税務ニュース2022年07月15日 「高名な税理士の助言信じた」は通らず(2022年7月18日号・№939) 税務訴訟における錯誤無効の主張、認定に高いハードル
東京地裁は今年2月14日、みなし譲渡課税事案について納税者敗訴の判決を下したが(本誌921号参照)、本件に関与した税理士のアドバイスの内容が実務家の間で話題を呼んでいる。
判決の事実認定によると、本件税理士は「原告父と原告長男との間に原告会社を介すれば(※原告父から原告長男に会社の株式を直接譲渡する代わりに、原告父が一旦会社に譲渡(会社にとっては自己株式の取得)し、会社が取得した自己株式の処分として原告長男に株式を交付)、資本等取引として整理されることになるから、原告父及び原告長男においても、みなし配当の金額に対する課税以外の課税関係は生じない」とのアドバイスを行っていたが、判決も指摘しているように、これは資本等取引が法人税法上の概念にとどまることを無視した法令解釈であり、また、みなし譲渡課税の存在を失念しているとの指摘を受けてもやむを得ないところだろう。
さらに判決は、「原告父から会社への譲渡価額」及び「会社から原告長男への処分価額」はいずれも1株当たり1,500円とされているが、その金額は「本件税理士が単に原告会社の株式の額面(1株当たり500円)に3を乗じて計算したものであった」と認定している。この株価の算定方法の根拠も不明確と言わざるを得ない。
しかも、当該税理士は「税務署長等を歴任していた高名な税理士」とのことであり、原告父や息子からは、「本件税理士のアドバイスを信じて、1,500円が株式の時価であり、1,500円で取引すれば(否認を受けて)税負担が生じることなどないと誤解していたから、本件自己株式取得等は私法上無効であり、無効な取引を前提とする処分も違法である」として、錯誤無効が主張されている。これに対し東京地裁は、原告父らが1株1,500円が適正な時価であると認識していたとは「にわかには信じ難い」として「錯誤は無かった」と認定した。地裁判決はその理由として、個別注記表に1株当たり純資産額が記載されていたことや、原告父らが会社の経営を担っていたことを挙げている。たとえ“高名な税理士”であろうと、「税理士が言ったからそれを信じた」という納税者の主張は安易に認めないということを示した点では注目される判示と言えよう。
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