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解説記事2020年10月19日 ニュース特集 相続税・譲渡所得に係る留意ポイント(2020年10月19日号・№854)

ニュース特集
特別寄与料、小規模宅地特例、遺留分侵害額請求etc.
相続税・譲渡所得に係る留意ポイント


 本特集では、東京国税局が作成した相続税・譲渡所得の審理上の留意点(Q&A)の一部を紹介する。相続税では、国外財産となる特別寄与料の債務控除の可否、小規模共済契約に基づき相続人が未支給分を繰上げ受給した場合の課税関係などを確認している。譲渡所得では、小規模宅地等の特例と空き家特例の要介護認定の判定時期、遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて資産を移転した場合の課税関係などが確認されている。

相続税編

1 特別寄与料の額が特別寄与者の課税価格に算入されない場合の相続人の特別寄与料の債務控除
Q

 日本国籍を有する被相続人甲(以下「甲」という)は、長男乙とその妻丙(以下「丙」という)と共に平成15年にX国に移住したところ、長男乙が平成30年に死亡したため、丙と2人で同居することになった。甲は、持病があったため、引き続きX国に居住することとし、丙は、甲に対し無償で療養看護を行い甲の財産の維持に貢献していたが、甲は、令和2年7月23日にX国で死亡した。
 甲の法定相続人である甲の二男丁は、丙から民法1050条《特別の寄与》に規定する特別寄与料の支払を請求されたことから、令和2年10月1日に丙と協議し、特別寄与料の額を750万円とすることとした。
 この場合、二男丁の相続税の課税価格の計算上、丙に支払うこととなる特別寄与料750万円を債務控除することができるか。
 なお、甲の国内財産は1億円あり、丙は相続税法1条の3《相続税の納税義務者》1項4号に規定する者(以下「非居住制限納税義務者」という)である。
A
 二男丁の相続税の課税価格の計算上、特別寄与料750万円を債務控除することはできない。
【理由】
1 特別寄与料の所在
 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合には、特別寄与者がその額に相当する金銭を被相続人から遺贈により取得したものとみなされる(相法4②)とともに、特別寄与料の額がその特別寄与者の課税価格に算入される場合には、特別寄与料を支払うべき相続人の課税価格の計算において、特別寄与料の額のうち、その相続人の負担に属する部分の金額を債務控除することとされている(相法13④)。
 ところで、相続税の課税財産は、相続人等が相続税法1条の3第1項3号又は4号の規定に該当する者(以下「制限納税義務者という」)である場合、相続又は遺贈により取得した財産で国内に所在するものに対してのみ相続税が課税され、国外に所在する財産については課税されない(相法2②、相基通1の3・1の4共−3(2))。
 したがって、特別寄与者が制限納税義務者で、特別寄与料が国外財産に該当した場合には、特別寄与料の額は特別寄与者の相続税の課税価格に算入されないほか、相続人の特別寄与料の支払に係る債務控除は、特別寄与料の額が特別寄与者の課税価格に算入される場合に限り適用できるものである(相法13④)ため、その額が特別寄与者の課税価格に算入されない場合には適用できないこととなる(相基通13−8の2)のであるから、特別寄与料の所在は、相続税の課税対象の判定のほか、特別寄与料を支払うべき相続人の債務控除の適用の有無に影響を及ぼすことになる。
 特別寄与料の所在については、財産の所在について規定する相続税法10条《財産の所在》において、同条1項1号ないし13号及び2項に規定されていないことから、同条3項の規定により、被相続人の住所の所在により判定することになる(相基通10−7)。
2 当てはめ
 丙は、甲の法定相続人である二男丁に対して特別寄与料の請求をし、当事者間の協議によって特別寄与料750万円の支払を受けることとなったから、相続税法4条《遺贈により取得したものとみなす場合》2項の規定により、甲から遺贈により特別寄与料を取得したものとみなされることになる。
 しかしながら、丙は非居住制限納税義務者であるから、相続又は遺贈により取得した財産のうち、国内に所在するものに対してのみ相続税が課税されることになり、本事例における特別寄与料の所在は、甲がX国に住所を有していたことからX国となり、国外財産となるため、特別寄与料の額は、丙の相続税の課税価格に算入されないこととなる。
 そして、特別寄与料を支払う相続人の債務控除については、特別寄与料の額が特別寄与者の課税価格に算入される場合に限り適用できるものであって、本事例では、特別寄与料の額は、丙の相続税の課税価格に算入されないのであるから、二男丁においてその額を債務控除することはできないこととなる。


