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解説記事2024年03月18日 ニュース特集 Q&Aで読み解く中間会計基準と期中レビュー基準(2024年3月18日号・№1019)

ニュース特集
今後は期中会計基準を開発へ
Q&Aで読み解く中間会計基準と期中レビュー基準


 企業会計基準委員会(ASBJ)は3月18日にも「中間財務諸表に関する会計基準」等(以下「中間会計基準等」という)を決定する予定だ。改正金融商品取引法により四半期開示義務(第1・第3四半期)が廃止され、開示義務が残る第2四半期報告書を半期報告書として提出することになったことを踏まえ、中間会計基準等では、中間財務諸表に係る会計処理及び開示に関する取扱いを定めている。中間会計基準等は、基本的に四半期会計基準等の会計処理及び開示を踏襲することとしているほか、四半期会計基準等で認められている四半期特有の会計処理や簡便的な会計処理についても、改正金融商品取引法の施行日(令和6年4月1日)までの期間が短いことから経過措置等により継続して適用できることとしている。なお、今後、同委員会では、中間決算と四半期決算の取扱いを統一する期中会計基準を開発する予定だ。
 また、企業会計審議会は3月12日に総会を開催し、「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂及び監査に関する品質管理基準の改訂について」等を決定した(今号11頁参照)。今回の改訂では、四半期レビュー基準の名称を期中レビュー基準に名称を変更した上、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューのような「適正性に関する結論」の表明を基本としつつ、「準拠性に関する結論」の表明が可能である旨を明確化している。適用は令和6年4月1日以後開始する会計期間に係る期中財務諸表の期中レビューからとされている。
 本特集では、企業会計基準委員会が3月18日に決定する予定の中間会計基準等及び企業会計審議会が決定した期中レビュー基準について、公開草案からの変更点などを踏まえつつ、Q&A形式で解説する。

中間会計基準等

上場会社等と同様の半期報告書を提出する非上場会社も適用
Q

 中間会計基準等は非上場会社にも適用されるのでしょうか。
A
 中間会計基準等は、上場会社等のほか、上場会社等と同様の半期報告書を提出する非上場会社が半期報告制度に基づき作成する中間財務諸表に適用される。
 なお、特定事業会社(銀行法、保険業法及び信用金庫法の特定の条項で定める業務に係る事業を行う会社)及び改正後の金融商品取引法24条の5第1項ただし書きを適用しない非上場会社が作成する中間財務諸表については、中間連結財務諸表作成基準、中間連結財務諸表作成基準注解、中間財務諸表作成基準及び中間財務諸表作成基準注解が適用される。

第一種中間財務諸表が該当
Q

 財務諸表等規則等の改正では、第一種中間財務諸表と第二種中間財務諸表の2つの中間財務諸表が存在することになる予定ですが、上場会社等の場合、どちらの規定を適用することになるのでしょうか。
A
 上場会社等及び上場会社等と同様の半期報告書を提出する非上場会社が提出する半期報告書に含まれる財務諸表は第一種中間財務諸表となり、特定事業会社など、それ以外の非上場会社が提出する半期報告書に含まれる財務諸表については第二種中間財務諸表となる。

期首から6か月が1つの会計期間
Q

 開発にあたっての基本的な方針を教えてください。
A
 改正後の金融商品取引法では、四半期報告書制度に基づき四半期財務諸表を作成していた上場会社等及び非上場会社が新たに中間財務諸表を作成することが規定されたことから、改正後の金融商品取引法に基づく半期報告書において開示される中間財務諸表に関する会計基準の開発が行われた。
 中間会計基準等は、期首から6か月を1つの会計期間(中間会計期間)とする中間財務諸表に係る会計処理を定めることとしているほか、中間財務諸表の記載内容が従前の第2四半期報告書と同程度の記載内容となるように、基本的に企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」の会計処理及び開示を引き継ぐこととしている。
 ただし、期首から6か月間を1つの会計期間(中間会計期間)とした場合と、四半期会計基準等に従い第1四半期決算を前提に第2四半期の会計処理を行った場合とで差異が生じる可能性がある項目(「有価証券の減損処理に係る中間切放し法」「棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法」「一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理」「未実現損益の消去における簡便的な会計処理」)については、改正後の金融商品取引法の成立日から施行日までの期間が短期間であることから、会計処理の見直しにより企業の実務負担が生じないよう従来の四半期での実務が継続して適用可能となる経過措置を定めている。

