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解説記事2024年01月22日 SCOPE 黙示的に付与した使用借権、地上権に経済価値なしと判断(2024年1月22日号・№1011)

自用地価額から借地権相当額の控除認めず
黙示的に付与した使用借権、地上権に経済価値なしと判断


 相続税申告において、マンションの敷地として賃借されている土地の時価が争われた事案の控訴審で、東京高裁第11民事部(大竹昭彦裁判長)は令和5年12月13日、経済的利益は移転しておらず、その客観的な交換価値は自用地価額の80%を下回らないとの原判決を支持した。
 当該敷地には地上権が設定されているから、自用地価額から借地権割合70%相当額を控除した価額として評価すべきとの納税者の主張に対して、東京高裁は、当該地上権は黙示的に付与した使用借権に由来するものであって、何らかの経済的価値があるものとして取り扱われていたと認定するのは困難との考えを示し、その主張を斥けた。

原判決同様、経済的利益の移転なく客観的交換価値は自用地価額の80%

 本件の事案の概要はのとおり。本件各土地は本件マンションの敷地であるが、本件マンションの高層階は住宅公社が所有している。低層階は亡父が所有していたが、父死亡後に納税者(原告・控訴人)が相続し、母と自らが主宰するI社に譲渡した。本件各土地については、住宅公社を地上権者とする地上権が設定されており、父死亡後は母が相続し、そのうちの2分の1がI社に賃借され、母死亡後は納税者と兄が相続した。本件で争われたのは、敷地の2分の1に相当する低層階の敷地部分の時価である。

 納税者は、当該敷地には、I社を地上権者とする地上権が設定されているから、自用地価額から借地権割合70%相当額を控除した価額として評価すべきと主張していた。
 これに対し原判決は、権利金の授受がされていないことや、「土地の無償返還に関する届出書」が提出されていたこと、関係当事者らが地上権が存在するとの認識を有していなかったことなどから、亡母からI社に対して何ら経済的利益が移転しておらず、その客観的な交換価値は、自用地価額の80%を下回らないとの判断を下し、課税処分を適法としていた。
自己借地権として地上権を譲り受けたと主張
 これを不服とした納税者(控訴人)は控訴した。控訴人はまず、本件マンション建設当時、本件各土地には住宅公社のために地上権が設定され、亡父には、本件各土地の所有権とは別に本件マンション低層階を適法に所有するための敷地利用権が必要であったとの事情を説明。これを理由に、亡父と住宅公社の合理的意思解釈により、亡父は、住宅公社から上記地上権を建物持分割合に応じて譲り受け、本件各土地に自己借地権として本件マンションの地上権持分を有することになったとの事実が認められるべきであり、同地上権の持分が、亡父から控訴人、さらにI社に承継されたと主張した。
 これに対し東京高裁は、①本件マンション完成当時は自己借地権の制度は存在しておらず、②亡父が住宅公社に対し本件マンション低層階の敷地とすることの対価を支払っていた形跡はうかがわれないことをも踏まえると、住宅公社が亡父に対し本件各土地を本件マンション低層階の敷地として無償で使用収益する権利を黙示的に付与したと認めるのが相当との考えを示した。その上で、控訴人が亡父から相続した敷地使用権は、地上権ではなく、黙示的に成立した使用貸借契約に基づく使用借権であるとした。
 また、東京高裁は、住宅公社の地上権設定に係る地上権設定契約書には、当該地上権の目的について、本件マンション高層階の建設所有のためである旨が明記されていると指摘。住宅公社が地上権取得の対価として支払った2,200万円は、本件マンション高層階の所有を目的とする地上権の対価であり、低層階の敷地として使用収益する権利の取得の対価が含まれていると解することはできないという、原判決と同様の考えを示した。
 その上で、仮に、控訴人の主張するように、本件マンションの敷地部分にI社を地上権者とする地上権が設定されていたと認めることができるとしても、上記の事実に照らせば、亡母とI社との間では、当該地上権は、住宅公社が亡父に対して黙示的に付与した使用借権に由来するものであって、何らかの経済的価値があるものとして取り扱われていたと認定するのは困難であるとした。
 このほか控訴人は、住宅公社が亡父から設定を受けた地上権は、本件マンション全体を建設し所有するためのものであるとも主張したが、東京高裁は、住宅公社が本件マンション全体の敷地利用権として地上権の設定手続を受けていることを斟酌してもなお、地上権設定契約における両者の合理的意思に鑑みれば、当該契約に基づいて住宅公社が亡父に支払った2,200万円は、本件マンション高層階の敷地として本件各土地を使用するための権利の対価として支払われたものと認めるのが相当との考えを示した。

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