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解説記事2022年01月10日 ニュース特集 Q&Aで読み解く公認会計士制度部会報告書のポイント(2022年1月10日号・№913)

ニュース特集
個人監査事務所では上場会社の監査できず
Q&Aで読み解く公認会計士制度部会報告書のポイント


 金融庁に設置された金融審議会公認会計士制度部会は1月4日、同部会の報告書を公表した。公認会計士制度部会の報告書は、金融庁に設置された「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」が令和3年11月12日に公表した論点整理を踏まえ(本誌906号4頁参照)、鈴木俊一金融担当大臣が11月22日開催の金融審議会総会において、公認会計士制度の改善に関する事項の検討について諮問を行ったことによるもの。論点整理の法改正が必要な部分について公認会計士制度部会で検討が行われた。具体的には、①上場会社監査事務所登録制度の法制化、②報告徴収や立入検査の権限の公認会計士・監査審査会への委任規定の見直し、③監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限の見直し、④組織内会計士における公認会計士名簿やの登録事項の追加、⑤実務経験期間の見直し、⑥公認会計士の登録抹消に関する規定の見直し、⑦「会計に関する教育・啓蒙活動」の日本公認会計士協会の会則への追加となっている。
 今後、公認会計士制度部会の報告書は、金融審議会総会で報告が行われ、通常国会に公認会計士法の改正案として提出される運びとなる。本特集では、同部会の報告書の内容についてQ&A形式で解説する。

上場会社監査事務所登録制度、金商法に基づく制度に
Q
 上場会社監査事務所登録制度が法制化されるとのことですが、改正の理由を教えてください。
A

 現行、上場会社の監査を行う監査事務所に対する規律については、2007年より「上場会社監査事務所登録制度」が導入されている。ただ法的な根拠があるわけではなく、あくまでも日本公認会計士協会の自主規制の1つとして、財務諸表監査の信頼性が図られている。
 しかし、昨今では大手監査法人から準大手監査法人や中小規模監査事務所(中小監査法人、共同事務所、個人事務所)に監査の担い手が拡大している。このような状況の中、監査手続きの複雑化や改訂品質管理基準の適用など、監査の品質確保のための整備が求められており、上場会社の監査を担う監査法人の登録制度を法定化することで監査リスクに対応できる体制を整える狙いがある。

登録時の適格性の確認は会計士協会
Q
 上場会社監査事務所への登録は金融庁で行うことになるでしょうか。
A

 従来と同じく、上場会社監査事務所登録制度への登録申請は、日本公認会計士協会が行うことになる。日本公認会計士協会は、登録申請された監査法人が上場会社の監査を実施する者として適格かどうかの確認を行うことになる。

制度導入当初は公認会計士5人以上でスタート
Q
 登録に際しての確認事項はどのようなものになりますか。
A

 例えば、登録申請者が業務停止処分中でないことや、「一定の社員数」を有することなどが確認事項の要件として挙がっている。
 「一定の社員数」については、現行の監査法人制度にならい、上場会社監査事務所登録事務所制度の法定化当初は公認会計士である社員を5人以上有することでスタートする方向だ。今後、日本公認会計士協会において中小規模監査事務所への育成支援による体制整備の進展等を踏まえ、社員数の見直しが考えられるとしている。
 金融庁によると、監査法人のうち、所属する常勤の公認会計士の数が10人未満の監査法人は約7割にのぼっている。公認会計士制度部会の議論では「5人以上」では足りないとの意見が多数であり、将来的にはこのような中小規模監査法人の社員数の増加は避けられないといえよう。

個人の監査事務所は監査法人への移行が必須
Q
 登録には最低5人以上の社員が必要とのことですが、上場会社の監査を行っている個人の監査事務所はどうなってしまうのでしょうか。
A

 現行、個人の公認会計士についても、他の公認会計士や監査法人等と共同で上場会社の監査をすることが認められている。しかし、今後は、登録には社員5人以上であることが必要になるため、個人の公認会計士では上場会社の監査はできないことになる。少数ではあるものの、現時点で上場会社の監査を行っている個人の公認会計士については、上場会社監査事務所登録制度の法定化までに監査法人への移行が必要になる。

品質管理部門の設置などが必要
Q
 登録の取消しはこれまでと同様に日本公認会計士協会が行うことになるのでしょうか。
A

 登録を受けた監査法人には、上場会社監査に係る体制整備が必要になる。体制整備については、監査業務部門から独立した品質管理部門の設置などが必要になる見込みだ。体制整備がなされていないことが確認された場合には、日本公認会計士協会は登録を取り消すことができることとする。
 また、登録を受けた監査法人は情報開示も求められる。現行の公認会計士法では、監査法人には業務及び財産の状況に関する事項を記載した説明書類を作成し、公衆の従来に供することが求められているが(公認会計士法34条の16の3)、さらに品質管理やガバナンスなどの情報開示が求められることになりそうだ。

