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契約2026年06月16日 スマホの解約は問題だ 執筆者:亀井真紀

 令和8年5月29日に総務省が発表した最新の通信利用動向調査によれば、スマートフォンの世帯の保有割合が91.8%とのこと。テレビの保有割合である90.1%を初めて上回ったようです。また、SNS(Facebook、X、LINEなど)を利用している個人の割合は全体で82.3%、70歳代で67.9%、80歳以上では54.3%とのこと。

 驚くような、驚かないような、といった統計でしょうか。ひとつ思うところとしては、高齢者はデジタルに弱い、スマホを使えないなどと言っていたのはひと昔前、もはや老若男女問わずスマホを持っている、使っているというのが当たり前の世界です。
 そして、このスマホの利用契約というのは、生きている限り、少なくとも利用できる状況である限り、継続的に続くというところに特徴があります。
 それ故、弁護士として、成年後見、相続財産清算人、ホームロイヤー等を担う中で、常に直面するのがこのスマホの解約問題です。
 ご本人の手元に実際にスマホがあり今も利用している、今後も利用するということであれば契約内容や支払い方法の確認等だけすればよいのですが、スマホ自体がどこにあるか分からない、およそ今後利用する見込みがない、さらにはご本人が死亡したといった場合、毎月基本料が発生するということは避けたいものです。そこで、1日も早く解約をしたいのですが、これが意外に大変なのです。
 まず、そもそも解約をするためにはキャリア会社のショップに行かなければなりません。本人であればWEBで行うこともできるようですが、それはIDやパスワードを知っていて「My〇〇」のようなページに入れることが前提です。代理人として行う場合それは無理です。
 キャリアショップは近年減少傾向にあり、どこも混雑しているので予約の確保からとなります。ようやく行き着いたところで、まずは本人と弁護士の関係性を説明しなければなりません。後見制度の利用についてはさすがに最近分かってくれることが多いのですが、スタッフによってはぴんと来ないようで本部らしきところにいちいち確認している様子が窺えます。当然ながら待ち時間も倍増です。これが相続財産清算人となるとよりいっそう混沌としてきます。この方には相続する人がいないので私が裁判所から選任されています、ということを審判書などで説明するのですが、相続手続きの書類を示されたり、「戸籍謄本をお持ち下さい」などと言われたり、噛み合わないコントのようなやりとりがしばし続きます。それでも最後は裁判所から選任されています!ということで何とか押し切ることができるのでよいのですが、一番困るのはホームロイヤーとして死後事務委任を受けている場合です。
 私が所属する第二東京弁護士会ではホームロイヤー制度があり、見守りや財産管理、任意後見契約などと合わせて死後事務委任契約をすることがあります。この場合、本人意思の確認を別の弁護士がチェックすることになっています。そうして本人が亡くなった場合に依頼された事務を履行しようとしているだけなのですが、相続人でもなく親族ですらない弁護士はもはや「怪しい人」にしか見られないのでしょう。生前の本人の委任状や委任契約書、弁護士の身分証明書などを見せてもなかなか話が通じません。
 基本的にキャリア会社は、死亡を証するもの(戸籍謄本だけではなく葬儀をやったことを示す会葬礼状でもよいことがあるようです)と合わせて「法定相続人」や「家族」であることを示せば解約自体は対応してくれるようです。しかし、それ以外の代理人対応をしてくれるかは私の感覚ではもはや「運」です。とあるキャリア会社では死後事務委任契約が公正証書で作成されている場合のみ対応するとしており、逆にそれ以外の場合は無理なようです。我々弁護士としても本人から死後事務の依頼を受ける際にできれば公正証書にできるならそうしたいのですが、残念ながら、その時間的余裕もなく亡くなってしまう方もいます。公正証書の作成は費用も手間もかかります。公正証書じゃないと何故ダメなのでしょうか。弁護士といえども信用できないからと言われてしまえばなす術もないですが、弁護士が嘘をついてまで死亡した方のスマホ契約を解約するメリットもありませんから・・・キャリア会社にはもう少し柔軟に対応をして頂きたいものです。
 そもそも!家族ならいい、家族以外はダメという発想は、頼れる身寄りのない人が増え続けている社会においてもはやナンセンスとしかいえません。相続人云々というなら金融機関なみに戸籍謄本類を厳密に精査するべきですがそこまではせずに「家族」ならOKってなんでしょうかね。「家族」をどう定義づけているのかも謎です。結局曖昧なのです。
 思うに、スマホのみならず世の中のサービス提供の多くが契約時にはよいことを言って勧めますが、終了の仕方の説明をしない、取り決めもしないことに大きな問題があると思います。スマホの利用契約についてはキャリアの乗り換えはともかく元気な時に契約を終了させるということは考え難い以上、やはり本人が意思表示をできなくなった場合、ひいては死亡した場合にこの契約が誰だったら終わらせられるのかといういくつかのパターンを説明し、予め本人意思を確認しておくなどの工夫ができないものでしょうか。例えばそのひとつに自分が意思表示をできなくなった時、死亡が発覚した場合には予め指定した人に任せますなどの項目を設け、疎明基準もつくっておくとか。解約時の手間をなるべく避けたいのはショップ担当者も同じのはずです。こちらもむやみにショップで小難しいことをレクしたいわけでも困らせたいわけではなく、円滑に手続きを進めたいだけなのです。
 スマホキャリア会社の法務部の方へ、ユーザー側のこんな切なる願いを受け止めて頂けませんでしょうか。宜しくお願いします。

(2026年6月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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執筆者

亀井 真紀かめい まき

弁護士

略歴・経歴

第二東京弁護士会所属。
平成13年弁護士登録。北海道の紋別ひまわり基金法律事務所(公設事務所)に赴任。
その後、渋谷の桜丘法律事務所(現事務所)に戻り現在に至る。
第二東京弁護士会高齢者・障がい者総合支援センター委員会、日弁連高齢者・障害者権利支援センター委員会等所属。
一般民事・家事、刑事事件のほか、成年後見、ホームロイヤー契約等高齢者、障がい者の事件を多く担当する。

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