条第1項に規定する「課税仕入れに係る支払対価の額」に含まれる。
イ 本件キャッシュバックは、本件顧客が、①××××の申込みから六月後の月末までに利用を開始し、②利用料の支払方法を登録し、③指定した期間内にキャッシュバックの手続を行うという条件を満たした場合に支払われたものである。
ロ 本件顧客が上記イの条件を達成するために、本件通信事業者に対して日程調整、××××に係る工事の立会い及び支払方法の登録などの作業を行うことにより、請求人は××に対し業務委託手数料を請求し、受領することができるのであるから、本件顧客が行う当該作業は、「役務の提供」に該当する。よって、その対価たる本件キャッシュバックは、請求人が受けた役務の提供の対価となる。

【表2】争点3(本件キャッシュバックは、消費税法第38条第1項に規定する「売上げに係る対価の返還等」に該当するか否か。)について

原処分庁 請 求 人
 次のとおり、本件キャッシュバックは、消費税法第38条第1項に規定する「売上げに係る対価の返還等」に該当しない。
イ 請求人が××に対して行う契約の取次業務という役務の提供と、本件通信事業者が本件顧客に対して行う××××の提供という役務の提供は、全く別個のものであることに加え、本件キャッシュバックは、本件通信事業者等が関知しないところで請求人自らの判断により支払われていることが認められる。
  したがって、本件キャッシュバックの支払は、本来、請求人が本件通信事業者等に対して支払うべき値引き等を本件顧客に対して支払っているものと認めることはできない。
ロ 本件キャッシュバックは、請求人が本件契約に基づく××からの手数料をより多く受領するため、換言すれば、本件契約に定める本件サービスを利用する顧客数を増やすために本件顧客へ支払われるものであり、支払の相手方である本件顧客のなす具体的な役務の提供と対価関係を有するものとは認められない。
  したがって、本件キャッシュバックは、消費税法基本通達14-1-2に定める販売奨励金等とは性質を異にするものであることから、同通達が適用される余地はない。
 次のとおり、本件キャッシュバックは、消費税法第38条第1項に規定する「売上げに係る対価の返還等」に該当する。
イ 請求人が××××の利用申込者を獲得することで、本件通信事業者から××を通じて請求人に顧客獲得手数料が支払われていること、本件通信事業者等が本件キャッシュバックの実施につき承知していることからすると、取引の全体像としては、本件キャッシュバックを含め、本件通信事業者主導により、本件通信事業者等、請求人及び本件顧客が、連続的かつ一連の取引として有機的に結びついているものと理解するのが合理的である。
  したがって、本件キャッシュバックの支払は、請求人が本件通信事業者等へ支払うべき値引き等の金銭を、本件顧客に支払っているものと認められる。
ロ 請求人は、本件顧客にとって本件通信事業者が提供する××××の申込先であるから、本件顧客は、請求人にとって取引先であり、請求人は、取次ぎした申込みの契約の成立等に応じて、本件顧客に対し、本件キャッシュバックを支払っている。
  したがって、本件キャッシュバックは、請求人が取引先である本件顧客に支払ったものであるから、消費税法基本通達14-1-2に定める販売奨励金等に該当する。