3か月間の取扱いは定めず
Q

 四半期会計基準においては、期首からの累計期間の開示を基本としつつ、四半期会計期間(3か月)を任意で開示する場合の取扱いも定められていましたが、中間会計基準等ではどのような取扱いになっていますか。
A
 中間会計基準等では、中間財務諸表は中間会計期間(6か月間)が1つの会計期間となるため、中間会計期間の取扱いのみが定められている。

読み替えの「他の会計基準等」には会計士協会の実務指針等も
Q

 他の会計基準等における四半期財務諸表に関する取扱いはどうなるのでしょうか。
A
 他の会計基準等における四半期財務諸表に関する定めについては、中間会計基準等の適用対象となる中間財務諸表に適用できるように、「四半期会計期間」「四半期決算」「四半期財務諸表」「四半期連結財務諸表」「四半期個別財務諸表」という用語については、「中間会計期間」「中間決算」「中間財務諸表」「中間連結財務諸表」「中間個別財務諸表」の用語に読み替えることとしている。この点、他の会計基準等の読み替えにあたっては、従前の四半期の実務を変更することを意図していないとしている。
 なお、他の会計基準等には、日本公認会計士協会の実務指針等も含まれることになる。

中間会計基準等の適用初年度は遡及適用
Q

 公開草案から大きく変更になる点はありますか。
A
 金融庁が今後公表する予定の財務諸表等規則等では、適用初年度における比較情報を不要とする旨の規定が置かれない見込みであることから、開示対象期間の中間財務諸表等について中間会計基準等を遡及適用する旨の規定が置かれることになる(本誌1016号11頁参照)。
 なお、中間会計基準等の適用初年度においては、従来作成していた財務諸表(四半期財務諸表)と異なる種類の財務諸表(中間財務諸表)を新たに作成することになると考えられるため、適用初年度において従前の四半期財務諸表において採用していた会計方針(年度の会計方針との首尾一貫性が求められる会計方針を除く)と異なる会計方針を採用する場合には、会計方針の変更に該当せず新たに会計方針を採用することになる。

四半期特有の会計処理も中間会計基準等で適用可能
Q

 四半期特有の会計処理である「原価差異の繰延処理」や「子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日」の取扱いに関しては、公開草案から変更はありませんか。
A
 「原価差異の繰延処理」については、公開草案どおり、中間会計基準等においても認められることに変更はない。
 一方、「子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日」については、内容面での変更はないが、取扱いの明確化が行われる。公開草案では、「中間連結財務諸表を作成するにあたり、支配獲得日、株式の取得日又は売却日等が子会社の中間会計期間の末日以外の日である場合に、当該日の前後いずれかの決算日等に支配獲得、株式取得又は売却等が行われたものとみなして処理することができる。この決算日等には、期首、中間会計期間の末日又は中間会計期間の期間内で適切に決算が行われた日を含む。」とされているが、「中間会計期間の期間内で」を「その他」に変更した上で、「その他の適切に決算が行われた日」が従来の四半期の実務を見直すことを意図したものではない旨のほか、「その他の適切に決算が行われた」とは、子会社において中間会計基準等に準じた決算が行われたことを想定している旨を追記している。
 なお、この見直しに合わせ、日本公認会計士協会が公表している会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」第7項についても「……中間決算日又はその他の適切に決算が行われた日が含まれる。……」に変更される。

