会社法ニュース2023年08月25日 コベナンツの開示制度、企業の対応は(2023年8月28日号・№992) 会社法上の「多額の借財」の社内基準見直しも検討の余地
現行金商法(開示府令)上、財務制限条項(コベナンツ)について有報や臨時報告書での開示を直接求める明文の規定はない。しかし、昨年6月13日に公表された金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)報告では、投資判断にとって重要な契約が開示対象であることが十分実務に浸透していないといった指摘を受け、有報や臨時報告書における開示内容を充実させるべきとの提言が行われたところ。この提言を受け、2023年6月30日に公表された改正開示府令案には、借入や社債に付されたコベナンツのうち「重要なもの」については開示を求める規定が盛り込まれている。
本改正案のポイントは、「重要性」の判断基準が数値で示された点だ。具体的には、臨時報告書の提出の要否の判断基準は「有価証券報告書提出会社または連結子会社におけるローンの元本または社債の発行額の総額が連結純資産額(連結財務諸表を作成していない会社は単体の純資産額)の3%以上」とされ、また、同様に有報については「10%以上」とされた。同種の契約・社債がある場合には、その負債の額を合算して判断する必要がある。つまり、財務上の特約が付されている契約・社債があればそれらの負債の額を合算しておき、期末に連結純資産と比較して開示の要否を検討しなければならない。減損などで多額の費用を計上する場合には純資産が大きく毀損するため、コベナンツに抵触する可能性があるだけでなく、今回導入された10%基準にも該当しやすくなる。
借入や社債発行の契約締結が会社法362条4項に規定する取締役会の決議事項「多額の借財」に相当する場合には【経営上の重要な契約等】における「重要な契約」に該当し開示が必要になるが、今回の改正を機に「多額の借財」に該当するかどうかの自社における判断基準(例えば「1億円以上の借入」)を見直す必要が出て来ることも予想される。取締役会規程を今回の改正と整合させるため、「多額の借財」に該当するかどうかの判断基準としている金額基準を引き下げることも視野に入れるべきだろう。
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