審判所の判断

(1)争点1(本件各更正処分の理由の提示に不備があるか否か。)について(略)
(2)争点2(本件キャッシュバックは、消費税法第30条第1項に規定する「課税仕入れに係る支払対価の額」に含まれるか否か。)について
 イ 法令解釈
 消費税は、国内における消費全般に税負担を求めるため、広く薄く課税対象を設定し、最終的に消費者への転嫁が予定されている租税である。かかる消費税の性格に鑑みると、事業者が収受する経済的利益が消費税の課税要件としての資産の譲渡等における「対価」に該当するといえるためには、事業者が収受する経済的利益と事業者が行った当該個別具体的な資産の譲渡等との間に対応関係があること、換言すると、当該個別具体的な資産の譲渡等があることを条件として、当該経済的利益が収受されたといい得る対応関係があることが必要であるものと解される。
 そして、消費税法第2条第1項第12号が、課税仕入れについて、他の者が事業として資産を譲り渡し、若しくは貸し付け又は役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので所定のものに限る旨規定するとともに、同法第30条第6項が、課税仕入れに係る支払対価の額について、対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額である旨規定していることからすれば、仮に金銭の支払を行ったとしても、当該他の者が当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は役務の提供をしていなければ、当該支払われた金銭については、同条第1項が規定する課税仕入れに係る支払対価の額とはならないと解される。
 ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ)本件顧客が××××の申込みを行ってから、本件キャッシュバックが支払われるまでの手続の流れは次のとおりである。
 A 本件顧客は、請求人のホームページから××××の申込みを行う。
 B 請求人は、本件顧客に対し、上記Aの申込みにつき電話で内容を確認する。
 C 本件通信事業者は、上記Bにより申込みが完了した後、本件顧客に対して、××××の回線工事の日程調整の連絡を行う。
 D 本件通信事業者は、本件顧客に対して、「入会証」、「お支払方法登録申込書」などを郵送し、本件顧客は、当該登録申込書を返送して、料金の支払方法の登録を行う。
 E 回線工事業者は、上記Cで日程調整した回線工事を実施する。本件顧客は、回線工事に立ち会う。
 F 請求人は、上記Eの回線工事完了後に、本件顧客に対して、本件キャッシュバックの受取に係る手続(本件キャッシュバックの振込先口座の登録)について、メールを送信する。
 G 請求人は、上記Fの受取手続完了後に、本件顧客に対して、本件キャッシュバックを支払う。
(ロ)本件キャッシュバックは、本件通信事業者が行っているキャンペーンとは別に、請求人が代理店独自のキャンペーンとして支払った金員であり、請求人が本件通信事業者に事前に報告を要するものの、本件通信事業者から承認や承諾を要するものではない。
 ハ 当てはめ
 本件キャッシュバックが、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否かは、上記イのとおり、本件顧客から請求人に対して個別具体的な資産の譲渡等が行われたことを条件として、請求人から本件顧客に対して本件キャッシュバックが支払われたといい得る対応関係があるか否かで決せられることとなる。
 この点を見てみると、上記ロの(イ)のとおり、本件キャッシュバックは、本件顧客が請求人のホームページを利用して、本件通信事業者に対して××××の申込みを行い、本件通信事業者が本件顧客を××××の利用者として登録した後、本件顧客の請求に基づいて、本件通信事業者による回線工事が行われた場合に、所定の条件を満たした本件顧客が、上記ロの(イ)のFの手続を完了した後に、請求人から支払われるものである。
 すなわち、本件顧客は、①××××の利用申込みを請求人のホームページを介して行うこと及び②本件キャッシュバックの振込先口座の登録をすることのみを条件として、請求人から本件キャッシュバックを受領するものである。
 そこで、本件顧客の上記の行為が、請求人に対する資産の譲渡等に当たるか否かを検討すると、上記①は本件顧客の自由な意思に基づき一方的に行われるものであり、このことをもって請求人が本件顧客から役務の提供を受けているとは認められず、上記②は本件キャッシュバックの受領口座を指定するにすぎないものであるから、請求人に対する資産の譲渡等であるとは認められない。
 したがって、本件キャッシュバックは、本件顧客から請求人に対して個別具体的な資産の譲渡等が行われたことを条件として支払われたものといい得る対応関係があるとは認められないから、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額には該当しない。
 ニ 請求人の主張について
 請求人は、本件顧客が本件通信事業者に対して日程調整、工事の立会い及び支払方法の登録などの作業を行い、××××を利用開始することにより、請求人は××から業務委託手数料を受領することができるのであるから、本件顧客が行う当該作業は、請求人に対する役務の提供であり、その対価たる本件キャッシュバックは課税仕入れに係る支払対価の額に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件顧客が行う日程調整、工事の立会い、支払方法の登録及び××××の利用開始は、本件顧客が××××を利用するために行うものであって、本件顧客が請求人から本件キャッシュバックを受領するために格別に行うものではない。そして、請求人が××から業務委託手数料を受領するのは、請求人が本件契約に基づき、本件委託業務を行い、所定の業務委託手数料の支払条件を満たしたことによるものであるから、当該業務委託手数料と本件顧客が行う作業とは対応関係がない。したがって、請求人の主張には理由がない。
(3)争点3(本件キャッシュバックは、消費税法第38条第1項に規定する「売上げに係る対価の返還等」に該当するか否か。)について
 イ 法令解釈