経過措置の適用は適用初年度に限定せず
Q

 経過措置については、初めて中間会計基準等を適用する以外でも適用できるのでしょうか。
A
 中間会計基準等では、従来の四半期での実務が適用可能となるように経過措置を定めているため、中間会計基準適用指針の経過措置を適用するかどうかの判断は、中間会計基準等の適用初年度に限定されないとしている。

経過措置適用の前提となる条件は削除
Q

 経過措置に関しては、公開草案から変更される点はありますか。
A
 経過措置の適用に関しては、「四半期適用指針に基づいて四半期切放し法を適用していた場合」等の条件が記載されていたが(適用指針案62項及び63項)、中間会計基準等の適用初年度においては、従来作成していた四半期財務諸表と異なる種類の中間財務諸表を新たに作成することになると考えられるため、年度の会計方針との首尾一貫性が求められる会計方針を除き、新たに会計方針を採用することになると考えられることから、当該記載は削除されることになった。

中間会計基準等の適用初年度の注記は求めず
Q

 中間会計基準等の適用初年度においては、同会計基準を適用する旨の注記が必要でしょうか。
A
 財務諸表等規則等では、経理の状況において、中間財務諸表等の種類を記載することとされる方向であるため、企業が作成する中間財務諸表等が中間会計基準等の適用対象となるかどうかは明らかであることから、中間会計基準等を適用する旨の注記は求められていない。

最初の適用は12月決算会社
Q

 実際に適用される時期はいつになりますか。
A
 中間会計基準等は、改正金融商品取引法24条の5第1項の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用するとされている。実際に最初に適用されるのは、改正前の金融商品取引法に基づき第1四半期の四半期報告書を提出する12月決算会社となる。具体的には、第1四半期(2024年1月1日から2024年3月31日)に係る四半期報告書に含まれる四半期報告書については四半期会計基準等を適用し、中間会計期間(2024年1月1日から2024年6月30日)に係る半期報告書に含まれる中間財務諸表については中間会計基準等が適用されることになる。

今後は期中財務諸表に関する会計基準等を開発へ
Q

 今後の基準開発の方向性は?
A
 改正金融商品取引法により、上場企業等は、法定開示としては中間財務諸表のみ作成することなる。このため、四半期会計基準等は廃止されることになるが、上場企業は、証券取引所の規則により、四半期決算短信の提出が求められるため、引き続き3か月ごとに決算が行われる。四半期決算短信は証券取引所の規則に従うことになるが、上場企業としては四半期決算短信と中間財務諸表は連続したものとして作成することになるため、同じ会計基準に基づいて中間決算と四半期決算を行うべきであるとの意見が聞かれている。特に第3四半期については、中間会計基準等は中間会計期間を1つの会計期間とした会計基準等であるため、中間会計基準等で取り扱うことができない点が問題になるとされている。
 このような意見を踏まえ、企業会計基準委員会では、中間会計基準等と四半期会計基準等を統合した期中財務諸表に関する会計基準等(期中会計基準等)を開発する方針だ。

四半期会計基準等は告示指定から削除も当面は存続
Q

 四半期会計基準等が金融庁の告示指定から外れるとのことですが、四半期会計基準等は適用できなくなるのでしょうか。
A
 金融庁は、金融商品取引法上、四半期報告制度が廃止されることに伴い、企業会計基準委員会が開発する中間会計基準等については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として指定するものの、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」は指定から削除する方針だ。一方、企業会計基準委員会では、期中会計基準等を開発するまでは、四半期会計基準を存続させる方針。四半期決算短信を作成する上で必要になるからだ。
 四半期会計基準等の告示指定がなくなれば、一般に公正妥当と認められる会計基準とはならない。とはいっても今回は法律上四半期報告制度が廃止されてしまうことによるものであるため、金融庁から何らかの柔軟な対応を求める声もある。

