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解説記事2020年01月13日 SCOPE 判決に伴う更正の請求、判決主文の確定により可能(2020年1月13日号・№818)

審判所、納税者の更正の請求を認容
判決に伴う更正の請求、判決主文の確定により可能


 請求人が法人との間で締結した金融商品の出資契約が判決によって無効になったことを受け、更正の請求ができるか否かが争われた事案で、国税不服審判所は、判決により各出資契約が当初から無効なものであったことが確定したことに加え、請求人は当該法人から各収入の支払いを受けておらず、また、各収入は再投資契約に基づく新たな出資契約の投資金額に充当もされていないと認められると指摘。各収入に係る経済的成果は失われたといえ、更正の請求は認められるべきであるとの判断を示した(令和元年6月25日、全部取消し)。

判決の確定により出資契約は取消しの意思表示で当初から無効

 今回の事案は、請求人が法人との間で締結した金融商品の出資契約に基づく配当を雑所得の総収入金額に算入して所得税の確定申告を行ったが、その後、当該出資契約を取り消し、判決により取消事由も認められたなどとして更正の請求を行ったが、原処分庁は更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、原処分の全部の取消しを求めたもの。
 請求人が金融商品の出資契約を締結した法人は、顧客から受けた出資金を事業に用いることなく、他の顧客への配当の支払い及び投資金額の返金に充てていたにもかかわらず、金融商品の取得勧誘を継続していたなどの法令違反の事実が認められたとして行政処分を受けたことにより、請求人は各出資契約に基づいて支払った投資金額の一部の返還を求める訴えを提起。裁判所は請求人が提起した請求原因事実を全て認め、請求を認容する旨の判決を下した。このため請求人は、判決の確定により各出資契約が取消しの意思表示によって当初から無効であったことなどから、各収入に係る経済的成果は失われていると主張していた(参照)。

【表】当事者の主張

請求人 原処分庁
 次の理由のとおり、本件各収入に係る経済的成果は失われている。
(1)本件判決において、各出資契約の取消事由や請求人の取消しの意思表示の到達事実を含む請求原因事実が全て認められ、判決の確定により、各出資契約が上記取消しの意思表示によって当初から無効であったことが明らかとなった。
(2)請求人は、本件各収入を各年分の雑所得の総収入金額に算入して各申告をした。しかし、本件各出資契約の満期日経過後、××××××に本件各収入に係る入金はなく、請求人は、各収入を新たな出資契約の投資金額に充当する再投資の申込みをしていない。また、本件各出資契約の投資金額に充当する申込みはしたものの、契約締結には至っていない。
 次の理由のとおり、本件各収入に係る経済的成果は失われたとはいえない。
(1)本件判決により各出資契約が無効であったことが明らかとなったが、判決において、本件各収入につき何らかの判断が行われた事実は認められない。
(2)本件各出資契約の満期日は各行政処分の日よりも前に到来しているから、請求人は本件各収入を受領することが可能であったと認められる。そして、××××××に本件各収入を××××との新たな契約により再投資していないという事実が明らかではないから、請求人が本件各収入を受領していないという事実が明らかとならない。そうすると、請求人は本件各収入に係る利得を現実に支配管理し、自己のためにそれを享受していることになる。

原処分庁は配当受領の有無が不明確と主張
 一方、原処分庁は、請求人が法人との間で締結した金融商品の各出資契約が判決によって無効であったことが明らかになったとしても、請求人が各出資契約に基づく配当を受領していないという事実が明らかにならない以上、各収入に係る経済的利益は失われたとはいえないとし、更正の請求は認められないと主張した。

判決で「その事実が当該計算の基礎と異なることが確定したとき」とは?

 審判所は、申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときには、国税通則法23条1項の規定による更正の請求ができる(通則法23条2項)とされているが、これは判決によりその申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実と異なる事実が確定され、判決に基づく法律関係が構築され、経済、社会生活上も当該法律関係を前提とすることになる場合には、同条2項に基づく更正の請求をすることができる旨を定めているものであると指摘。したがって、「判決により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」とは、その申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実と異なる事実を前提とする法律関係が判決の主文で確定されたとき又はこれと同視できるような場合をいうものと解するのが相当であるとした。
 その上で本件についてみると、判決の確定により、本件各出資契約が当初から無効なものであったことが確定したといえ、請求人の更正の請求は、国税通則法23条2項1号の「判決により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」に該当することになるとの判断を示した。
審判所、収入に係る経済的成果はなしと判断
 また、審判所は、所得税法が一定期間内に生じた経済的成果の原因となった行為が私法上無効、取消し、解除といった理由によってその効力がないものとして取り扱われることとなる場合であっても、このような行為に起因する経済的成果が実際に発生し、納税者の側においてこれが存続している事実が存するときは、かかる経済的成果に担税力が認められるが、他方でこのような経済的成果が失われた場合には、「課税対象が存在しないような事態が生じた場合」に該当するものとして、国税通則法23条に基づく更正の請求が許されることになると解されるのが相当であるとした。
 本件について審判所が調査したところでは、請求人は、法人から各収入の支払を受けておらず、各収入は再投資契約に基づく新たな出資契約の投資金額に充当もされていないと認められることからすれば、本件各収入に係る経済的成果は失われたといえ、更正の請求は認められるべきであると判断した。

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