上場会社の監査には監査法人のガバナンス・コードの受け入れが必要
Q
 今後、監査法人のガバナンス・コードを受け入れなければ上場会社の監査をできないのでしょうか。
A

 監査法人のガバナンス・コードを受け入れなければ上場会社の監査はできない見込みとなっている。コードは5つの原則と22の指針から構成されており、適用はコンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明する)の手法によることとされている。現在、コードの受け入れを表明したのは、9つの大手・準大手監査法人以外は8つの中小監査法人にとどまっているが、これはコードが大手監査法人を念頭に策定されたことが大きい。このため、金融庁は、公認会計士法の改正案を国会に提出後、中小規模監査事務所でもコードを適用できるように改訂を行うとしている。
 ただし、監査の品質を下げる方向での見直しは行わないとしている。例えば、東京証券取引所の市場区分の見直しでは市場によってコーポレートガバナンス・コードの適用すべき原則を分けているが、監査法人のガバナンス・コードについても監査法人の規模によって適用原則を分けることを視野に入れて検討を行うようだ。

金商法に上場会社は登録事務所の監査が必要と明記
Q
 今回は公認会計士法の改正であり、金融商品取引法の改正はないのですか。
A

 金融商品取引法の改正も一部行われる予定。現行、上場会社の監査については、証券取引所の上場規則において、日本公認会計士協会の上場会社監査事務所登録制度の上場会社監査事務所又は準登録事務所の名簿に登録されている会計監査人による監査が義務付けられている。今回、公認会計士法において上場会社監査を行うことについての登録が求められることを踏まえ、被監査会社である上場会社について、金融商品取引法の規定により提出する有価証券報告書や内部統制報告書の監査証明は登録を受けた監査事務所から受けなければならない旨が明記される(金融商品取引法193条の2)。

審査会、監査事務所の虚偽証明等の検査も可能に
Q
 公認会計士・監査審査会によるモニタリングについて見直されるとのことですが、どのような影響がありますか。
A

 現行の公認会計士法では、金融庁の一般的な報告徴収や立入検査の権限のうち、監査法人等の「業務の運営の状況」に関して行われるものに限って公認会計士・監査審査会に委任する立て付けとなっている(公認会計士法49条の3)。仮に審査会の検査先の監査事務所で虚偽証明等の疑義が生じている場合であっても、検査対象が「業務の運営の状況」に限られているため、詳しい検査をすることができない。このため、金融庁が別途、審査会の検査後に虚偽証明等に関する調査を行わなければならず、スピード感をもって処分することができないとの問題点が指摘されている(図表1参照)。例えば、監査法人大手門会計事務所(2020年10月27日解散)に対する検査のように、審査会の処分勧告が2019年12月6日になされた後、2020年11月27日に金融庁の懲戒処分がなされるまでに約1年もの期間がかかったという事例もある。
 今回の改正では、監査事務所へのモニタリングをより効率的・効果的なものとする観点から、公認会計士・監査審査会によるモニタリングに関する金融庁からの委任規定を見直し、監査事務所の「業務の運営の状況」の検証に際し、虚偽証明等に係る監査手続も同時に検証の対象とすることで、二度手間となっていた金融庁の調査を省き、審査会が早期に金融庁に処分勧告をすることができるようになる。

配偶者の業務制限は被監査会社の関与社員に限定
Q
 配偶者の業務制限については、どのような見直しがなされるのですか。
A

 公認会計士法では、監査法人の社員の配偶者が役員等になっている会社については、当該監査法人はその会社の監査をすることができないとされている(会計士法34条の11第1項2号)。監査法人と被監査会社との間の独立性確保の観点から設けられたもの。該当する社員が監査を担当しなくても監査法人として監査契約を締結することができないわけだが、実際には監査契約ではなく人事の方で影響がでていた。例えば、夫が被監査会社の役員等に就任している場合には、妻の公認会計士は社員に昇格させないとの人事が行われたという(夫婦の立場が逆のケースも同じ)。
 金融庁に設置された「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」が11月12日に公表した論点整理では、「監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限について、監査人の独立性は引き続き確保しながらも、女性活躍の観点も踏まえ、能力ある公認会計士にその能力に見合った活躍の機会を確保できるよう見直すべき点はないか検討される必要がある。」と明記されていたほか、国際倫理規程等では監査業務チーム等とされていることもあり、監査証明業務が制限される社員の範囲を、現行のすべての社員から被監査会社の財務書類について監査法人が行う監査証明業務に関与する社員等に限定することとされる。