経過措置の恒久化求める意見多数
Q

 今後開発される予定の期中会計基準等では、「有価証券の減損処理に係る中間切放し法」「棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法」「一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理」「未実現損益の消去における簡便的な会計処理」といった経過措置は適用できなくなるのでしょうか。
A
 国際的な会計基準における期中報告基準においては、企業の報告の頻度(年次、半期、又は四半期)によって、年次の経営成績の測定が左右されてはならないとすることが原則とされており(IAS第34号「期中財務報告」第28項)、日本基準においても同原則を採用する方向で検討がなされる見込みとなっている。この原則を採用することになれば、4つの経過措置については認められず、取扱いを変更することが必至となる。
 しかし、中間会計基準等に対する公開草案に対しては、これに反対し中間財務諸表にも現行の四半期会計基準をそのまま適用できるように改正すべきとの意見や、中間会計基準等に定められた経過措置の恒久化を求める意見が多く寄せられている(本誌1014号15頁参照)。
 このため、期中会計基準等の統一の方法に関しては、公開草案に寄せられた意見も踏まえ、今後、検討されることになる。

期中レビュー基準

期中レビュー基準の適用時期の文言を明確化
Q

 期中レビュー基準については、公開草案から変更されている点はありますか。
A
 内容面での大きな変更はない。ただし、適用時期の文言の明確化が行われている。公開草案では、「期中レビュー基準は、令和6年4月1日以後開始する会計期間に係る期中財務諸表の期中レビューから適用する」とされていたが、会計期間の意図が不明瞭との意見を踏まえ、「期中レビュー基準は、令和6年4月1日以後開始する期中財務諸表に係る会計期間の期中財務諸表に対する期中レビューから適用する」とされている。
 また、同様に期中レビュー基準「第二 実施基準」の「10 継続企業の前提」の第二段落に記載している「当会計期間」は「期中財務諸表に係る当会計期間」に変更されている。

保証水準は同じ
Q

 「適正性に関する結論」と「準拠性に関する結論」の保証水準は異なるのでしょうか。
A
 期中レビュー基準では、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューのような「適正性に関する結論」の表明を基本としつつ、「準拠性に関する結論」の表明が可能である旨を明確化している。東京証券取引所が定める第1・第3四半期決算短信における財務報告の枠組みについては、適正表示を達成するための追加開示の明示的な規定を想定していないことから、準拠性の枠組みに対するレビューを想定しているからだ。
 「適正性に関する結論」と「準拠性に関する結論」は、いずれも保証水準(限定的保証)は同じであるとし、「経営者が採用した会計方針が会計の基準に準拠し、それが継続的に適用されているかどうか、その会計方針の選択や適用方法が会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかに加え、期中財務諸表が表示のルールに準拠しているかどうかの評価をしなくてはならない」とされている。ただし、「適正性に関する結論」は、期中財務諸表の利用者が財政状態や経営成績等を理解するに当たって財務諸表が全体として適切に表示されているか否かについての一歩離れて行う評価(その結果、追加の開示が必要と判断すれば、レビューで指摘)が含まれるのに対して、「準拠性に関する結論」の場合はその評価が行われない点に違いがある。

期中レビュー基準の財務諸表には連結も含む
Q

 期中レビュー基準における財務諸表には連結財務諸表も含まれるのでしょうか。
A
 監査基準等と同様、期中レビュー基準における「財務諸表」には、「連結財務諸表」も含まれることになる。