2 小規模共済契約に基づき相続人が未支給分を繰上げ受給した場合の相続税の課税関係
Q

 個人事業主である甲は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という)との間で、平成2年4月2日に小規模企業共済法(以下「共済法」という)2条《定義》2項に規定する共済契約を締結し、当該契約に係る掛金を支払っていたが、平成30年7月2日に事業を廃止したことから、共済法9条の3《共済金の分割支給等》の規定に基づき、中小機構から分割払による共済金(以下「分割共済金」という)の支給を受けていた。
 その後、甲が令和2年6月19日に死亡したため、甲の相続人である妻乙は、共済法9条の4の規定により、未支給分の分割共済金を一時金(以下「本件一時金」という)で受領することとなった。
 この場合、本件一時金は相続税の課税対象となるか。
A
 本件一時金は、相続税法施行令1条の3《退職手当金等に含まれる給付の範囲》10号に規定する一時金であるから、相続税法3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》1項2号に規定する退職手当金等に該当し、相続税の課税対象となる。
 また、相続税法12条《相続税の非課税財産》1項6号の規定も適用できることとなる。
【理由】
 共済金を分割払で受領していた共済契約者が死亡したために、その相続人が共済金を一括で受領した場合の相続税の課税については、被相続人の死亡により相続人その他の者が定期金(これに係る一時金を含む)に関する権利で契約に基づくもの以外のものを取得した場合として、相続税法3条1項6号に該当して課税するとも考えられる。
 しかしながら、相続税法3条1項6号は、同項2号に掲げる退職手当金等に該当するものを除く旨規定しているため、相続人が受領する共済金が同号に規定する退職手当金等に該当するか否か検討しなければならない。
 そこで、この点について検討すると相続税法3条1項2号は、退職手当金等に該当するものとして「退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)」と規定しており、相続税法施行令1条の3は、相続税法3条1項2号に規定する政令で定める給付は、中小機構の締結した共済法2条2項に規定する共済契約に基づいて支給を受ける一時金(10号)に関する権利とする旨規定している。
 そうすると、本事例において、妻乙が受領する本件一時金は、甲が中小機構と締結した共済契約に基づき、共済法9条の4の規定により支給を受けるものであるから、相続税法施行令1条の3第10号に規定する一時金であり、相続税法3条1項2号に規定する退職手当金等に該当し、同法12条1項6号の規定も適用できることとなる。


3 被相続人が国外転出時課税に係る所得税等について納税猶予を受けている場合の債務控除
Q

 甲(居住者)は、甲の長男乙(非居住者)に対して、平成28年7月30日に株式を贈与したが、同日における甲の保有する全ての株式及び投資信託の時価が1億円以上であったことから、平成28年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という)の確定申告において、所得税法60条の3《贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例》1項に規定する国外転出(贈与)時課税を適用した。
 また、甲は、国外転出(贈与)時課税の適用に当たり、所得税法137条の3《贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予》1項を適用し、上記贈与に係る所得税額に相当する所得税等について納税が猶予された。
 ところが、令和2年10月1日、甲が死亡したため、同人の唯一の法定相続人である長男乙は、甲に係る相続税の申告をしなければならないこととなったが、甲が納税猶予を受けていた上記の所得税等について、相続税法13条《債務控除》に規定する債務控除(以下「債務控除」という)をすることができるか。
 なお、長男乙は、相続税法1条の3《相続税の納税義務者》1項2号イに規定する者であり、同人が取得した財産の全部について相続税が課される。
A
 長男乙は、甲に係る相続税の計算において、納税が猶予されている所得税等を債務控除することはできない。
【理由】
1 相続税の計算における債務控除について
 相続又は遺贈により財産を取得した者で相続税法1条の3第1項1号又は2号の規定に該当する者(無制限納税義務者)が、取得した財産の価額から控除できる債務は、①被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む)及び②被相続人に係る葬式費用である(相法13①)。
 そして、上記①の公租公課には、被相続人の死亡の際納税義務が確定しているもののほか、相続開始後に相続税の納税義務者が納付することとなる被相続人に係る所得税、相続税、贈与税等も含まれる(相法14②、相令3①)が、被相続人が納税猶予を受けている国外転出時課税の適用に係る納税猶予分の所得税等は、将来的に免除される可能性のある税額であり、必ずしも担税力を減少させることとはならないことから、債務控除することはできないとされている(相法14③)。
 ただし、被相続人からその納付義務を承継した相続人が、事後的に(納税猶予の期限確定事由に該当したことにより)、その納税猶予分の所得税等の全部又は一部を納付することとなった場合には、更正の請求により債務控除することはできる(相法14③ただし書、32①九、相令8③、相基通32−5)。
2 当てはめ
 甲は、相続開始日において、国外転出時課税に係る所得税等について納税を猶予されていることから、長男乙は、甲に係る相続税の計算上、納税を猶予されている所得税等については債務控除することはできない。