組織内会計士は監査事務所以外の勤務先を記載
Q
 組織内会計士の場合、公認会計士名簿への登録事項が変更されるのですか。また変更される理由は何ですか。
A

 これまでは公認会計士試験に合格した場合には監査法人に勤務するというのが一般的とされてきたが、昨今では監査法人以外の事業会社や行政機関等での業務に従事する組織内会計士が増加傾向にある。日本公認会計士協会の組織内会計士ネットワークの2020年12月末時点の正会員数は2,139人にのぼっており、このうち上場会社に勤務する公認会計士は1,049人となっている。
 現行、公認会計士の登録は開業時の登録を念頭に、氏名、生年月日等のほか「事務所」の登録を求めている(公認会計士法17条)。しかし、監査事務所以外の事業会社等に勤務する組織内会計士については、事務所を有していないため、便宜的に自宅等を「事務所」として登録する例が多く、名簿上の登録内容が組織内会計士を想定したものとなっていないとの指摘がある。このため、公認会計士名簿への登録事項に、勤務先を登録することなどにより組織内会計士の実態を把握し、日本公認会計士協会による組織内会計士向けの研修活動を充実させることができるとしている。

実務経験期間は「2年」から「3年」に延長
Q
 公認会計士に登録することができるまでの期間が延長されるのでしょうか。
A

 現行、公認会計士登録申請までには実務経験として2年以上の業務補助等が必要とされている(公認会計士法3条)。国際教育基準(IES)では、実務経験の習得を図る方法として「3年間の実務経験」が好ましいとしており、イギリス、ドイツ、フランスでは実務経験要件は3年以上とされている(アメリカは州法により異なり、実務経験要件は概ね1.4年以上とされている)。また、高度化する監査基準を実際の監査の現場で対応する能力を養うという観点からも実務経験を通じて学ぶ知見の重要性が指摘されている。
 このため、日本においても実務経験期間を3年以上に見直すこととしている。ただし、従来と同じく実務経験は公認会計士試験合格の前後を問わないとされている。

CPEの単位不足や虚偽申請、2年以上所在不明で登録抹消が可能
Q
 CPEの単位が不足している場合、公認会計士の登録が抹消されることになりますか。
A

 継続的専門研修(CPE)は、当初は日本公認会計士協会が監査業務の質的向上を図るため、会員である公認会計士に対して研修の履修を義務付けているものであったが、2004年4月からは法定義務化(公認会計士法28条)された。①3事業年度合計で120単位、②1事業年度に最低20単位、③職業倫理、税務について各2単位、④監査の品質管理及び不正リスクに関する科目を6単位(法定監査従事者のみ)の要件をいずれも満たす必要がある。日本公認会計士協会では履行義務を果たさない者に対して、研修の履修指示、氏名等の公示・公表等の措置や、戒告、会員権停止、退会勧告等の懲戒処分を行うことができるとされている。しかし、現行の懲戒処分では、公認会計士の登録の抹消事由とされていないため(公認会計士法21条)、仮に毎年単位数が不足していたとしても登録を抹消することはできない。
 従来から、日本公認会計士協会では、受講単位数が不足し懲戒処分が行われたにもかかわらず改善されない事例が見られるとして問題視しており、また、最近では、eラーニング研修の二重受講や早送り受講などの不正受講も見つかっている。CPEは公認会計士制度に対する社会からの信頼を維持するための重要な制度であることから、CPEの受講状況が著しく不適当な公認会計士については、資格審査会の議決に基づき登録を抹消することができるようにする。
 また、税理士法などの他の士業の状況も踏まえ、虚偽の申請等に基づいて登録を受けた場合や、2年以上継続して所在が不明である場合も登録を抹消できることができるようにするとしている。

会計教育の普及・啓発を会則に規定
Q
 日本公認会計士協会では、会計教育に関する取り組みを行っていますが、今回の公認会計士法の改正と何か関係がありますか。
A

 日本公認会計士協会では、従来から会計教育に関する取り組みを積極的に行っているが、公認会計士法には何ら規定はなく、同協会の自主的な取り組みとなっている。
 このため、会計に関する教育・啓蒙活動に対する日本公認会計士協会の役割・位置付けを明らかにする観点から、日本公認会計士協会が定めなければならない会則(公認会計士法44条)の1つに「会計に関する教育その他知識の普及・啓発のための活動に関する規定」を追加することとしている。

合名会社をベースとする監査法人制度の見直しが今後の課題
Q
 今回の公認会計士法の改正の範囲以外で何か今後の課題はありますか。
A

 今後の課題の1つには監査法人制度の見直しが挙げられる。現行制度は合名会社の仕組みをベースに5人以上の公認会計士により設立される監査法人を一律に規律している。しかし、500名を超える規模の監査法人が出現するなか、合名会社をベースとする現行制度では機動的な運営ができないとの問題点が指摘されている。例えば、監査法人の合併を行う場合や、問題のある社員の脱退を促す場合にも全社員の同意が必要になる。数百人規模の監査法人になると、全社員の同意を得ることは難しいこともあり、今後の大きな課題となっている。

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