重要資料

四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂について

 令和6(2024)年3月12日
 企業会計審議会

一 経 緯
 金融商品取引法に基づく四半期報告制度については、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、
・金融商品取引法上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止して取引所の規則に基づく四半期決算短信に「一本化」し、
・速報性の観点等から、四半期決算短信については監査人によるレビュー(以下「一本化後の四半期決算短信におけるレビュー」という。)を一律には義務付けず、企業の判断に委ねる
などの方向性が示されたことを受け、金融庁において、金融商品取引法上の四半期開示義務の廃止に向けて、金融商品取引法の改正案を取りまとめ、令和5(2023)年3月に国会に提出し、同年11月に金融商品取引法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が成立した。
 また、この金融商品取引法の改正(以下「改正後の金融商品取引法」という。)に伴う関係法令において、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューなどに関する所要の規定の整備を行うこととされている。
 こうした中、四半期開示の見直しに伴う監査人のレビューに係る必要な対応について、当審議会は、令和5(2023)年9月から、監査部会において審議を開始した。
 年度の財務諸表の監査を実施する監査人が行う中間財務諸表その他の期中財務諸表(以下「期中財務諸表」という。)に対するレビュー(以下「期中レビュー」という。)については、種々異なる需要が想定されるところである。
 例えば、幅広い利用者に共通するニーズを満たすべく一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成された期中財務諸表(以下「一般目的の期中財務諸表」という。)に対して、経営者が採用した会計方針が企業会計の基準に準拠し、それが継続的に適用されているかどうか、その会計方針の選択や適用方法が会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかに加え、期中財務諸表における表示が利用者に理解されるために適切であるかどうかについて判断した結論(以下「適正性に関する結論」という。)を表明することがある。この判断には、期中財務諸表が表示のルールに準拠しているかどうかの評価と、期中財務諸表の利用者が財政状態や経営成績等を理解するに当たって財務諸表が全体として適切に表示されているか否かについての一歩離れて行う評価が含まれる。一方で、期中財務諸表が当該期中財務諸表の作成に当たって適用された会計の基準に準拠して作成されているかどうかについての結論(以下「準拠性に関する結論」という。)を表明することもあるが、この場合には、財務諸表が全体として適正に表示されているか否かについての一歩離れて行う評価は行われない。なお、現行の四半期レビュー基準では、四半期財務諸表についての適正性に関する結論の表明のみが規定されている。このほか、特定の利用者のニーズを満たすべく特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成された期中財務諸表(以下「特別目的の期中財務諸表」という。)に対して結論を表明することもある。
 こうしたことから、当審議会においては、四半期レビュー基準について、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューに加えて、一本化後の四半期決算短信におけるレビューも含め、年度の財務諸表の監査を実施する監査人が行う期中レビューの全てに共通するものとする方向で改訂の検討を進めることとし、令和5(2023)年12月、監査部会において公開草案を公表し、広く各界の意見を求め、寄せられた意見を参考としつつ、公開草案の内容を一部修正して、これを「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂に係る意見書」として公表することとした。
 今回の改訂においては、四半期レビュー基準を期中レビュー基準に名称変更するとともに、現行の四半期レビュー基準で規定している適正性に関する結論の表明の形式に加えて、準拠性に関する結論の表明の形式を期中レビュー基準に導入し、併せて、レビュー実務における混乱や期中財務諸表利用者の誤解等を避けるため、特別目的の期中財務諸表に対する結論の表明の位置付けを明確にすることとした。
 その際には、一般目的の期中財務諸表と特別目的の期中財務諸表のそれぞれについて適正性に関する結論の表明と準拠性に関する結論の表明とがあり得ることを踏まえつつも、監査基準の枠組みとの整合性にも十分配意し、かつ、現行の四半期レビュー基準の趣旨を踏まえ、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューのような一般目的の期中財務諸表を対象とした適正性に関する結論の表明を基本とすることとした。
 今回の改訂により、期中レビュー基準には準拠性に関する結論の表明の形式が導入されることとなるが、当該結論を表明するに当たっては、適正性に関する結論を表明する場合に準じた対応が必要となることについて、公認会計士はもちろん、期中財務諸表の作成者や利用者に対しても、適切な理解を促すため十分に周知が図られることが望ましい。