4 特定土地等(特定株式等)を有する場合の小規模宅地等の特例に係る保有継続要件
Q

 被相続人甲は、平成30年12月24日に死亡し、甲の遺産の中には、租税特別措置法(以下「措置法」という)69条の6《特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例》1項に規定する特定土地等(以下「特定土地等」という)及び同項に規定する特定株式等(以下「特定株式等」という)があるところ、甲の相続人らのうちには、同項の規定の適用を受けることができる者がいる。
 甲の相続人であるAは、甲が相続開始の直前において事業の用に供していた土地を相続し、被相続人が営んでいた事業を引き継ぐ予定であるが、この場合、措置法69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》1項に規定する特例(以下「小規模宅地等の特例」という)の適用における特定事業用宅地等に係る保有期限は、本来の相続税の申告書の提出期限(令和元年10月24日)と同法69条の8《相続税及び贈与税の申告書の提出期限の特例》1項に規定する特例(以下「提出期限延長特例」という)により、延長された申告書の提出期限(令和2年8月11日)のいずれになるか。
A
 提出期限延長特例により延長された相続税の申告書の提出期限である令和2年8月11日が特定事業用宅地等に係る保有期限となる。
【理由】
 小規模宅地等の特例における特定事業用宅地等に該当するためには、被相続人等が事業の用に供していた宅地等を相続税法27条《相続税の申告書》(相続税法29条《相続財産法人に係る財産を与えられた者に係る相続税の申告書》及び同法31条《修正申告の特則》2項を含む。以下同じ)の規定による申告書の提出期限まで保有していることが要件となっているところ(措法69の4③一)、提出期限延長特例により申告書の提出期限が延長された場合、当該宅地等の保有期限は、本来の相続税の申告書の提出期限までとなるのか、提出期限延長特例により延長された相続税の申告書の提出期限までとなるのか疑義が生じる。
 しかしながら、特定事業用宅地等に係る保有期限は、相続税法27条の規定による申告書の提出期限とされているところ、措置法69条の8第1項は、同一の被相続人から相続又は遺贈(その相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む)により財産を取得した全ての者のうちに、同法69条の6第1項の適用を受けることができる者がいる場合、相続税法27条の規定による申告書の提出期限を特定日とする旨規定している。
 したがって、小規模宅地等の特例における特定事業用宅地等に係る保有期限については、提出期限延長特例により延長された申告書の提出期限と解することとなるから、本事例の場合には、提出期限延長特例により延長された相続税の申告書の提出期限である令和2年8月11日が特定事業用宅地等に係る保有期限となる。
 なお、小規模宅地等の特例における特定居住用宅地等(措法69の4③二)、特定同族会社事業用宅地等(措法69の4③三)及び貸付事業用宅地等(措法69の4③四)の要件とされる保有期限についても同様である。

