解説記事2023年01月23日 第2特集 Q&Aで読み解く株主の書面請求範囲の縮減(2023年1月23日号・№963)
第2特集
株主への情報提供は各社の合理的な裁量で
Q&Aで読み解く株主の書面請求範囲の縮減
会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和4年法務省令第43号)が令和4年12月26日に公布された(今号17頁参照)。株主総会資料の電子提供制度では、株主が書面交付請求を行った場合、会社は「電子提供措置事項記載書面」、すなわち紙の書面を株主に交付しなければならないが、今回の改正は、その紙で交付しなければならない書面の範囲を縮減するというものだ。
具体的には、事業報告に記載又は記録すべき事項のうち役員の責任限定契約に関する事項、事業の経過及びその成果、対処すべき課題、補償契約に関する事項及び役員等賠償責任保険契約に関する事項、貸借対照表及び損益計算書に記載又は記録すべき事項並びに連結貸借対照表及び連結損益計算書に記載又は記録すべき事項について、電子提供措置事項記載書面に記載することを要しないこととしている。また、同様にウェブ開示によるみなし提供制度においても、インターネット上のウェブサイトに掲載し、そのURL等を株主に通知すれば、当該事項に係る情報が株主に提供されたものとみなすものとする。
なお、今回の改正は、公布の日から施行されたが、ウェブ開示の改正は令和5年3月1日からの施行となっている。
本特集では、「会社法施行規則等の一部を改正する省令案」に寄せられたコメントに対する法務省の考え方などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。
電子提供措置事項記載書面の記載事項関係
改正の趣旨は?
Q
電子提供措置事項記載書面(書面交付請求をした株主に交付する書面)の記載事項が削減されるとのことですが、今回の改正趣旨について教えてください。
A
株主総会決議事項に関連する情報は、株主が株主総会で判断するための重要性が高い情報として電子提供措置事項記載書面においても記載される必要があるとしつつも、これまでの実務の積み重ねを尊重し、少なくとも平時のウェブ開示によるみなし提供制度や特例措置のウェブ開示によるみなし提供制度において書面への記載の省略が認められてきた事項については、これまで株主側に大きな不都合は生じていないと考えられることから、電子提供措置事項記載書面においても記載することを要しない事項として整理するものとなっている。
なお、法務省は、今回の改正について、株主に対する情報提供の在り方の一部について、法律による規制ではなく、各社の合理的な裁量に委ねようとするものであり、株主に対する適切な情報提供を前提とする株主との対話の重要性を否定するものではないとしている。今後は、インターネットを利用することが困難な株主への配慮やサポートの工夫がされることが期待されることになりそうだ。
監査報告及び会計監査報告は記載の必要なし
Q
「事業報告に係る監査報告」「計算書類に係る監査報告及び会計監査報告」「連結計算書類に係る監査報告及び会計監査報告」については、今回の見直しによって、電子提供措置事項記載書面に記載しなくてもよいことになりましたか。
A
改正後の会社法施行規則95条の4第1項2号柱書に規定する事業報告には、監査報告が含まれるので、事業報告に係る監査報告については、電子提供措置事項記載書面に記載することは要しない。
ただし、電子提供措置事項記載書面に記載しないことについて監査役、監査等委員会又は監査委員会が異議を述べている場合には電子提供措置事項記載書面に記載することを要しない事項から除外されることになる。この点を明らかにするため、会社法施行規則95条の4第2号柱書の「事業報告」の定義が省令案から修正されている。
各社が株主の利益に配慮するかを含め工夫
Q
ウェブ開示によるみなし提供制度の特例措置では、「株主の利益を特に害することないよう特に配慮しなければならない」との規定が入っていますが、今回の改正省令には設けられていません。なぜですか。
A
法務省は、電子提供措置事項記載書面の記載事項の見直しは、株主に対する適切な情報提供が重要であることを前提とした上で、各社が置かれた個別的な事情を踏まえた各社の合理的な裁量の範囲内でどのように株主の利益に配慮するかを含め工夫がされることを想定して、株主に対する情報提供の在り方の一部について、法律による規制ではなく、各社の合理的な裁量に委ねようとするものであるからとしている。
※ウェブ開示によるみなし提供制度の特例措置は、新型コロナウイルス感染症の影響により、企業の決算・監査業務に遅延が生じるおそれがあるとの指摘があることから、緊急措置として行うという趣旨で導入されたもの(適用は令和5年2月28日まで)。改正前の会社法施行規則及び会社計算規則においてはウェブ開示によるみなし提供制度の対象とされていなかった事項を同特例措置の対象とするものであることから、当該事項についてウェブ開示をする場合には、株主の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならないこととされている(会社法施行規則133条の2第4項、会社計算規則133条の2第4項)。
ウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正関係
12月決算会社が3月中に株主総会を開催する場合は?
Q
ウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正規定は令和5年3月1日施行とされています。例えば、12月決算会社で3月に株主総会を開催する場合は、改正後の規定が適用されることになりますか。
A
ウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正規定は、令和5年3月1日から施行することとされている。このため、例えば、12月決算会社が3月中に株主総会を開催する場合であっても、令和5年2月28日までに改正前の規定の措置を開始した場合には、改正前の規定が適用されることになる。
招集通知発出が令和5年3月1日以降であれば改正後の法務省令が適用
Q
令和5年2月28日までに株主総会の招集手続が開始された場合であっても、令和5年3月1日以降に招集通知を発出する場合には、改正後の法務省令が適用できますか。
A
株主総会の招集手続を開始した日、つまり、取締役会で株主総会の招集を決議した日が令和5年2月28日よりも前であっても、令和5年3月1日以降に招集通知を発出する場合には、改正後の法務省令が適用されることになる。したがって、この場合には会社計算規則133条の2第1項2号から6号までの要件を満たす必要はなく、また、事業報告については、補償契約及び役員等賠償責任保険に関する事項などについてもウェブ開示が可能になる。
ウェブ開示をすでに開始していた場合
Q
ウェブ開示によるみなし提供制度の特例措置は令和5年2月28日までの適用とされていますが、令和5年3月1日の時点で、すでに会社法施行規則133条の2及び会社計算規則133条の2の規定により、ウェブ開示が開始されていた場合にはその効力は有効と考えてよいですか。
A
令和5年2月28日までに会社法施行規則133条の2及び会社計算規則133条の2の措置を開始している場合には、株主総会の日から3か月が経過する日が令和5年2月28日よりも後の日である場合であっても、当該措置が継続する限り、前述の規定に基づき、株主に対して提供したものとみなされるものと解されるとしている。
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