二 主な改訂点とその考え方
1 期中レビュー基準への名称変更

 今般の監査部会における審議の結果、期中財務諸表の種類や結論の表明の形式を異にするレビューも含め、年度の財務諸表の監査を実施する監査人が行う期中レビューの全てに共通するものとして、四半期レビュー基準の名称を期中レビュー基準に改めることとした。
2 期中レビューの目的の改訂
 期中レビュー基準において、監査基準の枠組みとの整合性にも十分配意し、かつ、現行の四半期レビュー基準の趣旨を踏まえ、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューのような一般目的の期中財務諸表を対象とした適正性に関する結論の表明を基本としつつ、一般目的の期中財務諸表又は特別目的の期中財務諸表を対象とした準拠性に関する結論の表明が可能であることを明確にした。
3 実施基準の改訂
 期中レビューの実施に当たっては、準拠性に関する結論の表明の場合であっても、適正性に関する結論の表明の場合と同様に、期中レビュー手続を実施し、結論の表明の基礎となる証拠を得なければならないことから、「第二 実施基準」が当然に適用されることに留意が必要である。継続企業の前提に関する手続についても、準拠性に関する結論の表明の場合であっても、適正性に関する結論の表明の場合と同様である。また、期中財務諸表に対する期中レビューの結論を表明する場合のほか、期中財務諸表を構成する貸借対照表等の個別の財務表や個別の財務諸表項目等に対する期中レビューの結論を表明する場合についても、期中レビュー基準が適用される(その際、期中レビュー基準中「期中財務諸表」とあるのは、必要に応じ「個別の期中財務表」又は「個別の期中財務諸表項目等」と読み替えるものとする。)。
 なお、特別目的の期中財務諸表には多種多様な期中財務諸表が想定されることから、「第二 実施基準」において、監査人は、特別目的の期中財務諸表の期中レビューを行うに当たり、当該期中財務諸表の作成の基準が受入可能かどうかについて十分な検討を行わなければならないことを明確にした。このほか、特別目的の期中財務諸表の期中レビューを行うに当たっては、当該期中財務諸表が特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成されていることに留意する必要がある。
4 報告基準の改訂
 「第一 期中レビューの目的」において、適正性に関する結論に加えて準拠性に関する結論にかかる記述を付記したことを踏まえ、「第三 報告基準」において、期中レビュー報告書において記載すべき事項を明確にした。すなわち、「第三 報告基準」の「1 結論の表明」では、適正性に関する結論の表明について特別の利用目的に適合した会計の基準により作成される期中財務諸表の場合を付記するとともに、これに加えて、準拠性に関する結論の表明について規定し、監査人が準拠性に関する結論を表明する場合には、作成された期中財務諸表が、当該期中財務諸表の作成に当たって適用された会計の基準に準拠して作成されていないと信じさせる事項が全ての重要な点において認められなかったかどうかについての結論を表明しなければならないこととした。準拠性に関する結論を表明するに当たって、監査人は、経営者が採用した会計方針が、会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうか、期中財務諸表が表示のルールに準拠しているかどうかについて形式的に確認するだけではなく、当該会計方針の選択及び適用方法が適切であるかどうかについて、会計事象や取引の実態に照らして判断しなければならないことにも留意が必要である。
 なお、準拠性に関する結論の表明については、別途の報告基準を改めて規定するのではなく、適正性に関する結論の表明を前提としている報告基準に準じることとしているが、特別目的の期中財務諸表の利用者の誤解を招かないようにするために「第三 報告基準」に「14 特別目的の期中財務諸表に対する期中レビューの場合の追記情報」を設けた。すなわち、特別目的の期中財務諸表に対する期中レビュー報告書を作成する場合には、期中レビュー報告書に、会計の基準、期中財務諸表の作成の目的及び想定される主な利用者の範囲を記載するとともに、期中財務諸表は特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成されており、他の目的には適合しないことがある旨を記載しなければならないこととした。また、期中レビュー報告書が特定の者のみによる利用を想定しており、当該期中レビュー報告書に配布又は利用の制限を付すことが適切であると考える場合には、その旨を記載しなければならないこととした。

三 不正リスク対応基準との関係
 期中レビューについては、年度監査と同様の合理的保証を得ることを目的としているものではないことから、不正リスク対応基準は期中レビューには適用されない。
 なお、期中レビューの過程において、期中財務諸表に不正リスク対応基準に規定している不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合等には、監査人は、必要に応じて、期中レビュー基準に従って、追加的手続を実施することになる。