譲渡所得編

1 租税特別措置法36条の2の適用要件と建物移転補償金について
Q

 甲は、自己が居住の用に供していた建物及びその敷地がA市の道路拡張工事により買収(以下「本件譲渡」という)されることに伴い、建物に係る移転補償金4,000万円及び土地に係る対価補償金7,000万円の支払を受ける予定である。
 甲は、本件譲渡に当たり当該建物を取り壊す予定であるところ、建物に係る移転補償金4,000万円を一時所得として申告することにより、本件譲渡に係る対価の額が1億円以下であるとして、本件譲渡について、租税特別措置法(以下「措置法」という)36条の2《特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例》1項に規定する特例(以下「本件特例」という)を適用した申告をしたいと考えているが、このような申告は認められるか。
 なお、本件特例に係る他の適用要件は全て満たしているものとする。
A
 取り壊した建物の移転補償金を対価補償金として取り扱うか否かは、納税者の選択によることから、甲の申告は認められることとなる。
【理由】
 措置法36条の2第1項は、個人が、その有する家屋又は土地等で、その年の1月1日において同法31条《長期譲渡所得の課税の特例》2項に規定する所有期間が10年を超えるもののうち、一定の要件に該当する資産(以下「譲渡資産」という)を譲渡した場合において、国内にある当該個人の居住の用に供する家屋又は土地等(以下「買換資産」という)を取得し、かつ、当該取得の日から当該譲渡の日の属する年の翌年12月31日までの間に当該個人の居住の用に供したときは、譲渡資産の譲渡による収入金額が買換資産の取得価額以下である場合にあっては譲渡資産の譲渡がなかったものとする旨規定しているところ、譲渡資産の譲渡に係る対価が1億円を超えるものは、同項でいう「譲渡」から除外されている(措法36の2①かっこ書)。
 そして、土地等の収用に伴い、その土地等の上にある建物等を引き家又は移築するために要する費用の補償として事業施行者から交付を受ける補償金(以下「移転補償金」という)は、その交付の目的に従って支出しなかった場合又は支出後残額が生じた場合には、一時所得の収入金額となるところ(所法44)、その交付を受ける者が実際に当該建物等を取り壊したときには、納税者の選択により、当該補償金を、当該建物等の対価補償金と取り扱うことができることとされている(措通33−14)。
 したがって、取り壊した建物の移転補償金を対価補償金として取り扱うか否かは、納税者の選択によることから、甲は、取り壊した建物に係る移転補償金4,000万円を一時所得として申告し、本件譲渡による対価の額が1億円以下(土地に係る対価補償金7,000万円)であるとして、本件譲渡について本件特例を適用した申告をすることができる。


2 被相続人が老人ホーム等へ入所していた場合の小規模宅地等の特例と空き家特例における要介護認定等の判定時期
Q

 甲は、A市に所在する家屋(以下「本件居住用家屋」という)に居住していたが、令和元年5月10日に、養護老人ホーム(以下「老人ホーム」という)へ入所し、その後、同年7月5日に介護保険法19条《市町村の認定》1項に規定する要介護認定を受けた。
 甲は、同年10月30日に死亡したところ、甲の長男である乙は、本件居住用家屋及びその敷地の全部を相続し、令和2年9月15日に譲渡(以下「本件譲渡」という)した。

〈事例1〉
 乙は、本件居住用家屋の敷地が被相続人の居住の用に供されていた宅地等であるとして、租税特別措置法(以下「措置法」という)69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》1項に規定する特例(以下「小規模宅地等の特例」という)を適用できるか。
〈事例2〉
 乙は、本件居住用家屋及びその敷地が、被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地であるとして措置法35条3項に規定する特例(以下「空き家特例」という)を適用できるか。
 なお、「甲が要介護認定を受けていたこと」以外の各特例の要件は満たしているものとする。