(イ)消費税法第38条第1項は、事業者が売上げに係る対価の返還等をした場合には、当初の税額の修正を行うのではなく、当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間において行った売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除するというものである。
  そして、消費税法第38条第1項の「値引き」とは、一般に、売上品の量目不足、品質不良、破損等の理由により代価から控除される額をいい、また、同項の「割戻し」には、販売数量又は売上高、売掛金の回収高等の金額に応じ、又は取引先の営業地域の特殊事情、協力度合等を勘案して金銭により取引先に対して支払う割戻し又は販売奨励金等がこれに該当するが、この割戻し等は、課税資産の譲渡等について行ったものであればよいのであるから、事業者がその直接の取引先に支払うもののほか、その間接の取引先に対して支払う、いわゆる飛越しリベート等も含まれる。
  以上のことを前提とすると、「売上げに係る対価の返還等」とは、事業者が、自らの行った課税資産の譲渡等について値引き等をすることにより、その税込価額の全部又は一部を返還等することをいうものと解される。
(ロ)消費税法基本通達14−1−2の定めは、事業者が販売数量や販売高に応じて取引先に支払う金銭は、販売奨励金その他の名称のいかんを問わずその本質は、売上代金の一部の返戻額であることに相違ないことから、売上げに係る対価の返還等に該当するものであることを明らかにしたものであり、当審判所においても相当であると認められる。
 ロ 当てはめ
 本件キャッシュバックが、消費税法第38条第1項に規定する売上げに係る対価の返還等に該当するか否かは、上記イの(イ)のとおり、本件キャッシュバックが請求人が自らの行った課税資産の譲渡等についての値引き等により返還したものに該当するか否かで決せられることとなる。
 この点、請求人が本件契約に基づいて行う課税資産の譲渡等の相手方は、本件委託業務の委託者である××であり、請求人が課税資産の譲渡等の対価を受領するのは××からである。すなわち、請求人は××に対して、本件委託業務という役務の提供を行っているが、本件顧客は、本件通信事業者から××××の利用サービスを受けているのであって、これらの役務の提供は全く別個のものであり、請求人が本件顧客に対して何らかの課税資産の譲渡等を行い、その対価を受領しているのではない。よって、本件キャッシュバックは、請求人が本件顧客に対して、課税資産の譲渡等について値引き等をすることにより返還した対価の額とは認められない。
 次に、本件キャッシュバックが、××に対する割戻し等として本件顧客等に支払われる、いわゆる飛越しリベート等に該当するかについて考えると、本件キャッシュバックを支払うことは、××から受領する業務委託手数料を計算根拠としてなされているものでもない。そして、本件キャッシュバックは、請求人が独自に支払うものであり、請求人が××から受領した業務委託手数料を返還等しなければならないとする根拠も見当たらない。よって、本件キャッシュバックは、請求人が××に対して、課税資産の譲渡等について割戻し等をすることにより返還する対価の額を、本件顧客に対して支払うものとも認められない。
 以上のことからすると、本件キャッシュバックは、請求人が自らの行った課税資産の譲渡等について値引き等をすることにより返還した対価の額とは認められず、「売上げに係る対価の返還等」には該当しない。
 ハ 請求人の主張について
(イ)請求人は、本件通信事業者等、請求人及び本件顧客は、本件通信事業者主導により連続的かつ一連の取引として有機的に結びついており、本件キャッシュバックは、本件通信事業者等へ支払うべき値引き等を本件顧客に支払っているものと認められる旨主張する。
  しかしながら、本件キャッシュバックは、請求人が自らの行った課税資産の譲渡等について値引き等をすることにより返還した対価の額に該当するものと認められないことは上記ロで述べたとおりであり、請求人の主張には理由がない。
(ロ)また、請求人は本件顧客にとって本件通信事業者が提供する××××の申込先であることから、本件顧客は請求人にとって消費税法基本通達14−1−2に定める取引先に該当し、本件キャッシュバックは、請求人が取引先に対して支払った販売奨励金として、売上げに係る対価の返還等に該当する旨主張する。
  しかしながら、消費税法基本通達14−1−2にいう販売奨励金は、上記イの(ロ)に述べたとおり、その本質が売上代金の一部の返戻額であるから売上げに係る対価の返還等に該当するというものであるところ、上記ロで述べたとおり、請求人は本件顧客に対して課税資産の譲渡等を行っていないのであるから、本件キャッシュバックが売上代金の一部の返戻額に該当しないことは明らかであり、請求人の主張には理由がない。

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