会社法ニュース2021年09月10日 株式買取請求不履行で元株主訴訟も棄却(2021年9月13日号・№897) 東京地裁、同一理由による訴訟は前訴判決で決着
本件は東証1部上場の雪国まいたけ(被告)の元株主である原告が、旧会社は原告が行った株式買取請求によって代金支払い義務を負うとして旧会社の権利義務を承継した被告に対し、未払い代金2万2,472円及び遅延損害金の支払いを求めたものである。
旧会社は平成27年5月15日に開催した臨時株主総会等において、すべての普通株式を株主総会の決議により旧会社が取得することができる全部取得条項付普通株式とするなどの定款変更を行ったが、原告は臨時株主総会等においてすべての議案に反対するとともに、同年5月30日付で1株当たり245円で株式を買い取ることを請求。一方、旧会社は買取請求については定款変更の効力発生日(同年6月19日)後に検討を開始するため、6月18日までに株式の代金を原告に支払う根拠はないとしていた。旧会社は全部取得条項の効力が生じた後、原告の旧会社の普通株式を1株当たり245円で購入することとし、原告に対して519万4,000円を支払った。しかし、原告は、旧会社は買取請求によって平成27年6月18日までに株式を買い取るべき債務を負ったにもかかわらず、債務を履行しなかったとして遅延損害金等の支払いを求める裁判を提起。裁判では、株式買取請求権の行使の結果生じる法律関係は買取りの効果が生じるまでの間に株主が株式を保有しなくなることで失効すると解されることから、全部取得によって原告が株式を保有しなくなったことにより法律関係は失効するとし、原告の請求を棄却。今回は、原告は端数株式処分代金等が未払いであるなどと主張し、裁判を提起した。
東京地裁(大濵寿美裁判長)は、本件の原告の主張と前訴での主張はいずれも「旧会社が定款変更の効力発生日の前日までに買取請求に係る買取価格を提示して株式を買い取らなかったこと」が不適当であったことを理由として、前者は代金支払請求権を、後者は代金支払請求権が転化した損害賠償請求権を行使するものであると指摘。本件訴訟と前訴とは訴訟物は異なるものの実質的には同一の紛争であるといえ、前訴判決が確定したことによって紛争が決着したとの被告の合理的期待に反するものであり信義則に照らして許されないと判断した。
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