A
 〈事例1〉 乙は、本件居住用家屋の敷地について小規模宅地等の特例を適用することができる。
 〈事例2〉 乙は、本件居住用家屋及びその敷地の譲渡について空き家特例を適用することはできない。
【理由】
1 小規模宅地等の特例における要介護認定等の判定時期
 小規模宅地等の特例が適用できる相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等には、要介護認定等を受けていた被相続人が老人ホーム等に入居したことにより、相続開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていなかった場合におけるその居住の用に供されなくなる直前の被相続人の居住の用に供されていた宅地等も含まれることとされている(措法69の4①、措令40の2②③、措規23の2②、措通69の4−7)。
 そして、被相続人が相続開始の直前において、老人ホーム等に入居していたことにより、当該入居の直前に居住の用に供していた宅地等について、被相続人の親族が小規模宅地等の特例を適用したい場合、被相続人は、相続開始の直前において要介護認定等を受けていればよいのか、それとも、老人ホーム等の入居時点において要介護認定等を受けていなければならないのか判然としないところである。
 この点について、租税特別措置法通達69の4−7の3《要介護認定等の判定時期》は、被相続人が要介護認定又は要支援認定若しくは障害支援区分の認定を受けていたかどうかは、被相続人が相続開始の直前において当該認定を受けていたかにより判定する旨定めていることから、被相続人が老人ホーム等に入居する時点において、当該認定を受けていない場合であっても、相続開始の直前において、当該認定を受けていればよいことになる。
 なお、相続開始の直前において、被相続人が、介護予防・生活支援サービス事業対象者であった場合、相続開始の直前において要介護認定等を受けていたかどうかは要件とされていないことから、相続開始の直前に当該認定を受けていない場合であっても、介護予防・生活支援サービス事業対象者として、老人ホーム等に入居していた場合には、他の要件を満たす限り、被相続人の親族は小規模宅地等の特例を適用することができる。
2 空き家特例における要介護認定等の判定時期
 空き家特例の被相続人居住用家屋とは、相続開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていた家屋をいうのであるが、令和元年度の税制改正により、要介護認定等を受けていた被相続人が老人ホーム等に入居したことにより、相続開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていなかった場合におけるその居住の用に供されなくなる直前の被相続人の居住の用に供されていた家屋も被相続人居住用家屋に含まれることとされた(措法35④、措令23⑥⑦、措規18の2③)。
 そこで、被相続人が相続開始の直前において、老人ホーム等に入居していたことにより、当該入居の直前に居住の用に供していた家屋及びその敷地等の譲渡について、相続人又は包括受遺者が空き家特例を適用したい場合に、小規模宅地等の特例と同様に、被相続人は、相続開始の直前において要介護認定等を受けていればよいのか、それとも、老人ホーム等の入居時点において要介護認定等を受けていなければならないのか、判然としないところである。
 この点について、措置法通達35−9の2《要介護認定等の判定時期》は、被相続人が要介護認定又は要支援認定若しくは障害支援区分の認定を受けていたかどうかは、被相続人の居住の用に供されなくなる直前において被相続人が当該認定を受けていたかどうかにより判定する旨定めていることから、被相続人が老人ホーム等に入居する直前において、同人が当該認定を受けていればよいことになる。
 なお、被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、介護予防・生活支援サービス事業対象者であった場合、当該直前において要介護認定等を受けていたかどうかは要件とされていないことから、当該直前に介護予防・生活支援サービス事業対象者であった被相続人が老人ホーム等に入居した後に、当該認定を受けた場合であっても、他の要件を満たす限り、相続人又は包括受遺者は空き家特例を適用することができる。
3 当てはめ
〈事例1〉
 甲は、令和元年7月5日に要介護認定を受け、その後同年10月30日に死亡していることから、相続開始の直前において、要介護認定を受けている者である。
 したがって、乙は、本件居住用家屋の敷地について小規模宅地等の特例を適用することができる。
〈事例2〉
 甲は、令和元年5月10日に老人ホームへ入所し、その後同年7月5日に要介護認定を受けていることから、本件居住用家屋が甲の居住の用に供されなくなる直前において、要介護認定を受けていない者である。
 したがって、本件居住用家屋は、要介護認定を受けていた被相続人が老人ホーム等に入居したことにより、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合に該当しないことから、空き家特例の対象となる被相続人居住用家屋に該当せず、乙は、空き家特例を適用することはできない。


3 遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて資産を移転した場合の課税関係
Q

 次の事実関係において、甲は、A土地の所有権の移転について、譲渡所得が課税されるか。また、譲渡所得が課税される場合、総収入金額はいくらとなるか。
1 平成29年 2月 2日 被相続人は甲に全財産を遺贈する旨の公正証書遺言作成
2 令和元年 8月11日 被相続人の相続開始(相続人は甲及び乙の2名)
3 令和元年12月13日 乙が甲に対し民法1046条《遺留分侵害額の請求》1項の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求
4 令和2年10月20日 甲乙の合意により、甲が乙に対し遺留分侵害額に相当する金額
          1億円の支払に代えて、甲の所有するA土地(時価8,000万円)の所有権を移転
           なお、遺留分侵害額に相当する金額1億円とA土地の時価8,000万円との差額2,000万円は現金により支払
A
 甲に譲渡所得が課税され、総収入金額は、A土地の所有権の移転により消滅した債務の額8,000万円となる。
【理由】
1 遺留分制度に関する民法の改正(編注:略)
2 遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転

