税務ニュース2021年09月24日 作業員への報酬の仕入税額控除認めず(2021年9月27日号・№899) 東京高裁、給与所得該当性の判断基準示した昭和56年判例は現在も妥当
本件は、納税者(塗装会社)が塗装作業員2名に支払った報酬を課税仕入れとし、これに係る消費税額を仕入税額控除に計上して消費税等の申告をしたところ、所轄税務署長から当該報酬は作業員にとって給与所得であるから課税仕入れに当たらないなどとして消費税等の更正処分等を受けたため、これらの処分の取消しを求めた事案である。原審は、納税者の請求をいずれも棄却したところ、納税者はこれを不服として控訴した。
納税者(控訴人)は、「昭和56年判例(編集部注:42頁参照)は、その判決日から既に40年以上の年月が経過しており、その間、社会や科学技術の飛躍的発展とともに、人々の働き方の態様は大きく変化し、特に、同判例が示す判断基準である空間的・時間的拘束の有無については、コンピューター及びインターネットの飛躍的発展により働く場所を選ばなくなった今日も妥当性があるとするのは重大な疑義がある。したがって、昭和56年判例に拠った原審の判断は誤りである。」「消費税法における事業該当性の判断基準として誤っている。」などと主張した。
これに対し東京高裁は、「昭和56年判例は、(中略)昨今のテレワーク等の普及によって、勤務場所が自宅等に移行するなど、社会情勢の変化が見られるとはいえ、そのような場合でも、テレワーク等を行う場所を使用者に届け出た上で、上司等からの指揮・命令を受け、上司等へ必要な報告を行うことができる環境を整え、所定の時間を勤務することが要請されているのが一般的であることも考慮すると、使用者の指揮監督の下で、一定の場所において継続的又は断続的に労務を提供し、これに対する対価(賃金)が支払われるといった実態には何らの変わりはないというべきである。そうすると、今日の社会情勢の変化を踏まえても、昭和56年判例は、その本質的な判断部分については、十分にその妥当性を有しているということができる。」などと判示し、控訴人の主張を斥け、本件控訴を棄却した。
控訴人は令和3年9月6日、上告状兼上告受理申立書を提出している。
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