税務ニュース2021年10月22日 SPAC実現に向け組織再編税制論点化も(2021年10月25日号・№903) 特定の事業を有さない“空箱”と事業会社の合併の適格性焦点
東証は「SPAC制度の在り方等に関する研究会」を立ち上げ、10月1日から議論をスタートさせている。SPAC(特別買収目的会社)とは、文字通り企業の買収を目的とした会社であり、株式市場に上場して資金を調達し、その資金によってスタートアップ企業を買収する。SPACは特定の事業を有さず、他の事業会社を買収することのみを目的とし、買収された事業会社はSPACと合併する。これにより、事業会社にはIPOしたのと同様の効果が生じる。今回の議論は、6月に閣議決定された成長戦略実行計画に「SPAC(特別買収目的会社)制度の検討」との項目が盛り込まれたことを受けたものであり、実現の可能性は十分にあるものとみられる(成長戦略実行計画(令和3年6月18日)42頁参照)。
「SPAC制度の在り方等に関する研究会」では、主にSPACの活用方法や証券市場にとっての留意点について検討が求められているが、今後議論が進んだ場合、税務上の論点が浮上する可能性が関係者の間で指摘されている。
上述のとおり、SPACは上場してスタートアップ企業を買収した後、当該企業と合併することになるが、この場合、SPACと当該企業との合併が、法人税法上、適格合併と言えるのかが問題となる可能性がある。
SPACと事業会社との合併は完全支配関係下での合併となる。この点からすると、100%グループ内合併として適格再編に該当するようにも思えるところだが、気になるのは、ヤフー・IDCF事件に続く法人税法132条の2の適用事例であるTPR事件の判示内容との関係だ。同事件では裁判所から「完全支配関係下の適格合併にも、組織再編税制の基本的な考え方から事業の継続が想定されている」との考え方が示され、確定している(令和3年1月15日付 TPRの上告棄却決定)。この点は、現在東京地裁で係争中のPGM事件でも論点となっている(本誌883号8頁参照)。
SPACの上場が“空箱上場”とも言われているように、SPACは特定の事業を有さず、他の事業会社を買収することのみを目的としている。このような特徴を持つSPACと事業会社との合併とTPR事件の判示内容との関係を整理する必要が出てくる可能性があろう。
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