 上記1のとおり、民法(相続法)改正により、遺留分権利者は遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求のみを行うことができることになったものの、受遺者等が金銭で支払うことが困難な場合等において、当事者間の合意により金銭の支払に代えて他の財産を給付することも想定される。
 そのような方法により、遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求に対して債務の全部又は一部の弁済をすることは、本来の給付に代えて他の財産の給付をなすことによって既存の債務を消滅させる有償契約である代物弁済(民法482)に該当するものといえる。
 そこで、所得税基本通達33−1の6《遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転》は、民法1046条1項の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代え、その債務の全部又は一部の履行として資産(当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求の起因となった遺贈等により取得したものを含む)の移転があったときは、原則として、その履行があった時において、その履行により消滅した債務の額に相当する価額により当該資産を譲渡したこととなる旨定めている。
 なお、上記取扱いは、令和元年7月1日以後に開始した相続に係る遺留分侵害額の請求があった場合に適用される。
3 当てはめ
 甲は、遺留分侵害額に相当する金額1億円の支払請求に対し、金銭の支払に代えて所有している時価8,000万円のA土地を、債務の履行として令和2年10月20日に乙に移転し、差額に相当する残りの債務2,000万円については現金で支払っている。
 そうすると、甲の乙に対するA土地の所有権の移転は、上記2のとおり代物弁済に該当することから、甲は、令和2年10月20日に、乙に対しA土地を譲渡したことになり、譲渡所得が課税されることとなる。
 また、この場合、A土地の所有権の移転により消滅した債務の額8,000万円が譲渡所得の総収入金額となる。


4 遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて移転を受けた資産を譲渡した場合の取得費
Q

 次の事実関係において、乙の譲渡所得の計算上、A土地の取得価額はいくらとなるか。
1 昭和50年 1月 3日 被相続人がA土地を4,000万円で購入
2 平成29年 2月 2日 被相続人は甲に全財産を遺贈する旨の公正証書遺言作成
3 令和元年 8月11日 被相続人の相続開始(相続人は甲及び乙の2名)
4 令和元年12月13日 乙が甲に対し民法1046条《遺留分侵害額の請求》1項の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求
5 令和2年10月20日 甲乙の合意により、甲が乙に対し遺留分侵害額に相当する金額
          1億円の支払に代えて、甲の所有するA土地(時価8,000万円)の所有権を移転
           なお、遺留分侵害額に相当する金額1億円とA土地の時価8,000万円との差額2,000万円は現金により支払
6 令和4年 7月10日 乙がA土地を9,000万円で譲渡
A
 乙の譲渡所得の計算上、A土地の取得価額はA土地の所有権の移転により消滅した遺留分侵害額の請求権(債権)の額8,000万円となる。
【理由】
1 遺留分侵害額の請求に基づき資産の移転を受けた場合の取得費
 遺留分侵害額の請求権の行使により、遺留分権利者から受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求があった場合において、当事者間の合意により、金銭の支払に代え、その債務の全部又は一部の履行として保有する資産の移転をしたときは、民法482条《代物弁済》に規定する代物弁済による資産の移転に該当するといえることから、遺留分権利者は、原則として、その履行があった時において、その履行により消滅した債権の額に相当する価額により当該資産を取得したこととなる(所基通38−7の2)。
2 当てはめ
 甲は、遺留分侵害額に相当する金額1億円の支払請求に対し、金銭の支払に代えて所有している時価8,000万円のA土地を債務の履行として令和2年10月20日に乙に移転し、差額に相当する残りの債務2,000万円については現金で支払っている。
 そうすると、上記1のとおり、乙は、A土地を、令和2年10月20日に、A土地の所有権の移転により消滅した遺留分侵害額の請求権(債権)の額8,000万円で取得したこととなる。
 したがって、乙の譲渡所得の計算上、A土地の取得価額はA土地の所有権の移転により消滅した遺留分侵害額の請求権(債権)の額8,000万円となる。

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