税務ニュース2022年10月21日 調査官解説、通達評価との乖離考慮せず(2022年10月24日号・№951) 総則6項、税負担軽減の意図は購入時期、購入原資、利用状況等を考慮

  • 総則6項最高裁判決の調査官解説、通達評価額と鑑定評価額のかい離を理由に、通達評価額を上回る価額によることは平等原則に違反し許されない旨明言。
  • このようなかい離は「本来、評価通達の見直し等によって解消されるべきもの」と指摘。

 財産評価基本通達・総則6項の適用を認めた最高裁令和4年4月19日判決以降、通達評価額と鑑定評価額との著しいかい離が総則6項の適用基準の一つであるとの説が一部にあるが、当該最高裁判決の調査官解説(判タ2022.10)ではこれとは正反対の見解が述べられているので要注意だ。
 調査官解説では、最高裁判決が「当該価額が、本件各通達評価額を上回るからといって相続税法22条に違反するものということはできない」としていることについて、『相続税法22条の「時価」との関係では、専ら課税庁の主張額が客観的な交換価値としての時価を上回るものではないかが問題となり、通達評価額との多寡は問題とならないとするもの』と説明している。また、今回の最高裁判決前の下級審判決ではしばしば「“特別の事情”があるときは(通達評価額ではなく)他の合理的な方法によって評価した額によることができる」との判示が見られたが、これについて調査官解説では、(上記の通り、通達評価額との多寡が問題とならない以上は)『「特別の事情」といったものが問題となる余地もない』とこれを否定している(最高裁判決では「特別の事情」ではなく「実質的な税負担の公平に反するというべき事情」という言い回しが使われている)。
 実際、最高裁判決では、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があると言えるとしつつも、このことは「実質的な租税負担の公平に反するというべき事情」に当たらないとしているが、調査官解説はこの判示について、「……たまたま相続した不動産の通達評価額が実勢価格ないし課税庁が実施した鑑定による評価額を大きく下回るとしても、これを理由に通達評価額を上回る価額によることは、上記平等原則に違反し許されないとするものと考えられる」と解説している。さらに、「このようなかい離は、本来、評価通達の見直し等によって解消されるべきものといえる」と述べている。
 このほか調査官解説では、本件のように租税負担の経験の意図の存在が争われる場合、事実審である下級審では、「当該不動産の購入時期」「購入原資」「利用状況等の事情」を総合的に考慮してその存否を認定するとしている点、実務上参考になろう。

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