四 実施時期等
1 期中レビュー基準は、令和6年4月1日以後開始する期中財務諸表に係る会計期間の期中財務諸表に対する期中レビューから適用する。
2 1の規定にかかわらず、改正法附則第3条第2項に規定する、改正後の金融商品取引法第24条の5第1項の表の第1号の中欄に掲げる事項を記載した半期報告書に含まれる中間財務諸表の期中レビューについては、期中レビュー基準を適用する。
3 改正後の金融商品取引法第24条の5第1項の表の第2号の中欄に掲げる事項を記載した半期報告書又は同表の第3号の中欄に掲げる事項を記載した半期報告書に含まれる中間財務諸表については、引き続き、中間監査基準に準拠した対応を行う必要がある。
4 期中レビュー基準を実務に適用するに当たって必要となる実務の指針については、日本公認会計士協会において、関係者とも協議の上、適切な手続の下で、早急に作成されることが要請される。



監査に関する品質管理基準の改訂について

 令和6(2024)年3月12日
 企業会計審議会

一 経緯
 金融商品取引法に基づく四半期報告制度については、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、
・金融商品取引法上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止して取引所の規則に基づく四半期決算短信に「一本化」し、
・速報性の観点等から、四半期決算短信については監査人によるレビュー(以下「一本化後の四半期決算短信におけるレビュー」という。)を一律には義務付けず、企業の判断に委ねる
などの方向性が示されたことを受け、金融庁において、金融商品取引法上の四半期開示義務の廃止に向けて、金融商品取引法の改正案を取りまとめ、令和5(2023)年3月に国会に提出し、同年11月に金融商品取引法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が成立した。
 また、この金融商品取引法の改正(以下「改正後の金融商品取引法」という。)に伴う関係法令において、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューなどに関する所要の規定の整備を行うこととされている。
 こうした中、四半期開示の見直しに伴う監査人のレビューに係る必要な対応について、当審議会は、令和5(2023)年9月から、監査部会において審議を開始した。
 年度の財務諸表の監査を実施する監査人が行う中間財務諸表その他の期中財務諸表(以下「期中財務諸表」という。)に対するレビュー(以下「期中レビュー」という。)については、種々異なる需要が想定されるところである。
 こうしたことから、当審議会においては、四半期レビュー基準について、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューに加えて、一本化後の四半期決算短信におけるレビューも含め、年度の財務諸表の監査を実施する監査人が行う期中レビューの全てに共通するものとする方向で改訂の検討を進めることとした。今般の監査部会における審議の結果、現行の品質管理基準の一部の改訂を行うこととし、令和5(2023)年12月、監査部会において公開草案を公表し、広く各界の意見を求め、寄せられた意見を参考としつつ、これを「監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書」として公表することとした。

二 主な改訂点とその考え方
 現行の品質管理基準は、監査基準と一体として適用されるほか、中間監査、四半期レビュー及び内部統制監査について準用され、それ以外の監査事務所の業務については、参照されることが望ましいとされている。
 今般の監査部会における審議の結果、四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂に伴い、品質管理基準の一部の改訂を行い、期中レビューについて品質管理基準が準用されるように改めることとした。

三 実施時期等
1 改訂品質管理基準は、令和6年4月1日以後開始する期中財務諸表に係る会計期間の期中財務諸表に対する期中レビューから適用する。
2 1の規定にかかわらず、改正法附則第3条第2項に規定する、改正後の金融商品取引法第24条の5第1項の表の第1号の中欄に掲げる事項を記載した半期報告書に含まれる中間財務諸表の期中レビューについては、改訂品質管理基準を適用する。
3 改訂品質管理基準を実務に適用するに当たって必要となる実務の指針については、日本公認会計士協会において、関係者とも協議の上、適切な手続の下で、早急に作成されることが要請される。

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