税務ニュース2022年04月01日 宣言内容が未実現の場合の賃上げ税制(2022年4月4日号・№925) 賃上げ宣言をすること自体が適用要件に “結果”までは問わず
周知の通り、令和4年度税制改正で導入された賃上げ税制の適用を「資本金10億円以上」かつ「従業員1,000人以上」の“大企業”が受けるためには、「給与等の支給額の引上げの方針」「取引先との適切な関係の構築の方針」等を対外的に示す「マルチステークホルダー宣言」を行うことが必須となる。マルチステークホルダー宣言には、「生産性向上」「付加価値最大化」「持続的成長・還元」「賃上げ」「人材投資」などのキーワードを“漏れなく”盛り込む必要があるが(本誌924号9頁参照)、付加価値最大化や持続的成長などは定義が曖昧であり、また、「付加価値」等を数値で把握している企業も多くないと思われる。
こうした中、マルチステークホルダー宣言の内容をどこまで厳密に満たさなければならないのか懸念する声が企業から上がっている。例えば「持続的還元」などは、継続して業績が良い企業でなければ達成困難であることから、宣言はしたもののできなかったということが十分起こり得る。しかし、マルチステークホルダー宣言には数値基準はなく、賃上げ税制を規定する租税特別措置法(42の12の5)に定められた継続雇用者の賃上げ率等を満たしている限り、マルチステークホルダー宣言にキーワードとして盛り込むことが求められる「生産性向上」「付加価値最大化」「持続的成長・還元」などは結果的に実現できなかったとしても、賃上げ税制の適用を受けられなくなるわけではないことが本誌取材により確認された。
ただし、マルチステークホルダー宣言には自社WEBサイトで公表することになるだけに、企業としては相応の“覚悟”は必要になるのは言うまでもない。賃上げ税制の適用は可能だとしても、「生産性向上」「付加価値最大化」「持続的成長・還元」などを実現できなければ、投資家から批判を受ける可能性もある。賃上げ税制の適用は受けられるとしても、「生産性向上」「付加価値最大化」「持続的成長・還元」などを実現できる見込みが全くないのであれば、マルチステークホルダー宣言をするか、すなわち賃上げ税制の適用を受けるかどうか、慎重な検討が必要になろう。
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